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ネコ耳❤アリシアの魔王城日記  作者: 独瓈夢
第三部 アリシア伯爵
103/317

第103章 アリシア伯爵、公使に任命される②

 西ディアローム帝国首都ソオルの魔王国大使館は、1キロほどの範囲にいくつもの同盟国の大使館がある区域にあった。

 先のゾオルでの反乱騒ぎから、大使館における警備を担当するガバロス親衛隊の人数は、それまでの100人から300人に増強されていた。


《あのね、アリシアちゃん。実はわたくし新ゾオル駐在魔王国大使になったんだけど、どうも魔王国でのお仕事が忙しくてね...》


私の後任の情報分析室の室長になることが決まったリエルさんや、ゾオルに連れて行くことになったロニアちゃんたち元輔祭(ほさい)たち3人と新卒採用組集団の2人の後任となる分析官への仕事受け継ぎ作業などに没頭していた時に、ふたたびマデンキ(魔法式映像音声送信機)でプリシルさまから連絡があった。


 ゾオルに連れて行く部下については、やはりリエルさんからも

「主要分析官をそんなに引き抜かれたら、私の仕事がやりにくくなります」とビシッと言われ、

プリシルさまも《大使館にもけっこう優秀な人がいるから、あなたの仕事を補佐する部下が少ないと思ったら、大使館職員の中から選んだ方がいいと思うわ》と助言をされたので、

ふてくされたり、失望を露わにした元輔祭(ほさい)()たちと新卒採用組の“選り抜き職員(エリート)”集団たちと話し合って事情を話し、3ヶ月以内にしっかりと後任者を育てることが出来たら、私といっしょにゾオルに転勤させるという条件でリエルさんにも承諾してもらい、元輔祭(ほさい)組と選り抜き職員(エリート)組も受け入れてくれた。


 元輔祭(ほさい)組でいっしょに行くことになったのは― 

ロニアちゃん、アマラちゃん、それにミンタちゃんの三人。

この三人がいっしょなに行くことになった理由は、

「あたしとロニアは輔祭(ほさい)時代からの親友で離れ離れでは生きていられません」

とアマラちゃんから脅されたから

 ロニアちゃんは何も言わずに黙っていたけど、顔が赤くなった。なに、この二人?相思相愛ってこと?

ミンタちゃんは 元輔祭(ほさい)組の最年少であり、甘えて涙を流して仲間に訴え、ゾオル転勤を勝ち取った?


 新卒採用組で行くことになった四人は― 

選り抜き職員(エリート)組のビースーちゃんとロナミちゃん。

 新規採用組の中からクレーラちゃんとモニッケちゃんと言う組み合わせになった。

クレーラちゃんは会社社長の令嬢で、モニッケちゃんは軍人の娘だ。

ちょっと変わった選択だけど、新規採用組でも十分転勤の機会があるよっていう刺激になると思う。


 元輔祭(ほさい)組と新卒採用組は、見ての通り全員女の子。

フローリナちゃんとミルイーズちゃんも女の子で、唯一の男は護衛のリンド君だけとなった。

 なぜ、女の子ばかり連れて行くのかって? 

それは、ほら、若い女の子と若い男の子がいっしょにいたら... 

ね、必ず恋愛問題とか三角関係とかが生まれるじゃない?


 それが嫌いなのよね、私。

三角関係なんかあったら、働く環境に影響が出るし、仲間同士の関係もギクシャクしてくるし。

 その点、リンド君はだいじょうぶ。ゲネンドルタウンに女の子たちとだけ一週間置いた時も、誰もつまみ食いしなかったし。あの子、私だけしか目がないのよね…


 いつか、男のあの激しい愛し方を私の体が無性に望んだら、抱かれてあげようかな?

いやいや、それはマズい。どう考えてもマズい。主人と部下という関係が... 

そんなことしたら、いつかの白昼夢が現実のものとなりかねない(汗)。

 えっ、もう元輔祭(ほさい)の女の子たちと毎晩楽しんでいるじゃないかって?

