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波乱の前に……

本日のお昼過ぎに400万PV越えました(*'ω'*)ありがとうございます。

 屋敷へ馬車がつくと、マリアは針仕事の得意な使用人達に聞いてみますと告げると、先に屋敷へと戻っていく。


 カイルたちの帰宅する時刻が近い事を、馬車止めで出迎えてくれた家令のローウェンが教えてくれた。だから、自室に向かわず玄関ホールで彼らの帰宅を待つことにした。


「エリザベスお嬢様、外は暑かったでしょうからなにかお飲み物になりますか?」


「いえ、カイルたちもそろそろ戻って来るらしいから、今は大丈夫よ。揃ったら応接間の方に用意してもらえて?」


「かしこまりました」


 すぐお出し出来るように準備をしてまいりますと、玄関ホールを後にした侍女と入れ違いに叔母が現れる。


 午後に顔を合わせた時よりおめかししていらっしゃるし、手には小さなバックをお持ちなのでこれからお出掛けなのかしら?


「あら、エリザベスさん。戻ってたのね」


「はい、先ほど」


「そうそう、お茶の時間の時に話したことなのだけど、出来れば早めに紹介したいの。顔合わせだけならそんな時間とらないでしょうし明日は都合つくかしら?」


 ああ、そういえばそんなことを言ってたわね。


 私の都合を聞いているようで多分これは『明日、絶対』ってところね。お相手に急かされてたりするのかしら? ……まあ商売絡みでは仕方ないかも。


「明日ですか? そうですね時間は取れると思いますが詳しい時刻は夕食の後にお話ししても間に合いますか? 叔母様もこれからお出掛けのようですし」


「王都でもお世話になっている伯爵夫人のサロンに招かれているのよ。では戻って来たらお話ししましょうね」


 我が家の馬車が正門を抜けて近づいてきたのか、馬の嘶き声と蹄の音が聞こえた。それを聞いて叔母は馬車止めへと向かって行ってくれたので私はホッと息を吐きながら胸を撫で下ろす。


 ――良かった。たとえ紹介でも見知らぬ人と一人で会うのは少し避けたいのでお父様かカイルに同席してもらえる時間があるか聞く時間が出来たわ。


 そして叔母を乗せた馬車が門を出てから暫くして、ふたりを乗せた馬車が戻って来たので出迎えた。


 人の事は言えないけれどナイジェル様も、王都とは気候も全く違う不慣れな地でも変わらずお忙しそうなので、体調崩されないように精いっぱい気を配って差し上げないとね。


「おかえりなさい、おふたりともお疲れ様」


 笑顔で出迎え、応接室へとふたりを通し席へとついた。

 そのタイミングで冷たいお茶と冷菓が配膳される。あの時にお願いしておいてよかったわ。


「そういえばこちらへ戻るときに、君の家の馬車とすれ違ったよ。ワルド夫人が乗っていたように見えたけど」


 お茶を飲んで一息ついたタイミングで、思い出したようにカイルが告げたので、その通りだと頷き返す。


「王都にいらっしゃる知り合いの夫人のサロンに呼ばれたそうよ」


「……浮かない顔をしているから夫人にまた意地悪でもされたのかと思った」


 行き先のやり取りをしているくらいなら、平和的にすれ違ったのだろうと笑みを浮かべるカイルを見て、過保護すぎるわとこぼしてからその時の叔母とのやり取りを思い出す。


「ああ、意地悪とかではないけれど……あのね」


 王都の職人との顔合わせならお茶会や夜会が終わった後でも十分かと思ったのに自分の用事を優先したいらしい叔母から明日中にと頼まれたことを伝えた。


 勿論、前々からの約束で、とかそうでなくともこちらに十分な余裕があるときなら会うこと自体は構わないのだけど、余裕どころか正直夜会のドレスどうしようって心の中は大慌てなのよ。


「そう言う訳で申し訳ないのだけど、明日空いてる時間はあるかしら? 私はお茶会の準備で一日中屋敷に居る予定だから合わせられるわ」


「……明日は……うぐっ」


 カイルより先に口を開いたナイジェル様が言葉途中に言いよどむ。……というか呻いたような?


 そして間髪入れずにカイルが答えた。


「君のエスコート以上に大事な用事なんてないよ」

「明日は別行動で構わないだろう? 人手が居るならうちの侍従なり騎士なりいくらでも貸し出す」


 私へ言葉を返した後にナイジェル様にも言葉を投げるカイルの様子を見てナイジェル様にそっと視線を向けると少しばかり苦みの混じる笑みを向けて頷いてくださった。


「わかった。エリザベス嬢の身の安全のほうが大事なのは私も同じだ。仕方ない貸しひとつだな」


 ――――うちの子が本当にすいません、ってイタズラ坊やのお母様の気持ちって、こういうものなのかしら。


 子供を持つ前から、こんな気持ちを追体験出来るなんて思いもしなかったわ。


 心の中で頭を下げつつ話題は明日の時間調整へと進む。


 面倒ごとはさっさと終わらせようということになり、明日お昼前に時間を空けられると夜になってサロンから戻って来た叔母にもそう伝えた。


 私の返答を聞いた叔母がそれを知らせるための使いを送った頃、カイルはマリアを捕まえて何か指示をしていた。


 多分明日の事だろうし重要な事なら、まず私に話を振るだろうからお茶菓子のリクエストとかかしら。


 ……なんてのんきに考えていたのだけど。


 

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