第33章 魔王、凱旋する
ヤーダマーの塔の大改修が進んでいるころ―
魔王国は、北部の隣国ダユーネフ国への侵攻を開始したみたい。
この情報も、ビア経由のマイレィちゃんが情報源なのだけど、ブリュストン伯爵さまもそのせいか、最近すごく忙しいらしく2週間ほどお会いしていない。
ブリュストン伯爵さまとは、マデンキで三日に一度ほど話し合うだけだ。
それも、ブリュストン伯爵さまに時間がある時だけ、向こうから連絡して来るのを待つしかない。
まあ、彼は軍人だし、参謀部とかいうところに務めているというので、戦争となれば忙しくなるのは当りまえだ。そう割り切らないと、会いたい気持ちを押さえるのが難しい...
お母さまとモナさまは、すでに教師の資格をとられて毎日授業をされている。
生徒は、ルファエル君、カリブ君、マイレィちゃん、ジオン君などのほか、閣僚や将軍たちの子弟たちなどだ。
お母さまとモナさまは、ヤーダマーの塔には最近は一ヶ月に一度ほどしか帰ってない。
それも週末に一泊して帰って来るだけ。以前のように二泊することはない。
どうも、お父さまの様子を見に行って帰って来るだけみたい。
お父さまは、若い侍女たちに夢中で、お母さまたちを必要としていないようなのが、魔王城に帰って来てからのお母さまたちの少し気落ちした感じからわかる。
マイテさまは、今は以前とは違った、正反対の問題を抱えている。
だけど「では、デルンさまは、若い侍女たちにまかせて、わたくしは魔王城でルナレイラとカリブといっしょに暮らさせていただきますわ」とは言えない。
お父さまをヤーダマーの塔に残して、自分だけ子どもたちと幸せに暮らすなんて出来ない方なのだ。
その点、お母さまとモナさまは事情が少し違う。お母さまは、私とビアの親として魔王城に住むのを承認されたのだ。
そして、モナさまは“まだ若い”から- 恐らく、魔王さまがお気にいられて- 魔王城に住むことになったのだ。
こんな状況になってしまって―
ゲネンドル一族の一員として、私は正直悲しい...
だけど、この世の中、すべては変わって行く。
そして、人は新しい状況に対応していかなければならないのだ...
* * *
ダユーネフ戦役が終わったのは二ヵ月後だった。
ボットランド海で海戦でゾロリワン提督が大勝利したという知らせがもたらされ、魔都は沸き返った。
それから間もなくしてワチオピア地方から侵攻したダルドフェル公爵の率いる20万の魔王軍の精鋭が難攻不落と言われたナスガアル城をほぼ無血占領し、ダユーネフ国は無条件降伏をしたという情報が伝わって来た。
この時、ダユーネフ国の首脳と交渉するために、魔王さまとアマンダさまたち4人の魔王妃は、10日ほど魔王城を不在にした。
アイフィさまたち、魔術師部隊も大へん忙しいらしく、たまに着替えを取りに魔王城にもどって来た時にダイニングルームで急いで食事をしているのを見かけるだけで、
「アリシアちゃん、元気している?」
「はい。元気です」
とかの簡単なあいさつだけ交わしてまた慌ただしく戦地へもどって行った。
魔王さまのいない魔王城は、まるで魂の抜けた城のようだった。
朝食も昼食も夕食も、いつもたくさんの人で賑わう控えの間もダイニングルームも人が少なく、全然活気がなかった。
もう習慣のようになってしまっていた家族風呂も当然なく、私たちはめいめい自分たちの部屋のお風呂に入るしかなかったが、魔王さまといっしょのようなワクワクする気分も出ず、拍子抜けみたいな風呂だった。
ダユーネフ国に勝利したあとでの交渉に予想以上に日数がかかったのは、今回魔王さまはダユーネフ国を魔王国領とせずに、魔王国と周辺の同盟国が参加する連邦に加盟させるのに日数がかかったたためだとマイレィちゃんから聞いた。