それはそうなんだけど、男の子と女の子って、どこか違うんだよね。

 うん、絶対違うと思うよ。



 ビアは私の親族なので第一陣転勤組から除外。

ビアからはかなり恨まれたけど、誰から見ても“身内贔屓(びいき)”と見られるので当然だ。

リエルさんは、「当然ね!」と転勤職員名一覧表を見て頷いた。


 そもそも、私の魔王国全権公使としての棒給明細書を盗み見たとき、“口止め料”として金貨2枚をあげたのは、()()()()()を考えての“懐柔料”もふくまれていたのよね。

 お(ねえ)を甘く見るなって言うの。誰が、金貨2枚という大金をほいほいとお小遣いにあげると思っているの?


「文句があるのなら、金貨2枚返しなさい。あなたを私といっしょにゾオルに連れて行ったら、誰が見ても身内贔屓(びいき)って思うでしょ?」

「だ、だって... ワタシは、クラスでも首席になるほど優秀なのよ!」


「それは話半分でしょ? 私が学校側に問い合わせさせたら、あなたとビースーとロナミちゃんとアラネイルちゃん、それにイジルダちゃんの5人で、毎月試験で1番を競っていたって話だったわよ?」

「くっ...」


「3ヵ月、言われた通りに頑張って後任を育てなさい。そうしたら、転勤させてあげるから」

「わかった...」  


というような会話が家であって、ようやく納得してもらえた。

そりゃね、私だって妹は可愛いわよ。

たとえおムネが私よりどーんと大きくても、背も私より高くても、身体能力も私より優れていても。

妹は妹だもんね。



 プリシルさまは、前任駐ゾオル大使ギルウィンド公爵の後任として、今すぐ赴任するのはお仕事の都合で遅れることになるけど― 

「アリシアちゃん、全権公使だからぁ。大使のわたくしがいなくてもうまくやって行けるでしょう?キャルニボル大統領とは懇意だし、 ドリアンスロゥプ皇帝・ジャブイ皇后両陛下とも仲良しだし、ガナパティ厩役伯爵やボンガゥル侯爵ともお友だちだし、反乱騒動では、陛下の懐刀って言われている皇帝衣装係のヴルペス侯爵とも親友になっちゃったって聞いているしぃ...」

なんておっしゃって、すべて私まかせにする気満々だった(汗)。


 ま、まあ、私のゾオルでの知名度、人気度については議論の余地がないんだけど。

ダイダロス宮で行われた皇帝陛下主宰の晩餐会では、私の“美貌でもって”ゾオルの上流社会の注目を一気に浴びたし、ドリアンスロゥプ皇帝ご夫妻を救出したゾオル反乱事件では、“智謀と勇猛さでもって”ゾオル中に名前が知れ渡ったし- 残念ながら、西ディアローム帝国正史には、私の名前は記載されてないけど- そのあとで、皇帝夫妻救出、反乱軍制圧という功績で西ディアローム帝国伯爵の爵位を陞爵(しょうしゃく)され、1万平方キロメートルという広大な領地まで授かり、“西ディアローム帝国で現在人気度・注目度第一位の貴族”になってしまった。


 反乱軍制圧というのは、私ひとりの功績ではなく、といっしょに戦ったガバロス親衛隊10人とアイフィさまたち魔術師の功績でもあるんだけど、まあ、実際に行動をとったのは私だしね...

 まあ、そういう訳で、ゾオル、いや、西ディアローム帝国に住む者でアリシア・ミラーニア・ゲネンドル伯爵の名前を知らないのは、頭の呆けた老人か、赤子だけだと言われるほど、私は西ディアローム帝国で有名になっていた。

 プリシルさまが言うまでもなく、魔王国において私ほど盟主国政府と難しい外交交渉をやれる者はいないのだ。




 公使としての着任日は、3月20日だった。


 ゾオルの魔王国公邸は、ダイダロス宮から8キロほど離れた緑の多い閑静とした区域にあり、私と公使秘書官となったフローリナちゃん、個人秘書のミルイーズちゃん、ロニアちゃんとアマラちゃんとミンタちゃん、選り抜き職員(エリート)組のビースーとロナミちゃん、新規採用組のクレーラちゃんとモニッケちゃん、護衛のリンド君、それに大使館付き魔術師ユビィラちゃんの総勢12人で、大使公邸の中にあるドコデモボード室に移動した。


