第62章 アリシア子爵、屋敷を拝領する(後編)
「今週から、ここが私、アリシア・ミラーニア・ゲネンドル子爵の邸宅となります」
私はそう告げた。
「え?...」
お母さまの目が丸くなった。
「お姉ちゃん、すっごい!買っちゃったんだね!」
ビアが跳ね上がって悦び、脱兎のごとく走り出し、屋敷の探検を始めた。
「わーい!広いお家!」
「わーい!ひろいおうち!」
ジオン君とキアラちゃんがあとに続く。
「すごいわ!アリシアちゃん、この屋敷買ったの?」
「タイロさんが、アリシア子爵さまがお呼びですって言うから、何かと思ったら、こんな立派なお屋敷を買ったのを見せたかったの?」
「高いんでしょうね...」
マイテさまとモナさまの感想のあとにお母さまがポツンとおっしゃった。
「魔王さまが、購入してくださったの」
「え?魔王さまが!」
「魔王さまが?」
「アリシアちゃん、魔王さまに可愛がられているのね」
モナさまの言葉の意味は、魔王さまから愛されているという意味ではなくて、大事にされていると言う意味だろう。ま、実際、(肉体的にもたまに)可愛がられてはいるんだけどね。
そのあと、30分ほどかけて、みんなと屋敷を見て回った。
「ベッドとか浴槽、トイレの便器、絨毯、カーテンは全て新しいものと替えるつもりです」
「大丈夫なの? かなりお金かかるんじゃない? お母さんも手伝ってあげてもいいのよ?」
「問題ないわ。蓄えもあるし。それよりも、お母さまとマイテさまとモナさまにお聞きしたいのは、私といっしょにこの家に住みませんかってことなの」
「え?アリシアちゃんといっしょに?」
「わたしはもちろん、住むわ」
マイテさまは私の提案に驚いたけど、お母さまは即答だった。
「ワタシも当然すむよ!」
屋敷の外からもどって来たビアももろ手を上げた。
「ぼくも住む!」
「あたしもすむわ!」
ジオン君とキアラちゃんも手を上げた。
「あらあら... 二人ともすっかりこの家が気に入ったのね?じゃあ、アリシアちゃんのお言葉に甘えて、私もいっしょに住ませていただくことにするわ!」
モナさまも、ジオン君とキアラちゃんが、この家に住みたいと言ったのでいっしょに住むことを決意された。
よかった。
これで私一人で大邸宅に住むということが避けられた。
「わたくしも住みたいけれど、やはりルナレイラの近くにいてあげたい...」
マイテさまは魔宮殿に住み続けることにした。
「差し当って、家具とかは好みのものを買えばいいけど、もっと使用人を増やす必要があるわね」
お母さまにおっしゃっていることは、当然のことだ。
執事とかメイドとか従僕、料理人、料理助手とかを急遽そろえなければならない。
「あの... よろしかったら、私が従業者組合に行って探して来ましょうか?」
ゼニヤさんの提案に大感謝だ。
「お願いするわ。実は週末に外国の方と職場の部下たちを大勢迎えて夕食会を開くことになっているの」
「じゃあ、週末だけの臨時雇いも組合で探してみます」
ゼニヤさんを将来メイド長にするつもりで高級払って雇っていて正解だった。
私たちのことをよく知っているゼニヤさんなら、新しいメイドや従僕でもうまく使ってくれるだろう。
翌日の朝、プリシルさまに話して一日休暇をいただくことにした。
プリシルさまは快く承認してくださった。私の代わりにリエルさんといっしょに情報分析をやって見るんですって。
ゼニヤさんが授業員組合に行っている間、私は同じく休暇をもらったお母さまとモナさまを連れて、店を回って、家具や絨毯、カーテンを購入することにした。浴槽も買わなければ。
カーテンは注文している暇はないので、完成品を買って長さだけ調整してもらうことにする。
ベッドは、天蓋なしのを選んだ。天蓋って、よぶんにカーテンとかつけちゃって、あとで取り外して洗濯したりするのって大へんじゃない?
