第6章 魔王城
ガバロス親衛隊に護衛された馬車は、賑やかな商業地区を抜け、落ち着いた雰囲気の見るからに高級そうな邸宅が並ぶ高級住宅街に入った。
「ここは、見ての通り高級住宅街で、魔王国の大臣、高級軍人などが邸宅をもっていますのよ。私と夫の家は、ここから右に入って、一区画過ぎたところにありますの」
イクゼルさまが、説明をしているうちに高級住宅街を抜け、魔王城の前に到着。
ギギギィィィ―――……
不気味な音がして、鉄製らしい黒くて高い城門の扉が重々しく開いく。
でっかい体つきのクロブバルニディオ族の衛兵さんが警備している城門を通り過ぎると
ギギギィィィ―――……
ガチャ――ン!
ふたたび不気味な音がして、城門の扉が閉まった。
“これで、完全に魔王の人質になったんだ...”
いや、人質じゃなく、魔王の許嫁とその付き添い、いや、将来の魔王の妻候補たちとその付き添いか?なんだけど... 何か、こう、人質って書いた方が哀れって感じ出るじゃない?
私って、文学の素質があるのかな?
馬車は広い庭園を走り抜け、正門ではなく横の方に向かってしばらく走ってから、回り込んで、そこにあった入口の前で停まった。
そこには正門ほど立派で大きくはないけど、それでも大理石造りで立派な門があった。まあ、お城って、いくつも門があるのよね。イヴォール城もそうだったし。
そして、その門には、美しく着飾った女性たちが十人ほどいた。
馬車が止まると、女性たちは階段を急いで下りて来た。
女性たちの顔を見ると、なんとアマンダさま、プリシルさま、リリスさまとハウェンさま、それにアンジェリーヌさまとジョスリーヌさまたちだった!荷物を運ぶために侍女や従者も連れて来ていたわ。
プリシルさまは、ヤーダマーの塔に来た時もステキなドレス姿だったけど、なんとアマンダさまがドレス姿だったのには、ビックリ!
親衛隊のザロッケンさんが馬車のドアを明け、イクゼルさまがタラップを降りるのを手伝った。
「イクゼル侯爵夫人、お役目ご苦労さまでしたわ!」
アマンダさまが、イクゼルさまに労をねぎらわれた。
「アマンダさま、お出迎え、ご苦労さまにございます。おかげさまで全て順調に行きました」
「ええ。報告にあったとおりね?魔王さまも大へんご満足そうだったわ」
「それを聞いて安心しましたわ」
二人の会話を聴いていたけど...
え?報告って。イクゼルさまは、ヤーダマーの塔で一泊なさったけど、「馬車の中にベッドがありますからお構いなく」って言って塔では寝なかったのは知っている。
護衛のガバロス親衛隊の人たちは、持って来たテントで休んだようだし...
それとも誰かが、あのドコデモ何んとかって呼んでいた移動魔法で魔王城まで報告書を持って行ったのかしら?
イクゼルさまに続いてエイルファちゃんが(今度はしっかりとザロッケンさんに手を握られて!)降り、それから、お母さま、ルナレイラお義姉さま、カリブ君、私、ビア、そしてモナさま、ジオン君、キアラちゃんが降りた。
みんなが降り終わったところで、あらためてアマンダさまがにこやかに笑いながら歓迎の言葉を述べた。
「みなさま、ようこそ魔王城へいらっしゃいました。お忙しい魔王さまに代わって、わたくしどもがお迎えに参りました」
「王妃さま方、お揃いでの丁重なお迎え、心よりお礼を申し上げます。魔王さまにもよろしくお伝えくださいませ」
さすがラーニアお母さま、素敵にお礼を述べ、伝統にしたがった作法で短すぎるドレスの端をつまんで華麗に礼をされた。
お母さま、あまりドレスの端を持ち上げると、短いドレスからおパンティが見えますわよ?(汗)
私たちも、作法には慣れているのでお母さまに続いて伝統にしたがった作法で礼をしたわ。
おパンティが見えないように気をつけながらね。
何だか、後ろにいるカリブが私たちの後ろにいるのが視界の隅に入った。
この発情期のライオンめ!きっと私たちのオシリが見えないか食い入るように見つめているのに違いない。
「カリブお義兄ちゃん、アリシアお姉ちゃんのオシリがちょっと見えたよ!」
ジオンのヒソヒソ声が聴力の言い私の耳に聴こえた。
「おう、バッチリ見えたぜ!」
何と、カリブとジオンがグルになっている?
