第22章 魔王の挑戦者
魔王さまから、厳罰の証拠としてさんざんムチ打ちをされた。
お母さまたちには見せなかったし、言わなかったけど、私は魔王さまの部屋で誰にも言えないことをされた。
魔王さまは数本の皮紐がついたムチから、一本の黒い皮紐しかついてないムチに換えた。ムチの先端は平べったくなっていて、馬や牛に使うムチのようだった。
そして、魔王さまは私の両足首に足枷をはめると両側からロープで引っ張って足を開かせると―
狙い定めてムチをふるった。
ビュンっ
ビシッ!
一本の黒い皮紐の先端は、数本の皮紐がついたものより細いので痛さが違う。先端は平べったいとは言え、数本の皮紐がついたものの比ではない。それが、的確に当たった!
「ギャっ!?」
悲鳴が出た。
もっとも敏感なトコロに当たったのだ。
悲鳴が出て当然。
ってか、魔王さま、そんなに私をいたぶるのがお好きなの?
最初は平手打ちだし、次はムチ打ちで、私のオシリは腫れ上がっているに違いない。
そして、今度はコレ?
もう、いっそのこと処女を奪ってくれた方がいいよ!...
いや、それはダメ。私は凋落したとは言え、元ブレストピア国の王女...
いや、もういいわ。そんなこと。
魔王さま、もうヤメテクダサイ。ソコ裂ケマス!
ビュンっ
ビシッ!
「ギャっ!?」
ビュンっ
ビシッ!
「痛ぁいっ!」
ビュンっ
ビシッ!
「ギャアっ!」
ビュンっ
ビシッ!
「もう止めてっ!」
悲痛な声が聴こえたのか、もう裂けたのか知らないけど、
今度は仰向きにされて、上衣と下着を剥がされて...
おムネをムチ打たれた。正確には、ボタンを(汗)。
ボタンって、すっごく感度がいいのよね。
その超高感度のボタンを、魔王さまは黒い皮紐のムチで打つ。
右ボタン、左ボタンと交互に、的確に!
ビュンっ
ピシッ!(右ボタン)
「フニャっ!?」
ビュンっ
ビシッ!(左ボタン)
「痛ったいっ!」
ビュンっ
ビシッ!(右ボタン)
「フギャっ!」
ビュンっ
ビシッ!(左ボタン)
「ヤメテっ!」
.........
.........
.........
30分後、ようやくお部屋へもどることが出来た。
「本当に... これはヒドイわ...」
「ミミズ腫れみたいに赤く腫れ上がっているわ...痛いでしょう?」
「可哀想に... 魔王さまって、本当に情け容赦ないのね」
マデンキの画面に映る私のオシリを見て、お母さまとマイテさまとモナさまが眉をひそめ、目を瞠っている。年頃の娘のオシリなので、お父さまには見せられない。
お母さまもモナさまも、私のオシリに残ったムチ跡を嘆いておられたけど、死刑にされなかったという安堵感が彼女たちの口調に感じられた。
マデンキは、お母さまが護衛のデクリオンさんにお願いし、アマンダさまの許可を得て魔王城の自分の部屋のバスルームから送信している。
バスルームには、これもアマンダさまの許可をもらって、アイフィさまが魔王国の最高機密であるマデンキを持ちこんで、操作してくださり、ミミズ腫れがいくつもついた私のオシリの画像を送信するのを手伝ってくださっている。
もちろん、おパンティが食いこんだオシリの画像だ。
年頃の娘にパンティをとって見せてなんて、いくらお母さまでも言わないだろうが、万が一にもそんなことを言い出さないことを願っている。
だって、アソコがどんなになっているか、私もまだ見てないのだ。
魔王さまは、的確にあのあたりをムチ打った。
先が平べったいムチだったけど、すごく痛かった。
たしか5回か6回だったかよく数えなかったけど打たれた。
今だっておパンティの下はビリビリしている。
だけど、出血とかはないようなので傷はないみたい。
これで傷でもついていようものなら、それこそ“傷もの”になってオヨメに行けないわ(汗)。
まったく、魔王さまって、どんな趣味しているのよ?
そんな悪趣味をもっているなんて、誰からも聞いていないし、誰も教えてもくれなかったわ!
「アリシアちゃん、わたくしのために言ってくれたのに... 魔王さま、本当にひどいわ!」
ルナレイラお義姉さまは、帰って来た私を強く抱きしめて、涙を流しながら何度も何度もキスをした。
いや、キスと言っても口にではなくオデコにだ。口へは魔王さま専用なんだから。
しかし、 ルナレイラお義姉さまが、私の口にキスをしてくれたら、それはそれでうれしいかも?