木目がきれいで頑丈で大きなベッドを選んだわ。
これなら、いくら上で激しい運動をしてもだいじょうぶ(?)。
それに連結できるように作られているので、必要ならあと1台連結できる。
「お姉ちゃん、そんなベッドだったら、4人いっしょに寝られるよ?」
一人用のふつうのベッドを選んだビアが小声で言った。
ぐぐっ... ビアのやつ、私が大きなベッドを選んだ理由を知っている?
だけど、3人相手じゃないよ?
あくまでも相手は一人ね。
使用人たちのベッドも購入し、護衛君、タイロさんのも買う。
彼らも新しいベッドがいいだろうからね。
そして、シーツ、枕、枕カバー、お布団なども買う。
来客用も買っておかなければならないし、替えのシーツや枕カバー、それにタオルやナプキンなどもどっさりと買わなければならない。
金貨が蒸発するようになくなって行く。
何やらかにやらで金貨80枚近く使った(汗)。
貴族なので、安物を買うわけにはいかないのだ。
だけど、これでも、家を買う思いをしたら安いものだ。
エタナールさまにお祈りをする時に、魔王さまとプリシルさまへの感謝を忘れないようにしなきゃ。
第六曜日に開かれる歓迎会に向けて家具、絨毯、カーテン、浴槽、トイレなどの交換が急いで進められた。ゼニヤさんのおかげで、執事や従僕、料理人、料理助手なども雇うことが出来た。
メイドは、私がメイドを募集しているとカリブの姉さん女房であるナッツシャさんから聞いた、ナッツシャさんの友人であるキナラさんとイムラさんが来てくれることになった。
って、すでに貴族の家で働いていたのに、私が雇っても問題ないの?
と心配したけど、キナラさんは、スティルヴィッシュ伯爵のお屋敷、イムラさんは、ペンナス伯爵のお屋敷で勤めていたのだそうけど、雇い主に事情を話したところ、快く解雇してくれたのだそう。
ふうむ。お二人の伯爵の娘たちを研修生として採用しておいてよかったわ。
まあ、スティルヴィッシュ伯爵もペンナス伯爵もメイドさんをたくさん雇っているので、一人抜けたくらいでは困らないってキナラさんとイムラさんが言っていた。
執事、従僕二人、ゼニヤさんとキナラさんとイムラさん、それに護衛君や料理人と料理助手二人にまで手伝ってもらって屋敷の模様替えを行わせた。夜になると、私とお母さまとモナさまが行って模様替えの確認をしたり、リンド君とタイロさんにも手伝ってもらって、家具の位置を替えたり、庭師が昼間やった庭の手入れを確認したりと超多忙な三日間を過ごした。
私が屋敷を購入し、そこで歓迎の夕食会を開くということは、すぐに情報分析室の連中にも広がり、みんな週末が来るのを楽しみにしているのがわかった。
おまけに、研修生の娘たちたちから夕食会のことを聞いたスティルヴィッシュ伯爵やペンナス伯爵、それに家族の誰も関係ないギャストン伯爵までもが夕食会に参加したいと伝えて来た。
アングルスト帝国とベルミンジャン王国と戦争やっているというのに、みんな暇らしい。
「魔王さまも是非、参加したいそうよ」
プリシルさまから聞いた時は、うれしかった。
だけど、魔王さまが来るとなったら。中途半端な夕食会は出来ないな... と気を引き締めた。
まあ、自分が買ってあたえた家だから、どんな家か見たいのだろう。
参加者の人数が多いので、夕食会は広い庭でやることにした。
夜なのでテントは張らなくていいし、第一涼しい。
10人ずつ座れるテーブルと必要なだけの椅子を魔王城から借りることにした。
臨時で男性給仕10人、メイド10人を雇い、万全の体制を敷いた。
料理は、大量に料理を食べるトロール人たちを失望させないように、肉料理と魚料理を主力としたご馳走をどっさりと出すことにした。
庭の食事で、自由に好きなだけ食べれる料理と言ったら...
焼き肉(焼き魚)料理しかないだろう。どっさり大量の肉料理とエールと葡萄酒を出せば、トロール人たちも十分に満足するだろう。
もちろん、それだけでは寂しいので、魔王さまも来ると言っているので、少し高級な料理も出さなければならない。予算は... 金貨50枚とした(涙)。
貴族の生活って、お金かかるなぁ...