「まあ... さすが魔王さまが、お認めになられただけあって、麗しい振る舞いですわね!」
プリシルさまが、目を細めて笑っていらっしゃる。
私はオシリがそれ以上見えないように、ドレスの後ろを手で押さえた。
「さあ、長旅...でもなかったのでしょうけど、お疲れになられたでしょう。どうぞ魔王城にお入りになって!」
「まったく、あのドコデモボードは便利ですからね!」
リリスさまが微笑んで言えば、ハウェンさまもウンウンと頷いている。
なるほど。あの移動魔法は、魔王城ではしょっちゅう使われているらしい。
私たちを案内して先を歩くアマンダさまとプリシルさまのすぐ後ろをつかず離れず歩いている可愛い女の子がいた。年はビアくらいか。いや、胸やオシリはそれほど出てないので10歳くらいかな?
茶褐色の目に紫の髪... って、この娘、まさかプリシルさまの娘?
広い廊下を少し歩いて、広い応接間に入った。
応接間はすっごく豪華だった。明るい緑みがかった青の壁の色がとても素敵な部屋で、重厚なスタイルの豪華な椅子の背の布張りも同じ色で統一されていて、この部屋を設計した人の美意識の高さを感じさせた。 天井から下がっているシャンデリアもクリスタルをふんだんに使っていて、より一層豪華絢爛さを醸し出している。正面の壁には正装した魔王さまが、実際にそこにいるんじゃないかと思えるほどの実物大の大きな肖像画が立派な額縁に入れて飾られていて、その両横に少し小さめの大きさの額縁に、アマンダさま、プリシルさま、リリスさまとハウェンさまの肖像画があった。
アマンダさまたちって、魔王城の中でも特別な位置なのだとあらためて実感したわ。
みんなが着席すると、あらためて紹介がされ、あの女の子はやはりプリシルさまの娘だとわかった。
「マイレィ・ルアナ・ドレッドメイルです。年は9歳です。よろしくお見知りおきください」
この娘、私たちに負けない、いや、私たちよりもさらに華麗な礼儀作法を身に付けていたわ。
ドレスの裾をつまんで片足を後ろに引いて、とても優雅に。9歳の女の子とは思えないくらいのあいさつをしたの。
こ、これで9歳?!?
信じられないっ。すっごく可愛いし、きれい!
にこっ
えっ、この娘、私を見て微笑んだ?
きゃあ!抱きしめたいくらい可愛いわ!
にこっ
うう―――…
これから、毎日、この娘を魔王城で見れるなんて、なんてシ・ア・ワ・セ♪
にこっ
ああ、もうダメ!
身も心もマイレィちゃんだけ!
え、でも待って。
魔王の娘だったら、この娘は魔王女と言うことになるのかしら?
しゅ~ん
れっ?
魔王女じゃない、マイレィちゃんが悲しそうな目で私を見ている?
こ、この娘って、私の心が読めるの?
まさかねー?
「マイレィはまだ9歳なのですけど、将来を考えて、国賓以外のお客さまの応対などを実際に覚えさせていますの」
プリシルさまの声で我に返った。
さすが魔王の第二夫人、いや、第二魔王妃、しっかり娘を育てているわ。
その時、開いたままだったドアから、一人の男の子が顔を覗かせた。
「ルファエル、こちらへ来てみなさまにご挨拶をしなさい」
アマンダさまが、男の子に言った。どうやらアマンダさまの息子らしい。
「はい。ママ!」
一瞬、ヤレヤレって顔したわ、このガキ?
でも、ママって、お母さまのこと?
どこの国の言葉かしら?...
「ルファエル・ドレッドメイルです...」
「ママから引き継いだ名前を端折らない!」
アマンダさまがビシッと言った。
おお、怖っ!
「は、はいっ。ルファエル・ラヴォルジーニ ・ドレッドメイル 12歳です。よろしくお見知りおきください」
何とも長っがーい名前。ははーん。名前の中にアマンダさまの家名も入れているのね。
それで最初は全部言わなかったんだ。母親への反抗期なのかな?
