第17章 魔王のために水着披露会
ルナレイラお義姉さまが、頬を紅潮させ、目をうるわせてもどって来た。
魔王さまに手作りのお弁当を差し上げ、お礼にチューをしていただき、幸せの絶頂なのだろう。
自分の椅子に座ると、すぐに魔王さまが、どちらのお弁当を食るかを注視していた!?
魔王さまの両側には、アマンダさまたち“魔王妃”が座っていて、楽しそうにおしゃべりをしながらトリプルなんちゃらを食べている。
魔王妃さまたちといっしょに座っているヴァスマーヤさまも、魔王さまの動きをしっかりと見ている(汗)。
彼女たちも、興味津々で魔王さまが、彼の前のテーブルに置かれた二つのお皿に乗ったお弁当のうち、どちらを食べるかを注目していた。
魔王さまは、そんな“みんなの目”を感じているのだか、いないのだかわからないが...
トリプルなんちゃらに手を伸ばし、一口食べた。
オオオオオオ…
声にならない声が上がった。
「くっ...」
ルナレイラお義姉さまが、唇を噛む。
だけど、魔王さまは、すぐにトリプルなんちゃらを皿に置き、ルナレイラお義姉さまと私たちが作った刻みゆで卵をはさんだパンを取って一口食べた!
「うむ。これは美味しい!」
ムムムムムム……
声にならない声が上がった。
「う、うれしい...」
ルナレイラお義姉さまが、ぽろぽろと涙を流された。
「ルナレイラお義姉お姉ちゃん、魔王さまが、先にヴァスマーヤさまのを食べたから悲しくて泣いている」
ビアが小声で言った。
いや、あれは、うれし涙なんだと思うわ。
オンナ心って、わからないところが多い...
って、私もオンナなんだけど?
涙を流しているルナレイラお義姉さまを見ていたら、私たちの視線に気づいたらしく、少し赤くなった。
「ごめんなさいね。なぜかうれしくて涙がとまらないの...」
「え?うれしいから泣いたの?」
ビアが、トリプルなんちゃら言うモノを口いっぱい頬張って訊いた。
「ビアちゃんも、わたくしくらいの年になったら分かるわ」
「ふーん...」
ビアは首をかしげている。
「あ、ごめん、ごめん。わたくし、アリシアちゃんとビアちゃんもお弁当作りを手伝ったってこと言うの忘れていたわっ」
そう言うと、椅子から立ち上がって食事をしている魔王さまの前に行った。
まさか?
と思ったら、やはりそうだった。
「魔王さま、先ほどは申し遅れましたが、そのお弁当、アリシアとビアも作るのを手伝ってくれたんです」
「ん?そうか。わかった」
ルナレイラお義姉さまは、言わなければいけないことは言ったというようなスッキリした顔でこちらに向かってもどりかけた時―
「アリシアさま、ビアさま。魔王さまがお呼びです!」
突然、アマンダさまが、私たちの名前を呼んだ。
「えっ?は、はい!」
「は――い!」
私とビアは急いで魔王の前に行った。
「もっと近くに来なさい」
「はい」
「はーい」
魔王さまの近くに来た私たちの腰に手を回してグッと引き寄せられた!
「え?ふぎゅっ!」
キスをされた!
いや、もっと近くに来なさいって言われた時、もしやって思ったけど
まさかキスをされるとは想像しなかったわ。
私を離した魔王さまは、今度はビアの細い腰に手を回して引っ張った。
「あん?ふぎゅっ!」
おい、おい、魔王さま、その子の初キス奪っちゃったよ?
チュチュチュ―――
魔王さま...?
ルナレイラお義姉さまより、私より、ビアとのキスの時間が長くない?
「魔王さま、ロリコンですからね...」
「ですわね。美女と美少女に目がないのは、前世からの同じですわ」
誰かが囁いているのが、私の鋭い聴覚に聴こえた。
フェリノディオはエルフの8倍、カニスディオの2倍も鋭いから、普通の者には聴こえない声とか音とかも聴こえちゃう。
でも、ろりこんって何?
