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ネコ耳❤アリシアの魔王城日記  作者: 独瓈夢
二部アリシア子爵
43/316

第43章 アリシア子爵、授かり婚の後始末を手伝う

 ナッツシャ・エルーリスさんは、カリブが妊娠させた女の子の中で最年長だった。

魔王城でメイドとして働いているナッツシャさんは、19歳のラビットディオ(ウサギ人族)

城壁外の街に部屋を借りて住んでいた。彼女は両親を早くに失くし、身寄りなしの独身だった。


「わざわざお詫びに来ていただかなくても、わたしは妊娠したことを後悔していませんし、カリブ君を恨んでもいません。わたしは、カリブ君が好きですし、愛しています」

「ナッツシャは純真なんだから!モグモグ...これおいしいね?」

「そうよ!“わたし、カリブ君の子ども、大事に育てるんだ”って、お腹をなでなでているんだよ?モグモグ...」


口をそろえて言っているのは、ナッツシャさんの仕事仲間であるラビットディオ(ウサギ人族)の娘たち。先ほどから、マイテさまがマスティフ伯爵たちを見習って魔都で買って持って来た箱入りのお菓子をパクパクと遠慮なしに食べている。


「ナッツシャはね、とてもいい()なんだよ。赤ちゃんも生まれるって言うし、これを機会に、子どもがいないあたしたちがナッツシャを養女にして正式に娘にしようと思っていたんだよ。モグモグ... やっぱり高いお菓子はおいしいね!」


こちらは、ナッツシャさんが部屋を借りてる下宿のおばさんのゼルヤナさん。

カリブが“責任”をとらなくても、ナッツシャさんも生まれて来る子どもも心配なかったみたい。

それにナッツシャさん、子どもの頃からかなり苦労しているようでかなり出来ている人みたい。

14歳まで王子、それも将来お父さまのあとを継ぐ王位継承者として、甘やかされて我儘いっぱいで育てられたカリブにはお似合いの姉さん女房になりそう。


「そうですか。こんな仲の良いお友だちと養女にしてくれると言う親切な方がいたと知って安心しましたわ。魔王さまのおかげでカリブと結婚することになりましたけど、結婚式には、ぜひナッツシャさんの親御さんとして列席してくださいね!ご友人のキナラさんとイムラさんも来てくださいね?あとで招待状を送りますから」

マイテさまの言葉に、ゼルヤナさんは涙ぐんで感謝し、仲良しメイドの二人はナッツシャさんと抱き合ってよろこんでいた。


 

 次の訪問先は、ファレーナちゃんの家。

ファレーナちゃんは、14歳の可愛いカニスディオ(イヌ人族)()でカリブの通っていた学校の3年後輩。ご両親は魔都の庶民街で居酒屋を経営していて、一人娘のファレーナちゃんが、将来は公務員か魔王軍の将校にでも嫁いで、お金に困らない暮らしができるようにと、名家や高官の子女が通う学校(月謝の高い)に通わせていたのだが、そこで転入して来たカリブに一目惚れ。

まあ、カリブはお父さまに似て男前だし、女の子を口説くのもお父さまに似て上手だからね... 


 だけど、13歳の未成年を妊娠させたのはカリブの責任だ。

マーゴイ侯爵夫妻の娘アミスラちゃんや、マスティフ伯爵夫妻の娘サエリー・ミランギ、それにナッツシャさんたちなんかの場合とは違う。

 アミスラちゃん、サエリー・ミランギちゃん、それにナッツシャさんは、15歳以上の成人なので肉体関係もその結果としての妊娠も、すべて“双方の合意のもとで行われた”と解釈される。

 まあ、妊娠なんて、望んでいるものや計画的なものを除くと誰も望むことではないけど、相手が未成年だと事情が一変する。いくら好き同士、愛し合っていたと言っても、相手が未成年の女の子だと、相手の男が成人であった場合は責任が問われるのだ。

 

 ルナレイラお義姉(ねえ)さまは、魔王さまとのお約束があると言うので行けず、私も午後からはワチオピア地方のお偉いさんが来ていたので通訳に駆り出されたので、マイテさまとお母さま、それにビアとモナさまで訪ねることになった。


