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転生者が集まれば、密談よりもネタバレになるのは仕方ない

「ちょっと場所移そうか」

と隣国の王子が言えば、そのまま4人で誰もいない教室に入る。

「で、そちらの御令嬢も転生者ってやつ?」

と隣国王子に聞かれ、

「改めまして、カトレア・リストと申します。転生者です」

と言えば、

「レイリー・セルゲイだ。転生者だが、ゲームの内容は、知らない。サイフォン王子はご存知か?」

「サイフォン・クロトニアだ。ゲームも知らないし、転生者じゃない。調べに来ただけだ」

「ミリーア・クロトニアです。転生者です。私達の国には来て欲しくなくて、様子見と先のストーリーのこちらの展開が少しでも変わればと思い来ました。兄様は、私の付き添いです」

「ちょっと待ってミリーア様、ピンクローズは恋華に舞うって2もあるの?」

「はい、1が無課金でエンディングを迎えられるゲームでお手軽だった分、2は、衣装や装飾品を課金型になりました」

「え、何それ」

と言うと、続けてミリーア様は、

「2は、第一王子レッセン様の婚約者としてスタートします。隣国の学園に留学中に攻略対象者と恋をする。王道は兄のサイフォンルートです。国よりも愛を取るパターンです。普通に考えてこんなの最悪の結末の為、どうにかしたいと考えて、先に動きました」


みんな無言だ。当然だ。国際問題だろう。隣の国の王子の婚約者奪うなんて、常識がない。

その時、ミリーアは、じっとレイリー様を見ていた。

「隠しキャラに会えるなんて」

確かにそうかもしれんが、何か微妙に面白くない。

「ミリーア様は、2では役割があるんですか?」

と聞くと、

「はい、私は、第二の悪役令嬢です」

「まだそのシステム」

と言ってレイリー様は、肩を窄めた。しかしミリーア様は、真っ直ぐに私を見ながら私の手を握って、

「あなた、第三の悪役令嬢のカトレア、すぐに修道院送りにされる子」

と喜ぶ。

「それを避ける為、二年生に編入したんですが、どうなる事か」

と言えば、サイフォン王子が

「俺達は、俺が三年、ミリーアが一年に編入だ。よろしく」

と爽やか笑顔で手を差し出し、手を握った。するとレイリー様が、サイフォン王子の手を取り、

「よろしくお願いします」

と言う。

なんだこのやり取りは、と思いながら、心の中は嬉しい。

「まさかヒロインも2の王子ルートが現れたら、こちらの国には来ないかなって期待しているんです」

確かにミリーア様の言う通りだ。

「ストーリーが変わりそうですね。様子を見ながらの対応にはなりそうですが、私は、2をゲームした事がないですが、1のような秘密アイテムあるんですか?」

と言ったらミリーア様は、待ってましたと言うかのごとく、

「2のストーリーは黒魔法の本です。ヒロインに回収される前に先に教会に行って回収しました。明日学園に持っていきますね。1では、生まれた時にもらった祝福の指輪でしたっけ」

と言えば、私も

「えぇ、悩みがあると赤く光り、解決すると緑に光るというマジックアイテム」

「そうそう、信号みたいって思いました」

とまるでオフ会になって、あれはおかしいとか、無理矢理な設定だとか多いに盛り上がって、入学式には参加せずに終わる。


そして翌日、レイリー様に言われた通り、眼鏡をかけて登校する。これだけでも少し変装した気分になる。

クラスは、お茶会でたまに一緒になる令嬢もいて、一人ぼっちにはならずに済んだ。

嬉しかった事は、レッセン王子、レイリー様、チャラ男侯爵令息とクラスが離れた事。穏やかに勉強ができる。


そしてこの日からピンクのフワ髪のルシアさんが廊下を走ったり歩いたりする姿を何度も見ている。

ルシアさんが転生者かもしれない予想は当たりで、彼女は、ストーリーが始まる前に行動を起こしていた。

真剣にやり込んだゲームではなかったので、レッセン王子の城下町のお忍びや公務など覚えていなかったが、ルシアさんは、既にレッセン王子と三年の護衛騎士の先輩、チャラ男君と知り合いだった。


「まさか生徒会室に呼び出されるとは」

と言うとレイリー様は、

「まぁ、いいじゃないか」

とまるでこの部屋の主のような顔をした。

「確か、レッセン王子が生徒会長ではないですか?」

と聞くと、

「公務が忙しいからね。ほとんど、三年のグレン先輩と俺とたまにリンドウが出てやる感じかな」

と言った。グレンは宰相の息子でリンドウは、チャラ男侯爵令息か。生徒会、攻略対象者の集まり場所で恐ろしい。

「ここにヒロイン、ルシアさん来そうですね」

と言えば、ちょうどサイフォン王子とミリーア様が来た。

「私の顔見てめちゃくちゃ慌ててたわ」

と豪快に高笑いをしていた。サイフォン王子も

「教室に確認しに来たよ」

と言い、続けて、

「全く、心ときめかなかったけど、ミリー、本当に恋に落ちる訳?」

とサイフォン王子は不思議がっていた。レイリー様も

「レッセン王子と同じクラスだからピンク髪が来たけど、俺も興味を持つとは思えないが、レッセン王子とリンドウ、護衛騎士のクロム先輩は、仲良く話していた」

と受けて、私とミリーア様は顔を合わせて、

「ハーレムルートはないですよね」

と声を合わす。


彼女の狙いは?