なぜ、魔王さまがブレストピア国やマビハミアン国とは違った処置をダユーネフ国に対してとったのか私たちには分からなかったが、魔王さまなりのお考えがあってのことだろう。
そして全ての交渉が無事終わり、魔王さまは約一ヶ月ぶりに魔王城へ凱旋された。
堂々と魔王軍の精鋭を引き連れて魔都を行進する魔王さまを見て、私の目からはなぜか涙が出て止まらなかった。
魔王さまは、魔王城に帰って来られてから戦勝を祝って三日間の特別国家休日を宣告された。
魔王城では、昼間から大ホールで戦勝祝賀会が開かれ、山海の珍味やご馳走が山ほど並べられ、みんな上機嫌で酒を飲み、ご馳走を食べ、よくしゃべり、踊った。
そして、夜の8時になった時―
白ヒゲの侍従メエゲレスさんのしわがれ声が、“すぴーかー”とみんなが呼んでいる、魔法陣を利用した音声伝達装置から流れて来た。
《メェ。今宵は久しぶりに魔王さまが、王妃ならび関係者の皆様方を家族風呂にご招待されます。8時半に大浴場集合ですので、遅れることのないようにお願いします。メェ!》
その放送が流れた直後、大ホールではちょっとした混乱が発生した。
一ヶ月ぶりに魔王さまといっしょにお風呂に入れるのだ。
王妃さまたちや恋人たち、それにそのどちらでもない私たちは、目の色を変えて垂直移動部屋に殺到した。
だけど-
走ることにかけて、フェリノディオに敵うのは、パンサニディオスくらいなものだ。
位置的に垂直移動部屋がある通路にもっとも近いところにいた私は、フェリノディオ族の驚異的な身体能力で通路の方に向かって大跳躍をした。
10メートルは飛んだと思う。
みんなが“何かが頭の上を通り過ぎた”と思った時は、すでに着地して、通路を猛ダッシュしていた。
誰よりも早く到着し、垂直移動部屋に入る直前に通路をちらっと見て見ると、ビアがピョーン、ピョーン、ピョーンと人々の頭の上を軽々と飛んで、垂直移動部屋のドアが閉まる前に中に滑りこんで入った。
お母さまが、やはり猛ダッシュでこちらに向かって突進しているのが見え、そのちょっと後ろをモナさまがピョンピョン飛んでこちらに向かっているのが見えた。
お部屋のある階に着くと、ビアと競争で部屋に向けて走り(私が勝った!)、ドアは開けっ放しでポンポンと服を脱ぎ捨て、着替えの下着を小袋に入れると白のベビードールを着て、その上からバスローブを羽織って、ふたたび猛ダッシュで垂直移動部屋へ向かった。
「あーん、お姉ちゃーん、待ってよ――!」
パジャマを着るために暇取っている妹を置き去りにして(薄情と言わないで!)
垂直移動部屋の降下ボタンを押した時、隣の垂直移動部屋からお母さまとモナさまが飛び出したのが見えた。
地上階に着くと、三度猛ダッシュして、魔宮殿の裏側にある大浴場へ突進した。
途中で、すれ違った従者や侍女たちが、猛速度で走る私を見て目が飛び出るほどおどろいていた。
そして― メエゲレスさんのしわがれ声を聞いてから、5分としないうちに大浴場に着いていた。
我ながら新記録だと思う。さすがに息は荒くなっていたけど、深呼吸をして両開きの大きな扉を開けた。
“もしかしたら、アマンダさまが先に来ているかも?
それとも魔法を使えるアイフィさまかヴァスマーヤさまが…”
と思ったが、入口の脱衣場の棚には、誰の服も見当たらなかった。
さっさとベビードールを脱ぎ、下着を脱いでハダカになると浴場へのドアを開けて入った。
湯気がもうもうとしていて、奥の方はよく見えない。
「魔王さま、いらっしゃいますか?」
大きな声を出すのは恥ずかしいので、ふつうの声で呼んでみた。
それでもすごく恥ずかしかった。
「ネコ耳か?私はここだ。来なさい」
“よかった!”
