第79章 アリシア子爵の皇帝救出作戦②
ドドドドドドドドド………
地響きを立ててダイダロス宮に向かうガバロス親衛隊を見て、パンディーオーン宮の衛兵たちは腰を抜かして這って逃げ出した。
先頭を行くザロッケン君の後ろには、道案内役のフローリナさんが乗っていた。
「そこを右に曲がって!」
「ガア!」
通路を右に曲がり、しばらく行くと立派な厩舎が見えた。
「厩舎の裏に回って」
「ガア!」
「厩舎の裏に積んである枯草を除けさせて!」
「ガア!」
厩舎の裏の軒下にあった馬の飼料らしい枯草の山を、ヴァナグリーが強い前足で払いのけると、地面に両開きの扉が現れた。
「そこが入口よ!」
バシ―――ン!
ザロッケン君の乗ったヴァナグリーのシッポの一撃で扉がふっ飛んだ。
そして階段が現れた。
「トンネルを直進して、三本の分かれ道にたどり着いたら、左端を進むのよ!」
「ガア!」
ドドドドドドドドド………
地響きを立ててガバロス親衛隊がトンネルに走りこむ。
かなり広い地下通路を5分ほど走ると、先ほどフローリナさんが言った分かれ道に突き当り、迷わずに左の通路を進む。
通路は次第に上へ向かって傾斜し、階段にたどり着いた。
「階段を上がれば、ダイダロス宮の後宮よ。ふだんなら男性の立ち入り禁止だけど、緊急事態だから皇帝陛下もお赦しくださるでしょう」
「ガア!」
ドカドカドカドカドカドカ………
30段ほどの階段を上がり切ったところで、フローリナさんはヴァナグリーから降りて、扉を引いた。
そこには広い衣類収納室だった。煌びやかな衣装や豪華なマントなどが数え切れないほどある。
出口が低いのでガバロス親衛隊は、ヴァナグリーから降りて出口から出る。
「室長さま...」
ロニアちゃんが、何やら困ったような顔をしてそっと呼びかけた。
ザロッケン君は、部下に命じて廊下の様子を探らせている。
「なに?」
「あの... わたし... 漏らしてしまいましたの」
「ああ。オシッコ漏らしたのね?」
「し、室長さま!」
ロニアが真っ赤になる。
見ると、ロニアちゃんを乗せて来たオス・ヴァナグリーが目を細めてクンクン自分の背中を嗅いでいる?
「なにをロニアは言っているの?こんなバケモノに乗って走ったら、誰でも漏らすわよ!」
アマラちゃん得意げに自分のパンツを見せている。
そこは、たしかに少し染みがあった(汗)。
「皇帝と皇后がいる部屋は、図書の間よ。だけど、そこへ行くためには、反乱軍の兵と反乱軍に同調する市民によって占領されている中庭と儀式広間にいる敵と戦わなければならないわ」
マイレィちゃんの予知能力ってスゴすぎない?
敵の位置や人数までわかっちゃうなんて?
「ガア! ソレデ 敵ハ 何人イルカ ワカリマスカ? 王女サマ?」
「ざっと見て、中庭と儀式広間あたりには200人くらいよ。宮殿のほかの場所にも400人くらいいるわ」
「外には?」
「外には、3千人くらいいるわ」
「レオニディオ近衛騎兵は、どうなっていますか?」
フローリナさんが、宮殿の衛兵の状況を訊く。
「戦っている近衛兵もいるけど、ほとんどがすでに武装解除されて、見張りがつけられて礼拝堂とか広間とかに閉じこめられているわ」
「その... あの...」
「あなたのお父さまの安否ね?」
「はい」
「無事よ。大統領執務室に側近や兵士30人ほどと立てこもって戦っているわ」
「ホッ!」
「でも、反乱軍は痺れを切らせて、突入することを検討しているわ」
「えっ...」
「よし。では、今から作戦を立てるわ」
「作戦?」
「ガア?サクセン?」
私の言葉にフローリナさんとザロッケン君が首をかしげる。
私は興味津々な顔をしているみんなに、救出作戦を説明した。
「リンド君は、フローリナさんに案内してもらって、副デクリオンのロミッケン君と親衛隊4人を連れて、礼拝堂に閉じこめられている近衛騎兵を解放し、武装させてから、そのまま大統領を救出に向かって」
「わかりました」
「ガア!」「ガア!」「ガア!」「ガア!」
「ザロッケン君と親衛隊4人は、私といっしょに広間に閉じこめられている近衛兵を解放して、これも武装させた上で皇帝陛下と皇后陛下をお救いする!」
「ガア!」
「ガア!」「ガア!」「ガア!」
「わたしたちは?」
「ロニアちゃんとアマラちゃんは、私といっしょ!」
「私は?」
「マイレィちゃんも当然私といっしょよ!」
「じゃあ、みんないいわね。今からドリアンスロゥプ皇帝陛下とジャブイ皇后陛下、それにキャルニボル大統領救出作戦を開始するわ!」
「「「「は――い!」」」」
フローリナさん、ロニアちゃんとアマラちゃんとマイレィちゃんがこぶしを上げ
「「「「「「「「「ガ――――ア!」」」」」」」」」
ガバロス親衛隊が剣や槍を上げ
グワルルルルルル―――――ッ!
