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ネコ耳❤アリシアの魔王城日記  作者: 独瓈夢
第三部 アリシア伯爵
88/316

第88章 アリシア伯爵、伯爵の陞爵祝賀会をする(前編)

伯爵に陞爵したアリシア、祝賀会を開催します。

 ゾドアンスロプルが陥落したと言う情報が、翌日の朝から魔都を駆け巡った。

おかげで、情報分析室からは、誰一人として国家公務員法違反者も国家機密と軍事機密法違反者も出さずにすんだ。


 それにしても、ゾドアンスロプルを一日で陥落させるって、魔王軍、どれだけ強いのよ?

それから比べたら、私の元母国ブレストピア国なんか、一ヶ月くらい魔軍と戦ったんだから褒めてあげなくちゃ。

 マデンキ《魔法式遠隔伝達器》からの極秘情報によると、魔王国の魔術師部隊の最強5人組- アンジェリーヌさま、ジョスリーヌさま、アイフィさま、ミカエラさま、それにヴァスマーヤさまが大活躍をされたようだ。

 そんな大変な中で、魔王さまが新しいオンナを作って、自分たちがのけ者にならないように懸命に努力していたのね。このネコ耳美少女伯爵さまの眠れる能力を覚醒させてまで!


 ゾドアンスロプルの陥落とゾオルに迫っていたベルミンジャン・アングルスト両軍も、ゾロワリン伯爵の10万の軍と魔術師部隊の投入で完膚なきまでに撃破され、ゾオルは安泰。 ドリアンスロゥプ皇帝もキャルニボル大統領もほっと安堵した。

 魔王国軍は、余勢を駆って二大トロール国攻略を同盟国と画策した。

情報分析室長として私が知りえた情報では、魔王さまはドヴェルグ国のドンゴ・ロス大王、鬼人王国のモモコ大王と三頭会談をマデンキ(魔法式映像音声送信機)で行い、次の条件で合意に達した。


 1‐ 東ディアローム帝国制圧の折りには、東ディアローム帝国の北西部一帯をドヴェルグ王国に割譲する。

 2‐ ベルミンジャン王国制圧の折りには、鬼人族国とボロツク公国でベルミンジャン王国の領土を折半して両国の領土とする。

 3‐ アングルスト帝国制圧の折りには、魔王国がアングルスト帝国の領土を魔王国の領土とする。


 テルースの歴史で後年『三巨頭会議』と呼ばれることになるこの会議では、外務省の極秘資料によれば、合意に達するまでにかなり侃侃諤諤の議論がドヴェルグ国と鬼人王国でなされたらしい。

 魔王はドヴェルグ国のドンゴ・ロス大王との交渉で、距離的にも遠いアングルスト帝国に領土をもつよりも、ドヴェルグ国にとって地続きの東ディアローム帝国の領土を併合した方が得だと説得し、ドンゴ・ロス大王は、大量の魔王国製武器と弾薬供給を見返りに合意を飲んだそうだ。


 一方、鬼人族国に侵攻していたアングルスト軍を破り、敗退させた鬼人族国は、大軍を投入してベルミンジャン王国に侵攻し、占領する作戦を立てた。

 モモコ大王も同国軍の侵攻作戦のために必要な大量の兵器と弾薬の供給を魔王さまに求め、魔王さまは鬼人族軍がベルミンジャン国をボロツク軍とともに侵攻・占領することを了承し、武器・弾薬供給にも応じる代わりに、魔王国がアングルスト国を占領後自国領とすることを認めさせたのだ。


 記録によれば、モモコ大王はかなり文句を言ったらしいが、鬼人族国とボロツク公国の軍事力だけでは、ボロツク公国を侵略したベルミンジャン軍と戦い、そのあとでベルミンジャン王国に侵攻し、占領するだけで手一杯となるため、アングルスト国にまで勢力を伸ばす余力がないことをモモコ大王も十王たちもよく知っていたので、鬼人族国軍部でかなり議論があったのちに魔王の提案が認められたようだ。



 魔王国軍がアングルスト帝国に侵攻する準備をしている間、しばらく余裕ができたので、少し遅れ気味となっていた伯爵陞爵(しょうしゃく)の祝賀会をすることにした。

 伯爵になったことで、年棒も上がり、子爵の金貨500枚から金貨800枚となり、年末手当も金貨100枚から金貨150枚に増えた。

 貴族バンザイだ。それはそうと、西ディアローム帝国の田舎にもらった領地の方も何とかしないと。

どうするかは、一応考えてはいるんだけどね。戦争騒ぎでドタバタしていたから、プリシルさまにもお伺いするのを躊躇していたけど、アングルスト国への侵攻が始まるまで、たぶん一ヶ月か二ヵ月ほど準備がかかるはずだから、その間にできるだけの事はしておこうと思う。