お義姉さまとは頬チュウを何度もしたりされたりしたけど、サクランボのような可憐で柔らかい唇のキスはとても感触がいい。
でも、私の好みは女性ではなく、やはりガッシリとした体格の男性だ。
たとえば、ガバロス親衛隊のザロッケン君とか。彼、顔は少し怖いけど、これは好みの問題だから、私には許容範囲内だ。魔王さまは、身体はガッシリとしているけど、無駄に筋肉モリモリじゃないので完全に範囲内。
ガッシリとした体格の男性に抱いてもらい、その分厚い胸を感じ、たくましい腕で力強く抱きしめてもらいたい。と言っても、私の肋骨が折れるようなバカ力ではない。
そう言えば、今日の昼、魔王さまに私の隠密行動がバレる原因となった、あのバカ伯爵の息子はけっこうガッシリとした体格だったな?それにかなり美男鬼人だったし。
あのバカ伯爵とは似ても似つかない感じの息子はブリュストン伯爵という名前だってアイフィさまから教えてもらった。またいつか会ってみたい。そしてお話をしてみたいわ。
夕食の時間が近づいたのでルナレイラお義姉さまは自分のお部屋へ着替えのためにもどった。アイフィさまもとっくに帰って行かれたので、私はマルカに手伝ってもらって着替えをしてダイニングルームに向かうことにした。お母さまたちは夜にしか帰って来られないし、ビアはマイレィちゃんの部屋に遊びに行ったきり帰っていない。
ダイニングルームに行くと、魔王さまはまだ来てないようなので、控えの間で待つことにする。
控えの間に入ると、ヤーダマーの塔に魔王さまといっしょに来られたデュドル公爵さまが、あの美男鬼人ブリュストン伯爵さまといっしょに椅子に座って話をしていた。
少し離れたところに、公爵夫人がアイフィさま、ヴァスマーヤさまといっしょに座っていて、ニッコリと片手をふってくれた。あの公爵夫人も、全然飾らない人みたいだから好き♪
ルナレイラお義姉さまは、別のソファーでリエルさまとお話をしていた。
「こんばんは、アリシア王女さま。今日は大へんでしたね」
ブリュストン伯爵がレディーを迎えるために立ち上がった。
「アリシア王女さま、こんばんは。お久しぶりですね?今日はえらく魔王さまに構っていただいたようで!」デュドル公爵さまも立ち上がって挨拶をする。
「え?」
“何、公爵さま、何を言っているの?何を知っているの?”
「おい、イーデル、おまえ、何を言っているんだ?」
「あ、いや、今日はえらい災難でしたねって言おうとしたんですよ」
デュドル公爵さまが、すぐに訂正された。
デュドル公爵さまのお名前、イーデルっておっしゃるんだ。
「こんばんは、アリシア王女さま!」
明るい声とともに公爵夫人がやって来た。
「こんばんは、公爵夫人さま」
「あら、公爵夫人なんてあらたまって言わないで リンマイユでいいわよ?お元気そうで何よりね!」
「ありがとうございます!」
“おかげさまで元気です”なんて言えそうもない。
魔王さまから“ネコ耳娘”と呼ばれて可愛がられ、“美少女”と賛嘆され、
オシリを、ボタンをムチ打たれた私は、元気と言えば元気なのだけど、
精神的にはかなりフクザツな乙女だったのだ。
「アリシア王女さま、今日はお一人で夕食ですか?」
ブリュストン伯爵さまが、笑顔で聞いた。
「ええ。お母さまは里帰りをしていますし、妹はマイレィさまのところに遊びに行ったまま帰っていませんので一人で夕食です」
「では、よかったら、私たちといっしょに食事しませんか?」
「はい。よろこんで!」
うふふ。美男鬼人さまと同席なら、たくさんお話できるし、色んなことも聞けるかも?
その時、一瞬ざわめきが広がった。
魔王さまが上機嫌そうな笑みを浮かべて控えの間に入って来たのだ。アマンダさまたちを従えて。
控えの間にいた全員が立ち上がって魔王国の王を迎える。
「ヴァスマーヤ、ルナレイラ!」
魔王さまが呼ぶと、すぐに二人は小走りで魔王さまに駆け寄った。
二人が近づくと、魔王さまは両肘を開いた。
ヴァスマーヤさまとルナレイラお義姉さまは、すぐに腕を絡める。
まさしく阿吽の呼吸だ。
魔王さまは、控えの間にいるみんなをざっと見てから、私たちを見て近づいて来た。
「リンマイユ公爵夫人。しばらく見ないうちにますます美人になり、胸も大きくなったな!」
「魔王さま、お久しぶりでございます。わたくしの美しさや胸の大きさなど、アマンダ王妃さまたちと比するのも恐れ多いことでございます」
リンマイユさま、鮮やかに切り返した!
「魔王さま、私の妻をお気遣いになってくださるのは、大へん有難いのですが、それよりも魔王さまの王妃さまたち、それに囲っておられる美女たちをお気遣いになられた方がよろしいのでは?」
何と、デュドル公爵さまも奥さまに負けずに見事に切り返された?
「それもそうだな?」
魔王さまは、公爵の切り返しをニヤリと笑って受け取り、リンマイユさまに会釈し、ダイニングルームの方へ歩み始めた。
「魔王さま。あまり他人の女房などにかまけておられず、もっとご自分の妻たちや恋人たちを構った方がよろしいのではありませんか?構いきれないと言うのであれば、俺が構ってやってもいいんですが?」
魔王さまの背に向かって、とんでもないことを言った男がいた!?
