第51章 アリシア子爵とエタナールマス(中編)
“秘密のお友だち会”に行くために、私たちは一階まで垂直移動部屋で下りて、廊下をしばらく歩いて、大広間に着いた。
大きな両開きの扉は開けられていて、中からガ―――ッハッハッハ!と大笑いが聴こえて来た。
このバカ笑いは... そう、 ギャストン伯爵さまだ(汗)。
私たち“美女”が、ゾロゾロと入ると、一瞬、大広間が静かになった。
そりゃね、先頭にマイテさま(エルフ族美女)、ついでお母さま(フェリノディオ族美女、私(ネコ耳美少女)、ビア(ライオン耳フェリノディオハーフ美女)、モナさま(ラビットディオ美女)が入ってくれば... 注目を引くのは当然?
「みなさん、いらっしゃい!さあ、こちらに来て!」
プリシルさまが、にこにこ笑って、私たちを贈り物が山と積まれた中央の大きなテーブルの近くに呼ぶ。
彼女は明るい青色のミニドレスを着ていた。
ドレスの生地が、大広間の天井に吊り下げられた照明の光をキラキラと反射して輝き、とても美しい。
アマンダさまは、これも黒のミニドレスで、華やかでありながら、なまめかしい。
リリスさまは、オレンジ色の若々しいミニドレスで、ハウェンさまは、白で腕と裾の下の方が透けたミニドレスを着ていた。あれだけ裾が透けていたら、おパンティが見えるんじゃ?
魔王さまは、上から下まで銀色で統一された服を着ていて、どういう生地なのか知らないけど、キラキラと光っていて、とてもきれい!
魔王さまは、アマンダさまたちとテーブルに座っていて、同じテーブルにはルファエル君とマイレィちゃん、リリスさまの娘で6歳のリラインちゃん、ハウェンさまの娘で同じく6歳のエメリーヌちゃん。それに今年生まれたばかりの子どもアウルナちゃんを抱いたソフィエッタさまと5歳になる娘のシャミアちゃんに囲まれてご機嫌そうに葡萄酒を飲んでいた。
「おう、みんな来たか!さあ、葡萄酒を飲みなさい」
“秘密のお友だち”の贈り物を中央のテーブルに置いた私たちに、魔王さまが声をかけてくれた。
魔王さま、今日はなんだかすごく親切でお優しい。
少し遅れて、カリブと5人の妊娠4ヵ月のぽっこりとふくらみはじめたお腹の妻を連れたカリブがやって来た。マイテさまやお母さまたちが、カリブのお嫁さんたちと
「つわりはもう終わったの?」とか
「お腹、目立つようになったわね?」なんて聞いている。
それに対して、お嫁さんたちは、「もうおさまりました」とか
「もう何も食べれなくて大へんでした」とか「少し太りました!」
とか言って、初妊娠のことでワイワイおしゃべりをしている。
広間をざっと見回すと、先ほどバカ笑いをしていたギャストン伯爵のほか、ペンナス伯爵と奥さまのフロルフ夫人、スティルヴィッシュ伯爵と奥さまのゼナイデ夫人、ナエリンダン侯爵さまとロメーナ夫人、ヒムリドール将軍とサミドーラ夫人、ゾロワリン厩役伯爵と セゴレーナ夫人。
そしてゲラルド侯爵とイクゼルさまご夫婦の顔が見えた。イクゼルさまは、私の顔を見て片手を上げてにっこりされた。私も頭を下げる。
どうむ。魔王さまにとっての“身内”って、草創の時期から彼を事業で、戦いで大いに助けてくれた人たちとか将軍なども入るんだ...