「それでは、ボクは剣術の練習がありますので、これで失礼します」
ペコリと頭を下げて廊下に消えて行ったルファエル王子君。
いや、ルファエル魔王子君と呼ぶべきかな?
12歳ってことは、ビアと同い年ね。
でも、ビアの方がマセているわね。
この年頃の子は、女の子の方が男の子よりマセているのよね。
ビアの顔を見ると、ルファエル君には全然関心なさそう。
でもね...
ルファエル君は、たぶん魔王継承権第一位の子どものはずだよ。
妹よ、将来のためには、今のうちに魔王子君にツバをつけておいた方が...
いや、ビアはもう魔王さまにツバをつけられちゃっているからダメか。
この部屋での説で、ラーニアお母さまとモナさまは、魔王城で半年間教師としての訓練を受けたあとで王室専用教師になることが伝えられた。
教師になってからは、ルファエル君や可愛いマイレィちゃん、それに大臣や高級軍人などの子弟の教育を担当することになるそう。
お母さまもモナさまもまだ若いので、週末には子どもたちを連れて移動魔法でヤーダマーの塔へ行って、そこでゲネンドルお父さまやマイテさまたちと家族そろって過ごすことも許可してくださったわ。
ふう、良かった。
魔王城に入ったら、もう二度と出られないと思っていたし。
ルナレイラお義姉さまも二週間に一度は両親を訪問できるらしいけど、その時は“将来のルーク王妃”として、あのガバロス騎士たちが護衛に付くことになるってアマンダさまが言っていたわ。
私たちは、魔王城の中にそれぞれ部屋をあたえられた。
だけど、魔王さまの“許嫁”となったルナレイラお義姉さまは当然別格で、私たちの部屋とは比べものにならないくらい広い部屋をいただいていたの。
私たちの部屋が、せいぜい30平方メートルほどの広さなのに比べて、ルナレイラお義姉さまのお部屋は三倍はあるの!!!
ルナレイラお義姉さまの部屋には、応接間と寝室とバスルームがあって、応接間も広いんだけど、バスルームが、これまた広くてきれいな大理石造りの見事なものなの。
ここにルナレイラお義姉さまが、魔王さまといっしょに入ってイチャイチャするのかしら?
ヤーダマーの塔に住んでいた頃、私とルナレイラお義姉さまと私は、年が近いこともあってよくいっしょにお風呂に入っていたわ。そうそう、妹のビアもいつもいっしょだったわ。
私たち三人、異母姉妹だけどとても仲がいいの。
ビアはおませなので、いろいろと私やルナレイラお義姉さまの女性らしいところを観察していたみたい。
正直言うと、それは妹だけでなく、私もルナレイラお義姉さまを毎回毎回、よく観察していたわ。年が三つ違うだけで、あれほど女性らしくなるのねって、いつも羨ましく思っていたわ。
羨望の眼差しで形良く美しいルナレイラお義姉さまのオッパイを見ていたら、“将来、お義姉さまの夫となる男性は、どんな気持ちでこの美しいオッパイにさわるのかしら?”なんて考えたの。
そこで試しに身体を洗っていたルナレイラお義姉さまの後ろから、両手を脇の下から入れてオッパイを揉んでみたの。
「きゃっ!アリシアちゃん?びっくりしたわ!」
モミモミ…
す、すごいボリュームだったわ!
さすが、魔王さまが見初められただけある。
「ちょ、ちょっと、アリシアちゃん、何で私の胸もんでいるの?」
戸惑ったようなルナレイラお義姉さまの声。
「こんなに形良くて大きなオッパイ、私のとどこに構造の違いがあるのかなって思って」
「そ、それはきっと遺伝のせいよ」
モミモミ…
ついでに、オッパイのとっぺんにあるボタンをクリクリっと捻ってみる。
クニクニっ
「ああん!」
心なしか、ルナレイラお義姉さまの声が上ずっているみたい。
なぜかしら?
モミモミ…
クニクニっ
「ああん!もういいでしょ、アリシアちゃん… はぁ はぁ 」
なぜだか、ルナレイラお義姉さまのオッパイのボタンがポッコリとなっている?
それに息を弾ませていた?
「アリシアちゃんだけがするってズルいっ!」
な、なんと、ルナレイラお義姉さまの逆襲!