 以下は、ビアから聞いたファレーナちゃんの御両親訪問の様子だ。

マイテさまたちが来訪を告げると、ファレーナちゃんの母親が二階の窓から顔を出し、「居酒屋の横にある戸を開けて上がってきてください」と指差して教えてくれた。


 住居は居酒屋の二階だったそうだ。

階段を上がると、ご両親はドアを開けて待っていた。

応接室に招き入れられてから、マイテさまがきれいな包装紙で包まれた菓子箱を出しだし、カリブの過ちを謝った。


「どうもこの度は、愚かな息子が多大なご迷惑をおかけして大変申訳ありませんでした。母親であるわたくしの監督不足、(しつけ)不足です」

「マイテさま、もういいんですよ。ファレーナはカリブ君にすごく惚れていましてね。いつもカリブさんって、とってもカッコいいんだよ!カリブさんって、とってもやさしいんだよ!って言ったんですよ。それにファレーナは子どもを産んだ後も学校を続けるって言ってますし」

「そうですよ。ファレーナを(はら)ませた男は、金持ち貴族の放蕩(ほうとう)息子じゃなく、ゲネンドル王さまの息子だったとわかったのですし、何より魔王さまがキチンと始末をつけてくださったんですから!」

ファレーナちゃんのお父さんのベイレーレさん、私たちのお父さま―元ブレストピア国王デルン・リッグラム・ゲネンドル元のことすごく尊敬しているみたいで、これからよい親戚付き合いが出来そうだとビアも感じたと言った。



 そして、最後に向かったのがケヤちゃんの家-と言うか、邸宅だった。

ケヤちゃんのご両親は、父親が法務省の高官、母親も法務大臣秘書官で共働きの家庭だった。

ケヤちゃんも、やはりカリブと同じ学校の生徒で13歳。カプリコルニディオス(カモシカ人族)のスラっとした手足が美しい娘で、ファレーナちゃんより一コ年下だった。

 

「どうもこの度は、愚かな息子が多大なご迷惑をおかけして大変申訳ありませんでした。母親であるわたくしの監督不足、躾不足です」 

広い応接室に通されると、マイテさまは例の箱入り高級菓子を差し出しながら謝った。

「まったくその通りざぁますわ!ケヤに最高の教育をあたえて、将来は貴族の子息の嫁にと考えておりましたのに、どこの馬の骨ともわからない男に妊娠させられてしまって!どう、責任をとってくださるのござあますか?」

最初からケヤちゃんの母親はまくし立てた。


「誠に申し訳ありません...」

マイテさまは、頭を下げ続け謝り続ける。

「そもそも、何で落ちぶれた元ブレストピア国の王の息子が、のうのうと魔都で暮らし、選ばれた子女しか入れない学校に行っているんござあますか?」

「おっしゃる通りでございます... わたくしがそばについていなかったのが、そもそもの間違いでした」

「大体、ガミガミガミ... クドクド... ガミガミ...」

「もう、よさないか?」

ケヤちゃんのお父さまが、止めさせようとしたけど、焼け石に水だった。

「あなたは黙ってらっしゃい!大体、あなたは法務省の高官なのに、なぜ法務大臣に言ってあのガキを禁固100年の刑にさせなかったんですか?」


 そこまで聞いたビアは「失礼します。急用を思い出しました!」と言って邸宅を抜け出し、全速力で魔王城に帰り、状況をルナレイラお義姉(ねえ)さまに伝えた。

 ルナレイラお義姉(ねえ)さまは、大へん驚いて状況を魔王さまに伝えた。

すると魔王さまは、ぐにルナレイラお義姉(ねえ)さまにガバロス親衛隊の護衛をつけてケヤちゃんの邸宅に向かわせると同時に私にも知らせて、会議を通訳していたのを予備通訳者にまかせて邸宅へ向かうように伝えさせた。


 私は、全力疾走でマイテさまたちがいる邸宅に向かった。

道案内のビアの速度も凄い。レオニディオ(ライオン人族)であるお父さまの血を強く引いたビアは、最近は私よりも体格がよく(大きく)なり、速度も私がついて行けないほどの早さだ(汗)。

