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ネコ耳❤アリシアの魔王城日記  作者: 独瓈夢
第三部 アリシア伯爵
92/316

第92章 アリシア伯爵の領地改革-検地編②

 ドアングレーム男爵にうまく(そののか)されたゼーブランド伯爵は、師団の将兵たちに、ダイダロス宮と大統領官邸を占領するために出陣を命じた。


 『シャクロナ』の常用ですっかりシャクロナ中毒になっていたゼーブランド伯爵の師団の将兵たちは、師団長であったゼーブランド伯爵の命令を疑うこともなく信じ、出陣した。途中で東ディアローム帝国が前もって送りこんでいた扇動者たちによって暴徒化した数千人の市民が合流し、大部隊となった。


 運悪く- ゼーブランド伯爵にとってだが- 

その時、運よく- ドリアンスロゥプ皇帝とジャブイ皇后と皇族にとってだが- ダイダロス宮には、私とキャルニボル大統領の娘のフローリナちゃん、マイレィちゃん、ロニアちゃんとアマラちゃん、そして無敵のガバロス親衛隊の10騎人がいた。


 その時の私たちの活躍は、西ディアローム帝国の正史にも、テルースの世界史にも克明に記されて... いないよね(汗)。正史に記録されているのは―


《テルース歴5065年6月〇〇日- ドリアンスロゥプ皇帝、並びにジャブイ皇后、それに皇帝一族は、ゾオル第1師団新団長オーマル・エルグノー・ゼーブランド伯爵(注:後述の事件の首謀者として、爵位剥奪、資産没収される)の陰謀による政府転覆、皇帝ご一族監禁未遂事件発生。同反乱事件は、ジャバリュー・ネンンブルーメ・キャルニボル大統領、ボウグロス・アルニーム・ガナパティ厩役伯爵、それにルクゾール・ウグロス・マッコンゼン・ボンガゥル侯爵たち愛国貴族の適切な対応と首都防衛軍並びに憲兵師団の働きにより鎮圧され、反乱軍将兵及び反乱市民は全員厳罰に処された。

追記:なお、上述の反乱事件の鎮圧には、同盟国のフェリノディオ族(ネコ人族)貴族の協力があったことを期しておく》


 な、なによ、これ?

キャルニボル大統領やガナパティ伯爵、それにボンガゥル侯爵たちの名前は、家名から中間名、名前まで記載しているのに、私の名前はアリシアのアもゲネンドルのゲもないよ???

これこそゲゲゲのゲだよ(汗)。

 まあ、他国の歴史書だから、自分たちにとって都合よく書いているんだろうけど...

いつか、私がテルースの世界で大きな影響力をもつフェリノディオ族(ネコ人族)に出世したら、絶対に訂正させてやるわ!



 この問題は、さておき―

まあ、マイレィちゃんの緊急救助連絡で駆けつけた、テルースの世界最恐(最強が正しい綴りだけどこれの方が感じが出るよね?)の魔術師、ミカエラさま、アンジェリーヌさま、ジョスリーヌさま、ヴァスマーヤさまたちによって、反乱軍の兵士と反乱に加わった市民たちは、そのほとんどが感電死か黒焦げ、または凍結して死んだ。


 そのあとは、首都防衛軍を率いて駆けつけたガナパティ厩役伯爵と 憲兵師団を連れて皇帝救出に来たボンガゥル侯爵によって反乱軍と反乱市民は制圧され、反乱将兵は武装解除され、軍事裁判の判決が出るまで憲兵師団の敷地内に設けられた柵の中に閉じ込められることになった。

 反乱市民も武装解除され、こちらは競技場に閉じ込められた。東ディアローム帝国から送られた扇動者も憲兵隊が徹底的に調査し、全員逮捕され憲兵師団本部で厳しい取り調べを受けている。


 そして、反乱軍の指揮者であったゼーブランド伯爵は、爵位剥奪、全財産没収の上、島流しになるところだったのだが、ゼーブランド伯爵の供述により憲兵隊がドアングレーム男爵を取り調べたところ、“内面に神聖なものを現す『シャクロナ』”という薬草は、ソーリス教(太陽神教)が東ディアローム帝国と共謀してゾオルに広めていた幻覚剤で、これによりゾオルの西ディアローム軍将兵を中毒者にし戦意を失わせ、帝都民を錯乱状態にして東ディアローム軍とアングルスト・ベルミンジャン両国軍のゾオル攻略を容易にするという目的だったことが判明した。