「何っ?」
魔王さまが歩みを止めてふり返った。
お顔にはあいかわらず微笑みを浮かべていたけど、その目は笑ってなかった。
ゲゲゲっ!
ブリュストン伯爵さま、何をおっしゃっているんですか?
一瞬、控えの間の空気が零下に下がった気がした。
今にも、「この無礼者っ!」と言う叫び声とともに、アマンダさまが剣でブリュストン伯爵を真っ二つに切るか、魔王さまが、「ヴァスマーヤ、殺れ!」と下知した次の瞬間、ヴァスマーヤさまが即死魔法を発動すると皆が戦慄した。
「ワーッハッハッハ!面白い、出来るものならやって見るがいい、ブリュストン伯爵!」
魔王は高笑いをすると、ふたたびヴァスマーヤさまとルナレイラお義姉さまに腕を絡ませて歩き出した。
「ふぅう... ブリュストン伯爵が殺されるかと思ったよ!」
「見た?アマンダさま、剣の柄に手をかけていたわ!」
「今にも跳躍切りをしそうだったもんね!」
「私、ヴァスマーヤさまが、あの怖い魔法を使うと思ったわ!」
「わたしもそう思った!」
「そうなるのを願ったんだがな、さすが魔王さま、心が大きい!ガ―――ッハッハッハ!」
控えの間の空気が常温にもどり(そんな気がした)、小声でみんなが話しているのが私のネコ耳に聴こえた。
最後の話声は、あのバカ伯爵だ。息子が殺されたかも知れないと言うのに、おめでたいと言うか、何を考えているかわからないギャストン伯爵だ。
みんな、大事に至らなかったことに胸を下ろしているようだけど―
しかし...
私は見た。魔王さまの頬がピクピクと引きつっているのを見た。
表面上は平静そうに見えるが、あれは内心かなり怒っていらっしゃる様子だ。
魔王さまがダイニングルームに入ったのに続いてみんなも入る。魔王さまは、いつも通り、中央の大きなテーブルで、その周囲に王妃さまたちがヒエラルキー順に座る。
私たちは一つのテーブルに向かった。
ブリュストン伯爵さまが、私のために椅子を引いてくださった。
なんて紳士な美男鬼人だろう。
食事は楽しかった。
ブリュストン伯爵さまは、とても優しくて、料理を私のお皿にとってくれたり、シャンパンを注いでくれたりとレディーへの奉仕精神旺盛な方。
結婚するのだったら、こんな方がいいな... なんて考えちゃった!
ブリュストン伯爵さまとのお話は楽しくて、面白かった。
この機会に、私は彼について聞きたかったことを聞いて見た。
それは、どうして親子なのにどちらも伯爵なのか、という疑問。
ギャストン伯爵の息子はブリュストン伯爵。親子で伯爵とは、誰でも奇妙だと考えるのがふつうだろう。しかし、話を聞いて見ると、全然奇妙じゃなかった。
ギャストン伯爵は元は鬼人族国の伯爵だったのだけど、魔王さまに乞われて彼の臣下となったそうだ。
そこで、鬼人族国のモモコ大王は、ギャストン伯爵の長男であったブリュストン男爵にギャストン伯爵領を継がせ、鬼人族国の伯爵に陞爵したのだそうだ。
今回、ブリュストン伯爵が魔王国に来た理由は、彼は鬼人族国軍の参謀なので、今後の作戦について魔王国軍の参謀たちと打ち合わせにでも来ているのだそう。道理でほかの国の偉そうな軍人さんの姿が多いと思った。
今回の作戦会議とか言う打ち合わせには、将軍や参謀などは夫人同伴で来ているらしい。
だから、デュドル公爵さまもリンマイユさまを同伴して来ているらしい。ブリュストン伯爵さまが、夫人を連れて来てないということは、彼はまだ奥さんがいない- つまり独身ということなのだろう。
「いや、こいつはね、アリシア王女さま、鬼人族国の女性の間でもかなり人気があるんですけど、『俺の心を動かす女性はいない!』って言って、モモコ大王が選んだ花嫁候補にも見向きもしないんですよ」
デュドル公爵さまが、シャンパンを飲みながら、ブリュストン伯爵さまを見て言うと、
「そうなのですよ、アリシア王女さま。だから、もしかしたら、魔王国で伯爵さまの心を動かす美女に会うかも知れないと言って、公爵さまが無理やり連れて来たのですよ」
リンマイユ さまが補足する。
なるほど、そういう理由で魔王城に来たのね?
「それにしても、先ほどはおどろきました。魔王さまに挑戦状を突きつけたみたいで...」
近くのテーブルに座っているギャストン伯爵が、何か面白いことを魔王さまに言ったらしく、バカ伯爵のバカ笑いが聞こえ、魔王さまとアマンダさまたちが笑っているのが見える。
「ハーッハハハハハ!突きつけてやったんですよ、挑戦状を!」
ブリュストン伯爵が高笑いをして、とんでもないことを言った!
「えええ――っ?」