「お姉ちゃん、早くっ、マイテさまとお母さま、あのカプリコルニディオス(カモシカ人族)癇癪(かんしゃく)持ちにツノで突き殺されちゃよ!?」

「こ、これでも全速で走っているのよ!ハァハァハァハァ...」


「ここよ!」

ビアが邸宅の門を飛び越え、呆気(あっけ)に取られている門番を尻目に石段を駆け上がって扉を開けて入った。

私も遅れて門を飛び越えようとしたが、もう飛び上がる力が残ってなく、門の鉄格子につかまってゼイゼイ息をしていると門番が親切に開いてくれた。

ヨタヨタと石段を上がっていた時、表通りが急に騒がしくなった。


カッカッカッカッ... 

カッカッカッカッ... 

いくつもの蹄の音とともに


ガラガラアラ... 

馬車の車輪の音が聴こえた。


「門番、家の主人に伝えよ!ルナレイラ王妃殿下と...」

「へ?ヘヘ――っ!」

カニスディオ(イヌ人族)の門番さん、石段で止まった私の脇を音速で通り抜け、いや、猛速度で通り抜けながら、大声で奥に向かって叫んだ。

「大へんです――っ、王妃さまが――っ、表に来ています――!」


10人ほどのガバロス親衛隊は、周囲をすばやく見渡して危険はないことを確認すると王室専用馬車のドアを開け、タラップを下ろし、ルナレイラお義姉(ねえ)さまが下りるのを手伝った。

続いて降りたのは、ナエリンダン侯爵だった。


「おう。アリシア子爵、早かったですな?」

ナエリンダン侯爵が、余裕ある表情で私を見て言った。

「ゼイゼイ... 何んとか間に合ったようです ゼイゼイ...」


「おおっ、これは大臣閣下ではありませんか!」

ケヤちゃんのお父さんが門番の叫び声を聞いて玄関に出て来て、ナエリンダン侯爵を見て驚いた。

「イーダン君。取り込み中のようだが、この件我が輩にも関係があるので行ってくれと魔王さまに言われてな。門番は最後まで聞かないで叫んでいたようだが」

「そ、それに王妃殿下まで?」

「うむ。ルナレイラ王妃殿下は、カリブ殿の実姉なのだ」

「ええっ、ルナレイラ王妃殿下は、カリブ君のお姉さま?」

そこに、ビア曰く、“癇癪(かんしゃく)持ち”のケヤちゃんの母親が出て来た。

「なんざまぁすの騒々しい!今、馬の骨の母親に親の躾けがどういうものであるかを... え? えええ――っ!王妃殿下と大臣さまぁ???」



 それから大騒ぎになった。

卒倒しかけたケヤちゃんの母親を夫の父親のイーダンさんが支え、メイドが水を持って来たり、応接室に連れて行ってソファーに寝かせたりして、ようやくひと段落着いたころに、ルナレイラお義姉(ねえ)さまとお水をもらってひと息ついた私も加わって、お話の続きがはじまった。


「困るねえ、イーダン君にレイレマさん? せっかく、今度副大臣のダナベルが定年退職するから、イーダン君を後任にと考えておったのに、ルナレイラ王妃殿下の弟君のことで... それも魔王さまのご慈悲で無事解決したと思っておったのに... 礼節を尽くして謝りにいらしたルナレイラ王妃殿下のご母堂に食ってかかるとは...」

「た、大へん申し訳ございません。妻にもよせと言ったのですが、どうも更年期であることもあって、止めることができずに...」

カプリコルニディオス(カモシカ人族)のイーダン氏、ツノを床にこすりつけて平謝りだ。


ガバッ!

