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ネコ耳❤アリシアの魔王城日記  作者: 独瓈夢
二部アリシア子爵
70/316

第70章 アリシア子爵、陰謀に加担する①

「すごい!」

「こんなところが総本山にあるなんて知らなかったわ!」

ロニアちゃんとアマラちゃんが、驚いている。


 そりゃ輔祭(ほさい)であった彼女たちが驚いているくらいだから、私もミカエラさまもマイレィちゃんも目を瞠っている。

 驚いていないのは、プリシルさまとアイフィさまだけだ。プリシルさまは見かけによらず、結構心臓に毛が生えているようなところがあるし、アイフィさまは神教官だから、すでにここに入ったことがあるのだろう。


「えっと... あと33分後に通り道(ゲート)が開きます」

アイフィさまが、腕時計を見てプリシルさまに告げた。


「そう。じゃあ、30分以内に、この一覧表に書かれている本や資料を閲覧室の中央にある大テーブルの上に運びましょう!」


 プリシルさまはバッグの中から人数分の紙を取り出すと、一枚ずつ私たちに渡した。

 その紙の上には、『アリシア子爵が揃える資料の一覧』と書かれており、その下にずらーっと書物の名前が並んでいた。すべて『神聖アールヴ文字』で!


「さあ、腕まくりして始めましょう!」

「はーい、ママ!」

プリシルさまとマイレィちゃんは、それぞれのバッグから、おそろいの花模様のエプロンを出して掛けた。

花模様のエプロン姿のマイレィちゃんは、元気よく返事をすると資料リストを手にタッタッタと駆けて行った。


「はい!」

「やりましょう」

「やるぞ!」


 アイフィさま、ミカエラさま、それにアレクもそれぞれ個性のあるエプロン姿で、駆け足で各自の持ち場(探す資料がある書架)へ向かった。アマラちゃんは、ミカエラさまの手伝いをするらしく、ミカエラさまについて行った。


 と言うことは... 

 ロニアちゃんが、“まだ始めないんですか?”みたいな顔で私を見ていた!

 そんな顔もカワイイ。

 今晩は、この顔を思い出して可愛がってあげよう(ニヤ)。


「アリシアちゃん、何をボヤボヤしているの?」

ヤバい、プリシルさまから催促だ。


「はーい、始めます、始めます!」

私とロニアちゃんもエプロン姿になった。

エプロン、料理のためじゃなかったんだ... 


 私たちの担当する書架は、60番だった。

 って、そこは、正しくは書架ではなく、保管庫の分室とでも言うべき部屋だった。だから、大神官は60番の書架って言わなかったんだ。


 『60番』と部屋の番号が入口の上に書かれているドアなしの部屋の中には、頑丈な分厚い木材で出来た棚が壁にそって取りつけられてあり、部屋の中には、がっしりした分厚いテーブルがあった。


 そして、それらの棚とテーブルの上には... 


 石板がどっさりあった!


「え?...」

「!」


 私は部屋中にある、埃をかぶった石板の山を見て棒立ちになった。

  ......... 

  ......... 


「アリシアちゃん、ぼーっとしていたら、30分で終わらないよ?」

山ほど本を抱えたマイレィちゃんが、入口から声をかけた。


「え、あ、そうだ。早く集めなきゃ!」

「はい!」


 それからの作業が大変だった。

 1キロの重量がある石板を抱えて、閲覧室のテーブルまで運ばなければならなかったからだ。


 目当ての石板を探す作業は、それほど難しいものではなかった。

 なぜなら、渡された一覧表には、小さな獣人文字で“入口の右から2番目の書架の三段目、右から3番目の石板全部”とか“入口から入って、左側2番目のテーブルの左から二列目の石板全部”などと詳しく書かれていたからだ。


 問題は、石板の重さだった。

 1枚の重さは1キロで、重さとしてはそれほどでもないけど、それを20枚抱えると20キロになる。

 だけど、こんな貴重な石板を20枚も重ねて運んでつまずいて転んだら大変なことになるので、10枚ずつ運ぶのだけど... 


 か弱い乙女に10キロって、けっこう重いのよね?