「やあ、スマン、スマン!」
「少し遅れてしまった!」
マスティフ伯爵夫妻とマーゴイ侯爵夫妻が、申し合わせたかのように、いっしょに入って来た。
四人とも大きな贈り物の箱を抱えていて、すぐに中央テーブルに置いて、私たちのそばに来てあいさつをした。
「メリー・エタナールマス!やあ、みなさま、こんばんは!」
「メリー・エタナールマス!」
「メリー・エタナールマス!みなさま、お美しいですニャン?」
「メリー・エタナールマス!」
それに、この“メリー”という言葉。
みんな、エタナールマスのあいさつに使っているけど、これも何語かわからない。
たぶん“おめでとう!”とか言う意味なんだろうけど、お誕生とか結婚の時は誰も使わないんだよね?
「メリー・エタナールマス!マスティフ伯爵さま!」
「メリー・エタナールマス!バロネス・マチルダさま」
「メリー・エタナールマス!マーゴイ侯爵さま」
「メリー・エタナールマス!グジャラート子爵さま!」
私も(しかたなく)、このメリーと言う言葉を使ってあいさつをする。
マスティフ伯爵も、バロネス・マチルダ夫人も、マーゴイ侯爵も夫のグジャラート子爵も、それぞれ金色の組紐や肩章などがついた、バリっとしたカッコいい魔王軍の儀礼服や、礼服などを恰好よく着こなしている。
「なんだ、アリシア子爵はパンツが見えるくらい短いドレスを着て来ると思ったが、それほど短くないではないか?」
すっかり、親戚のオジサンみたいな口を利く、マスティフ伯爵。
「あなた、わたしの前でそんなことを言うのはよしてください。そんなに下着が見えるドレスが見たいのなら、わたしが着ますわ」
マチルダ夫人が顔を赤くして、少し口を尖らせているのが可愛い。
「そうだ、そうだ。アリシア子爵の足とかパンツとか言っていたら、あのユキヒョウ族の男爵に決闘を申しこまれるニャン?」
マーゴイ侯爵が、ニヤニヤ笑いながら言う。
「いや、ドゥモレ男爵が年末休暇でダユーネフ国に帰ったと聞いておるから、こうしてからかっておるのだ」
「恋人の男爵さまは帰られたけど、護衛のユキヒョウ君が、あそこで目を光らせていますよ?」
グジャラート子爵が、広間の隅にいるリンド君を目で見てマスティフ伯爵に教える。
「何と!すでに予備の恋人を用意しておったか!」
「いやですわ、マスティフ伯爵さま」
せいぜい品を作って見せると、みんな大笑いだった。
ううむ...
私もそんな芸当がいつの間にか出来るようになっていた。
成長したと言うか、世間ずれしたと言うか…
微妙なところだ。
「それでは、みなさん揃ったようですので、“秘密のお友だち会”を始めたいと思います。それでは、この袋の中に贈り物をもらう人の名前を書いた紙切れがはいっていますので、呼ばれた人は中央テーブルにある贈り物の山の中から、自分の名前が書かれた贈り物を見つけて、包みを開けて誰が贈ってくれたのか当ててください」
プリシルさまが、そう言って袋の中から紙切れを取りだして書いてある名前を呼びはじめた。
「最初は、あら... イクゼルさまだわ!」
「えーっ、わたくしが最初ですか?」
イクゼルさま、かなりビックリしたみたい。
中央テーブルに置いてある彼女の贈り物を探すのがまた大へんだった。
百個近い贈り物の中から見つけなければならないからだ。
ルファエル君やマイレィちゃん、エイルファちゃん、エリゼッテちゃん、それにビアまでが手伝ってあげて、ようやく見つけることが出来た。
イクゼルさま贈り物は、彼女の高さの半分ほどあるモノだった。
でも、それほど重くないモノみたいで、イクゼルさまは軽々と抱えていた。
包みを開けると、中にはぬいぐるみの可愛いクマさんが入っていた。
「え~っと、カードには、『生まれて来る子どものよき遊び相手に』と書いてあります...え――っ?!」
イクゼルさまが目をまん丸にしてにして驚いたけど―
ええええ―――?
イクゼルさんが妊娠している―――?
こりゃ奇跡だ――!