 その報告をガナパティ厩役伯爵から受けたドリアンスロゥプ皇帝は、ゼーブランドに恩赦をあたえることにし、新領主となったアリシア・ゲネンドル伯爵の使用人として仕えるか、または一族を引き連れて西ディアローム帝国を出てほかの国暮らすか、どちらか一つを選ぶ選択をあたえたのだそうだ。


「アリシア・ゲネンドル伯爵殿に仕える場合は、以前のような貴族服の使用、食べ物、習慣などは一切使用が禁止となる。その上で、ほかの使用人と変わらない、一介の使用人としてゲネンドル伯爵殿に仕えること」とキャルニボル大統領から釘を刺されたそうだ。

まあ、貴族でなくなった者に、まだ貴族の特権を認めると言うのもおかしな話しなので、当然と言えば当然だろう。



      アリシア伯爵の館

      挿絵(By みてみん)



「我が輩、いや、これも貴族が使う自称ですので、今後は手前と呼ぶことにしますが... どうでしょう、我が輩、いえ、手前と手前の家族を何んとかゲネンドル伯爵殿の使用人として雇っていただけませんか?」

「ゲネンドル伯爵さま、ぜひお願いいたします!」

ゼーブランドの妻ジアネッタも懇願する。


「何でもいたします。ダイダロス宮に突入し、皇帝陛下さま一族を捕らえるというような大それたことをお父さまに(そそのか)したのは、私の夫であるドアングレームですが、この子に罪はありません。なんとか生きていくための生活費を稼がせてください!」

乳飲み子を抱えた長女のアロイーズも必死な表情で懇願する。


「私も何でもやります。乳しぼりでも、セカボの刈入れでも!」

母親似で、美しい次女のミルイーズ。聡明そうな目が特徴的だ。

「オレも朝早くから農作業をします!」

長男のオリュー。年は20代(なか)ばくらい。

ゼーブランドが若かった頃は、きっとこんな感じだったのだろう。


「私もがんばります!」

オリューの若い妻レティロア。庭で遊んでいた二人の子どもの母親だろう。

「ボクも教育係のベルナムさん要りません。そして働きます!」

ゼーブランド家でもっとも若いレシュラン。年は12か13歳くらい。



 あ――、もう面倒くさいなぁ。

私が雇わないって言ったら、アングルスト国か、ベルミンジャン国、またはボロツク国へでも行くんだろうか?

乳飲み子と幼い子どもを連れて、旅費も食べ物も着替えの服もなく?

どうやって何ヶ月もかかる長旅をするのよ?

途中で子どもが病気になったりしたら、どうするのよ?


「あ――、もう面倒っ... みんなまとめて見ることにするわ!」

思わず口に出たので、“面倒見ることにする”と言ってしまった(汗)!


ゲラルド侯爵さまとイクゼルさま、それにペンナス伯爵夫妻がホッとしたのがわかった。

ペンナス伯爵さまが、「えっ?」と言うような表情を一瞬し、ゲラルド侯爵さまは「うむ!」とうなずき、イクゼルさまとフロルフさまは、おたがい目を合わせにっこりし、私の部下たちは唖然とした?


「おお!感謝いたします、ゲネンドル伯爵殿!」

「一生、このご恩は忘れません!」

「一生懸命に働きます!」

「昼夜を厭わずご奉仕いたします」

「決してご期待を裏切りません!」

「私もがんばります」

「ボクも仕事をします...」


「レシュランは、学校に行くこと!」

「え?」

私の言葉に、レシュランが目を丸くした。

「おお!」

「ありがとうございます... ううう...」

ジアネッタが顔を覆って泣き出した。

「お母さま、よかったですね」

アロイーズがジアネッタの背をさすっている。


「私は、怠け者は嫌いです。だけど、子どもをこき使おうとは思ってない!」

「.........」

「.........」

「.........」

「.........」



私の新たな使用人となったゼーブランド家の者たちが、新たな領主となった私を見つめている。


「私は、魔王国で重要な仕事をしています。なので、ここには頻繁に来ることは出来ないでしょう。ですので、今日、ここに暫定的な管理人を置いて行きます」

「おお!」

「え?」

「早っ!」

「!」

みんな驚いている。


ゼーブランド家の者たちは、私とゲラルド侯爵夫妻とペンナス伯爵夫妻しか知らない(あとは紹介してない)が、ゲラルド侯爵夫妻とペンナス伯爵夫妻たちは、私が誰を暫定的管理人に選んで置いて行くのか興味津々といった顔で私を見ていた。


「その暫定的管理人は、このリンド君です」

そう言うと、私は入口近くの壁に寄りかかって、ウッツラウッツラ船を漕いでいた護衛君を指さした。


オオオオオオ―――…!


