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ネコ耳❤アリシアの魔王城日記  作者: 独瓈夢
第三部 アリシア伯爵
104/317

第104章 アリシア伯爵、公使に任命される③

 ガナパティ厩役伯爵に先導されて広い廊下をしばらく歩き、控えの間を通って謁見の間の入口に立つ。

ふだんであれば、控えの間で30分とか1時間とか待たされてから謁見を受ける。

 だけど私はドリアンスロゥプ皇帝とジャブイ皇后の“お気に入り”だし、皇帝夫妻の“命の恩人”でもあるので、あらかじめお知らせしておいた謁見時間に待っていてくれた。

 こんな待遇って国賓級だよ?

いや、国賓でも魔王さま以外は控えの間で待たされるかも?


「メェ!魔王国ゥ...全権公使ィ... アリシア・ミラーニア・ゲネンドル伯爵にィ ございますゥ――!」

白く長いアゴ髭を生やしたカプラニディオス(ヤギ人族)の声とともに謁見の間に入る。


 謁見の間は豪華なもので、どこもここも黄金だらけで眩しい。

両側にはずらーっと大臣たちや貴族、政府高官たちが並んでいる。

 ドリアンスロゥプ皇帝は、3メートル半ほどの大きさの巨大なボヴィニディオス族(牛人族)だ。

宝石を散りばめた黄金の王冠をかぶり、耳の上からは長く太い角が二本でている。

着ているのは、豪華な金銀の装飾がある緑色の服と裏地が金色のマントだ。


 ジャブイ皇后も同じくらい身体が大きい。

皇帝と皇后の座っている玉座の下段の両横には、ずらーっと煌びやかに着飾った若い獣人女性たちが40人ほど並んでいる。皇帝の寵妃たちだ。


 広い絨毯を進んで、数段高いところにある豪華な玉座に座っている皇帝・皇后両陛下の20メートルほど前まで進み、そこでマントを後ろへ払って片膝をついて挨拶をする。


「ドリアンスロゥプ皇帝陛下さま、ジャブイ皇后陛下さま、ご拝謁にあずかり恐悦至極に存じます!」


「モゴ...モゴ... 何を 他人みたいなことを言ってオルのか?」

皇帝が、いつも通りの聴き取りにくい言葉で歓迎をしてくれている。


「ムゴ!本当によく来てくれました!うれしいですわ。ムゴ」

ジャブイ皇后の発音はふつうでよくわかる。



「モゴ… モっと近こう寄ルがいい」


「はい」


10メートル進んでまたひざまずく。


「モゴ… モっと近く モゴ」


「はい」


5メートル進んでまたひざまずこうとしたら―


「モゴ… 立ったママ で イイ!」


そう言うと、玉座から立ち上がり、どすどすと壇上から降りて来た。

ジャブイ皇后も同じように、降りてくる。


「陛下!」

「陛下っ!」

「陛下?」


居並ぶ貴族たちの何人かが、驚いて声をかけるが、一向にかまわずに私に近寄って来て― 


ギュウウウウ――っ

強く抱擁された?


ギュウウウ――っ

さらにジャブイ皇后からも抱擁された。


「ぐ、ぐるしい...!」


3メートルを超える巨大なボヴィニディオス族(牛人族)二匹、いや、二人に押しつぶされて息が出来ず、圧迫死しそうになった。


「陛下、陛下、もうそれくらいでよろしいでしょう?ゲネンドル伯爵殿が、ペシャンコになってしまいまずぞ?」

ガナパティ厩役伯爵の声でようやく圧迫死の危険から解放された(汗)。


「モゴ... スマン。つい嬉しくなっテ 抱きついてしまッタ」


「ムゴ!本当にごめんなさい。もう2ヶ月ほど会ってないので懐かしくて!」


「せっかくのご仁恕(じんじょ)を...」


「モゴ... 本当ニスマン。おっぱい潰れなかっッタカ?」


モミモミ... 

皇帝陛下から、おムネを揉まれた。


「ムゴ!あなたっ!」


バシッ!


ジャブイ皇后が、ドリアンスロゥプ皇帝の手を引っぱたいた?