周りのみんなの方がすごく驚いていた。
そう、ゲラルドさまとイクゼルさまは、子どもがいないのよね。
結婚されて10年以上になるけど、子どもがいなかったゲラルド夫妻。
イクゼルさまが妊娠しているってわかって、すごく嬉しい。
「では、イクゼルさん、その大きなクマのぬいぐるみを贈ってくれたのは、誰でしょう?」
イタズラっぽい目をしてイクゼルさまを見て訊くプリシルさま。
「それは... あなた、プリシルさまだと思います!」
即答だった。
「あちゃ~!そうね... わたくしに最初に報告してくれたんですものね。当てない方が不思議って言うものね」
そのあとは―
「おめでとう!」
「よかったわね!」
「長年がんばって努力して来ただけあったわね」
(どういう意味?)
などと女性陣からは、イクゼルさまへお祝いの言葉が贈られ、
男性陣からは―
「よう、タネ切れかと思っていたぞ?」
「いや、俺はタネなしかと思っておった」
(バカ伯爵とうちの大臣さまスティルヴィッシュ伯爵たちの言葉)とか
「息子だったら跡継ぎだが、娘だったら、将来他人にやることになるんだぞ?」
などと言う、とんでもないお祝いの言葉ばかりだった(汗)。
次に名前を呼ばれたのは、マイレィちゃんだった。
ルファエル君、エイルファちゃん、エリゼッテちゃん、ビア、そして今度はジオンが加わってマイレィちゃんの贈り物を見つけた。
マイレィちゃんの贈り物の包みは、意外と小さかった。
と言うか、イクゼルさまのが大き過ぎたんだけど-
包みを開けると黒と白のワンピース水着だった。
「まあ、ステキ!」
目を輝かせて、水着を広げ、自分の体に当ててみるマイレィちゃん。
「わたし、着て見るわ!」
「マ、マイレィ?」
プリシルさまが呼ぶ声を無視しておトイレにまっしぐら。
5分ほどして水着を着て出て来たんだけど...
水着は、右肩から下にかけて黒色の肩紐みたいに斜めにショーツ部分まで下がっていて、胸の部分は横三角形の白い生地で覆われている形だけど―
可愛いオヘソ丸出しで
胸も、逆三角形が広がっている右側は十分過ぎるほど覆っているんだけど
細くなっている左側は-
お母さま似で、もうけっこう豊かな胸になっている
マイレィちゃんのオッパイのとっぺんあたりを覆うくらいなので
こんもりとしたオッパイの恰好が丸見えだ!(汗)。
「マイレィ、すぐに着替えて来なさいっ!」
プリシルさまが、すごくあたふたしていた?
彼女があんなに焦っているはみたことがなかった。
「マイレィ!ママの言うことを聞きなさい!」
魔王さまが、押し殺した声で言った。
「やーだもん!これは、ビアちゃんが選んでくれたんだから、今晩はこれを着て過ごすの!」
さ、さすが... 魔王さまの娘だけある(汗)。
「マイレィ、着替えた方がいいよ」
ルファエル君が、パパの顔を見ながら忠告するけど、どこ吹く風だ。
「どうしても着替えさせたいのなら、パパが着替えさせてよ!」
「むぐぐ...」
魔王さま、あきらめたみたい(汗)。
「む... いいか。この部屋は暖房が効いているし、ここにいるのは“身内”だけだから、水着のマイレィを見てあらぬ考えをする者などいまい...」
ぶつぶつ独り言みたいなことを言っていたよ。
魔王さまも、やはり娘にすごく嫉妬をする父親だね。
それにしてもマイレィちゃん、
8月に10歳になったばかりだけど胸の大きさ半端ないわ(汗)。
最近の子どもの成長って、すごいとつくづく思う。
ビアなんかも私より胸大きし、背も私とあまり変わらなくなっているし。
まあ、ビアの場合は、レオニディオ族であるお父さまの血を強く引いているんだけどね。
