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-幕間--- やはり恋はから回る

前回「恋のから騒ぎ」の後日談部分です。

 その後、互いの近況と、カイルが街道事業での会合で上がった問題や解決策の試案をいくつかお父様達に話してから両親はほかに用事があると私達だけ応接室に残された。


 そのタイミングで侍女が新しい冷たい果実水を交換してくれたけれど私はまだ怒ってるという姿勢を崩さずに、ぷう、と頬を膨らませたまま彼に視線を合わせずに横を向いている。


「リーズ」


 声変わりはしたけれど本質は幼い頃と何も変わらない彼の柔らかい声が私の名を呼ぶ。


 ちらりと視線を彼に向けると、そんな些細な私の視線の動きに反応し視線を辿り、声より遥かに柔らかな笑みが私の視線を絡めて捕らえる。


 ……――― 無理ッ!何をどうするとそう言うことが身に付くのよ…ッ


 慌てて視線を外して、つんとした表情を必死に保つ。


 幼い頃とあまり変化の無いぼんやりした私の顔面偏差値を置き去りにしている彼の顔はもう物理的な破壊力すらついていそうで眩い笑み一つで一発で倒されそうになる。


 幼い頃から傍に居て耐性が付いている私でもこうなのだから他の令嬢達は平気で居られるの??


 ……あ、でも……アルルベル嬢達は結構普通にカイルと接していたわよね……あああ……ッ顔を覆って叫びだしたい気分だわ。


「リズ、いい加減に機嫌を直して顔を見せてよ。……そんなに怒る事かなあ」


「お、怒るに決まってるでしょ!あんな事、お父様達の前で言ったらまるで…まるで」


 ……――― プロポーズじゃない!


 違っていたら怖くて言葉に出せなかったけど、真っ赤になっている私の顔を見つめる彼の目が、間違いじゃないと教えてくれるから余計に恥ずかしい。


「どうせ混み合うのがわかっているんだ、自分の持ちうるすべての手段(コネ)を使って君の前で膝を折る次の男になる権利くらい手に入れてもいいじゃないか」


「混み合うわけないわよ、馬鹿じゃないの。婚家から離縁されて傷物になった令嬢なんて、次の貰い手を探すのに苦労することくらいは私だって知っているのよ」


 ……だから、そんな相手の瑕疵にしかならない私はカイルの隣にいることすら相応しくないし、許されないわ。


「本気で言っているのかい?君はあの舞踏会の夜、この国でもっとも貴重な淑女となったというのに。君の美しさも、純粋さも、聡明さも、君がこの先この国にもたらすだろう栄光も栄誉も。……そしてその価値を見いだせなかった馬鹿な夫の存在も、あの場で如実に表された」


「……買いかぶり過ぎだわ」


 長い間貴族としての尊厳を貶められ続けた時間を過ごしていたためか、手放しで褒められる事になかなか慣れない。

 いえ、慣れたとしてもカイルのセリフを正面から素直に受け止められるメンタルって並大抵の強度じゃ立ち向かえないと思うの……。


 だからそんな可愛げもない返答をしてしまうのも仕方がないのよ。


「ローズベル辺境伯殿に聞いてみるといいよ。舞踏会の夜以降、君の再婚相手に選んでほしいとの手紙がどれほど届いているか。あのままなら離婚は秒読みと踏んでいる者や、相応しくないので強制的に離縁をしてでも娶らせてほしいとせがむ者まで、結構な数だった。油断しているとどこで既成事実を拵えようとする馬鹿が出てくるかわからないほどにね」


「……そんなに、なの?」


 それはそれで怖いというか……見知らぬ男性に取り囲まれるのも二人きりにされるのも避けたいと思いながら寒気を覚えて小さく体が震えた。


「まあ、辺境伯殿は君の周りが落ち着くまで私を虫よけに使いたいようだしね」


「この国の筆頭貴族様をそんな使い方しようとするのはお父様くらいよね……虫よけなら親類の中から年の近い男子に頼めばいいのに」


 確かに、お父様だとカイルを私の再婚先の候補と言うよりは防波堤代わりに使いそうだわ。


 ……ああそうか、防波堤か。うん、しっくりくる。



「長年の信頼と、合理性かな。私なら爵位や家の都合で身を引くような場面は起きないだろう?強引に返事をもぎ取ろうとする者が出てきたとしても、私と言う先約があるなら断りやすいだろうしね。……もちろん」


「そうよね!分かった、私からもお願いするわ」


 これ以上彼の声や表情が甘くなったら私どうにかなってしまいそうで、そんな本能的な危機感がカイルの最後の言葉を遮るようにして言葉を被せてしまった。


「でも、貴方が言ってくれたように私も()()()()()()()()()()()で居る努力をするわ、貴方の醜聞に繋がらないように」


「え」


「そ、そういう事だから、これからもよろしく。私もそろそろ荷物を片付けに部屋に戻るわね、カイルは気にせず休んでて」


 カイルの顔がなんとも言えない虚無を貼り付けたように見えたけど、私は振り返らずに未開封の荷物が積まれているだろう自室へと走り出した。



 どうしよう、いろいろなことを経験したから巻き戻ってきた今はどうとでも出来るって思ってたのに。


 ―――…… 私の恋愛経験値、低すぎる……ッ

カイルの虚無を張り付けた顔。のイメージ画像追加しますね


https://38857.mitemin.net/i636716/


これです。時間がなくて落書きですが、お目汚しに。

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