 祝賀会は、屋敷でやることにした。

前回は魔宮殿にある多目的部屋をお借りしたんだけど、大きな屋敷をもらっておきながら、屋敷でやらないという手はない。

 前回は50人くらい参加したけど、今回はその倍以上来るだろう。

いや、情報分析室の連中が来たら、倍ではすまないかも知れない。くれぐれも食べものや飲み物が不足しなようにしないと。伯爵陞爵(しょうしゃく)の祝賀会に行ったけど、しょぼかったなんて噂が立ったら、目も当てられない。


 で今回の祝賀会は、前回同様立ち食い式にした。

立ち食い式は、参加者が自由に会場内を歩いて好きな人とお話できるという利点がある。

それに、立ち食い式祝賀会とか誕生会とかは、ふつうに魔王城で行われているので、たとえ魔王さまやアマンダさまたちをお招きしても問題ない。


 それで肝心の料理は、前回の子爵になった時とほぼ同じだ(汗)。

ゆで玉子を刻んで調味料を加えてパンの間にはさんだもの、ブタモモ肉燻製の薄切りと葉野菜をパンにはさんだもの。それに酢漬けのペポノスと燻製ソーセージの輪切りをパンにはさんだものと言う三種類の軽食だ。この軽食は、去年のピクニックの時に魔王さまも気にいってくれたものだ。

 それに前回好評だったブレストピアの代表的郷土料理、バッカラウレの揚げ物も用意した。

これは、塩漬けにして干したバッカラウレという魚を水でもどして細くほぐしたバッカラウレに、玉ネギ、極細に切ったイモを混ぜ、卵でとじたものを油で揚げた料理で、ご飯のおかずによし、酒の肴のよしと言う万能料理だ。

 これだけでは足りないだろうから、マル秘料理も用意しておいた。

このマル秘料理は、みんなの度肝を抜くはずよ。うふふ。みんなの驚く顔が今から楽しみ!


 

 第六曜日の午前12時― 


 招待客たちが、次々に到着しはじめた。

最初に来たのは、ザロッケン君たち10人のガバロス親衛隊。

ダイダロス宮でドリアンスロゥプ皇帝夫妻を救出するのに大活躍した10人だ。

 ザロッケン君は、あの時の功績が認められ、デクリオン(十人隊長)からセンチュリオン(百人隊長)に昇級した。副デクリオン(十人隊長)だったロミッケン君も副センチュリオン(百人隊長)に昇級し、ほかの8人はそれぞれデクリオン(十人隊長)になっていた。


「ガガア。今日ハ オ招キ いただキ あリガトとウ ごザイまス!」  

「ガガア。あリシあ伯爵さマ 今日ハ オ招キ あリガトとウ ごザイまス!」 

礼服をカッコよく着こなしたザロッケン君とロミッケン君が、あいさつをする。

 二人とも見目麗しい(?)ガバロス娘を連れていた。

いや、?を入れたのは、私はガバロスの美的感覚がまったくわからないからだ。

ガバロスってコボルト種族で、犬のような顔に尖った高い耳、筋骨隆々で太いシッポがある。

 つまり、カニスディオ族(イヌ人族)の美的基準で美男美女を判定したらいいのか、ヴァナグリー並みに怪物と見なして美男美女(?)判定をしたらいいのかわからないのよね。

 とにかく、二人のガバロス娘は、おムネが私の頭くらいあり、ザロッケン君たちに負けないくらい腕脚に筋肉がついているのが服越しにもわかった。

  

「コレ、おレの恋人のルミシャラでス!」

ザロッケン君が顔を赤くして紹介してくれた。

「ルミシャラです。伯爵さま、よろしくお願いします」

続いて、ロミッケン君が連れのガバロス娘を紹介する。

「オレが今ツキあってイル()デス。マルリシャラ言イます」

「マルリシャラでーす。ステキなお家ですね!」

なに、この()ら?

発音、ザロッケン君たちよりいいんだけど?


「あなたたち、ザロッケン君やロミッケン君より会話上手じゃない?」

「はい。二人ともガバロス親衛隊の秘書室に務めているので、必要性から会話が上手になったんです」

「そうですよ。それに、お母さんが、魔王さまたちには大変お世話になったから、ガバロス族は子々孫々まで魔王さま一族への恩を忘れてはなりませんって言ってね。子どもの時からエルフ語と獣人族語を徹底的に教えられたんですよ」

「え... あなたち、ガバロス族の有力者の娘さん?」

「はい。私のパパはアーレリュンケンです。ママは、ラクジャナです」

「私のパパは グシッケン。アーレリュンケンの2番目の弟で、ママはサエジャナでーす」

「えっ、アーレリュンケンさんって、ガバロス親衛隊のボスじゃないの?」

レクスレギオン(親衛師団)長やっています!」

「私のパパは副レクスレギオン(親衛師団)長でーす!」


 その時、ミンタちゃんが走って来た。

彼女には、貴賓室の近くで待機してもらっていた。

魔王さまが現れたら、すぐに応対出来るようにだ。


「ちょっと失礼するわね。魔王さまがお見えになられたようだから」

「は、はいっ」

「魔王さま?キャーっ、お会いしたかったんだ――っ!」

ルミシャラちゃんは緊張したみたいだけど、マルリシャラちゃんは、何だかこれから有名舞台俳優に会うみたいに興奮している?


