81.悪意の行き先
昨日、コミカライズ6巻発売しました。
読んでくださっている皆様のおかげです、ありがとうございます
それと、やっと更新出来ました~
ストック作ってきたのでストップさせずに更新できるよう頑張ります
王妃様に連れられて向かった木陰のちいさなサロンで、狩猟祭に何度も参加しているベテランの貴婦人たちを紹介された。
様々な森の中の楽しみをレクチャーしてもらっていると、小さな手芸品にマデリン様が強い反応を示したことに気づく。
もちろん塩対応なんてわけではなく、紹介されたほかのものも丁寧に感想を告げたりしていたのだけども、なんて言うか好きなんだろうなって感じる細やかな違い。
「なんて鮮やかな色……あ、あのこれは草木染なのでしょうか?」
手にしているのは鮮やかに染められた赤のショール。
秋も深まり燃えるような赤に染まった木々を彷彿させ……というか、燃える炎のような髪を持つあの方を連想する色。
形自体は素朴なので近くの村で作られたものなのかしら?
私も衣料品の事業を営んでいるからそれなりに勉強もしているけども、まだまだ勉強不足を痛感してしまう。
草木染ってこんな色鮮やかに染まるものなのね。
……なんて考えながらマデリン様が熱心に見つめている織物を一緒に覗き込む。
マデリン様の手にある物のほかにも紫や薄い桃色、くすんだ緑や青と様々な色合いの布を見ていれば、私も関心があると思われたよう。
森や集落ごとの手工芸品や料理、様々な体験を身振り手振りを交えて熱弁を奮って下さっていた夫人の労に応えるため二人揃って大きく頷いた。
そんなわけで、キノコや木の実を収穫体験をするグループと合同で草木染体験のグループに参加させてもらう。
王妃様達は別の催しを見学するとの事。
それぞれのグループごとに案内人と護衛騎士が付き、少人数で固まって木漏れ日が降り注ぐ森の小道へと入っていく。
「お嬢様方、このあたりは安全だけどあそこに見えるロープの奥は狩場なので入り込まないよう気を付けてくだせえです。とんでくる矢で恋に落ちることはありませんので」
命の方が落ちますと少々ブラックなジョークを交えて禁止事項を通達してくれてるのは地元の木こりさん。
聞けば生まれた時からこの森で育っているので、自分の庭のようなものだと言う。
なら迷子になる心配は無さそうね、なんて考えながら鮮やかな色に染まった落ち葉を拾い始めた。
最初はマデリン様や他の夫人たちとあれこれ会話をしながら拾い歩いていたのだけど、綺麗な落ち葉を探すことに集中してしまう。
顔を上げた頃には既にグループの皆さんたちと離れていることに気が付いた。
「あらら……集中すると周りが見えなくなる癖をそろそろ改めないと、ダメね」
まだ声をかければ届く距離なので、反省しながら追いつこうと踏み出したところで別の集団の令嬢達が目に入る。
見覚えのあるドレスだったので、思わず目に入ったという感じなのだけど。
「あれはルミエラ嬢とお友達の方々ね。こういう催しは興味ないと思っていたけれど、意外にアクティブな方なのかしら……」
森の中を散策したり静かに森の時間を楽しむグループは、泉のある別方向に集まっている。
きのこ狩りや落ち葉拾いを黙々とこなしているグループは、手芸を嗜んだり料理を趣味にされるお元気な年配のご夫人が多い。
こちらは狩場に近い側なので、景観はそこまでよくない印象。
もちろん、自然に囲まれた森の中というだけで、見慣れない私にとっては見事な景色ではあると思うのだけど。
そんなことを考えながら、彼女達に声をかけるかどうか悩んでいる。
相手がアルルベル嬢達なら気軽に出来るのだけど、先ほど面識が出来た程度の仲だとハードルが急に高く感じてしまうのだ。
せめて共通の話題が作りやすい事業相手や職人の方達なら……。
悩んでいる間にルミエラ嬢達がこちらの方へ歩いて来るから、思わず傍にある木立の影に隠れてしまった。
森の中の催しに参加するつもりでいたので、歩きやすい乗馬服なのが幸いしたようで、衣擦れの音もなく身を隠せられた。
……まあ、話しかけにくい雰囲気でもあるのよね。
楽しくおしゃべりしてる感じでもないし、いったい何をお話になってるのかしら。
はしたないと思いつつも、思わず聞き耳を立ててしまう。
「あの偽物が……図々しいったら」
「か弱い振りなんてしたたかですわよねえ、恥ずかしくないのかしら」
「公爵家に入ったのもきっと殿下に近ずくためですわ」
口元を扇で隠していれば、噂話の通りも抑えられると思っているのかしら。
出来たとしても、視線の行方は丸わかりなのでルミエラ嬢達の噂話のタネがもろにわかる。
陰口とかする気もないけども、視線の向ける方向にも気を使うべきなのねと学習した。
ルミエラ嬢達は私が隠れていた木立の前を通り抜け、天幕のあるエリアの方へ消えていった。
どうやら彼女達に私がここにいたことはバレてはいなさそうね。
特に罪になるような事じゃないけど、それでも人の話を隠れて聞いたことの後ろめたさと隠れていたスリルに胸がドキドキしている。
それにしても子供の頃マリア達の目を誤魔化した、かくれんぼスキルは健在のようね。
呼吸を整えながら彼女たちの姿が見えなくなった頃合いを見て、木立の影から抜け出すと私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「エリザベス様、侯爵夫人はおられますか?」
「ロッテバルト侯爵夫人はいらっしゃいますか」
声の方角から察すると私が参加しているグループの方々みたいね。
このままだと迷子扱いにされてしまいそう。
騒ぎになって大事になったら大変だわ。
早く皆さんの元へ戻らないと……と、足を踏み出す。
豊かな森だと教えてくれる、柔らかな下草を踏みながら歩きだしてすぐの事。
「あれ、リズじゃないか?」
今度は森の奥の方から、聞きなれたよく通るテノールが響く。
別の騒ぎのタネになりそうな人の声に再び足を止めてしまうのだった。
新作連載します
「悪女に仕立て上げられ王太子から婚約破棄された公爵令嬢ですが、その場で聖者様に拾われてしまいました~こんな私を溺愛する執着心が理解出来なくて困ります」
剣、魔法、魔王が存在する世界の最強聖者様の溺愛執着系王道ロマファンです
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