 1回運ぶだけならいいけど、5回、10回となると、けっこう腕とか腰とかに来るの。


 でも、何んとか期限の30分後には一覧表にあった石板をほぼ90パーセント、入口を入ってすぐにある広い部屋のテーブルの上に運ぶことができた。

 ほかのみんなも、決められた資料を集めたみたいで、10台あるテーブルの上は古書の山と石板の山だらけだった。もっとも、石板は重いので、テーブルが壊れる避けるためテーブルの上にはあまり置いてなく、ほとんど床に置いてあった。


 さて、これから、アイフィさま、ロニアちゃんとアマラちゃんの翻訳が始まるのかしら?

 だけど、誰も帳面も筆記具も用意してない?



 突然― 


 ジ…ジジジ…ジジジジ… 


 周囲の空気が震えるような音がしはじめた。


 この音は、ドコデモゲートが発動する時の音だ。

 

 すぐに部屋の壁際の空間に穴が開き、見覚えのある台座の上にドコデモボードが置いてある部屋が映し出された。魔王城内にあるドコデモゲート部屋だ。


 遠巻きにこちらを見ている怖い顔のバケモノ…


 じゃない、ガバロス親衛隊たちが見えた。


 あ、あの金髪の若い美女、ヴァスマーヤさんもいる。

 というか、ヴァスマーヤさんがドコデモボードに魔力を送っているんだ。


 ジ…ジジジ…ジジジジ… 


通り道(ゲート)、開きました!」


 アイフィさまの声に、ドカドカドカとガバロス親衛隊が、こちら側に入って来て石板や古文書を運びはじめた。どんどん運んで行って、5分もしないうちにテーブルの上も床も空になった。


「マイレィちゃん、オジロン大神官か衛兵が見回りに来ないか注意していてちょうだい!」

「はい、ママ」

プリシルさまは、足早にゲート(通り道)から向こう(魔王城)側に移動した。


 ミカエラさまとアレクが後を追うかのように向こう(魔王城)側に渡った。

「アリシアちゃん、見に行ってもいいのよ?ここは、わたしとマイレィちゃんで見ているから!」

アイフィさまのお言葉に甘えて、私とロニアちゃんも向こう(魔王城)側に移動した。


「こんにちは。ヴァスマーヤさん!」

「あら、アリシア子爵。こんにちは」

ヴァスマーヤさんが、にこやかに挨拶をする。


    *     *      *



 ヴァスマーヤさんは、魔王さまの王妃の一人で、アイフィさまから、ヴァスマーヤさんはアルドラルビダカ魔術学校出身の魔術師で、5年ほど前に起きた東ディアローム帝国とダユーネフ国、アジオニア国、テアスジム国による、魔王国壊滅作戦― テルースの世界史で『春の大攻勢』と記録されている戦いで、テアスジム軍の魔術師として魔王軍と戦った魔術師だと聞いた。


 『春の攻勢』において、敵は合計40万以上という想像を絶する兵力で、創立間もない魔王国に攻め入った。東ディアローム帝国とその傀儡国軍は、想像もしない戦略と早さでマビハミアン国とブレストピア国を征服した新興国『魔王国』の存在に脅威をおぼえ、魔王国がさらに力をつけるまえに潰すことを目的として侵略をしたんだけど、ドコデモボード、マデンキ(魔法式遠隔伝達器)、それに強力な魔術師部隊を抱えていた魔王国軍の敵ではなかった。


         春の大攻勢作戦図

  挿絵(By みてみん)


        テルースの世界地図(魔王国設立後)

   挿絵(By みてみん)



 ま、これは学校で歴史の時間に習ったことなんだけどね。

 ヴァスマーヤさんは、アルドラルビダカ魔術学校では並ぶ者がいないほどの天才魔術師だったそうで、今でもアイフィさま、ミカエラさま、アンジェリーヌさま、ジョスリーヌさまと並んで、魔王国の最強五魔術師と呼ばれている。


 『春の大攻勢』で、やはりアイフィさまやアンジェリーヌさまと戦って負け、負傷したらしいけど、厚く介抱されたあとで、彼女の美貌に惚れた魔王さまに見初められて14番目の王妃になられたんだって。

