第19章 魔王、直訴される
ルナレイラお義姉さまが悩んでいたとは知らなかった。
夕食は毎晩いっしょにし、夕食後は例の』暖炉のある部屋で公開イチャイチャをし、家族風呂にはいつもいっしょに入っていて、けっこう魔王さまから可愛がられていると誰でも思っていたからだ。
それを知ったのは、お母さまとモナさまからだった。
「アリシア、ちょっとお話したいことがあるの」
お母さまから呼ばれ、応接間兼リビングに行くと、モナさまがソファーに座ってお茶を飲んでいた。
ビアはマイレィちゃんのところに遊びに行っているのでいなかった。
私と話をしたいと言うのは、ビア抜きの“大人の話”なのだろうと推察した。
「この話はね、内容があまりにも大人すぎるから、わたくしとモナさんだけに留めておこうと最初は考えたんだけど、先日のピクニックで魔王さまが、あなたをかなりお気に入りのようだったとルナレイラちゃんから聞いてね...」
「それならば、アリシアちゃんも知っておくべきとラーニアさまに言ったの」
モナさまが締めくくった。
「魔王さまのお気に入り?」
「あなたも、来月は15歳で大人の仲間入りでしょう?」
「魔王さまも、そのことをご存じでいらっしゃるから、ピクニックでは“一人前の女性”として扱ってくださったのでしょう?」
いやいや、ルナレイラお義姉さまが、何をどう報告したのか知らないけど、あの時は私だけでなく、ビアもいっしょで、ビアは魔王さまから胸を...私は魔王さまから、“神聖な区域帯”を綿密に調査されて...
あ、あれか。
たしかに上と下じゃ、下の方が恋人(魔王さまは恋人じゃないけど)との親密度が高いというか、交際進捗度が高いんだよねぇ...(汗)。
“一人前の女性”の基準はそこなのね?
「それで、お話ってなに?」
私は、三人掛けソファーに座った。
お母さまとモナさまは、それぞれ一人掛けのソファーに座る。
「ルナレイラちゃんがね...」
お母さまは、そこまで言って躊躇した。
「ルナレイラちゃんはね。ラーニアさまと私に『魔王さまは、はたしてわたくしを愛してくださっているのでしょうか?』って、相談をして来たの」
お母さまが言うのを躊躇しているのを見てモナさまが言った。
ふむ。つまり、ルナレイラお義姉さまは、年が近い― って言っても、9歳離れているんだけどねー モナさまに最初に打ち明けたらしい。
「え?『 はたしてわたくしを愛してくださっているのでしょうか?』ですって? あれだけ、ピクニックでイチャイチャしていて?」
私は、私とビアがさんざん魔王さまからおムネと“神聖な区域帯”をさわられたあとで、アンジェリーヌ・ジョスリーヌ姉妹王妃の次にアイフィさまといっしょに呼ばれたお義姉さまが、しばらくしてから、目を潤ませ、顔を紅潮させて、アイフィさまといっしょにフラフラし支え合いながらもどって来たのを覚えていた。
アイフィさまは、水着の上を腰のあたりまで脱がされていて、つつましいおムネが全開だった。
しかしルナレイラお義姉さまは、もっとスゴかった。こちらもおムネが全開だった!
だけど、ルナレイラお義姉さまのおムネは、ほら、誰もが羨むようなボイーンじゃない?
ルナレイラお義姉さまのボイーンに勝てるのは、アマンダさまとハウェンさま、それにお義姉さまと同じく、レオニディオとエルフのハーフである背の高いガッシリとした体格で金茶色の目に茶褐色の短い髪の...名前なんて言ったっけ?
あ、そうそう、アレクと言う男の子みたいな名前の娘みたいに若い王妃さまくらいなんだから。
ルナレイラお義姉さまは、そのメロンのようにでっかいオッパイを丸出しにして- もちろん、アイフィさま同様、水着の上を脱がされていたのよ、魔王さまに!
まあ、アイフィさまの控えめのおムネもお義姉さまのボイーンなおムネも、いつも大浴場で見てはいるんだけど、ほら、水も滴る美女が、水着を半剥きされている姿って、すごくセンジョウテキじゃない? あれだけ魔王さまから可愛がられていて、『 はたしてわたくしを愛してくださっているのでしょうか?』って相談に来たってどういうことよ?
「それはね... ルナレイラとは手をつないだり、腕を絡ませたり、身体にふれるだけだと言うのよ」私の考えを読んだのか、モナさまが説明してくれた。
“え?それで十分じゃないの?”
