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イマジナリーフレンド  作者: 黒井木アイシャ
7/24

雨の日のぴゆハウス

ここ数日で色々な出来事があったからか、夜になるとうっすら眠気がくるようになった。

前に比べて活動的になったから、少ない体力を消耗して疲れているのかもしれない。

ついこの間までベッドから動かない日もしょっちゅうだったからなぁ。


スマホで虫の声や海の音を流すと、目を閉じてもあまり怖くない。

食べることや眠ることに対して感じていた謎の罪悪感も薄れてきた気がする。

寧ろ、きちんとした生活を送れるようになりたいとさえ思うようになってきた。


なんでだろう。


なんでかな。



--------



うたた寝から目が覚めると、朝の8時だった。

いつもならカーテンから漏れる光で朝と気付くはずなのに。

妙に感じてカーテンを開けると、空はどんよりとしていて朝とは思えないほど薄暗く、黒っぽい雲からは強めの雨が降っていた。


(ぴゆの家は大丈夫かな…)


家の様子を心配して見に行ったと思われるとぴゆが気分を悪くするかもしれないので、言い訳のための朝ご飯を手土産に屋上に向かうことにした。


-------


トートバッグにたまごサンドが入ったタッパー、インスタントのコーンスープを淹れたスープジャー、それから念のために大きめのバスタオルを詰めて屋上に行く。

屋上へ続く階段と踊り場は相変わらず埃っぽくて人が通った形跡はなく、屋上に小さな宇宙人が勝手に居座っていることは誰にも気付かれていないようで一先ず安心した。


屋上のドアを開けると床のあちこちに水溜りができていて、とても安住の地とはいえない様子だった。

ビショビショに濡れそぼったテントは昨日見たよりも心なしか小さく見える。


「ぴゆ?いる?」

「おっ、ゆーた!」


テントに近付いて声を掛けると、中からくぐもったぴゆの声と、寝袋からいそいそ這い出てくる衣擦れの音が聞こえた。

ドアのジッパーを下げてテントから出てきたぴゆは、昨日と変わらず元気な様子で安心する。


「おはよーございまちよ!

もちかちて、もう朝もはんの時間でちたか?

ぴゆゆとぅーんに夢中で止め時が分かりまちぇんでちたよ」


昨日見かけたゲーム機を手にして、ヘヘッと笑うぴゆにトートバッグを差し出す。


「そ、そう…なかなか食べに来ないからさ…。

簡単にサンドイッチとスープだけ持ってきたよ。

あ、あと雨降ってるからタオルも持ってきたけど使う?」


差し出されたトートバッグの中身を物色しながらぴゆがフフッと笑う。


「ゆーたは心配性でちね!

ぴゆハウスはきちんとしたお家でちから、雨の日には内側にビニールシートを張れば大丈夫なんでち。

小雨くらいなら撥水加工で何とかなるんでちけど…」


ドアから覗くと、テントの内側には透明なビニールシートが張られていて簡易的なビニールハウスのようになっていた。

まあ、そもそもきちんとした家ならビニールシートを張らなくても問題はないはずだが、それはあえて言わないでおこう。


それから昨日持っていったカレーのタッパーを受け取り、そのままぴゆと別れた。

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