 私が足早にミンタちゃんを連れて貴賓室に向かうと、何とルミシャラちゃんとマルリシャラちゃんがついて来るじゃない?ザロッケン君とロミッケン君もついて来る?


 貴賓室まで行くと、ドアのところにロニアちゃんが立っていた。

「室長さま、魔王さまと王妃さまたちが中におられます」

ロニアちゃんも緊張していた。

彼女も魔王さまにお会いするのは初めてなのだ。


「魔王さま、王妃のみなさま、ようこそいらっしゃいました」

挨拶をしながら、貴賓室に入る。

中では魔王さまがゆったりと椅子に座って、前の椅子に座っているフローリナちゃんとにこやかなに話していた。


「おお。ネコ、いや、アリシア伯爵、今日は招いてくれて感謝する」

「いえいえ。魔王さまを始め、みなさまご多忙でしたので遅れてしまいました」

「無理もない。だが、あと少しの辛抱だ。次の作戦でテルースの世界の情勢は一変するだろう」

「はい。情報分析室も、引き続き情報収集および分析に力を入れて参ります」

「まあ今日は伯爵の陞爵(しょうしゃく)祝いだ。戦いや仕事の話は抜きにして祝おうではないか!」

「はい」

「ところで、今までキャルニボル大統領のお嬢さんと話をしていたのだが、プリシルからの報告によるとかなり優秀だとおまえが言っていたと聞いた」

「はい。さすが一流の政治家である大統領をお父さまをに持たれているだけあって、各国の情勢にもよく通じていますし、語学の才能もずば抜けています」


 魔王さまが立ち上がったので、私はドアへ向かった。

魔王さまの後ろには、アマンダさまたち魔王妃とアンジェリーヌさま、ジョスリーヌさま、まだ小さなシャミアちゃんの手を引いたソフィエッタさま、アイフィさま、ミカエラさま、ルナレイラお義姉(ねえ)さまなど20人の王妃さまたちが続く。

 あれっ、最後尾に私と同じフェリノディオ族(ネコ人族)の女の子がいたわ?

誰だろう、あの()?アンジェリーヌさまたちといっしょにいるってことは、魔王さまの新しい王妃さま?


廊下に出ると、そこにはザロッケン君とルミシャラちゃん、ロミッケン君とマルリシャラちゃんがいて、廊下に出てきた魔王さまに最敬礼をした。

「おう、親衛隊のザロッケンとロミッケンか!」

ガア(はっ)!」

ガア(はっ)!」

「そちらの美しい娘さんたちは?」

さすが魔王さま、そつなくガバロス娘たちを美人と褒めた。


「魔王さマ、おレの恋人のルミシャラでス!」

ザロッケン君が、緊張しながらも顔を赤くして紹介した。

「ルミシャラです。アーレリュンケンとラクジャナの娘です」

続いて、ロミッケン君が連れのガバロス娘を紹介する。

「オレが、ツキあってイル()デス。マルリシャラ言イます」

「マルリシャラですっ。グシッケンとサエジャナの娘です!」

「おお!レクスレギオン(親衛師団)長のアーレリュンケンとラクジャナの娘と娘と副レクスレギオン(親衛師団)長のグシッケンとサエジャナの娘か!」

「はいっ」

「はーい」


 私たちは大広間の横を通り、エントランスを通って玄関に出る。

「そうか。こんなに大きな、それも美人の娘たちがいたとは知らなかった。それで、ザロッケンとロミッケンは、それぞれセンチュリオン(百人隊長)と副センチュリオン(百人隊長)になったのを機に、結婚をするのかね?」

「ハ、ハい!明日にもアーレリュンケンレクスレギオン(親衛師団)長とラクジャナを訪問し、ルミシャラとノ 婚約ヲ承認シて モらウつもリでス!」

「やだー、ロミッケン。まだそこまで行ってないじゃん!」

「オレたチは、マだ付き合イはじめタ ばかリなのデ...」

ロミッケン君、何だか歯切れが悪い。

ふうむ。察するところ、ルミシャラちゃん、ロミッケン君が婚約をしようと言っていんだけど、そこまで気持ちが固まってないって言っているみたい。


 玄関を出て、大きなテントが張られている庭に出た。

すでに大勢の招待客がいた。ギャストン伯爵夫妻、スティルヴィッシュ伯爵夫妻、 ペンナス伯爵夫妻、ゲラルド夫妻、ダルドフェル伯爵夫妻、リンジーアム伯爵夫妻など魔王国の大臣たちや情報分析室のみんな、それにエイルファちゃん、エリゼッテちゃんなどがいて、私が魔王さまと王妃さまたちを先導して玄関から出ると、一斉に最敬礼をした。


 って、マイレィちゃんもビアたち研修生といっしょにいるよ?

