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儀式の後・夜の森で

更新遅れてごめんなさい!

GW忙しかった……ッ!

 ナイジェル様達と合流するとマデリン嬢の体調を考慮して、儀式の感想や明日の予定などの話は静かな場所で腰を落ち着かせてからにしようとなった。


 夜も更けているため人気がなさすぎる場所も危ないと思うので、自然と宿泊スペースに割り当てられた天幕へ向かう事に。

 行きは王妃様たちを護衛している王宮の騎士たちが周りを守っているし、侯爵家に割り当てられた天幕へ戻るときはカイルが送ってくれるとの事。

 

 なので、同行していたアンドルとイスラ卿は私の代わりに他の家門の方達との顔つなぎを買って出てくれたため、広場で別れて行動することも「閣下(カイル)がご一緒なら」と、スムーズに決まった。

 結構なやんちゃぶりを我が家(ロゼウェル)でも侯爵家の屋敷でも発揮している割に、こういう面では信用が厚いのよね。

 

「もう、王妃様たちの前でドヤ顔しないで頂戴……」

「自慢もしたくなるだろう? 他家の護衛隊長と筆頭家令からの全幅の信頼を得るなんてそうあることじゃないし」


「他家って言うほど他じゃないでしょ」


 いつものような気軽さでツッコミを入れながら歩いていると、私たちの後ろにナイジェル様のエスコートを受けながら歩いていたマデリン嬢が「ふふ」と小さな笑い声をあげた。

 今までナイジェル様のおそばで静かに微笑まれている姿しか記憶になかったので、思わず振り返ると目が合ったマデリン嬢の頬が恥ずかし気に薔薇色へ染まる。


「ごめんなさい……ロッテバルト侯爵夫人。聞き耳を立てて笑うなんてはしたない事を」


「そんな咎めるつもりなんて、笑って下さったのが嬉しくて。よろしければ私のことはエリザベスと名でお呼びください」

「よ、よいのですか? エ……エリザベス様。じゃあ……私のこともマデリンと」


「はい、マデリン様」


 二人きりだったら顔を覆って恥ずかしがりそうな可憐さでそう返してくれたマデリン様へ向かい、親しみを込めるように名を呼びながら笑って見せる。

 視線の向こうにはそんな私たちのやり取りをナイジェル様の背後から微笑まし気に眺めていらっしゃる王妃様の顔も見えた。

 

 お二人の仲も良好なようねと感じつつ、謝罪ループにならないように気を配りながら話を切り上げた。

 

 実際彼女とは仲良くなりたいのよね、ほら……カイルの従姉になるわけだし。

 今の細やかなやり取りをきっかけにもっとお話出来るようになれるといいな、だなんて考えながら暗い道を歩いて行ったのだけど。

 

 ――まあ、そうすんなりと事が運ぶわけもなく、天幕の中明るい光にあたったマデリン嬢の顔色の悪さを見た一同お話はまた今度! と、解散の流れとなった。

 そんなわけで、打合せ通り侯爵家の天幕までカイルに送ってもらうと王妃様に挨拶をしてから戻ろうと。


「ごめんなさいね、エリザベス」

「いえ、私の方は気になさらず。明日も早いとのことですし王妃様もお体を休めて下さいませ」


 そう、明日は王妃様のお供に乗馬での森の散策が予定にあるのよ。

 

 まだ侯爵家の使用人以外だとカイルにしか乗馬姿を披露していないので、上達した乗馬姿を王妃様にも見せたかったりする。


 そのためにもここは涙を呑んで体を休めることに専念したい。

 悲しい事に昼の馬車移動で腰が痛かったりするのよ。顔に出さない努力はしているけどもッ!


 マデリン様とは挨拶と一言二言言葉を交わした程度の交流になってしまったけれど、祭りはまだ始まったばかりだもの。

 

「では王妃様、御機嫌よう。また明日」


 マデリン様を寝所になっている天幕へ連れ添っていかれたナイジェル様にもよろしくお伝えください!