ヴァナグリーの吼え声がダイダロス宮に響き渡った。
「手向かうヤツには容赦しないでっ!生き残るか死ぬかの決死作戦よ!」
広い衣類収納室を出る前に、最後の注意をみんなにした。
「はい...」
「はい」
ロニアちゃんは消極的な返事。
アマラちゃんは元気な返事。
フローリナさんは、無言で剣の柄をしっかりと握った。
マイレィちゃんは無言だったけど、キっとドアの方を見た。
「「「「「「「「「ガ―――――――ア!」」」」」」」」」
ガバロス親衛隊はふたたび剣や槍をかざし気勢を上げ
グワルルルルルル――――――――ッ!
ヴァナグリーの吼え声が、ふたたびダイダロス宮に響き渡った。
今回は、さらに力強く。
「行け―――っ!」
命令一下、ヴァナグリーは前足で衣類収納室のドアを蹴り破った。
ザロッケン君の背中に抱きつく形で私が乗り、その私に抱きつく形でマイレィちゃんが乗り、廊下へ飛び出す。
「ガ――――アアア!」
ザロッケン君のヴァナグリーが吼え
「「「「「「「「ガ――――――アアアアアア!」」」」」」」」
後ろから来るヴァナグリーたちも咆哮する。
ドドドドドドドドド………
広い廊下を突っ走り、十字路に出た。
真っすぐ行けば中庭へ向かい、左に行けば大統領官邸へと続く。
私は迷わず、ザロッケン君に直進させた。
リンド君たちの隊は、左に入った。
「リンド君、フローリナさん、ロミッケン君、武勲を祈るわ!」
別れて走って行くリンド君らに大声で叫んだ。
「子爵さまもご武運をっ!」
「皇后陛下と皇后陛下をお願いしますっ!」
「ガア――――――!」
ドドドドド………
ロミッケン隊は、すぐに見えなくなった。
あとは運を天に、いや、運をエタナールさまに任せるだけだ。
「そこのけ――っ、死にたくなかったらのけ―――っ!」
家宝の剣を片手に持ち、すごい形相で叫ぶ私を見て、こちらに向かっていた反乱軍と反乱軍に組する反乱市民たちが、悲鳴を上げながら逃げたり、廊下の端にうずくまったりする。
「アイツら、ヴァナグリーにビビっているわ!」
マイレィちゃんは、まるで自分がヴァナグリーを操っているかのように、グイグイと絶賛成長中のオッパイを私に押しつける。
私もマイレィちゃんに押されるので、控えめだけどふっくらとしているオッパイをザロッケン君の背中に押しつける。
ザロッケン君、感じているかな?
って...
ザロッケン君、胸と背中に甲冑を付けているので、この乙女の柔らかいおムネを感じなかかった(汗)。
「グワぁ!」
勇敢というか、無謀というか、槍を突き出して来た反乱軍の大きなカニスディオ族の兵士をヴァナグリーが前足の一撃で踏みつぶす。
ヴァナグリーの体は硬いウロコで覆われているので、刃物は通じない。
礼拝堂に近づくと、そこを見張っていた反乱兵士が尻尾を巻いて逃げ出した。
ガバロス親衛隊があとを追いかけ、たちまち血祭にする。
ヴァナグリーから降りて、礼拝堂の扉を開くと中には高官や貴族たち、それに50人ほどのレオニディオ近衛騎兵が閉じこめられていた。
「おお!救出の軍が... げげっ、バケモノっ...?」
走り寄って来たラポーゾディオ族の高官がのけぞる。
「魔王国のガバロス親衛隊です!」
「ガア!」
「あなたは、アリシア・ゲネンドル子爵さま!ガバロス親衛隊は、魔王国からプリシル王妃さまの護衛に来られたと言う方たちですね?」
セルヴィニディオス族の高官が、納得顔だ。
「はい!」
「これから皇帝陛下と皇后陛下をお助けに行きます。戦える者は、倒した敵の武器を取っていっしょに戦ってください!」
「わかりました」
「おおおおおお―――――!」
レオニディオ近衛騎兵たちが雄叫びを上げる。
「我々も戦おう!」
「そうだ、皇帝陛下に恩返しできるのは、この時をおいてない!」
「おおう!」
貴族や高官の中で腕に覚えのあるらしい者が叫ぶ。