新たに雇った執事とか従僕とかメイドなどの給料を入れると、使用人への支払いが毎月金貨15枚ほどかかるし、そのほか、庭の手入れとか、馬車馬の経費とか、いくらお金があっても足りない。
だけど、投資の方は軌道に乗りつつある。
初年度は、投資額が大きかったけど、去年の年末年始には大量にさばけた。
今年は、さらに販売路を広げる計画だ。立っている者は親でも使えと言うから、ブリュストン伯爵さまのツテを利用して鬼人族国でも販売を伸ばすつもり。
ボードニアン王国にはリエルさんを通して販売網を築きつつあるし、ミタン王国にもアンジェリーヌ&ジョスリーヌ姉妹を通して販路を広げている。
これで、今後、西ディアローム帝国やアングルスト帝国、ベルミンジャン王国などあたりまで販路を広げることが出来たら万々歳だ。
えっ、私は何の事業に投資をしているのかって?
それは、レッべガアル産の葡萄酒の販売よ。
レッべガアルの領主、エドディガ・ブレスタンネス伯爵さまと懇意になったおかげで、レッべガアル産の葡萄酒の販売の独占販売権を獲得できたの。
事業パートナーはドゥモレ男爵。
男爵とは、体の関係は残念ながらなくなったけれど、事業の関係は良好に続けている。
彼との取り決めでダユーネフ国以北は彼の販売テリトリーとし、魔王国以南は私の販売テリトリーとすることになった。
西ディアローム帝国や、そのほかの国は当分の間は自由競争ってなっている。
先に販路を開拓して売りこんだ方が勝ちってわけ。まあ、ほかならぬ、私とドゥモレ男爵さまの仲だ。仲良く棲み分ける方法があるだろうけど。
私の販売戦略の強味は、格調高い宣伝方法だ。
1本金貨50枚という破格な値段がつき、いまだに愛好家の間で語られている《ベーラ・アリシア・インペリアル》に関連付けた銘酒として、《ベーラ・シリーズ》を十種類ほど販売した。
ベーラ・シリーズは、女性愛飲家に人気だが、その中でもとくに人気があるのは、赤では《ベーラ・ローザニア・スペシャル》、白葡萄酒は《ベーラ・プリンセス・ビアンカ》、そして桃色葡萄酒では、《ベーラ・プチ・セリージェル》と《ベーラ・ドナ・シャクヤク》だ。《ベーラ・プチ・セリージェル》は、サクランボの風味がする薄桃色の葡萄酒で、《ベーラ・ドナ・シャクヤク》は、濃い桃色でバラの風味が特徴だ。
去年、初回出荷分の10本を私が買った《ベーラ・アリシア・インペリアル》の再販売は、今年の秋以降になるけど、これはすでに金貨50枚で予約が入っていて全て売り切れ状態だとエドディガさんから連絡があった。
男性に好評なのは、強めの“男らしい”と評される風格のある味の《ヴァレンテ・シリーズ》で、これは5種類ある。さらに定番の赤では、《ヴァレンテ・サムゾン・ストルンゴ》と白の《ヴァレンテ・ジェラード・コンジェランテ》があり、魔王さまにプレゼントしてとてもよろこんでいただいた《グラン・ルキフェル・リミテッド》も高価ながら愛好家の間で評判だ。
レッべガアル産の葡萄酒は高品質で味もとてもいいのだが、ダユーネフ国の葡萄好き以外にはあまり知られてなかった。生産量はそれほど低くないが、ダユーネフ国内の販売量など数量が限られている。
それゆえ、高品質葡萄酒でありながら、ダユーネフ国ではエール並みの低価格で販売されていたのだ。
それを私が魔王国に持ち帰り、品質のよさが評判になった時に、私はエドディガさまと独占販売の契約をした。
子爵としての給料も年末手当のほとんども、連邦管理局8級職員としての少ない月給も年末手当もすべて投資金として、エドディガさまに前渡金として送った。
「俺は子爵を信用している。なので前渡金などいらないのだが、せっかく送って来たのを送り返すのも何だから、保証金として預かっておく」と彼から返事があった。
私は、レッべガアル産の葡萄酒は、他国で販売すれば最低でも3倍、もしかすると5倍とか10倍。銘柄によっては20倍以上の価格で売れると予想していた。
果たして、見本を魔都の高級レストランに置かせてもらったところ、すぐに評判となり、かなりの注文が入った。そして、その噂を聞きつけたほかのレストランや居酒屋、愛好家などからも続々と注文が舞いこむようになった。
独占販売契約をしたおかげで、顧客はほかに入手方法はないので、12月と1月だけで投資額は回収できている。これからの販売はすべて利益だし、ほかの国からの注文も増加しつつある。