 どこでもそうだが、ドコデモボードのある部屋はガバロス親衛隊によって厳重に警備されている。

魔術師ユビィラちゃんがいっしょに来たのは、表向きには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになっているからだ。


 それに、やはり大使の護衛にはガバロス親衛隊だけでなく、魔術師の護衛も必要だとアイフィさまがアマンダさまに進言したのだそうだ。敵も魔術師を持っているし、実際、東ディアローム帝国の首都ゾドアンスロプル攻略作戦では、魔王軍も敵の魔術師部隊にかなり手こずったって聞いているし。

だけど、大使館付き魔術師というのは、魔王国でも初めてなのだとか。


 前もって、外務省の方から私たちが着任する日時を知らせておいたので、ドコデモボードの部屋には、新任公使を迎えるべく、参事官、駐在武官、書記官、理事官たちが緊張な面持ちで待っていた。


「アリシア・ミラーニア・ゲネンドル公使閣下、お待ちしておりました。大使館で参事官を務めておりますエイルボット子爵でございます」


「公使閣下、駐在武官を務めておりますハソルム男爵です」


エイルボット子爵は彼は四十代半ばのカニスディオ族(イヌ人族)の外交官だ。ハソルム男爵は、ウルフニディオス族(オオカミ人族)で三十代と言ったところだろう。

公使である私に対して、慇懃丁寧に接しているが... 

その表情の中に“こんな若い娘が公使とは”と言いたげな感情が潜んでいるのに私は気づいていた。


「公使閣下、書記官を務めております...です」

「理事官を務めております...です」

「書記官を務めております...です」

「専門調査班長を務めております...です」


子爵、男爵に続いて全員が慇懃に頭を下げて自己紹介する。

うむ、閣下と呼ばれるのは悪くないわね。


 大使館着任はドコデモボード室から始まったので、大使館幹部職員に案内されて大使館見学となった。ドコデモボード室から廊下を渡り、階段を下り一階へ降りる。

 さすがに盟主国にある- 西ディアローム帝国の同盟国中でもっとも国力がある国の一つと言われる魔王国の大使館だけあって、内部は豪華なものだった。


 部屋や廊下には分厚い絨毯が敷かれ、壁には高価な絵画がずらりと飾られている。

魔王国政府にとって重要な人物を迎える謁見の間は、重厚な中にも格調高い様式で統一されており、魔王国で公式な場所には常にあるように、謁見の間にも魔王さまと四魔王妃さまの大きな肖像画が飾られてあった。

 二階には、大使の執務室、参事などの執務室、各職員の仕事部屋、大小の会議室、休憩室、喫茶室、居間などがあり、一階には、応接室、控室、謁見室、ダイニングルーム、喫茶室、娯楽室、図書室、会議室が数室、広間が数室、晩餐会が開けるなかり大きなホールがあり、それから豪華な玄関ホール、玄関ポーチと続き、大理石造りの階段を下りると大使館の正面玄関に出る。


 大使館の建物は、さすがテルースの世界で今や飛ぶ鳥を落とす勢いがあると言われる魔王国の大使館だけあって、荘厳な建物だった。

 正面には三階建ての建物の前面には、四本の大きな大理石の支柱があり、その両側の壁には高い窓が美しく配置されている。

 大使館の前にはよく手入れされた広い庭園が広がり、緑の芝生と木が大使館の白亜色と調和して抜けるような青空を背景に大使館をさらに映えさせる。



      ゾオル魔王国大使館

       挿絵(By みてみん)



「さて、では予定通り、キャルニボル大統領を着任表敬訪問するとしましょう!」


「はい。すでに馬車は用意しております」 

エイルボット子爵が、いつでも出発できることを伝えてくれる。


大使にせよ、公使にせよ、着任したら着任地の王ならび宰相を表敬訪問し、信任状の写しを提出しなければならない。信任状が受理されて初めて、その国を代表し、受け入れた国の政府と直接外交交渉を行うことが承認されるのだ。


「ガバロス親衛隊30騎もいつでも出発できる用意が出来ております」

駐在武官のハソルム男爵が、すでにヴァナグリーに跨っているガバロス親衛隊たちを手で示した。


護衛のガバロス親衛隊の隊長が、それを見て頷き、私に敬礼をする。

私も返礼をする。すると、隊長さん、ニコっと白いキバを光らせて笑った。


あれっ、あの顔は?