ゲラルド侯爵夫妻とペンナス伯爵夫妻たちが驚きの声を出した。


護衛君は、みんなの驚いた声でハッと目を覚まし、剣の柄を握って周りを見た。

何も起こってないが、みんなが彼を注視しているのに戸惑っている。


「彼は、私がとても信用する者で...」

私が突然褒め始めたので、一瞬キョトンとしたが、すぐに顔が赤くなった。


「私が魔都にいる間、この屋敷と領地の管理をまかせるに相応しい者です」

「え? 何ですか、その、屋敷と領地の管理をまかせるって、伯爵さま?」

「あら、聞いた通りよ。正式な管理者を任命するまで、あなたがここに居残って領地や農園、屋敷を管理するのよ。もちろん、使用人たちもね」


「えっ、えっ、えええ―――っ?そんな話し聞いていません!」

「今聞いているじゃない?」

「しかし、ボクは伯爵さまの護衛...」

「これは、あなたの雇用主としての私の命令よ。聞けないと言うのなら、ここに放り出していくわよ?ここからだと魔都まで行くのには最低でも半年かかるでしょうね」

「えっ? それは、困ります。ボクは生涯、伯爵さまを...」

「生涯、私に仕えるつもり? なら、命令に従いなさい」

「は...はい」

返事をしてうなだれてしまった。


リンド君は、私のムチャな要求を飲むしかなかった。

ゲラルド侯爵夫妻やペンナス伯爵夫妻が、今にも吹き出しそうになって必死に笑いを堪えていた。

でも、リンド君のあのセリフはなによ?

“ボクは生涯、伯爵さまを...”って言ってたけど、護衛すると言いたかったわけじゃないよね?

“伯爵さまの護衛”って、その前に言っているし。

何が言いたかったのかな? ま、いいや、どうせ大したことじゃないだろうし。



 一応、ゼーブランド家一家の身の振り方も決まったので、ゼーブランド家のみんなには退席してもらって、魔都からみんなが持って来た軽食弁当を食べながら、フローリナちゃんとロニアちゃんたちにゼーブランド家の者のそれぞれが相応しいと思う役割を聞くことにしたのだ。

 観察眼の鋭い彼女たちなら、私とゼーブランド家一家の話し合いの時の様子から、それぞれに適当な役割など考えてくれるだろう。


 この屋敷には、ゼーブランド家の7人(子ども含まず)のほか、20人の使用人がいるとオーマルさんが言っていた。あ、オーマルと言うのはゼーブランド元伯爵の名前だ。ゼーブランドは家名。

 オーマルさんは、伯爵であり、師団長までやった男だ。

もし、素質があり、領主である私に隠れて私腹を肥やそうなどと考えなてないのなら、管理人に任命してやってもいい。彼なら領地のことをよく知っているだろうから。


 オーマルさんに、娘婿であったドアングレーム男爵のことを参考まで聞いてみたけど、ドアングレーム男爵は逮捕されたあと、憲兵師団本部で憲兵師団長直々の取り調べを受けていたことまでは分かっているけど、そのあとは消息不明だそうだ。

「これは推測ですが...おそらく、憲兵師団本部の地下牢で死刑にされたのだと思います...娘のアロイーズも二度とドアングレームに会いないと覚悟を決めているようです。不憫なのは孫のミアです...」

あれだけの大罪- 反乱、政府転覆、皇帝一族拉致・監禁という犯した張本人なのだ。

西ディアローム帝国の愛国者によって、懲罰されたと考えても不思議はない。 



「私から、アリシア伯爵の領地の使用人の人事に口を挟むのは差し出がましいと思うが、一応、使用人全員を面接して、最低限必要で資質のあると思う者だけを残したらどうですか?」

ゲラルド侯爵さまの助言にしたがい、昼食後に使用人を一人ずつ面接することにした。


ゼーブランド家の7人にプラス20人って、どう考えても使用人の数多すぎるよね?