「ルナレイラちゃんはね、魔王さまのほかの王妃さまたちは、結婚前にすでに魔王さまと寝室で抱かれていたって言っているの」
「だから、わたくしには魅力がないのでしょうか、って悩んでいるの」
つまり、こういうことらしい。お義姉さまから相談されたモナさまの話では、お義姉さまと年の年の近いリエルさんや、アガリさん、ヴァスマーヤさんなどとは気が合い、よく話をしているのだとか。そして、彼女たちの場合は、“結婚式の前に魔王さまはベッドに誘った”ってことらしい。
ルナレイラお義姉さま。あなた、そんなに早く処女を捨てたいの? いやいや、お義姉さまが悩んでいるのはそこじゃなく、魔王さまの彼女に対する愛情の証しとしてベッドに誘ってほしいってことなんだよね?
ふうむ...
この問題は深刻ね。さすがに“知恵者アリシア”、“機転が利くアリシア”、“年齢のわりに人生経験豊富なアリシア”と評判の高い... いや、これは私の自己評価なんだけどね。さすがの私もお手上げですぅ。
お母さまとモナさまは、アリシアも同じような悩みを抱えていないかを聞くためと、もしやいい考えでもないか、と思って話をすることにしたらしい。
まあ、私はルナレイラお義姉さまみたいに繊細すぎる心もってないし、人生気楽nなのが一番!という主義なので、あまりくよくよ考えないのよね?
それに、けっこう魔王さまから抱いてもらったり、足をさすってもらったり、“神聖な区域帯”をさわられたり、キスを...
あれ? キスはまだだった? ま、魔王さま、あなたは将来妻となる私の足をさわったり、あちこちさわったり、“神聖な区域帯”をさわたりしているけど、キ、キスはしてくれていませんよ?!
悩み深いのはルナレイラお義姉さまじゃなくて、私の方なんじゃないの?
ビアでさえ、すでに初キスをしてもらっているというのに...
私の唇は、それほど魅力がないのですか?
ま、まあ、この問題は、私と魔王さまの関係が深まるにつれて自然的に解消すると考えることにして、私なりにルナレイラお義姉さまの支援をすることにするか。
と言うわけで、魔王さまとお義姉さまの言動から、解決法を探ることにした。
狙いは週末だ。魔王さまは、国政とか戦争とかで忙しいみたいだけど、愛する王妃たちのために週末は時間を作って観劇に出かけたり、遠出したりしている。
ルナレイラお義姉さまに、それとなく探りを入れて、魔王さまとの予定を聞いてみると、「日曜の昼食後、魔王城内の庭を散歩するの」らしい。
フェリノディオ族得意の忍び足で、風下から気配を気づかれないように二人に接近する。
魔王城の広大な庭園は、たくさんの木や生垣があちこちにあったりして、身を隠すのに好都合だ。
ルナレイラお義姉さまは、魔王さまと二人きりだけで歩いていた。魔王さまの腕に自分の腕を絡ませて、うれしそうな顔で花の咲いている広大な庭を歩いている。
これで“愛されてない”って思っているの? 年頃の乙女の心はわからない...
って、私も年頃の乙女なんだけど?
二人の周りをチュンチュンと小鳥が飛び回り、小さな蝶がひらひらと花をめぐって舞っている。
チュンチュン
チュンチュン
チュンチュン...
うるさいっ、あまりチュンチュン鳴くな。
二人の会話が聞こえづらいじゃないか!
しようがないから、腹ばいになって、もっと近くへ寄る。
距離約20メートル。こんな至近距離で、この前のピクニックの時みたいに、ルナレイラお義姉さまの上半身をハダカにしてイチャイチャしないでよ?
「魔王さま...」
「うん? どうした、ルナレイラ?」
「あの... わたしが元ブレストピア国のゲネンドル王の娘だから、わたしに対する態度がほかの方と違うのでしょうか?」
ルナレイラお義姉さま、覚悟を決めて核心を衝く質問を魔王さまにぶっつけた?いやー、お義姉さま、それ、ちょっと行き過ぎでしょう?
「無礼者め!」
とか言われて、身体を原子に分解されちゃうよ!
原子って、ほら、あのおヒゲのトゥンシー大先生の研究所で研究をしている錬金術学者のユーカワ君から教えてもらったの。
なんでも、この世界のすべては、その原子とやらで出来ているんだとか。
と言うことは、私の身体は、その顕微鏡でも見ることのできない、小っちゃーいアリシアで構成されているんだろうか?
ププププ... 想像したら、面白くて吹き出しそうになった!あぶない、あぶない!。
「いや、それはない」
しかし、ルナレイラお義姉さまは原子に分解されなかった。
あーよかった!
「では、どうして...」
「おまえが、元ブレストピア国の王女だから、私も尊敬して結婚式を挙げるまでは、清らかな関係を維持したいと思っているのだ」
ちょ、ちょっと、魔王さま。今の言葉くり返していただけますか?