突然、長椅子に寝かされていた、ケヤちゃんの母親のレイレマさんが、土下座した。

「ごめんなさい、ごめんなさい!ケヤは、私たちが年取ってから生まれた娘で目の中に入れても痛くないくらい可愛がっていましたので... それが、それが... 将来を楽しみにしていたケヤが... 妊娠したと知って ウーウウウウ...」

大粒の涙を流して泣きはじめた。


「いいのですよ、レイレマさん。心のわだかまりを全て吐き出して少しはスッキリしたでしょう? 私もルナレイラという娘がいますから、娘を持つ母親の気持ちはよくわかります」

マイテさまが、床にひざまずいて、ケヤちゃんの母親の背中をさすりはじめた。


「うむ。これで問題は解決じゃな? レイレマさんも、今度娘が結婚して可愛い孫が生まれるのを機に早期退職して、可愛い孫の顔を見て暮らしたらよかろう。イーダン君が副大臣になれば、収入も大幅に増えるから、レイレマさんが秘書官をやめても全然問題なかろう!」

ナエリンダン侯爵さん、すでに魔王さまから“入れ知恵”をされていたらしく、誰もがよろこぶ“解決策”を提示し、これにてカリブの巻き起こした問題もすべて解決したことになった。やれやれだ。


 このあとで、イーダンさんの昇格を祝って、またマイテさまとレイレマさんが仲良くなったことを祝って、ナエリンダン侯爵さまとマイテさま、お母さま、モナさま、ルナレイラお義姉(ねえ)さまも加わって、夜遅くまでお酒を飲んだそうだ。

 私はあまりにも疲れたので、ルナレイラお義姉(ねえ)さまの馬車をお借りして魔王城に帰り、さっさとお風呂に入ってから夕食も食べずに寝てしまった。


 

 カリブが士官学校に入学してから少しして、軍は彼と彼の家族用に、寝室が3つある宿舎を2軒用意したと知らせた。宿舎は1戸建てではなく20軒いっしょの共同住宅で、通常は5人家族に1軒提供されるらしいけど、カリブは妻が5人いて、それに子どもが生まれたら大家族になるので2軒提供されたのだとか。

もちろん、家賃はタダだし、隣接した宿舎なので軍の許可をもらって壁に扉をつけて中から両方の家に行き来できるようにするらしい。

 マイテさまは、当初はカリブと嫁たちと孫たちといっしょに住むつもりだったらしいけど、お父さまと正式に離婚したあとで魔王さまから魔宮殿に住むように言われ、私たちと同じ階に部屋をいただいて住むことになった。




 そして一ヵ月後― 

大聖堂でカリブと5人の花嫁の盛大な結婚式が行われた。


 直接的ではないが、間接的に魔王さまが“仲人”をしたような結婚であり、ルナレイラ王妃の弟の結婚式ということもあって、私たちが知らないような招待客が多数参列して、私たちを戸惑わせた。

 マスティフ伯爵夫妻とマーゴイ侯爵夫妻、それにナッツシャさんや下宿のゼルヤナおばさん、友人のキナラさんにイムラさん、ファレーナちゃんのご両親ベイレーレさんとジリヤさん、それにケヤちゃんのご両親のイーダンさんとレイレマさんも、彼らの親族たちも、内外の王侯貴族たちにに高官たちや軍の将軍たちが参列しているのを見て大へん驚くと同時に感激していた。


 ん?


なぜ、魔王さまの王妃の弟の結婚式に、これだけの招待客が呼ばれたのかって?

それは、魔王さまはカリブの結婚式を利用して、マイテさま、お母さま、それにモナさまとの結婚式も挙げたからよ!


 まったく、魔王さまは抜け目がないんだから。

あれだけ招待客を呼び、盛大な結婚式を挙げることで、マスティフ伯爵、マーゴイ侯爵、それにナッツシャさんやファレーナちゃんやケヤちゃんの親たちを感激させると同時に“恩を売り”、魔王としても威厳さを見せつけ、そしてちゃっかりと自分の新しい妻たちの結婚式も行うなんて... 


あの転んでもただは起きない(たくま)しさは、私も見習わなければ。




ネコは短距離選手ということで、アリシアは数キロ走ってダウンしました。

ビアもネコ族であるレオニディオ(ライオン人族)のハーフなのになぜダウンしなかったのか?それは、ライオンは体力もあり、速度もネコより速いため、余裕をもって走れるからです。




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