仲介してもらっているリエル王妃やアンジェリーヌ・ジョスリーヌ姉妹王妃たちには、10パーセントの仲介料を払うつもりだ。
葡萄酒の仕入れ価格は販売価格の30パーセントなので、輸送料、配達経費、前述の10パーセントの仲介料などを差し引いても、まだ私には40パーセントの利益が残ることになる。
まあ、ほかの国での販売量が増えたら、より多くの投資をしなければならないけど、その時はその時。楽天的に、しかもしっかりと将来を見据えて着々と事業を拡大していくつもり。
販売価格が通常の葡萄酒の5倍以上なので、儲けはすごく大きい。
販売数は目標数を超えずに意図的に常に不足状態にすることで、希少価値を生ませる。
これが商売で儲かる秘訣だ...
って、私、お役所で働くより商売に専念した方がよくない?
いや、公務員って安定した職業だし、魔王さまは私の能力を高く買ってくれている。
それに魔王さまにせよ、アマンダさまにせよ、プリシルさまにせよ、私たちゲネンドル一族は大へんお世話になっているし、魔王国で最初の女性子爵にしてもらったという恩もあるからね。
獣人族であれエルフであれ、恩を忘れたらだめだよ。
と言うことで、新しい住居の経費も使用人の経費も、夕食会の経費もあまり心配せずに使えるというわけ。
でも出るお金は...やはり惜しい。
夕食会は、午後6時から始まった。
トロール人たちの輸送には、あの大きなマフトレーンが最適なのだが、残念なことに私の屋敷まで通じていない。彼らを乗せれる馬車も適当なのがなく、荷馬車に乗せるわけにはいかない- 将来、ベルミンジャン国の国王になるかも知れない王子たちを運ぶのだ。
万が一にも粗相が起きないように、極秘兵器のドコデモボードで魔王城からわが家まで移動していただくことになった。
6時きっかりに、わが家の貴賓室にゾロゾロと現れた巨人たち!
そのまま私とリエルさんが、焼き肉パーティーが行われる庭に案内しようとしたけど、トマーラ王子たちは、わが家に興味を持ち、是非屋敷を拝見させて欲しいと願ったので、リエルさんにエリゼッテちゃんとエイルファちゃんといっしょに、次々と到着しつつある職員や研修生たちを迎えてくれるようにお願いして、アリシア子爵邸見学となった。
「ほう。中々いい家ですね!」
広いエントランスに出て、二階への階段を上がりながら、開け放たれた大広間の様子を見ながらクマーラ王子が言った。
なぜ二階から見学を始めたのかって?
それは、二階から始めて、それから一階を見て、そのあとで焼肉パーティーがあり庭に行くことを選んだから。
「何でも、今週この邸宅を購入されたばかりと聞きましたが、かなり高かったんでしょうね?」
二階の廊下に置いてある彫刻品や置物、立派な額縁に入れられた絵画を見ながら、クマーラ王子が訊いた。
長年にわたってエンギン辺境伯が収集したであろう、これらの芸術品や絵画、置物は、売ればかなりの金になるだろうけど、エンギン辺境伯は、魔王さまがこの屋敷を購入してくれると言った時、今まで魔王さまにお世話になったお礼にとすべて残したらしい。
今はなき私の故国であるブレストピア国の有力貴族であったエンギン辺境伯は、初期に魔王さまの麾下に入った貴族の一人で、以来、魔王さまとともに数々の戦いに参加して魔王国でも確たる地位にまで登られた。
ブレストピア軍が魔王軍に破れた時、ブレストピア軍の将軍であった彼は、ヘタをすれば処刑されていたのかも知れないのだ。それを処刑もせず、信頼する将軍の一人として使ってくれた魔王さまに、大きな恩義を感じていたのだろう。
「いえ、この家は魔王国政府から供与されたものです」
私は本当のことを話した。
ウソを言っても始まらない。私が買った屋敷でないことがわかれば、室長はウソをついたと言うことで信用をなくしてしまう。
「なるほど。魔王国では、貴族を厚遇するのですね」
厚遇も何も。魔王さまが、私を特別贔屓しているというだけなんだけど。
たぶん、魔王さまの中では、こうやって私を愛人として縛りつけておきたいだけなんだろうけど(汗)。
20分ほどかけて、家を見学して回った。
「すごく部屋が多いのね!」
チェニーレ先生が驚いている。
「王宮は部屋が多すぎるから、これくらいがいいわね!」
ヴィリアンさん、いやヴィリアン妃殿下が、へんな納得をしている?
