第41章 アリシア子爵と魔王
いよいよ第二部のスタートです。
エピソード・タイトルも『アリシア子爵』に変わりました。
魔王さまの名裁判で、カリブの引き起こした醜聞も無事に解決することができた。
だけど、あの判定は、おそらくアマンダさまあたりの提言があったのだと思う。
まあ、魔王国が民主国家ではないことは知ってはいたけど、裁判の結果まで決めちゃうとはね…
とにかく、あの裁判の事は魔都の新聞でも大きく報じられ、カリブの名前とともに未成年の娘二人の実名もデカデカと大きなタイトルで報じられた。
ただ、マスティフ伯爵マーゴイ侯爵の名前も、二人の娘たちの名前も載らなかった。
そりゃね、新聞社もバカじゃないから、現役の、それも魔王国の英雄であり、魔王さまのお気に入りの二人の将軍の名前や娘たちのことなど記載するわけがないんだよね?
裁判では、カリブは20年間軍務につくこと、それと5人の妻と生まれて来る子どもを養うことが義務付けられたけど、どうやって一軍人が母子合わせて10人もの大所帯を養って行けるかって、みんな心配していたけど、あとで詳細を聞くと、十分に養って行けることが分かった。
まず、カリブは魔王軍の士官養成学校に放りこまれる。
そこで2年間ほど魔王軍の将校になるための教育や軍の訓練をびっちりと受けるわけだけど、その時分ですでに金貨1.5枚ほどの月給が出る。
金貨1.5枚ってすごく安そうだけど、これは“仕官候補生としての基本給”であって、これに扶養家族手当が、家族が多いために、なんと金貨10枚付くのだそうだ!
あと、生活手当とか何んとか手当とかかんとか手当とかで金貨5枚ほどついて、しめて総額金貨16.5枚となり、悠々とした生活が送れるるのだって!
宿舎は無料だし、家族がいるので毎晩家(宿舎)に帰れるし、これで2年後に将校になれば、基本給も金貨3枚となり、そうなると、今度は将校手当とか何んとかで手当がまた増えるらしい。
その後も、問題さえ起こさなければ、順調に昇格していくので将来もまったく心配ない。
魔王国で軍人さんが、いい暮らししているわけが、これでよく分かった。
マイテさまは、今回の事件をきっかけに、アマンダさまを通して魔王城にカリブと5人の嫁たちといっしょに住む許可を魔王さまに求め、すぐに承認された。
まあ、マイテさまはヤーダマーの塔にお父さまといっしょに住んでいると言うだけで、夫婦関係なんてとうの昔(半年ほど前から?)なくなっちゃっているからね。
お父さまも引き留めなかったらしい...
娘としては何とも残念なことだけど、夫婦のことだけは、子どもが口を突っこめるものではない。
マイテさまは魔王城に引っ越して来てから、お母さまとモナさまと相談して、今年中にお父さまと離婚するっておっしゃっていた。それを聞いて、お母さまとモナさまも離婚を真剣に考え始めたみたい。
魔王さまは、カリブの結婚式に出席したあとで、またワチオピア地方の太守たちとの交渉とかでアマンダさまたちを連れて出かけられ、しばらく魔王城を留守にされることになった。
魔王さまは、カリブの結婚式の費用をすべて払ってくれたそうだ。
「マスティフ伯爵とマーゴイ侯爵は、魔王国にとって英雄だ。その彼らの娘の結婚を、王である私が祝ってやるのが当然であろう!」
と言って、マイテさまが、私やお母さまからお金を借りて払おうとしたのを断ったとか。
これは例によってビア経由で情報源はマイレィちゃんなんだけど。
まあ、マイテさまが、私がお貸ししたお金を全額返してくれたので、そんなことだろうとは想像していたけどね。
ルーボードタン連邦管理局の通訳・翻訳業務についているおかげで、魔王国と連邦加盟諸国や、同盟国、それに現在、交渉が進展しつつあるワチオピア地方やボットランド地方との交渉状況とか、ダユーネフ国北西部部の貴族たちの間で不穏な動きがあることなどが分かった。