「魔王さま、お弁当が冷めてしまいますわ」
「むぐっ... ん? そうであったな!」
アマンダさまが、魔王さまの耳元でそう言ったことで、ようやくビアを解放した。
ビアはふらふらしてもどって来た。
顔が真っ赤で目がうるんでいた。
自分の椅子に座ろうとして、転びかけたのを間一髪で私が支えた。
「お姉ちゃん... ワタシ...足がガクガクしている...」
か細い声で訴えた。
妹よ、お前も一人前のオンナになったのだ...
いや、キスくらいで一人前のオンナにはならないか。
私は、トリプルなんちゃらって言う、すっごく美味しいお弁当を食べながら、ビアを観察していた。
ビアは、すっかり食欲をなくしたみたいで、しきりに魔王さまの方を見て足をブラブラさせている。
あの目は、完全に恋する乙女の目?!
食事のあとは、水浴びをすることになった。
そう言えば、三日ほどの朝にマルカが「プリシルさまのご命令です」とか言って、カニスディオの侍女を連れてやって来て、着替えの時に私たちをハダカにして寸法を取っていた。
あれは、「身体にピッタリした水浴着を買うためです」とかマルカは言ってたけど、今日のためだったんだ。
「ねえ、ねえ、お姉ちゃん、ワタシ、さっき、魔王さまからキスされた時、心臓がバクバクして破裂しそうだったよ」
みんなが、着替え用のテントに入る順番を待っているのを見ながら、ビアがそっと私に言った。
「初キスはそんなものよ」
「もう、足もガクガクでうまく歩けなかった...」
「うん。転びそうになったね」
「お姉ちゃんのおかげで転ばずにすんだよ。ありがとう」
「いいってことよ。姉妹なんだから」
「うん。姉妹っていいね」
「ワタシ、もうルファエルには見向きもしないわ。エタナールさまにかけて誓う!」
おいおい、妹よ。あんた、本当に魔王さまに恋をしちゃったのね?
「はい。これ、アンジェリーヌさんのね」
「はい。これがジョスリーヌさんの」
「はい。これがさんの」
と次々紙袋に入った水浴着を渡していたんだけど
「はい。ヴァスマーヤさん」
「はい、ルナレイラさん」
と続けて着替えをするためにテントに入ったけど...
着替え用に設置された着替えテントから、ヴァスマーヤさまとルナレイラお義姉さまが、ほぼ同時に出て来た。
それも「次の人が待っているんだから、早く着替えて出て来て!」とリリスさまに催促されてだ。
「!」
「へ?」
私とビアは目を丸くしてボケ―っと二人を見た。
オオオオオオ―――…!
また声にならない声がみんなの口からもれた。
なんと、ヴァスマーヤさまは、黒色、お義姉さまは白色の水浴着を着ていたのだけど...
これって、水浴着なのよね?
と首をかしげたくなるような水浴着だった。
ルナレイラお義姉さまの水浴着は、上の部分と下の部分が一体のやつで、下はおパンティ並みにお股ギリギリなのは“魔都の流行”だとしてしかたないとして、そのおパンティ部分の横の切れ込みが、なんと脇の下15センチくらいまで切れ上がっているの。
なので、横から見ると、ハダカじゃないの?
と思うくらい、白い足から胸のあたりまで身体が丸見えになるの!
もちろん胸はしっかりと覆われているのでオッパイは見えないけど...
いやいや、オッパイのふくらみが半分ほどボヨ~ンと見えているでしょう?!
ルナレイラお義姉さまのボーンとしたお胸、存在誇示し過ぎっっていうの!
一方、ヴァスマーヤさまの方は、肩紐の延長みたいなのが両胸にかかっていて、オッパイのところだけ幅が広くなっているけど...
やはり、横から見るとオッパイほぼ丸見え!
その紐はずっと下まで続いていて、
三角形のおパンツ部分と繋がっていて、紐がずれておっぱい丸出しにならないように横紐が背中に回っていてそこで結んでいるんだけど...