 ……と、手を振りながら王家の天幕を後にした私たちは、暗い夜道を転ばないようゆっくりした足取りで侯爵家の天幕を目指して歩いていく。


 ザッザッザッザッ……。


 少しして、背後から追ってくる足音が耳に届き思わず身構えた。

 カイルが私を背で庇う様にして振り返り、腰に下がる剣の柄に手をかけながら音のする方角へ鋭い語気を飛ばす。


「何も……ッ」

「私だ、私。親愛なるお前の従兄の!」


 カイルの声を遮るように聞きなれた声が夜の森に響く。

 問いかける言葉を言い切る前に告げられた言葉と月に照らされた赤い髪が存在を明確に主張してくれたので、カイルの腰に下がった剣の行き先は鞘に納まったままのようでほっと息をついた。


「よろしくお伝えされたばかりで済まないね」


 カイルの背に庇われていた私を覗き込むようにしてナイジェル様が謝罪してくださる。

 

 ……あ、去り際の口上聞こえていたのですね。

 自分でも気づかぬほどに気持ちが高揚していたのか、淑女らしからぬ大声をあげたことにようやく気付いて顔が赤くなった。


「婚約者殿の具合が悪いのに、離れていて大丈夫なのか?」

「今は母や侍女たちが見てくれているし、式も挙げていないのに夜の仕度の場にはまだ居るわけにいかないだろう? 部屋へのエスコート以上のことをしでかしてみろ、義父殿から婚約破棄を叩きつけられるよ。いや、あの方なら拳を叩きつけられかねない」


 ナイジェル様に対しては大層塩対応な様子だと言われる、マデリン様を溺愛されている父君のオーベル公爵。

 マデリン様をめぐって長年の攻防を繰り広げたナイジェル様だけが分かる、やらかせば確実に取るだろう行動を思い描いたらしい遠い目をされながら答えた。

 

 あれだけ熱愛されているのに部屋の手前のエスコートどまりだなんて、お気の毒というか。

 嫁姑も大変と聞くけど、娘婿と父親も大変なのね……。


 そんな雑な思考は少しだけ音を潜めたナイジェル様の真剣な声によってすぐに霧散した。

 

「……それに、少し見て貰いたい物があってね」


 ナイジェル様の言葉を聞いて私とカイルは立ち話で済ませる内容ではないと感じたので、それなら明るい場所でと侯爵家の天幕への移動を促して再び歩き出した。

 

 侯爵家の天幕は片付けがひと段落したようで、広場に向かうときは打って変わって静かな雰囲気。


 天幕の傍で番をしていた騎士が、私の到着を知らせる声をあげると、遅番の当番になっている使用人と護衛騎士、それとイスラ卿が外に出て迎えてくれた。


「ただいま戻りました。あら、アンドルはまだ?」


 真っ先に顔を見せるはずのアンドルの姿が見えないことに首を傾げつつ、出迎えの先頭に居たイスラ卿へそう話しかけてみる。

 その問いに少し遠い目をした彼が答えた。

 

「ええ、事業の話が聞きたいとなかなか放してもらえない様で。……家令殿が屋敷を離れることが余り無いですし」


 ……確かに肩肘張らず、他家の人間が交流し合うような気易い場に彼がいること自体珍しいわね。

 

 私の代理として顔つなぎという目的であの場に居ると言っていたのだし、いつもの八方美人をフル活用しているでしょうね。

 その場に居なくて本当に良かったと胸をなでおろしつつ、どうかもみくちゃにされていませんようにと我が家の家令の無事を秘かに天に祈った。


 ***


 カイルだけならともかくナイジェル様もいらっしゃるので、侍女たちに場を軽く整えて貰い天幕の中へ入っていく。

 簡易的な応接用のテーブルにそれぞれ腰を落ちつかせてからイスラ卿に人払いを頼むと、ナイジェル様が居ることになにかを察したイスラ卿は黙ったまま頷いて外へ出てくれた。

 

 これでしばらくの間天幕に人が近づかないだろうからと、ナイジェル様に話の続きを促した。


「では夜も遅い事ですし、本題に入って頂いてもよいでしょうか?」



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