なぜ分かるかと言うと、報告書を翻訳するのは私たちの部署だからだ。
私は翻訳能力がずば抜けているので、ほかの翻訳者が翻訳した文書を確認・修正する役目をまかされている。
それに、連邦管理局は、外務省の管轄下にあることもあって、私の属する通訳・翻訳課には、外交文書や在外公館などからの報告書なども翻訳のために回ってくるわけで、その結果、ほぼすべての外交関係および連邦関係の連絡・報告書が私の目を通ることになるわけで、魔王国(連邦)と関係諸国(加盟諸国)との関係とか問題とかがすべて分かってしまうのだ。
もちろん、分かるのは外交関係だけで、軍事関係のことは全て魔軍省とか参謀部とかに行くので、戦争の方の情報は何もわからない。
当然、私は公務員なので、職務上知りえた情報を関係者以外に漏らすことは出来ない。
もし、そんなことをしようものなら、国家機密漏洩罪で即逮捕、重罪確実だ。守秘義務のある公務員だと罪はさらに重くなる。なので、家族にも仲良し三人組にも誰にも話すことはできない。
そして、1週間後―
魔王さまが帰って来られた。
夕食時に、魔王さまの顔を見ると、ワチオピア地方の太守の娘たちとの結婚話は、かなりうまく行っているらしいと判断した。
夕食後、いつも通りに団らんの間で魔王さまが葡萄酒を飲みながらくつろいでいた時に、マイテさまが魔王さまに近づいて、カリブの結婚式のことのお礼を述べているのがネコ耳に聴こえた。
「愚息カリブの結婚式では、披露宴の費用を払って頂きまして、誠にありがとうございます。かかった費用は一生かかっても...」
「ああ、そんなことはよい。それよりも、あなたもラーニア夫人もモナ夫人も、今年中にゲネンドル殿と離婚すると聞いたが?」
ゲっ、魔王さま、耳が早い!どこでその情報を...
はっとしてビアを見ると、小さく舌を出した。
そうだよね。いつも情報もらうばかりじゃ不公平だもんね…
こちらの情報も流してあげなきゃ、向こうの情報も聞きにくいという事ね。
「はい... デルンさまには、もう若い娘が六人もいますので... わたくしは、ここで魔王さまのお情けによって、カリブとルナレイラのもとで暮らすことを決めました」
「ふむ。それは確定した事なのかね?」
「はい。すでに決心しております」
「わかった。では、マイテ、そなたに今晩家族風呂に参加することを命じる!」
「え?......」
魔王さまは、目を白黒させているマイテさまを残して去ってしまった。
“ま、魔王さま... 今度は、夫に見捨てられた人妻をモノにするつもり?”
それに、“マイテ”って呼び捨てにしたよ?
お母さまも、マイテさまが魔王さまのところに行った時から耳を澄まして聞いていたみたいで、唖然としていた。
「いやだ... 今度はわたくしたちの番なのかしら?」
ラビットディオで、フェリノディオ並みに聴覚が優れているモナさまが、もじもじと足を動かしている。
モナさまの反応は、“もし、魔王さまに言い寄られたらどうしよう!”という心の不安(期待?)の表れだろう。
「ま、魔王さまが... 家族風呂に招待してくださったわ。どうしましょう...」
半分放心したような足取りでマイテさまがもどって来た。
「魔王さまのご命令は絶対ですわ。背けば、カリブ君や嫁たち、それにルナレイラちゃんに何が起こるか分かりませんわ!」
「!」
モナさまが、まるでアマンダさまが乗り移ったかのようにビシッと言った。
それからが大へんだった。
例によって、プリシルさまからマイテさまに、“家族風呂”に参加するための衣類一式が送られて来た。
そう、私たちが最初に頂いたような、透け透けのネグリジェと色っぽいおパンティとブラジャー、それにナイトガウン。
マイテさまは、侍女が届けたそれらの衣類を手にとって、顔を染めた。
いや、その恥じらい方、きっと男心、いや魔王心をくすぐるよ?