なので、順番的には15番目のルナレイラお義姉(ねえ)さまより先輩王妃ということになる。


 私?私は王妃じゃないし、王妃になるかどうか、今の時点ではわからない。

 まあ、王妃の中にはアレクさんみたいに、13歳とかで王妃になった()もいるし、プリシルさまとかリリスさまとかも15歳で王妃になられたと言ってたけど、私はそんなに若い年で王妃になんかなりなくない。

 もっと青春を謳歌したい。もっと若さを楽しみたいし、もっと色々な男を知りたい。

 いや、男を知りたいって、男性遍歴をしたいってことじゃないよ?もっと多くの男性を知りたいってこと。

 


    *     *      *



 向こう(魔王城)側に移動した私は、ドコデモゲート部屋を出たアレクさんが近くの部屋に入ったのを見て、私も続いてその部屋に入った。


 その部屋に入ったとたん、思わず眩しさで目を一瞬閉じた。


 あまりの眩しさに目を細く開けて見ると― 


 部屋の中は、異様なものだった。

 天井には数えきれないくらいの数の電灯が天井が見えないくらい- まあ、この表現は大げさだけど、数えきれないくらい付けられていた。

 部屋中を埋めるかのようにテーブルが置かれてあり、その上に古文書や石板が並べられていた。そして、青い作業服(スクラブ)を着たソントンプ研究所の若い研究者たちが、二人がかりで1メートルほどの箱を持ってテーブルの上を歩き回り、その奇妙な箱を石板や古文書の上に(かざ)すと―


「焦点はどうだ?」

「もうちょい上だ」

などと話しながら、何か箱の装置を操作している。


 カシャ!

 カシャ!


 奇妙な機械音が聴こえる。

 ソントンプ研究所の研究者たちは20人ほどいて、ワイワイ言いながらテーブルの上を移動して、1メートルほどの箱を運びながら作業をしていた。


「どうじゃ、よく撮れているか?」


 部屋の端の方から声が聴こえた。

 このしわがれた声は- そう、ソントンプ研究所の所長、トゥンシー大先生の声だ。


 私は狭いテーブルの間を通って、トゥンシー大先生のところに小走りで駆け寄った。


「大先生、こレは何をしているんですか?」

「おお、子爵さんか?これはな、わが研究所の最新発明、マシャコウキ(魔法式光写機)じゃよ!」

マシャコウキ(魔法式光写機)?」

「そうじゃ。マデンキ(魔法式遠隔伝達器)の原理を応用した魔法具で、この筒の先にあるレンズで物や景色が発する光、画像とワシらは呼んどるんじゃが、その画像の光を感じ取って記憶する魔法陣に取り入れる装置なんじゃ。あとで記憶した画像を印刷することもできるんじゃ」

「は...ぁ」


 チンプンカンプンで、よくわからない。


「大先生、最初の一枚です!」


 研究所のトム君と奥さんのメリッサさんが、部屋の中に走りこんで来た。

 トム君は長さ30センチに幅20センチほどの大きさの紙を手に持っていた。


「おう!どれどれ」

トゥンシー大先生が渡された紙を見る。


「印刷出来たの?」

「わたしも見たーい!」

「あ、私も!」

「どんなものなんだ?」

プリシルさま、マイレィちゃん、ミカエラさま、アレクなどがゾロゾロと周りに寄って来た。


 その大きな紙には... 

 総本山の秘蔵書庫から運ばれて来た石板が克明に描写されていた!

 こ、これはスゴイ魔法具じゃない?


 ...... え?


 じゃあ、私たちが総本山の保管庫から運んだ古代魔法の資料は、全部あのマシャコウキ(魔法式光写機)とやらで描写されるってわけ?



ソントンプ研究所、今度は写真機を発明しました。

1メートルもある写真機って大きすぎると思うでしょうけど、15世紀に現れた最初の写真機『カメラ・オブスキュラ』はそれくらいの大きさだったようです。


春の大攻勢の戦いの詳細は、『魔王の勇者オデッセイー 魔王はつまらないので異世界でハーレムを作ることにしました』の3‐26北東戦線の戦いの章(https://ncode.syosetu.com/n3597gy/99/)に書かれていますので、関心のある方は読んでください。


『ネコ耳❤アリシアの魔王城日記』は『魔王の勇者オデッセイ...』の世界と少し違うパラレルワールド作品という設定になっていますので、内容的に少し違うところがあります。



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