“結婚式を挙げるまでは、清らかな関係でいったい”って、何じゃらほい?
いつも濃厚なキス、濃厚な足さすり、濃厚なイチャイチャしているじゃないですか?
それのどこが、清らかな関係なんですか?
「.........」
でも、ルナレイラお義姉さまは、それ以上、何も言わなかった。
「そうか... 早く結婚して、抱いて欲しいのだな?」
「いえ、決してそんな... ふぎゅっ!」
あちゃ~、見てられないよ。
白昼堂々見晴らしのいい庭園で、濃厚キスを始めちゃったよ?
見ていられないので、そろそろ退散しようと
後ろずさりでそろそろと移動していたら―
「お――い、そこのネコ耳娘―――っ! 魔王さまの楽しいご散歩の盗み見か―――?」
突然庭園に響き渡った大声!
ギャ――――っ!
驚愕するのと同時に瞬速反応で、四つ足後進の姿勢のままで2メートルほど飛び上がってしまった!
先祖種族の本能をもっているって恐ろしい(汗)。
「あら、アリシアちゃん?」
「む。ネコ耳アリシアか?」
あちゃー!発見されちゃったよ?
「うまく隠れているつもりだろうが、ここからは、プリプリした尻が丸見えだぞ!ガ―――ッハッハッハ!」
あのバカ笑いは...
そう、ギャストン伯爵だ。
ふり返って見て見ると、魔王城の尖塔の上からギャストン伯爵が見ていた。
そして、ギャストン伯爵の横に同じくらい背の高い鬼人族の貴族がいた。
「父上、敵の刺客ではないのですから、若い娘が恥ずかしがるようなことを言わない方がいいですよ」
あれはバカ伯爵の息子なの? かなり美男子、いや美鬼人じゃない?
バカ伯爵を注意しているのが(聴覚のいい)ネコ耳に聴こえる。
息子は聡明なようで、バカ伯爵に似てなくてよかった。
それにしても乙女に対してプリプリした尻って、失礼ね!
それに、魔王さまも魔王さまだわ。
“ネコ耳アリシア”ですって?
バカ伯爵に隠密行動をバラされたので、しかたなく立ち上がる。
「アリシアちゃん、そんなところで何していたの? あらあら、服が泥だらけじゃない?」
ルナレイラお義姉さまが駆け寄って来て、ハンカチで服についた泥を払ってくれる。
今日はショートパンツにタイツでよかった。これであのミニスカートとか言う超短いスカートだったら、あのバカ公爵におパンティが食いこんだオシリ、いや、おパンティを履いているオシリを見られるところだった(汗)。
「ネコ耳アリシアは、ルナレイラが心配と見える...」
ゲっ、魔王さま、お見通しだよ?
「え、そうなの、アリシアちゃん?」
「うん。魔王さまが煮え切らない態度だって聞いたから、どんなことしているのか確かめようと思って...」
厳罰に処されてもかまわない。ルナレイラお義姉さまのためなら... い、命は差し出しかねないけど、オシリぺんぺんくらいの厳罰なら受ける覚悟はあるわ!
「そうか... 家族の者にそこまで心配させていたとは想像もしなかった。よかろう、ルナレイラとの結婚式は1ヵ月後に行うことにする!」
「えっ、本当ですか、魔王さま?」
「私は魔王だぞ? 私の言葉は絶対だ!」
「あ、ありがとうございますっ!お父さまとお母さまにお知らせさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「もちろんだ。結婚式にはゲネンドル殿もマイテ殿も是非ご出席していただかなければ... ぶぎゅっ?!」
魔王さまの言葉を途中で遮って、ルナレイラお義姉さまがキスをした?
もちろん、感謝のキスだ。
そして脱兎のごとく、うれしさのあまり転びそうになって城に向かって走り出した。
使者をヤーダマーの塔に送ってもらうためだろう。
「さて、ネコ耳アリシア」
「はい?」
「では、これから、魔王である私にネコ耳娘の分際でありながら直訴をした科により、これよりおまえを厳罰に処することにする」
「え?... えええ―――っ、厳罰―――ぅ!?」
顔から血の気が引いた。
「この者を捕縛し、連れて来い!」
「ガア!」
「ガア!」
いつの間にか、怖い顔のガバロス親衛隊が二人来ていた。
お父さま、お母さま。親に先立つ不孝をお赦しください。
ネコ耳アリシア、15歳を目前に、清らかな乙女のままこの世を去ります。
あーあ、こんなことなら、昼食後の生菓子、体重など気にせずに腹いっぱい食べておくんだった...
お母さま、いや、この場合はルナレイラお義姉さまか、ルナレイラお義姉さま、私のお墓に生菓子を備えてね...
アリシア・ミラーニア・ゲネンドル王女 享年14歳11ヵ月。