居並ぶ貴族たちは... 見て見ぬふりをしていた。


「モガッ!... おお、コレはキレイな飾りダナ?」


皇后さまからぶたれたのできまりが悪かったのだろう、私の胸の勲章を見た。

そして、勲章を直すふりをして、またおムネを触った。


「これは、勲章と言うもので、魔王国で国家に功績があった者に受賞される栄誉の印です」


「モゴ... 国家ニ 功績ガ あったモノ?... ガナパティ伯爵!」

皇帝が、ガナパティ厩役伯爵をふりかえった。


「陛下、我が国には、そのような栄誉章はございませぬ」


「スグ作らセル!」


「はっ、早速作らせます」


何でドリアンスロゥプ皇帝が、西ディアローム帝国にも存在しない勲章を至急作らせたいのか、私はわかっていた。どうせ、私の胸に飾って見たいんでしょ?

まあ、勲章なんて装飾品と同じだから、いくらもらっても困ることないけどね。

それに宝石が入れられているし、金製なので高く売れる...

いや、魔王さまから頂いたものは売っちゃあダメね。

そんなことをしたら、またムチ打ちの刑を科せられる(汗)。


「ドリアンスロゥプ皇帝陛下さま、ジャブイ皇后陛下さま、本日は、ご多忙な中、謁見のためにお時間をいただいて恐悦至極でございます。本日参ったのは、この度、私は魔王国政府の全権公使として貴国政府とさまざまな外交的、軍事的交渉をいたすためでございます...」


「モゴ... わかってオル。それデ そノ後ろニ いるノハ キャルニボル大統領ノ娘ノ... それと新しイ部下... オオ、あノ時ノ 元総本山ノ...」


「はい。キャルニボル大統領さまのご令嬢のフローリナ・カミュエマ・キャルニボルは、私の首席補佐官として仕えております。そして、ここにいます二名は、あの日、皇帝陛下さまと皇后陛下さまをお助けした元輔祭(ほさい)のロニア・フォールンとアマラ・エボニーで、この2名も今回、公使の書記官として赴任いたしました」


「モゴ!」


「あ、ご仁恕(抱くの)はご容赦お願いします。まだ男を知らぬ乙女ですので」


「モゴ...」


皇帝、明らかにガッカリした様子。



「し、室長!」


「男を知らぬって何よ?」


ロニアちゃんとアマラちゃんが、小さな声で抗議していたけど、文句を言ってないで感謝しなさい。

あの皇帝陛下のバカでかい手でオッパイ揉まれたら、オッパイにアザが1か月残るわよ?


「そして、ミンタ・ジェンガス、ビア・スティルヴィッシュ、 ロナミ・ペンナス、 クレーラ・ドワンベール、モニッケ・ロガールの5名も今回、私が西ディアローム帝国駐在魔王国公使として赴任するにあたって連れて来た優秀な部下たちです...」


私が名前を呼ぶと、呼ばれた者は、例の片足を斜め後ろに引き、もう片方の足の膝を軽く曲る貴族のあいさつを優雅にする。


「そして、最後に、私の個人秘書のミルイーズ・アスリン・ゼーブランドです。どうぞよろしくお見知りおきください」


唯一、ドレス姿のミルイーズちゃんが、これも“元伯爵令嬢”として洗練された優雅さで、ドレスの端を手でつまんで頭を下げあいさつをした。


オオオオオオ―――!


居並ぶ貴族たちが、声を上げた。

いや、ミルイーズちゃんが美しいからじゃない。


ミルイーズちゃんは、私の眼鏡にかなったくらいの美少女だけど、この()は、反乱の罪で伯爵の爵位を剥奪され、所領も没収された- その領地を私がもらっちゃったんだけどね。でも、私はゼーブランド伯爵の土地が欲しくて皇帝を助けたんじゃないよ?- ゼーブランド元伯爵の娘だからだ。


「なんと... その秘書は... ゼーブランド伯爵の娘なのですか?」


「はい、オーマル・エルグノー・ゼーブランド元伯爵の次女です。見どころのある娘だと思って、個人秘書としました」


ガナパティ厩役伯爵の問いに答えると―


オオオオオオ―――――!


貴族たちが、ふたたび声をあげた。

今度は感動の響きがこもっていた。


 いや、私は別に皇帝やガナパティ厩役伯爵や宮廷貴族たちを感動させようと思ってミルイーズちゃんを個人秘書にしてダイダロス宮に連れて来たんじゃないよ?