ふーっと胸をなでおろしながらお湯の中に入って、ジャブジャブとお湯をかき分けて湯気の立ちのぼる中を奥へ向かう。
「おまえが一番乗りか?」
「そうみたいです」
「ふむ。では、褒美をやらねばならんな?」
「え、ご褒美?」
「何がいい?」
「...わかりません」
魔王さまは、大浴場の一番奥の大きな大理石造りの玉座にどっしりと座っていた。
そのお姿を見ると―
ドックン...ドックン...ドックン...
心臓が高鳴った。
「なんだ、緊張しているのか?」
「は、はい」
「私と風呂に入るのは初めてではなかろう?」
「二人きりは初めてです...」
「そうか...」
私は魔王さまの前に立っていた。
魔王さまは、私の躰を上から下までじっくりとご覧になった。
15歳になって、オトナになって、自分の体をいくぶんオンナらしくなったと思ってはいたけど、
やはり異性である魔王さまから見られるのは恥ずかしい。
それも、すでにオッパイや恥ずかしいところを見られたことのある魔王さまだけど
やはり恥ずかしい。いや、もっと恥ずかしい
「オッパイが少し大きくなったな?」
「少しじゃありません。かなり大きくなりました!」
ムキになって言い返してしまった。
「どれどれ...」
さっと腰を引き寄せられると、あっという間にひざの上に乗せられ、
ムニュムニュと胸を揉まれた!?
「ま、魔王さまっ、私には恋人がいます!」
「それがどうした?」
ムニュムニュ...
「恋人もさわってない胸を...」
「私は魔王だ。魔王城に住んでいるオンナは、好きなようにする!」
「そ、そんなことを言っても...」
魔王さまは、私の抗議など一向に意に介さず、ムニュムニュ...を続けた。
ムニュムニュしながら、ボタンを弄る。
すると、あら不思議。魔法でもないのに、ボタンがポッコリと浮き出ちゃった(汗)。
「尻もしばらく見ないうちに少し大きくなったな?」
「少しじゃありません。かなりふっくらとなりました... ふむぎゅっ?」
キスをされた!
そして...
私はキスを受け入れた...
キスは、かれこれ半年ほど前に、魔王城に来てしばらく経った頃に
魔王さまに直訴したという罪(理由)で、彼の部屋でムチ打ちの刑に処せられた時以来だ。
ブリュストン伯爵さまとは交際は始めたけど、まだ手を繋ぐくらいの関係でしかない。
おまけに今回のダユーネフ国との戦争で伯爵さまもかなり多忙だったようで、一ヶ月以上もお会いしてなかった。
青春真っ盛りの私としては、恋人に力強く抱きしめてもらいたい、熱く、身がとろけるようなキスをして欲しいと心の中では渇望していた。
魔王さまは、私の“欲求不満”を見抜いていたかのように、熱いキスをしてくれた。
「あむむむ...」
魔王さまのひざの上で、私は目を瞑って熱いキスを堪能した。
いや、オトメが堪能なんてハシタナイ言葉を使っちゃあいけない。
だけど、堪能って言葉以外に、あの時私が感じたことを言い表す言葉がない。
“それにしても、まだ誰も来ないのはなぜ?...”
たぶんわたしが大浴場に来てから、すでに10分は経っている。
私がこんなに早く来れたんだ。ビアがすぐ後から来るはずだし、
足の速いお母さまとモナさまも、少し遅れて来るはずなのにまだ誰も来ていない。
まるで大浴場の時間がゆっくりと流れているみたいな奇妙な感じだ。
気がつくと―
魔王さまの“男性の象徴”が、えらくご立派になっていた!?
そして、私の“神聖な区域帯”に当たっている!(汗)。
その状況に気づいておられるのか、どうかわからないけど、
魔王さまは私をキスし続け、見事に成長したムネをさわり続けていた。
私は、もう躰がふにゃーっと柔らかくなり、ダラーっとなって
魔王さまのするがままになっていた。
魔王さまに、たくさん可愛がって欲しかった。
もっともっと私を構って欲しかった。
「ネコ耳」
「ふにゃ~い?」
「おまえはもうオトナだな?」
「ごろにゃ~ん」
「では、今から、私がオンナにしてやる」
「ふにゃ~い?!」