「きゃあ!お義姉さま、止めてっ!」
「やめるもんですか!あなたも、私みたいにオッパイを気持ちよく... いえ、オッパイをもんであげるわ!」
「ルナレイラお義姉さま、ワタシも加勢するわ!」
「この裏切りものっ!」
なんと言うことでしょう。妹のビアまでが面白がってルナレイラお義姉さまといっしょに私をつかまえた!?
「きゃ――っ、やめて――っ、きゃははは!こそばゆいっ」
ビアが私の片腕をつかまえ、もう片腕をルナレイラお義姉さまがつかまえ、二人して私の目下絶賛成長中のオッパイをたっぷりと揉まれたわ。
妹のビアは、オッパイをキャッキャ笑いながらもんでいるけど―
ルナレイラお義姉さまは、さっきの仕返しとばかり、私のオッパイのボタンを摘まんだり、クリクリ捻ったりと弄りまくるの。
すると-
あら不思議!
私のオッパイのボタンも先ほどのルナレイラお義姉さまのオッパイのボタンのように硬くポッコリと浮き上がっちゃった?!
それに、ルナレイラお義姉さまの弄り方、どういう訳か上手で、なんだか気持ちよくなっちゃって...
「ああん、やめて やめて!」
と最初の頃は言っていたのが
「ああん!続けて、もっと続けて!」
と代わってしまって...
これには私自身がビックリしたわ。
オッパイ遊び(?)が終わって、広いバスタブに三人そろって入ったの。
ルナレイラお義姉さまの両足の間に私が座って、お義姉さまに背中を預け、
その私の足の間にビアが座って私に背中を預けて、三人で仲良く入ったの。
このお風呂スタイルは、ゲネンドル・ファミリースタイルとでも言うべきもので、
お父さまが、マイテさま、お母さま、それにあとから王妃になられたモナさまと、いつもいっしょにバスタブにはいっておられたスタイルなの。
ルナレイラお義姉さまも私もビアも、見慣れた入浴スタイルなのね。
なので、私たちが三人仲良くいっしょに入っていても、お父さまもお母さまも何も言わないわ。
ただ、 カレブお義兄さまが、私たちといっしょに入るのはお父さまもお母さまもマイテさまもお赦しにはなりなかったわ。
「男の子はな、下に毛が生えるようになってから、女の子といっしょに寝たり、風呂にいっしょに入ったりすると子どもが出来るのだ」
とお父さまがカリブ君に言い聞かせ、
「女の子も胸がふくらんできて、月のモノが毎月来るようになったら、男の子にハダカをみせたり、身体にふれさせたりしてはダメよ」
「そうそう。赤ちゃんが出来ちゃうからね!赤ちゃんは、結婚してからでないと作っちゃダメなのよ!」
お母さまとマイテさまも、ルナレイラお義姉さまや私、それにビアに教えてくださったのだけど...
どうして、男の子といっしょにお風呂に入ったり、いっしょに寝たりしたら子どもが出来るのかしら?
そのことをルナレイラお義姉さまに訊いたら
顔を赤くしてしばらく考えていたけど
「こ、セゴンニャさんが、赤ちゃんを連れて来るからなのよ!」
セゴンニャって、長くて黒い嘴をもった白く大きな水鳥なんだけど、
それは大人が子どもに言う罪のないウソでしょ?
そんなことくらい、私だって知っているわ!
私が知りたいのは、男の子とお風呂でどうやったら、男の子といっしょに寝てどんなコトをしたら子どもが出来るかということなのよ!
ルナレイラお義姉さまは、もういつ結婚してもいい年だから知っているようだけど、なぜか恥ずかしがって教えてくれないの。
「ルナレイラお義姉さま。そんなおとぎ話は、私が三つの時にお母さまから聞いたわ...」
「あ、わたし、下へ行ってカモミール茶淹れて来るわね!」
ルナレイラお義姉さまは、そう言って逃げてしまった。
まあ、いいわ。そのうちに侍女のマルカに訊くから。
マルカはお菓子に目がないから、いつも私たちにおいしいお菓子を持って来てくれる村のおばさんのお菓子をあげると言ったら、すぐに教えてくれるはずよ。
なんて考えていたけど...
侍女のマルカにいろいろと大人のことを教えてもらうと言う私の考えは、すべてオジャンになっちゃたわ。
そう。私たちはルナレイラお義姉さまといっしょに魔王城に住むことになったからよ。