 私は優秀な者を見つけるという特技を持っているの。そして、見つけた人材には、その能力に合った仕事をあたえるようにしているだけの話。


 でも、謁見の間に並んでいた貴族たちは、そうは思わなかったようだ。


「何と懐の広い伯爵だ」

「若いのに出来ているお方!」

「美貌で勇敢で許容力のあるキャットニディオス(ネコ人族)だ!」

「儂の息子の嫁に欲しいくらいだ」

「我が輩も老妻に暇をやって、ゲネンドル伯爵を後妻に!」


いやいや、褒めてくれるのはいいんだけどね。

息子の嫁とか後妻とか考えるのは止めて欲しいわ(汗)。


しばらく、貴族たちはワイワイガヤガヤと私と美しい部下たちと個人秘書のことを話し合っていたが― 


「モゴっ!」

玉座にもどった皇帝が、ひと声出すと、すぐに静かになった。


私と部下たちに注目が集まりすぎ、少し間が悪くなったが、遅れてエイルボット子爵とハソルム男爵が皇帝・皇后陛下に挨拶をする。

子爵と男爵の挨拶に鷹揚に頷くと、ふたたび私を見て宣言した。


「モゴ... ゲネンドル公使 今晩 晩餐会 必ズ 来ルがイイ!」


着任した日に早速皇帝主催の晩餐会か。

まあ、前もって知らされていたので、恭しく頭を下げてお礼を言っておく。


「それは、たいへんな光栄でございます。では、後ほど晩餐会でまたお会いしましょう」


「モゴっ」


謁見の間を出る前に、もう一度皇帝陛下と皇后陛下に深くお辞儀をして控えの間に出る。



「アリシア伯爵殿、お見事なご挨拶でしたね!」


控えの間には、落ち着いた感じのセルヴィニディオス族(シカ人族)の貴族がいた。

ドリアンスロゥプ皇帝の衣装係、ヴルペス侯爵だ。

ヴルペス侯爵は、ゾオル反乱事件の時に、私たちといっしょに剣をとって反乱兵たちと戦った勇敢な方だ。


「これはヴルペス侯爵さま。お久しぶりでございます」


「前回は総本山での古文書調査員、今回は全権公使ですか?なかなか興味深い方ですね?」

嫌味を言っているのではなく、少々驚いているようなのは、作り笑顔でない表情でわかる。


「はい。どういうわけか、身に余るような大任をまかされました」


「なんのなんの。魔王国情報局の実質的局長として、敵側に寝返ってわが国ならび鬼人族国に大軍で攻めこんだアングルスト帝国とベルミンジャン王国の内部情報を詳細に広く収集、分析し、われわれの軍が適切に反攻作戦を練ることが出来たのは、ゲネンドル伯爵殿の類稀(たぐいまれ)なる状況判断力と優秀な部下をそろえたためだと聞いております。今回、魔王陛下があなたを全権公使に任命されたのも納得できます」


ゲゲッ。

ヴルペス侯爵さん、どこからそんな魔王国の内部事情を?


ま、まあ、西ディアローム帝国って盟主国でもあるし、この国出身のアレクは、ドリアンスロゥプ皇帝の(養女)となって魔王さまと結婚したくらいなので、マデンキ(魔法式映像音声送信機)も同盟国間で頻繁に公式連絡や遠距離会議、それに個人的な通話(おしゃべり)や噂話(?)などにも盛んに使われていると言うから、魔王国内部の情報も筒抜けになっているのだろう(汗)。


「いえいえ、どなたからお聞きになったか知りませんが、それはいささか過大評価過ぎます。西ディアローム帝国と同盟諸国が利用することができた有用な情報があったのでしたら、それは彼女たち- 分析官たちがとても優秀だったからです」

「そういうことにしておきましょう。実際かなり優秀な部下の方たちと聞いておりますし」

「それでは、また夜に」

「おお、そうでした。これからキャルニボル大統領を表敬訪問するのでしたね?」


そう言って、ヴルペス侯爵はフローリナちゃんを見た。

しかし、それ以上、私の貴重な時間をおしゃべりで費やすつもりはないらしく、小さくうなずくと一礼をして出て行った。


「フフッ 室長、あたしたち優秀な部下ですって!」

「アマラちゃん、もう室長じゃないでしょ?」

「あ、ごめんなさい!ヴルペス侯爵さん、よくあたしたちのことを知っているわ、公使さま!」

「優秀な者は優秀なのよ」

「伯爵さま、それは過大評価過ぎます」


ロニアちゃんが、私がヴルペス侯爵に言った言葉をそのまま返した。

優秀な者は、反応も優秀なのだ。


「さあ、次は今日の正念場、キャルニボル大統領との会談よ。みんな、気を引き締めて行こう!」


「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」



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