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ネコ耳❤アリシアの魔王城日記  作者: 独瓈夢
第一部 ネコ耳アリシア
30/316

第30章 魔王の結婚式(後編)

 創造主を祭った祭壇の前で、誓いのキスが行われた。


魔王さまはルナレイラお義姉(ねえ)さまのピンクの唇にキスをした。


 5秒たった... 

 招待客たちは固唾を飲んで注視している。


 30秒たった...

 招待客たちが少し騒めきはじめた。



 1分たった... 


 ルナレイラお義姉(ねえ)さまの息が荒くなったのがわかった。

 呼吸を止めていたらしい。



 5分たった... 


招待客たちの騒めきがかなり大きくなり

義姉(ねえ)さまが、そっと目を開けて驚いた眼で魔王さまを見た。


義姉(ねえ)さまの鼻息が荒くなった。

それは、もちろん口を塞がれているせいもあったけど― 


かなり興奮しているみたいだった!?



「え―っ こほん!」

祭司を務めるアイフィさまが、“もう、このへんでよろしいでしょう?”との意味をこめた咳をする。


ようやくルナレイラお義姉(ねえ)さまから離れた魔王さま。


ワ――ワ――ワ――!

パチパチパチパチパチ...... 

二人を祝福する歓声と拍手が鳴り響く。



魔王さまを見つめるお義姉(ねえ)さまの目は潤んでいた。

けど... 

いくら何でも、あれは魔王さま、やりすぎだわ。

本当に魔王さまって、根っからスケベなのかしら?


 参加者たちに祝福されて、魔王さまとルナレイラお義姉(ねえ)さまは、腕を組んで大聖堂から出て、王室専用馬車に乗って、披露宴が行われる魔王城へ向かった。

 私たちも続いて大聖堂の大きな青銅の扉から出た時、一人の年老いたカニスディオ(イヌ人族)の男に呼び止められた。


「ゲネンドル王陛下!」

「ん?」

「やはり、陛下でございましたか... お久しゅうございます お元気そうで... ワオワオワオオオ...」

何と、その年老いたカニスディオ(イヌ人族)の男はお父さまの手をとると泣きくずれてしまった。


「おまえは!」

「グロッピンさま?」

お父さまとマイテさまが、同時に叫ばれた。


「えっ、グロッピンさま?」

「侍従長、生きていたのですか?」

お母さまとモナさまもおどろいている。


「は、はい。何んとか生きておりました...ワオワオワオオオ...」

ポロポロと涙を流して大声で泣き続ける元侍従長と大聖堂の出口で話していては、みんなが出るのに邪魔になる。

「ほかの誰でもない、グロッピンだ。親衛隊の許可をもらって、魔王城にまでいっしょに来てもらうことにしよう」

「デルンさま、その必要はありません。わたくしが許可いたします」

様子を見ていたプリシルさまが、即座に許可された。



 馬車に乗りこんでから、あらためて話を聞くと、魔王軍がイヴォール城に乗りこんだ時、城を守っていたブレストピア軍は、全員武装解除されたあとで、魔王さまからお話を聞き、全員魔王軍の傘下になったのだそう。魔王軍に降伏した軍が将兵もろとも魔王さまに忠実な将兵になったって話、これまでもいく度も聞いていた話であって、別段新しい話でもないのだけど、グロッピンさんは、「魔王さまに仕えないか?」と訊かれた時に、持ち前の頑固さで、「魔王の家来になるなど真っ平ごめん!」と啖呵を切ったのだそう。

 それで、魔王軍の指揮官は、「ならば、好きにするがいい!」と言って、身の回りの品を持たせてイヴォール城から追い出されたのだとか。


 公爵であったグロッピンさんだけど、所有していた公爵領もすで魔王軍に没収されてなく、王都にあった公爵邸の使用人に蓄えていた金を分けあたえて暇をやり、残った金を持って夫人といっしょに親戚を頼って海辺へ行ったらしい。

「その後、陛下と王妃さまたちが、全員、鬼人族国軍によって捉えられ、死刑にされたと噂で聞きまして...」

やはり、世間一般では、そういう噂がまことしやかに広まっていたらしい。

「老妻も、陛下ご一家がみんなお亡くなりになったと聞いて、力を落とし、持病が悪化して1年後に亡くなりました...」


 見たところ、グロッピンさんの身なりは、結婚式にふさわしい服装をしていた。

しかし、着ているフロッグコートは皺だらけで、シャツの襟もヨレヨレで、以前ほど豊かな生活をしてないことはひと目でわかった。

 親戚を頼って行ったと言ったけど、この分ではその親戚とやらもあまり厚遇してくれなかったようだ。

現役時代の公爵であったならば、“友人”、“親族”がグロッピンさんを通して王家との繋がりを強め、何らかの利益を得ようとグロッピンさんを丁重に、それこそ下にも置かずに扱っただろうけど、滅びた王家の元公爵なんて、構っても何の得にもならない。