そんなの、ただの飾紐か水浴着のデザインを強調するためだけに付けられている感じ。
もう、これって、ただ魔王さまをよろこばせるためだけの水浴着だよね?
みんな、次々と水浴着に着替えてテントから出て来るんだけど、みんな似たり寄ったりの美肌・超おまけお肌大公開、風吹けばオッパイ丸出しみたいなデザインの水浴着ばかりだった(汗)。
さて、私とビアの番になって、それぞれリリスさまとハウェンさまから水着をもらった紙袋を持って着替えテントに入った。
紙袋から水浴着を出して広げてみたら―
“やーん!ナニ、この水浴着?”
私のも、オッパイのボタンを手の平で隠すくらいの大きさの菱形の布切れしかなく、その菱形の布切れの左右下端からそれぞれ2本づつの紐があって、それが下の恥ずかしいところを隠す細い布切れとなって前からと後ろから引っ張る形になっていた!?
「ひぇえええ―――っ!なに、これっ?」
隣のテントからビアの悲鳴が聞こえた。
妹のも、たぶんかなり恥ずかしい水浴着なのだろう。
何度かオッパイの位置を調整したり、布切れの場所を調整したけど、これ以上はどうしようもない。
下も以前のままだったら、恥ずかしいところを隠す細い布切れから完全に毛がはみ出ていたわ(汗)。
マルカが、「ピクニックの前日の夜には、下の毛をきれいに剃っておくこととプリシルさまの言伝です」と言っていたわけが、今わかった。
着替えテントから出る時に心臓がドキドキした。
「アリシアちゃん、すっごく女っぽくなって、色気がある!」
リエルさんが褒めてくれた。
そう言うリエルさんは、胸のところに大きく穴が開いたような奇抜な水浴着だった。
「やはり、お母さまがお美しいだけあって、アリシアちゃん、とてもきれいだわ!」
アイフィさまも褒めてくれた。
アイフィさまのは、それほど肌を露出しない水浴着だけど、白で透けている!
なので、胸のボタンが丸見えで、下のモジャモジャも透けて見えている!?
だけどアイフィさまの場合は、下も髪の毛と同じく白いのであまり目立たないけど、私が同じ水浴着を着たら、茶色のモジャモジャが透けて見えるだろうし、ピンクの髪のルナレイラお義姉さまだったら、ピンクのモジャモジャがクッキリと見えただろう(汗)。
アイフィさま、髪の毛と下の毛白くてよかったですね?
「やだ―――っ!」
ビアの声に彼女を見ると―
妹の水浴着は、白でお股と袖口と首元に黒い縁取りがあり、
胸の上― ちょうど右の胸のボタンから左の胸のボタンくらいまで、幅の楕円形の黒い縁取りがついた穴が開いているやつだった。
前部はつながっているけど、後ろから見ると上の部分とおパンツの部分が分かれているように見える。
「何がイヤなのだ?」
ビアの叫び声を聞いて、魔王さまが私たちの方に目を向けた。
その顔は、ニヤついた締まりのない顔だった!
いや、締まりのない顔にもなるでしょう?
魔王さまは、アマンダさまの胸を揉みながら、
プリシルさまにキスしていちゃついている?
(こういうことを予測したから、マイレィちゃんもエイルファちゃんも今日は来てないのね...)
「いえ、何でもありません。発声練習をしていただけです...」
賢く返事をする妹。ゲネンドル家に馬鹿な人間はいないからね。
「ほう... その水着は赴きが異なっていて、興味深い!」
な、なんと、魔王さまは“美肌・超おまけお肌大公開&風吹けばオッパイ丸出し”みたいなデザインの水浴着だけに関心があるかと思っていたら、ビアの着ているようなおとなしい水浴着が目新しく映ったらしい?
「ふむ。ビアにアリシア、ここに来なさい」
ヤバっ、魔王さまに呼ばれたよ?
興味を示したのは妹の水浴着-なんか水着とか言ってたけど-じゃなかったの?
私はビアのオマケ?