1時間後―
私たちは、五人そろって大浴場へ向かった。
私やお母さまやモナさまは慣れているし、ビアはまるで温水プールにでも行くようにピョンピョン飛びながら、うれしそうに前を歩いている。
「何だか、まるでハダカで歩いているような気分です...」
侍女とかメイドさんとかに通路で出会うと、マイテさまは顔を伏せ、ナイトガウンの前を手でしっかりと押さえた。
まあ、あんな透け透けネグリジェに色っぽい下着をつけていたら、そんな気分にもなるよね?
私やお母さまやモナさまは、もう慣れっこになっちゃっているから、ナイトガウンの前が開こうが、色っぽいブラジャーや刺激的なおパンティが見えようが全然平気なんだけど。
慣れってこわいわね...
ちなみに、大浴場の区域は男性禁止の区域なので、男には会わない。
唯一、この区域に入っていい男性は魔王さまだけ。
だから、私たちは下着が見えようが、素っ裸で歩こうがぜんぜん構わないんだけどね。
恐る恐るといった感じで大浴場のドアをくぐったマイテさま。
脱衣所でみんなが恥ずかし気もなく、ぱっぱと夜着を脱いでハダカになるのを見て、マイテさまは入って来たばかりのドアの方へ数歩下がった。
きっと走って逃げだしたかったのね。その気持ちは“経験者”にはよくわかるわ。
私たちは、何も言わなかった。
彼女は立派な大人だ。モナさまも言うべきことはちゃんと言った。
それでも彼女が逃げ出したいのなら、あとは全て彼女の責任だ。
私たちが大浴場へのドアを開けて入ってから少しして
マイテさまが、両手で下と胸を隠して入って来た。
そして、浴場の立派さと大きさに茫然となって、しばらく立ったままになっていた。
それもそうだろう。湯気で雲っていてよく見通せないだろうけど、浴場は50メートル以上の広さがあり、湯舟だけでも30メートルもあるんだから。誰でも、最初この大浴場に入ったら、その大きさと豪華さに息を飲んでしまう。私たちがそうであったように。
「マイテさま、魔王さまが呼んでいます」
湯気の向こうから、アマンダさまが呼んでいる。
「えっ?」
「マイテさま、早く行かないと魔王さまのご機嫌が悪くなりますわ」
「ただいま!」
モナさまにせかされて、お湯の中を、胸と下を隠して、懸命に湯をかき分けながら奥に進むマイテさま。
私は何気ないふりをして、湯気が立ちこめる中をマイテさまの数メートル後ろをついて行った。
後ろを見ると― 何とお母さまとモナさまも素知らぬ顔でついて来ていた?
魔王さまの姿が見えるところまで来た。
マイテさまは、魔王さまの5メートル程前にまで近寄って止まった。
魔王さまは、例の大理石で出来た玉座に座り、ルナレイラお義姉さまをひざの上に乗せていた。もちろん、ルナレイラお義姉さまをただ座らせているだけではないことは、魔王さまの体の動きとお義姉さまの顔の表情とせわし気な息から見て明白だ。
「ルナレイラ、続きはあとで寝室で...」
「はい...」
せわし気な息をしながら、紅潮した顔のルナレイラお義姉さまが、魔王さまのひざから下りてプリシルさまたちのところへ向かう。
近くに私たちがいるのを気づいているはずだけど、目を合わせることもなく、去って行った。
きっと、恥ずかしかったのだろう。
まあ、ルナレイラお義姉さま、すでに魔王さまの妻なんだし、夫婦がお風呂で仲睦まじく、あんなことやこんなことをしたりしても、誰も眉を顰めることはないんだけどね?
それに、ここは魔王さまの魔宮殿の大浴場なのだ。所有者である魔王さまが、所有する大浴場で、所有する妻や愛人に何をしようと自由なのよね(汗)。
「マイテ、ここへ!」
「え?」
魔王さまが自分のひざを目で示した。
たった今まで、娘が座って、あんなことやこんなことをされていたひざを。
「早く!」
容赦なしの厳しい語調だった。
「は、はいっ、失礼いたしますっ!」
ジャブジャブ...
ペタン(オシリをひざの上に置いた音)
「ふむ... やはり、尻はルナレイラよりずっとむっちりしておるな?」
「あ、ありがとうございます... フギュっ?」
あれあれ...