ほかにも、町の警備や外敵から町を守る役目の警備兵が30人近くいるという。

これらは、元兵士だった者たちや腕に自慢のある町人などで、ゼーブランド伯爵の父親、つまり先代伯爵といっしょに戦ったことのある者たちで構成されているそう。


「家令をやっておりましたボイロンと申します メエ」

五十代と見られるカプラニディオ族(ヤギ人族)の男。


家令と言えば、全ての使用人の長であり、領主の領地の管理をする。

農地を借地人たちに貸し、借地料を徴収し、借地人同士の間の争いを調停し、領地の収支の細かい記録を保管するという重要な役目を果たすのだけど、長年赤字続きの領地の経営、どんな風に管理していたのだろう?


「執事をやっておりましたドッテンマイアです。館の管理と男性使用人の管理をやっておりました」

ボヴィニディオス族(牛人族)の堂々とした体格の執事。ふうむ。家令に執事、どちらか一人でいいよね?


「ジアネッタ大奥さまのレディーズ・メイドを務めておりましたディリアと申します」

カニスディオ族(イヌ人族)の女性。レディース・メイド、ここではいらないね。


「アロイーズさまのレディーズ・メイドを務めておりましたドロッテアと申します」

この人もいらない。


「ミルイーズさまのレディーズ・メイドを務めておりましたクロリーゼと申します」

同じく、いらない。


「オリューさまの侍従をしておりましたゾルドムと申します」

いらない。


「レティロア奥さまのレディースメイドをしていましたクレリッタと申します」

いらない。


「レシュランお坊ちゃまの教育係のベルナムでございます」

学校行くからいらない。


「ゾンゴと申します。庭の手入れや、屋敷の補修などをやっております。キャッ キャッ!」

屋敷に着いた時、木の枝を切っていたシミディオ(サル人族)の男だ。

この人は必要ね。



 結局、2時間ほどかかって使用人全員の面接を終えた。

残ってもらうことになったのは、メイド長1人、メイド4人、料理人1人、料理助手3人、従僕3人の10人だ。御者や馬丁も解雇し、皿洗い女中、洗濯女中も解雇。彼らの分は、メイドや従僕にやってもらうことにする。仕事の細分化、極端な役割分類は労力とお金の無駄だ。


 この方法で働くのがイヤなら、辞めればいい。働きたい者は何人でも要るのだ。

ただ、急に解雇しても困るだろうから、一ヶ月の猶予をやることにした。

その間にほかの仕事などを見つければいい。屋敷などで働き口が見つからなかったら、農村で働けばいい。


 ゼーブランド家の者たちはどうするかって?

一応、屋敷の掃除とか料理の手伝いとか、屋敷の補修、馬の世話とかやってもらっていて、魔都に帰ってから、誰か信頼できる者を見つけて観察人として送りこんでから、よく観察してもらったあとで最終的にどんな仕事をやらせるか決めるつもり。


 ちなみに、次女のミルイーズは、かなり気が利くみたいだから魔都へ連れて行って、私の屋敷の方で何か仕事をやらせるつもり。私も伯爵になったので、使用人も増やさなければならないから、ちょうどいい。

 って、本当の理由は、屋敷の住人が増えたからだ。

輔祭(ほさい)()たち6人にフローリナちゃんを咥えると宿泊人が7人になったからね。やはりここは使用人を増やさないと、メイドのキナラさんとイムラさんが仕事が多すぎるって文句を言い出すだろうから。



 面接がようやく終わり、ジアネッタさんとアロイーズさんがメイドに言って持って来させたお茶を飲んでから、さすがに眠くなってしばらくウトウトした。

 周りが騒がしくなったので目が覚め、廊下に出て見ると若い農業技術者たちとハリジさんたち魔術師が帰って来ていた。

 イクゼルさまとフロルフさんが、ジアネッタさんとアロイーズさんにお腹を空かして帰って来た若い農業技術者たちとハリジさんたち魔術師のために昼食を用意するように頼もうって話していたら、それを聞きつけたジアネッタさんが、「急いで20人分の軽食を作るように厨房に伝えて!」とメイドに命令して、メイドの方も「承知しました、大奥さま」なんて返事していた。


 あー、これよくないわね。

私たちがお弁当を食べたあとも、「お茶を淹れてくれるようにたのみましょう」と私が言ったのを聞きつけたアロイーズさんが、「早くお客さまの分のお茶を用意して!」とメイドに命令していたし。