まあ、彼女は魔王さまの娘で王女だけど、公式の場では王であるパパに敬意を表さなければならないもんね。

 今回は、祝賀会を家でやることにしたので、屋敷ご披露の時に招待したご近所さんたちも招待した。近所付き合いって大事だもんね。ご近所さんって、ほぼ百パーセント政府高官とか貴族なので、魔王さまのお顔は見たことはあるだろうけど、こんなに近くで見る機会は屋敷ご披露の時以来なので、みんな感激している?


 その時― 

家の中で、また誰か新しい賓客が通り道(ゲート)を使って現れないかと待機していたミンタちゃんが、慌てて玄関から走り出て来た。


「室長、あ、室長じゃないアリシア伯爵さま――っ、怖そうな鬼さんがゾロゾロ貴賓室に現れました――っ!」

「えっ、怖そうな鬼さんがゾロゾロって...?」

みんなが、玄関の方を見ると、玄関からバ――っと飛び出した鬼は― 


 先端に刀身が反った大きな刃がついている槍のような武器をもった若い鬼人族だった。

それもかなりの美女だ。その美女鬼人族は、がっしりと筋肉がついた鍛え上げられた身体をもっていることが、軍服越しでもわかる。

 着ている軍服は、黒に金の肩章と金色ボタンのついたジャケットに黒のピッタリしたロングパンツ、そしてひざまである黒長靴で、ロングパンツとジャケットの袖には赤いラインが入っていて中々ファッショナブルだ。

 ショートカットの青い髪、爛々と光る緑色の目で鋭くあたりを見回している。


「フィア・ベンケーちゃんじゃない?」

「ムっ!おお、アリシア子爵じゃない、伯爵になったのだったな!」

「あなたも来てくれたの?」

「いや、ソフィアは私の護衛として来たんだ!」

ソフィアちゃんに続いて現れた二人の鬼人族護衛のあとから、金ぴかの豪華な衣装に包まれ、派手な赤いマントを翻して現れたのは、モモコ大王さまだった!

「アリシア伯爵、水臭いではないか?おまえが、成人式を迎えた時は、閻羅宮(えんらぐう)の冥界の間で舞踏会まで開いてやったのに?」

なんだか、モモコ大王さま、駄々をこねている感じ?


「どうも申訳ありません。戦争中でもあり、陞爵(しょうしゃく)祝賀会は私的な祝いなので...」

「まあ、いい。私とルークとおまえの仲だ。私たちの分の酒と食い物もあるんだろうな?」

「あ、食べ物もお酒も十分にあります。どうぞ、どうぞ!」

モモコ大王さま、魔王さまを名前で呼んでいる(汗)。

モモコ大王さまの前後を守っている護衛は、泣く子も黙る鬼人族国の突撃隊だ。

20人ほどの突撃隊が、ドカドカと庭にやって来た。


 ソフィアちゃんは、魔王さまとアマンダさまを見ると「ふん!」と鼻を鳴らした。

アマンダさまも腰の剣の柄を手で叩いて威嚇する。バチバチっと二人の目から火花が散る。

 天道宮の地獄温泉での一件以来、ソフィアちゃんは魔王さまとアマンダさまを好ましく思ってないようだ。

まあ、あの時は魔王さまが、魔王国で評判のスイーツとやらをソフィアちゃんたち突撃隊に提供することで不戦協定を締結したはずなんだけどね。


 それにしても、これで150人を超えるよ?

ま、マル秘料理もあるから、だいじょうぶだと思うけどね。


 魔王さまの横にいたアマンダさまとリリスさまの間に割りこんだモモコ大王さまは、魔王さまといっしょに葡萄酒をゴクゴクと飲みはじめた。

 いや、これは書き方がマズい。魔王さまは葡萄酒をゴクゴクと飲んだりしないよ。ゴクゴク飲んでいるのは、酒豪として名高い鬼人族を統べるモモコ大王さまだ。

「おっ、何だ、このうまそうな匂いは?」

水を飲むように、数杯の葡萄酒を飲んだモモコ大王さまが、鼻をくんくんさせた。



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