魔王さま、人妻にチューをしちゃったよ?(汗)。
まあ、“有効期限切れ間近の人妻”だけどね。
賞味期限切れ間近じゃないよ?
マイテさま、女性の性的魅力がもっとも大きいと言われる30代前半なんだから!
「ふむ... 胸はルナレイラほど大きくはないが、しっかりしておる」
魔王さまは、マイテさまが防御していた手を外すと、おムネをムニュムニュしはじめた。
「あ、ありがとうございます... あふぅん...」
あらあら... マイテさま、悶えていらっしゃるわ?
それから、魔王さまの手は、ずーっと下へ降下していって
お湯の中で何が起こっているかは推して知るべし。
詳細は省くけど、マイテさまの悶えはさらに激しくなって...
いつもはおしとやかなマイテさまは、どこか異次元へ行ってしまい、
異世界からやって来た別人のようにあえぐ女性がそこにいた(汗)。
「親子丼も悪くないな...」
魔王さまがつぶやくのが聴こえた。
えっ?親子丼てなに?
なんで、奇妙な食器の名前がここで出て来るの?
「モナ!」
マイテさまとさんざん遊んだ魔王さまは、ぐったりしてしまったマイテさまを解放すると、今度はモナさまを呼んだ。
「はいっ♪」
モナさまは、歌うように答えると―
バシャバシャ ピョ~ン
ウサギ飛びで魔王さまのひざに乗った!
「モナ」
「はい?」
「ゲネンドル殿とは一週間以内に離婚しなさい」
「はい。え?」
「マイテとラーニアにもそれを伝えなさい」
「は、はいっ」
「三人とも、私の妻になるのだ」
「魔王さま、大好き!チュッ♪」
モナさまとたっぷり、あんなことや、こんなことをしたあとは―
三人目の熟女である、お母さまが呼ばれた。
「ラーニア!」
「は、はいっ!」
お母さまは、当然すでに覚悟をされていたのだろう。
なぜか、うれしそうにシッポをふりながら魔王さまのところへ行った。
お母さま、私たちはカニスディオじゃないんだから、イヌの真似はしないで!
そして―
とうとう私も呼ばれてしまった。
「ネコ耳子爵!」
「ふにゃあ?」
「ここへ!」
「ふぎゃっ!」
魔王さまには、いろいろとお世話になっているから、せめて大浴場でのハダカのお付き合いには付き合わなければね(汗)。
グルグル... ふにゃ~ん
思いっきり甘えた声を出して、頭をすりつけネコ耳をこすりつける。
こうすると魔王さまは、ますますお元気になるのだ。
ただし、あまりお元気になり過ぎると、ネコ飛びでジャンプして逃げ出す。
いつぞやのように、お元気なったモノを入れられても困るので(汗)。
巧妙にオシリをずらして入れれれないようにする。
「こらっ、ネコ耳子爵、まだ奉仕が終わってないぞ?!」
魔王さまは、お元気になったモノを入れることが出来ずにイライラして大声を上げるが、ネコ耳東風で知らん顔をしつづけオシリをずらし続ける。
入れられそうになると、手でアソコを覆って防御する。
私と魔王さまの関係は、恋人でもなければ、愛人でもない。
将来の魔王の妻候補と言うだけで、婚約もしてないのだから、ただの魔王さまの“お気に入り”の『美女』の一人にしか過ぎないのだ。
(『美女』ということを強調しておく)
じゃあ、あの日、この大浴場であったことは何だったのか?
自問すると- まあ、雰囲気に負けて、やっちゃったってことね(汗)。
あれは一度は経験してみたかったし、処女なんて、お母さまたち大人が騒ぐほど大事にしておかなくてもいいって思っていたし...
それに、魔王さまは王妃さまが20人近くもいるっての。
誰でも好きな王妃さまで欲求不満を解消されればいいでしょ?
「くっ、ダブル親子丼の夢が...」
魔王さまの残念そうな声が聴こえた。
だから、親子丼って何なのよ―――?
テルースの世界地図(魔王国設立前)
テルースの世界地図(魔王国設立後)
テルースの世界の勢力図が分かりやすいように、地図をいれました。独瓈夢