 こういうクセって中々抜けないのよね。使用人たちも、服装こそ以前のような貴族っぽい服を着てなくても、長年仕えて来たご主人さまや奥さまの命令には忠実だし。

 たとえ、もう貴族ではなく、雇い主でもないとわかっていても、長年染みついた習慣って一朝一夕に変えることが出来ないのよね。これ、何んとかしなくちゃ。少なくとも、この館の中には置いておかない方がいいみたい。


 若い農業技術者たちは昼食が出来上がるのを待たずに、広間でゲラルド侯爵さまに地図を広げて見せていた。

「領地の北部は、山岳地帯でほとんど手つかずとなっています。山岳地帯は水源となって、いくつもの川が中央部の盆地や平野に流れこんでいますが、盆地はほんの少ししか開拓されていません」


「領地の南部は、起伏に富んだ丘陵地帯と低山に囲まれた平野部で占められています。平野部はオロタウル山脈から流れて来る川がいくつも通っていて、農耕にも放牧にも向いていると言えます。また、隣接する△△△公爵領を通るとメジアグロス海の西端アンドューネ湾に出れます」


「西は平原が広がり、西進するにつれ標高が増し最西部は標高2600メートルのズデーネン山脈となっています」


「東部は隣接する〇〇〇子爵領との境界にダウモール川が流れており、それにそって肥沃な河川流域があり、昔から農業が盛んですが、近年は、冷害、水害、それに最近数年間におよぶ元領主の搾取に疲れた農民たちの多くは領地から逃げ出し、残った者はわずかで働く意欲もなくしています」


 農業技師たちの報告を聞いたゲラルド侯爵さまは、ゼーブランド家の家令をやっていたカプラニディオ族(ヤギ人族)のボイロンさんを呼ぶと、領地内の借地人の数と農民- 実際は農奴なのだが- の人数や、各地域の農作物の種類と最近10年間の収穫量を聞いた。

 ボイロンさんは、「メエ。少々お待ちください。帳簿を持って来ます」と言って駆けもどり、しばらくすると両腕に10冊の分厚い帳簿を持ってもどって来た。



「メエ ゼーブランド伯爵さまの領地は メエっ、失礼しました。ゲネンドル伯爵さまの領地は1万平方キロメートルありまして、昨年末の耕作地面積は11万3750ヘクタール、休耕地面積は6万250ヘクタールとなっております。メエ」

「想像以上に耕作地が少ないですね。それで、農民は現在どれほどいるのですか?それと非農耕従事者の人数もわかったら教えてください」

ゲラルド侯爵さまが、耕作面積を聞いて驚き、耕作をする農民の人口を訊いた。

家令相手にも、丁寧な口ぶりのゲラルド侯爵さまだ。


「メエ はい、領土民は40万5千800人でございまして、内、農村人口は 30万9千730人。非農耕従事者の人数は... おおよそ1万5千人ほどでございます」

「領民の数が少なすぎる... それで、非農耕従事者の人数がおおよそ5千人と言うのは?」

「はい。非農耕従事者は、領地の不景気が長年続いておりまして メエ。 それでまことに残念ながら、5060年の大冷害で食料不足から餓死する農民が出まして... 

それからも、ゼーブランド家の財政を少しでも改善すべく、税の取り立てを少々厳しくしまして。それで、領地から逃げ出す農民続出しまして... 

結果として、町でお金を使う者も減り、商人たちや職人たちもほぼ毎月ほかの町へ移って行ったりしており、正確な数字を把握できてないのでございます。どうも申訳ございません。メエ」


「ふむ。ちょっと記録帳を見せていただけますか?10年間の人口の推移と農産物の生産量を比較したいので」

「メエ それでしたら、ゼーブランド殿の指示で、最近10年間の比較表を作成しております」

「おお、それは助かる!」



       ゼーブランド伯爵領主要農産物生産量

          挿絵(By みてみん)


アリシア伯爵領の農作物の収穫を書くのにちょっと手間がかかりました。

少々凝り性なので、できるだけリアルに書くように心がけていますが、調べるのに一苦労しました。

小説の主人公が戦ったり、恋をしたり、冒険をしたりなど書くのは(内容が面白い、面白くなくは別として)比較的簡単なんですけど、小説にリアル性をもたらせるのが好きなので、中世~近世ヨーロッパの農村とか人口とか農産物の収穫量(ha/トン)とか耕作/休耕面積とか... メチャ調べました。


*なろうの『ファンタジー舞台設定のために、中世の農地面積を考えてみた』の感想欄の意見も大いに参考になりました。この欄でお礼を申し上げます。^^b

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