「ザロッケン君?」


ガア(はい)!ザロッケンでス 伯爵さマ。今度、アリシア伯爵さマの護衛をすル ゾオル駐留ガバロス親衛隊の隊長ニ任命されマしタ!」

「そうなの?じゃあ、私たちも安心ね。ルミシャラちゃんとは遠距離恋愛?」

「いエ、オレ 将校なのデ 連れてキています!」


「あら、結婚したの?」

「いエ、オレと ルミシャラ 婚約しマしタでス だかラ いっしょに 暮らしテいます!」


 はは~ん。

つまり、親も親衛隊本部も承認の同棲ってことね?

まあ、いいでしょ。若いんだし、セイリョクあまっている男を外地に一人で置いといたりしていたら、ロクなことしないからね?


「フローリナ書記官、私の服装はいいわね?」

「はい。非の打ちどころもありません!」

打てば響くように、フローリナちゃんが答える。


 私は、この日のためにとくに特注した礼服を着ていた。

濃紺のコートには、金モールが胸と襟と袖に華麗に付けられている。

ベストは目が覚めるような金色だ。その下は純白のシルクシャツ。

下は脚にピッタリした白のトラウザーに膝まであるピカピカに磨き上げた黒ブーツ。

背中には濃紺の表地に真っ赤な裏地のマント、腰のベルトには家宝のショートソード。


 どこから見てもバリっとした非の打ち所のないネコ耳美女公使の雄姿だ。

しかし、私は新調した礼服以外に、誰もの目を惹きつけるモノを私は胸に持っていた。

いや、だから、それは控えめなサイズのまま成長を止めたおムネじゃなくて...


 コートの前に付けたV字型の飾り帯(サッシュ)に燦然と黄金と宝石の光らせている魔王国勲章だった。大使館に到着した時から、出迎えに来てくれた大使館の職員たちの目を釘付けにした“栄誉の印”だ。

 それも無理はない。私自身、王族出身でありながら今は亡きブレストピア国でも、こんな栄誉章なんて見たことはなかったし、魔王国出発の前日に魔王城に急遽呼ばれて、大ホールでわずか50人にも満たない出席者参加のもとで授与された時― 


「これは、わが魔王国で最初の勲章だ。おそらくテルースの世界でも最初だろう。魔王国の代表として西ディアローム帝国に赴くからには、魔王国の外交官としての威厳と全権公使として私に代わって交渉するのだから、私と同じく立派で頭が切れる者だということをキャルニボル大統領たちに見せてやるがいい!」

と魔王さまはおっしゃって、勲章を直々に私の胸に付けてくださった。


 当然、V字型飾り帯(サッシュ)には、テルースの世界最初の勲章といっしょにゲネンドル伯爵の記章も二つ付けていた。なんせ魔王国伯爵であり、西ディアローム帝国の伯爵でもあるもので。



魔王国勲章

       挿絵(By みてみん)



 ダイダロス宮には、参事官のエイルボット子爵、それに駐在武官のハソルム男爵も行くが、別の馬車だ。私と同じ馬車には公使付き首席補佐官であるフローリナちゃん、個人秘書のミルイーズちゃん、ロニアちゃん、アマラちゃん、ビースーちゃんとロナミちゃんの6人が乗る。

 ミンタちゃん、クレーラちゃんとモニッケちゃんには、残ってもらって、持ってきた荷物や資料などの整理をしてもらうことにした。


 私の真向いに座っているフローリナちゃんには、私のと会わせた礼服を作ってあげた。

もちろん、彼女は主役ではないので、ゴチャゴチャと金モールで派手に飾ったりしてなく、襟と合わせと袖口が引き立つように入れているだけ。ベストは緋色に金糸を織り込んだ鮮やかなものでシャツは白シルク。トラウザーは同じく白だが、ブーツは短ブーツだ。