そりゃね。私も昔お城に住んでいたからわかるわ。
お城って、めったやたらと部屋が多いのよね。ヘタしたら迷子になっちゃうからね。
「ほう!」
私の寝室を見せたら、ベッドの大きさにクマーラ王子が目を丸くした。
やばい!
このベッドに男を二人も三人も連れこむと想像しているのだろう(汗)。
「この大きさなら、オレでも楽に寝れるな!」
なんだ、そんなことを考えていたのか。
「こんなに大きかったら、子どもが5、6人いても飛び跳ねて遊べるわね!」
チェニーレ先生、何をおっしゃっているんですか?
私がそんなに子どもを産むわけないじゃないですか...
って、そう言えば、ブリュストン伯爵さまは、
「子どもが多い方が賑やかだからいいな」なんて言っていた(汗)。
あれって、間接的に、私にたくさん子どもを産んで欲しいって言っていたのよね...
「室長のお部屋すごーい!」
「なあに、このでっかいベッド?室長、何人の恋人と寝る気ですかぁ?」
「ビースー、それ言っちゃあダメ!」
急に後ろの方騒がしくなったので見ると、ビアが研修生たちを引き連れて入って来ていた!
たぶん、トロール人たちが屋敷見学をしていると聞いて、自分たちもしたいってビアに言ったのだろう。
私の部屋用に買ったベッド、届けられた翌日に追加注文をして、2台並べれれるようにした。
使わないときは、壁の隠し収納庫に入れて置けるようにしている。
将来、ゴロゴロと5、6人の子どもと転がって回って遊ぶのも...
いやいや、そうじゃないよ。別の目的のため。
って、誰よ、私が何人の恋人と寝る気ですかぁ?なんて聞いた研修生は?
ビースーなんて研修生いないし!
声の主を見ると、ビア・スティルヴィッシュちゃんだった。
なるほど、うちの妹と同じ名前だから、ビア・スティルヴィッシュという名前を縮めてビースーって呼んでいるのか?
じゃあ、ビアはどう呼ばれているの?
ビアゲ、ビゲネ?それともビーネル?
「あん、いいじゃないビア。こんな大きなベッド見たら、誰でもそう思うよ!」
ビア、ちゃっかりしている。自分の名前はビアのままか?
「おう!ここが子爵の愛の褥か!」
「毎晩、違った男と絡みあったりしてな!ガ―――ッハッハッハ!」
ゲゲゲ!
この声とバカ笑いは、スティルヴィッシュ伯爵とバカ伯爵、いや、ギャストン伯爵!
「あなた、何を言っているんですか? 招待してくださった子爵さまに失礼でしょう!」
「まったく、もう。これくらいの男は厚顔無恥になるのよね」
ギャストン伯爵夫人らしい声とスティルヴィッシュ伯爵夫人らしい声も聴こえる。
「私の家より立派ですね!」と言っているのはペンナス伯爵。
「あまり人が多すぎますわ。ごめんなさいね、アリシア子爵さま。夫が、ぜひ子爵さまの家を拝見したいと言って上がって来たのですよ」
後ろの方でイクゼルさまが謝っている。
「どうも申訳ない。だが、これで子爵殿も一人前の貴族ですな!」
ゲラルド侯爵さまが、まるで自分の娘が屋敷を購入したみたいによろこんでいる。




