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【書籍・コミカライズ】絶望令嬢の華麗なる離婚~幼馴染の大公閣下の溺愛が止まらないのです~  作者: 高槻和衣@絶望令嬢コミカライズ5巻発売


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やっぱりこうなるの?

誤字報告ありがとうございます。

 明るい日差しの下だから余計にグダグダ感しかない残念過ぎるお茶会の様子にため息が出そう。


 それをぐっと堪えつつ口元に笑みを浮かべながらアリスが座るテーブルへとゆっくり近づいていくと、周りのテーブルに座っていた令嬢や子息の視線が集まる。



『どこのお家の方かしら……』


『見かけたことがない方ね……でも素敵な方』



 私の正体を探る声があちこちから聞こえてくる。……式に誰も呼ばなかったし、王都の社交界に顔を出したことがないからわからないでしょうね。


 投げかけられる視線に臆することなく笑みを向ければ令嬢、令息たちがぽっと頬を染めた。


 うん、ほんとうちの侍女()達、ぐう優秀。



 あらあら、アリスさんが怖い顔で睨んできてるわ。注目される令嬢はもれなく敵認定なのかしら……?




「だ、誰よあんた!」


 この中で唯一顔を合わせたことがあるアリスにまで知らない人にされてしまい、吹き出しそうになった。

 私とわかって睨んでいたのじゃないの??


「まあ、誰かもわからずに招待状を出されたの?……仕方ないわね、マリア」


 後ろに控えていたマリアが招待状を手にして私に渡す。招待を受けた証拠としてそれをアリスの座るテーブルへと置くと毟り取るように腕を伸ばしてカードを取り上げる。


「エ………エリザベス…?」


 穴が空きそうなほどカードの宛名と私の顔を交互に眺めながら私の名を呼ぶ。私の名を呼ぶことを許可した覚えはないのだけれど、其処を突いた所でアバンが煩いだけだろうし、話が進まないのでそこは後回し。


「ええ、お久しぶりですわ、アリスさん」


「まあ、アリス様のお友達ですの?私達にも紹介なさって」

「アリス嬢、ぜひ僕らも」


 私を凝視していたアリスの周りに侍る令嬢達はようやく我に返ったか、取り巻きの座を奪われまいと敵意をむき出し始めるアリスのご友人様方と下心見え見えのアバンのお友達。


「そ、そうね、いいわよ……ええと…エリザベス……」


 幼馴染(アバン)の本妻ってそんな紹介しづらいかしら?………ああ、もしかして……。




「紹介するよ、アリス・ティード男爵令嬢。僕の乳母だったティード男爵夫人の一人娘でね、幼い頃からの大事な友人なんだ」


「初めまして、アリスです。アバンとは小さなころから仲良しなの、よろしくね」



 対面した時の不愉快な記憶を思い返す。

 あら、アバンは私を紹介してないし、アリスも名を聞く気もなかったわね……辛うじてお付きの侍女が私のことをエリザベス様と呼ぶ程度かしら?