 その海辺に住む親戚も、グロッピンさんが公爵であった時代には利益を求めて、何かとグロッピンさんと交流を持っていたかも知れないけど、落ちぶれた元公爵には冷たかったらしい。

 友人・親戚なんて、みんなそんなものだ。こちらが羽振りのいい時には、ちやほやするけど、こちらが落ち目になると疎遠になるのは、私たちもよく知っている。


「それで、グロッピン、これからどうするつもりだね?」

「はあ...海辺の家に帰って、海を見て余生を過ごします」

「そうか...」


馬車が魔王城の門をくぐった時、お父さまがお母さまさまに耳打ちするのが聴こえた。

「ラーニア」

「はい」

「どなたか、王妃さまにお願いして、グロッピンに披露宴にふさわしい服を用意してもらえんだろうか?」

「承知しました」


「それにしても、カレブ王子さまも、アリシア王女さまも、ビア王女さまも、ずいぶんと大きくなりましたね!」

グロッピンさんは、私たちを見て目を細めた。

イヴォール城から出て、早3年近くになる。

そりゃ、子どもは3年もしたら大きくなるわよね?


「カリブ王子さまは、王陛下そっくりですな?」

「お父さまそっくりって言ってくれて、うれしいよ、グロッピンさん!」

「アリシア王女さまも、ずいぶんと大人になられて... 背丈もラーニアさまとあまり変わらないですな?オッパイの方も... ま、まあ、そこそこに成長しているようで」


わ、私のオッパイがそこそこに成長しているって、失礼な!

王女であったならば、お父さまかお母さまに言って、即打ち首に…

できるはずもないか。元侍従長には、みんなすごくお世話になっているし、元王女である私に面と向かって「オッパイ云々」なんて遠慮なしに言えるのも彼くらいだ。


「アリシアはね、グロッピンさん、わたくしの方を強く引いたらしく、これ以上胸は大きくなりそうもありませんの」

「でしょうな。王陛下の愛妾(おめかけ)に、あ、失礼!」

「構いませんわ。愛妾(おめかけ)だったのですから」

「その...王陛下がクレメア王妃さまを亡くされた悲しみを少しでも和らげようと、見目麗しい侍女を...」


愛妾(おめかけ)といっても構いませんわ」

「その...側女として、ラーニアさまとモナさまの名前が上がった時、儂は“胸が小さい”と言って反対したのですがな... 侍女長のモルガナが、“マイテは、気立てが良くてやさしい、良い娘ですっ!”って言い張りましてな。“女は胸の大きさより、心のやさしさです!”と言われて、渋々了承したのですが...」


「モルガナさま、なつかしいわ...」

「本当になつかしいですわね。とても厳しかったけど、よく私たちのことを知っていましたわ」

お母さまとモナさまが、あの怖かったオバサン侍女長をなつかしがっていた。

「同様の理由で、胸がそれほど大きくなかったラーニアさまとモナさまも、モルガナが、是非ともあの二人も陛下の側女にと主張しましてな... 誰も反対できませんでした」


「それにしても、わたくしたちの胸のことで、グロッピンさんが、それほど反対されたとは知りませんでしたわ」

「わたくしも、その話は初めて聞きます」

「どうも失礼仕りました。つい、みなさまに再会できたうれしさのあまり、口が軽くなってしまいました。年のせいでしょう、お許しください」

「いえいえ。興味深いお話でしたわ」

「我が輩、いや、私もその話は初めてだ。色々と苦労をかけたな、グロッピン」

「とんでもございません、陛下... ワオワオワオオオ... 」

グロッピンさん、また大きな目からポロポロと涙を流しながら大声を出して泣いた。


ひとしきり泣いたあとで、ビアを見てから言った。

「ビア王女さまは、すでにあの頃から胸が出ておりましたが、立派なオッパイになりましたな?」

「そうでしょ、そうでしょ?男の子たち、みんなワタシの胸を見るのよ!」

ビアが... ク〇っ!これ見よがしに胸を張っている!



 *    *    * 



 大聖堂での結婚式の後で魔王城の大ホールで披露宴が開かれた。

ピ―――皇帝夫妻やアガピウス教皇にエテルナール教の大神官たち、それに魔王国の閣僚、将軍たち、同盟国の王侯貴族や将軍たちが参列し、たいへん賑やかな披露宴となった。


 何度も何度も祝杯があげられ、ルナレイラお義姉(ねえ)さまは、お顔が赤くなっている。

あれは、紅潮しているだけでなく、シャンパンがかなり回っている感じ(汗)。

 まあ、結婚式なんて一生に一度のことなんだから、思いっきり楽しんで、幸福感を感じて、お酒にも酔っぱらって、やさしく魔王さまに介抱されていただけばいいのよ。


 あ、介抱っていうより、今夜はお義姉(ねえ)さまにとって初夜になるのか?

結婚初夜って、どんなのかしら? 愛の(しとね)で、やさしくお婿さんにキスをされて、ウエディングドレスを脱がされて、ハダカになった私の上に、ハダカになった筋骨隆々としたブリュストン伯爵さまが重なって来て... 


キャ――――ッ!