籤引きは進んで、いよいよ“魔王さま”の番になった。
子どもたちは、すぐに魔王さまへの贈り物を見つけた。
“秘密のお友だち会”も半ばを過ぎ、中央テーブルに置かれた贈り物も少なくなっていたので、見つけやすくなっていた。
「はい。これよ、パパ!」
男どもに、まったくあらぬ考えなど引き起こさない、とてもよく似合っている水着を着たマイレィちゃんから直方体の包みを渡された魔王さま。
ていねいに包装紙をとると、中から出て来たのは直方体の紙箱だった。
「ほう... 葡萄酒か。《グラン・ルキフェル・リミテッド》、よい名前の葡萄酒だ。色も素晴らしい!」
紙箱から葡萄酒の瓶を出した魔王さまは、ラベルに書かれた名前を見てから、透明がかった黄金色の液体が入った瓶を天井の照明に透かし見た。
「まあ!魔王さまは、何だかすごくよい葡萄酒を“秘密のお友だち”から頂いたようですね? さあ、こんなステキな贈り物をしてくださった方は誰でしょう?」
プリシルさまが、“秘密のお友だち会”の雰囲気を盛り上げようと、魔王さまを見て、それからみんなを見回した。
「うむ... このような葡萄酒を私に贈る者は... ネコ、いや、アリシア子爵のほかにはいないであろう?」
あちゃ~!魔王さま、一発で当てちゃったよ?
でも、魔王さま、“ネコ耳少女”か“ネコ耳子爵”って言いかけなかった?
「当たりです...」
「ありがとう... この銘柄の葡萄酒は初めて見るな?」
「それ、魔王さまのためだけに瓶詰してもらった、1本限定のレッべガアルの高級白葡萄酒なんです」
オオオオオオ――――…!
とたんに広間が騒がしくなった。
ま、それもそうだよね?
1本だけの限定葡萄酒、それも限定なんて、そうそう見ないからね。
「そうか... やはりネコ耳子爵だけあるな!」
今度ははっきりとネコ耳子爵て言った。
言ってから、つかつかと私近づいて来て...
チュー…
キ、キスされちゃったよ?
それも唇に!(汗)。
オオオオオオ――――…!
また広間が騒がしくなった。
「えー、コホン。それでは、続けます。次は... なんと、アリシア子爵です!」
プリシルさまが、魔王さまが、キス以上のことをしないためにか、すぐに“秘密のお友だち会”を続ける。
「え?」
魔王さまが引き当てられたすぐ後に私って、偶然すぎない?
「はい、お姉ちゃん!」
ビアがにこにこ笑って、きれいな包装紙に包まれた箱を渡してくれた。
だから、みんなの前で“お姉ちゃん”って呼ぶなって!
だれからの贈り物かな…
そんなことを考えながら、ドキドキしながら包装紙をとり、上品な薄いピンクの箱のフタを開けようとしたが...
はっと気づくと、回りを囲まれていた!
司会兼進行役のプリシルさま、ルファエル君、エイルファちゃん、エリゼッテちゃん、ビア、ジオンたち贈り物発見隊と、アマンダさま、リリスさま、ハウェンさま、マイテさま、お母さま、モナさま、ルナレイラお義姉さま 、アイフィさま、アンジェリーヌさま、ジョスリーヌさまたち王妃、それにギャストン伯爵、ペンナス伯爵、フロルフ夫人、スティルヴィッシュ伯爵、ゼナイデ夫人、マスティフ伯爵、マチルダ夫人、マーゴイ侯爵、 グジャラート子爵などなど…
押すな押すなの混雑だ!
私って、そんなに魅力あるの?
... いや、そうじゃなくて、
みんな、私が何をもらったかに興味があるみたい(汗)。
そっとフタを開けると―
中には、七色の虹...
じゃない、七色の下着セットがはいっていた!?
オオオオオオオオオオオオ――――…!
ひときわ、広間が騒がしくなった。