 聞けばすぐにわかることなのに、一切私に興味無しってことなのね……。


「……ええ、エリザベスですわ。エリザベス・ティア・ロッテバルトと申します。皆さん初めまして」


「……ん?ロッテバルトと言うと……君はアバンの妹君か?」


 多少頭の回転がスムーズだったらしいアリスの隣に侍る令息が私の家名を聞いて言葉を投げてきた。


「何?こんなに美しい妹君がいるとか聞いてないぞ、アバンのやつとっちめてやる」


「まあ、面白い」


 ……まあ、気色悪い。


 契約で繋がっているだけでも不愉快なのに、あれと血が繋がっているとか想像するだけで具合が悪くなりそう。

 不快感からくる苛立ちを表に出さないように笑みを深めた。



「つい先日、ロッテバルトになりましたの」



 自分のほうからあの男の妻ですって言いたくないので、普通なら気づく程度に告げておいた。


 ざっと見る限り、この集まりの最高爵位は伯爵のよう。


 アリスとアバンの見栄張りで出しただろう高位貴族たちは今のところは不参加のようで一安心ね、忙しい方々だろうから遅れてくる可能性もあるので油断はできないけど……。


 ともかく、この場にいる人間の中で最高位は私なのだ。


 アリスは気づきもせず椅子に腰を下ろしたまま、立っている私に接している。


 このあり得ない状況に気づいたのはアリスに遠巻きにされていた令嬢達。


 その中の一人が意を決したようにテーブルの上を整え、周りに控えているだけだったメイドの元へ向かい、新しいお茶の用意を頼む。………そして。


「許しもなくお声をかける無礼をどうかご容赦ください、エリザベス様」


 アリスの中では一番尊重して立てるべき相手であるアリスを無視して私の元へ来ると膝を深く折り上位の者へするカーテシーを見せながら私に話しかけた。


「ええ、許します。貴方は?」


「ラルボ伯爵家が次女アルルベルです。新しいお茶を用意してもらったのでどうぞ、こちらのテーブルへ」


 ホストが座るテーブルが爵位順で言えば妥当な席になるのだろうけど、取り巻きたちが食べたお菓子の屑が散乱し、クロスにお茶の染みが水玉模様になっているようなテーブルに座らせられないと判断したのかしら。


 なんか椅子までねばねばしてそうで座りたくないから助かったわ。



「ラルボ伯爵令嬢。……心遣いをありがとう、気配りがお上手なのね」


「ええ、伯爵家のご当主様も鼻が高いでしょう。お若いのにもてなすという事がどういうものかわかっていらっしゃいますね」


 会場のテーブルには大きな日よけの傘があるので、ここまで差していた日傘を閉じながらマリアがアリスたちのテーブルに届く音量で伯爵令嬢を褒めた。


 もてなす心を持たないダメホストだとアリスのことを暗に言いながらだけど……。


 通り過ぎるときちらりとアリスを見たら怒りに顔を歪めてたわ。そういうことは気づくのね……。


 案内されたテーブルに他の席からも遠巻きにされていた令嬢たちが集まり、席に入ることの許可を求めてきたので快く招き入れた。


 一応アルルベル嬢に席は決まっていないのかと聞いてみたが、最初からこんな感じだったのでアリスと取り巻きたちに絡まれないように皆、離れたテーブルに点在していたという話だった。


「エリザベス様、ぜひ当家のお茶会にいらしてくださいませ」

「あら、抜け駆けは許せませんわ、エリザベス様、我が家のお茶会にもぜひ」


 テーブルに集まってきた令嬢が名と家名を告げればそう口々にパーティへ誘ってくれた。


 男爵家や子爵家が侯爵位以上の爵位を持つ令嬢や令息をパーティーへ招待しても応じてくれることは稀なこと。

 そして低位の貴族と高位の貴族の橋渡しの役目も担う低位貴族の取りまとめ役のような位置にある伯爵位。


 アリスの取り巻きは男爵令嬢と子爵令嬢ばかりなので高位貴族との繋がり欲しさに伯爵家の令嬢をお招きしたのかしら。

 私のようにパーティに誘われればそこで高位貴族や、運が良ければ繋がった高位貴族を通して王族とも繋がれるものね。


 だったらちゃんと持て成しなさいよ……。


 私がアリスより立場の上の人間だと理解した令嬢たちに囲まれて真っ当なお茶会を楽しんでいたが、自分を眼中に入れもしない私達に業を煮やしたアリスが取り巻きの令嬢令息を連れて荒々しい足音とともにやってきた。


「楽しんでいただけてるようで嬉しいわ。エリザベスさんの田舎じゃティーパーティなんて開かれたことないのではなくて?」


「だからこんなに騒いでらっしゃるのねえ、地方の伯爵領じゃ人より馬のほうが多いでしょうし」


「あら、じゃあニンジン茶で馬とお茶会を楽しまれたのね」


 向こうのテーブルで私の出身地が辺境の田舎だとでも説明したのかしら。

 アリスのご機嫌を取るためもあってか悪し様に口々に私を田舎者だと詰る声と笑い声が重なる。


 爵位で勝てないから出自で勝負って感じなのかしら……。


 私の登場に出鼻をくじかれたらしいアリスが嚙みついてくることもなかったので、巻き込まれた形で参加されてる令嬢方に今以上に不快な思いをさせてしまうのもどうかと思い直しておとなしく招かれたテーブルで真っ当な社交を楽しもうとしたのに。


 私もこうしてアリスのおかげで選別されたまともな令嬢達と交流を持つ機会が出来たのだからこの場でアリスに牽制するのはやめて、お茶会が終わった後次はないとアバンとアバンの財布に釘を刺して使用人達の手伝いも事前に止めるようにしておけばいいかとも考えたのだけど。



 やはりアリスはアリス。


 おとなしくしているだろう、なんて推測あり得ない事だったのね。


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