な、なんてコトを私は想像しているの?

なんで、お義姉(ねえ)さまと魔王さまの初夜の空想が、私とブリュストン伯爵さまとの初夜(?)空想に入れ替わっちゃったのよ?


あ~あ... 魔王さまにムチ打たれて以来、私はハシタナイ女になっちゃたのかしら?

あ、またボタンとアソコがビリビリする感じ... ったく、もう!またあの『地獄温泉』に行って療養しなきゃならないのかしら? 


ブリュストン伯爵さまは、大聖堂でちらっと遠くで見た切り、会ってない。

どこかにいるのだろうけど、人混みがすごくて、どこにいるのかまったくわからない。

あ、グロッピンさんが、見違えるほどの礼装になって、元ブレストピア国の貴族たちと話している。

お母さまが、プリシルさまに話して、誰かの礼服を借りたのだろう。

貴族たちも、懐かしがっているみたい。


 ん?一人の娘がグロッピンさんに近寄った?

あ、マルカだ。マルカもグロッピンさんを覚えていたのね?

ペコペコとグロッピンさんに頭を下げている。


「オウ!あのマルカか?ずいぶんときれいになって!オッパイはあいかわらずだがな!ワオワオワオオオ――ン!」

あのジイさん、泣き声と笑い声がいっしょじゃない?

「んまあ!グロッピンさま、レディーに対して失礼ね!わたしのオッパイは、大きいですよ!」

「そうか?どれどれ!ムニュムニュ...」

「きゃあ!」

あのジイさん、マルカの胸を揉んじゃった?

何て、スケベな元侍従長だろ?


 だけど... 

マルカ、何だか楽しそう?

いやいや、相手は60歳過ぎているおジイちゃんだよ?

遊びたいのなら、もっと若い男の子を選びなさいよ。



 そのあとで、私はマイレィちゃん、エイルファちゃんとエリゼッテちゃんといっしょになって、たくさんご馳走を食べたり、おしゃべりをしたりした。


 そして、お待ちかねの花婿・花嫁による踊りが始まった。

楽団が音楽を奏でる中、魔王さまとルナレイラお義姉(ねえ)さまは、本当に楽しそうに踊っていた。

だけど、私はルナレイラお義姉(ねえ)さまの足元がふらついて、踊りながら、何度も魔王さまに支えられているのを見た。お義姉(ねえ)さま 、ずいぶんと酔っているみたい...


 花婿・花嫁による踊りが終わると、今度はみんなが参加できる踊りだ。

お父さまは、マイテさまと踊りはじめ、ほかの招待客たちも次々と踊りの輪に加わる。


私がボケーっとみんなが踊っているのを眺めていると― 

「アリシア王女さま、一曲踊っていただけますかな?」

そう言って、にこやかに笑いながら現れたのは、泰山王こと、ガァンツックさんだった!

今日は、また見違えるように華麗な服を着ている。

縮れた黒髪と両耳の上から出ている長いツノがなかったら、十王の一人とは気づかないくらいだった。

「はい。よろこんで!」

ガァンツックさんは、私の手をとって、軽々と踊りはじめた。


「今日は、また一段とお美しいですね!」

乙女がよろこんじゃう誉め言葉を知っている!

「どうもありがとうございます」

「いえいえ、お世辞ではなく、本当にそう思っていますよ?」

「そうですか?」

「恋する乙女は、さらに美しくなると言いますからね」


そうか。

私は“恋”をしているんだ... 

だけど、誰に恋をしているんだろう?

ブリュストン伯爵さま?それとも魔王さま?


アマンダさまと踊っている魔王さまの姿が見える。

魔王さまは、私の視線に気づいたらしく、ニコッと笑いかけた。

アマンダさまが、少し面白くなさそうに見ている。

と... 思ったら、ベッタリと胸を魔王さまにくっつけて踊りはじめた。

アマンダさま、やる――!

魔王さま、しっかりとアマンダさまを抱きしめて、熱いキスをしている... 


 曲が終わった。

「アリシア王女さま、一曲踊る光栄を私におあたえいただけますか?」

聞き覚えのある声の方をふり向くと、ブリュストン伯爵さまだった。

「はい。私の方こそ、よろしくお願いいたします」


ズンチャッチャ ズンチャッチャ


明るい曲が流れる中、私は夢心地で伯爵さまと踊った。

「今日はまた、何とお美しい!」

「あ、ありがとうございます」

「このままさらって、私のお嫁さんにしたいくらいです」

「ええっ?」

「あはは。冗談ですよ。あ、さらうと言うのが冗談で、お嫁にしたいと言う気持ちは本当です」


カ―――っと身体が熱くなった。


ビリビリ... 

ゲッ、アソコとボタンがビリビリする?

な、なに、この反応?


ま、まさか... 

私はブリュストン伯爵さまにムチ打たれたいという願望を持っているのだろうか?

それとも、魔王さまのムチが恋しい?


いやいや、それはない、それはない!


私の心の葛藤には関係なく、結婚披露宴の夜は更けて行った。



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