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8.発見

 その人のことが自分には手に取るように分かる。

 起床時間は、趣味、好きな番組、普段の食事など家でのことならなんでも知っている。

 好き、好き、好き、大好き。こんなにも人を好きになったことはない。

 灰色だった世界が全て鮮やかに見える。

 笑ってくれると嬉しいし、辛そうだと悲しくなる。

 自分だけを見てほしい。他の人に優しくしないで。

 二人だけの世界に閉じ込めて、自分以外は見えないようにしたい。

 そのために邪魔者は排除すべきだ。

 大好きなあの人と自分のために。

 あの人に近づくやつは許さない。


**********


 ある日の平日。

 小栗が取引先から会社へ戻る際に声をかけられた。


 「小栗くん、久しぶり」

 「滝沢さん。お久しぶりです」


 声の主は恵梨香の彼氏の滝沢だった。

 一時期、小栗の会社は滝沢の会社から仕事を受けており、そのときに恵梨香共々知り合ったのだ。


 「最近はどう?忙しい?」

 「えぇ、まぁ」


 歯切れの悪い小栗の態度を気にすることなく滝沢は話しを続ける。

 自分の仕事の話や気に入った店の話、スマホのバッテリーが早く減るなど滝沢の世間話を小栗は相槌を打ちながら聞く。


 「あ、そういえば恵梨香から聞いたよ。小栗くん、社内で表彰されたんだってね。おめでとう」

 「ありがとう…ございます」

 「まだ2年くらいしか働いてないのにすごいね。社内のPCシステムを一新したんだっけ?」

 「そんな、自分がやりやすいようにシステムを作っただけです…けど」


 大したことはしていないと言う小栗に滝沢は首を振る。


 「キミのおかげで仕事が円滑に進むんだよ。凄いことだよ」


 胸を張ってと滝沢が小栗の背中を叩いた。

 照れる小栗がお礼を言おうと顔を上げたとき、滝沢のスマホが鳴った。

 恵梨香からのメッセージを受信したようで、滝沢がそれを読み微笑む。


 「あらら。小栗くん、早く帰った方がいいかもよ」

 「えぇ?そんなに遅くなっていないつもりなんですけど」


 ほら、と滝沢が小栗にメッセージ画面を見せた。

 そこには『小栗くんが外回りから帰ってこない。部長がお土産を買ってきてくれたけど小栗くんの分も食べていいかな』とあった。

 食い意地が張ってると滝沢は笑いながら画面を閉じた。

 画面に表示されているアプリがいくつか小栗の目に入る。

 そこで見慣れないものがあった。


 「滝沢さん、これって何のアプリですか?」

 「ん?どれのことだい?」

 「この赤いやつです」

 「えぇっと…何だろう」


 首を傾げる滝沢とは対照的に、やっと見つけたと小栗はほくそ笑んだ。

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