 長身であるパンサニディオス(ヒョウ族)の彼女が着ると、いっしょに連れて来た部下の()たちは

「ピュ――!」と口笛を吹いたり

「カッコいいよ、イロ女!」

「ゾオルでイイ男を引っかけて泊まって来てもいいよ!」

などとやんやと褒めそやし、冷やかしてフローリナちゃんを真っ赤にさせた。


 いや、それにしても、キャルニボル大統領さん、自分の娘が魔王国全権公使の書記官として来ているなんて想像もしてないだろうね。

 ロニアちゃんやビースちゃんたちは、めいめい上品で洗練された礼服姿だ。

唯一ドレス姿なのはミルイーズちゃんだけで、あとはすべて私に見習って“男装麗人ファッション”で、やはりみんな腰に剣を吊るしている。


 私をふくめ、部下たちには万一の事態に備えて剣術の練習を勧めている。

“芸は身を助ける”って言うしね。ゾオルでの反乱事件の事をロニアちゃんとアマラちゃんから顛末を聞いた部下たちは、それぞれ毎日だか週末だかに剣術の練習をしているようだ。



「出発してください!」

みんなが乗り込むと、窓から顔を出したフローリナちゃんが御者に声をかけた。


 護衛のリンド君は御者の隣だ。

女の子だらけの馬車の中にいたくなかったのだろうけど、護衛はやはり見晴らしのいい御者台が最適だよね。

 馬車は前後を30騎のガバロス親衛隊に囲まれて大使館を出発する。

全長5メートルもあるヴァナグリーに乗ったガバロス親衛隊は、道行く者を圧倒する。

2台の馬車は、すぐに片側三車線の広い道路に出る。

ガラガラ... 

石畳の道に車輪の音を響かせながら進む馬車。


 魔都では、すでにマフトレーン(魔法式浮動列車)が走っており、魔王国海軍は蒸気たーびんとか言うスゴイ動力を使っていると言うのに、未だに公使の乗り物はヴァナグリーが引く馬車ってどういうこと?

って言うか、魔都の主要乗り物もまだ馬車なんだけど?

早く、その蒸気たーびんとか電気を作り出す魔法陣とかを使って、馬なしで動く馬車を広めて欲しい。

      


ダイダロス宮殿

      挿絵(By みてみん)



 馬車はほどなくして、ダイダロス宮の正門から入った。

広い庭園の中の道をしばらく進み、宮殿の一画にある大統領府のある建物の前の馬車回(ばしゃまわり)に止まる。

 

 玄関にはガナパティ厩役伯爵が出迎えに来ていた。

玄関までの両側には、レオニディオ(ライオン人族)近衛騎兵が整然と並んで、手にした槍の穂先を光らせていた。

 馬車が止まるとすぐに後ろに乗っていた従者が飛び降り、一人がドアを開け、もう一人が素早く折り畳み階段を置く。

 フローリナちゃんが先に降り、続いてミルイーズちゃん、それから間をおいて私がドアに姿を現し、フローリナちゃんに手を持ってもらってゆっくりと降りる。


「アリシア・ゲネンドル伯爵殿、いや、今回は公使でしたな。ゲネンドル公使ようこそいらっしゃいました!」

ガナパティ厩役伯爵が前に出て来て挨拶をする。

そして、V字型飾り帯(サッシュ)に燦然と輝く、テルースの世界最初の勲章を眩そうに見る。


「ボンガゥル侯爵卿もご壮健そうで何よりです」

「さ、中へ参りましょう。大統領がお待ちです」


玄関を通り抜ける時に、左右に並んでいるレオニディオ(ライオン人族)近衛騎兵を見ると、5、6人が顔は動かさずに、目だけ動かして―


「お久しぶりです!」

「公使になられたんですね!」

「ご出世おめでとうございます!」

と言う、あの日、反乱兵を相手に戦った私たち“同志”だけに通じる言葉のこもった目で私を見た。


私も両側に直立しているレオニディオ(ライオン人族)近衛騎兵たちを見て深く頷いて、堂々とした荘厳な玄関をくぐった。



     ゲネンドル家 家宝の剣

      挿絵(By みてみん)

 



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