「変えた事は、認識していたわよ、同じクラスに、私がいて、1と2が一緒になっちゃったか、派手に動き過ぎたかなと不思議がっていたわよ」

とミリーア様が言った。


レッセン王子狙いなのか?私は疑問に思う。

「まだ狙いを絞ってない感じなんですかね?今日だけであんな派手な行動したら、他のご令嬢も注意なさるのではないですか?」

と言えば、レイリー様もサイフォン王子も

「確かにクラスの中の女子が噂話をしていたな」

「うちのクラスもだ」


展開が早い気がする。すると、ミリーア様が、鞄から風呂敷のようなものに包まれた一冊の本を出した。

「見てください。カトレア様、これが黒魔法の本です。我が国ではまだ魔法文化が少しですが残っているんです。多分このクロディニア王国でも少し残っているんではないですか?祝福の指輪だって我が国のアイテムです。使用者がいるって事ですよね。だってヒロインのルシアは、魔法の謎を調べる為、我が国に留学するんですよ」

「それって、ルシアさんは、魔法が使えるって事?1でそんなシーンあったかしら?」

と私が驚いていると、ミリーア様は、

「ネタバレになりますが、2のオープニングでレッセン王子と広間の中央で踊った時キラキラしたものが降っていたじゃないですか、あれが光魔法らしいです」

と説明してくれた。

「魔法か」

とレイリー様が言う。

「王族には少しだが魔力がある。魔力を流して見れる本があると聞く。それに貴族は少なからず魔力の残滓があるとは書物に書いてあったな」

と言った。

サイフォン王子も頷き

「私の国も同じだ。秘密の本と聞いていたがまさか黒魔法の本も出てくるとは驚いた。それも小さい教会の書物室からだ。それでミリーの事を信じた。こんなの王族に使用されたら大変だからな」

と言い、ミリーア様も少しむくれて、

「ストーリーの関係で一番始めに使用されるのは私ですけど、それで幽閉されるってあんまりでしょう?」

と言われた。

「まさか2では魔法の話になるなんて、いえ、この国に魔法があるなんて驚くばかりです」

と言えば、レイリー様は、

「まぁ発動するほどの魔力は、みんなないよ。せいぜい魔法陣を使用して補助魔法だよ」


その通りだ。重厚な表紙に黒魔法の本と書かれ、中に魔法陣がある。

「手をかざすと体内の魔力が持っていかれますよ。この最初の数ページ私の魔力で本が読めるんです」

とミリーア様は言った。

「えっ」

「今はどうなるかわからないので動かさない状態でいようと兄様と決めました。まだ2は始まってないので」

と言われれば確かにそうだ。そんな報告会が終わり、解散した。


そして二ヵ月が過ぎ、ルシアさんの周りの様子は、ハーレムルートが存在するのではないかと感じるほど精力的に動きまわり、ご令嬢からの敵として扱われている。

とうとう今日、二人のご令嬢がルシアさんの私物を隠したり壊したり、意地悪をした罪で反省の意味でレッセン王子は、丘の上にある修道院へ進めたらしい。


ミリーア様とお茶会をサロンの一室で行い、

「とうとうですね。あの二人が悪役令嬢ですか?」

とミリーア様に聞けば、

「全く読めないわ。あの二人は従姉妹でレッセン王子に憧れはあったようだけど、それより、ルシアさんとレッセン王子の関係にイライザ様も参入してイライザ様は、明日から領地での療養になるそうよ。その他にもイライザ様に付き添った令嬢も療養されると聞いたわ」

と答えた。私は、驚きのあまり、

「展開早すぎませんか?もっと乙女ゲームは、ゆっくり解決していきませんでしたか?こんなばっさりとご令嬢達がゲームから離脱していきましたか?」

「ルシアさんが去年から準備していた分、展開が早いとは思えるけど、それにしてもレッセン王子こそ何を考えているのか?」

と話しているとレイリー様が、来て

「レッセン王子は、操られてるかもしれない。様子が変だ」

と言った。あまりの衝撃で言葉が出ない。

「私達が知ってる乙女ゲームとは別物って考えた方がいいわね、私も兄様と相談するわ、お二人とも失礼します」

とミリーア様は出て行った。


レイリー様は、溜息を吐きながら、

「ルシア嬢の暴走か?どんどん進んでいっている。オートゲームじゃないよな、ゲームの中ってこんな面倒なわけ?生徒会に意見書が届いているし、王宮に呼び出されるし、一体どうなるんだ」

と呆れと戸惑いを隠せないでいた。私もなんて言えばいいのかわからなかったが、

「どうせなら膿を全部出したほうがいいのではないでしょうか?」

「膿って?」

「私の知っている乙女ゲームは、ヒロインが悩みを解決して信頼度恋愛度を高めていく話でした。展開が早い上に男爵令嬢一人でこんなふうになるかしら?まだ他にも転生者がいるかも。炙り出しか、探るべきかと思います」

と言うと、頷きながら

「確かにな、すでに4人いる。もう何人いても驚かないよな」

「はい、ミリーア様が、この学園にいる事自体、ゲームの1と2が合わさったかもしれないですし。なので、ルシアさんがサイフォン王子と恋に落ちた時のレッセン王子が受ける傷も混ぜ合わせてどこかに展開されるかも、レッセン王子がおかしくなっているのも影響があるのかも知れませんよ」

と言えば、レイリー様も真剣に

「確かに、俺たちは、転生者でストーリーを変えてる側でレッセン王子達は受け入れる側だと思うとおかしくなるな。調べてみるよ」


それぞれ調べたり、様子を見ながら転生者がいるのではと探り始めて一ヵ月が過ぎると、修道院送りのご令嬢が増えていった。昨日は、食堂の列の並びを注意しただけで送られた令嬢もいる。やりたい放題だ。


とうとう、別室で私は、レイリー様に向かい、

「レイリー様我慢の限界です。これは酷いです。レッセン王子も大概ですが、生徒会として注意は出来ないでしょうか?」

と言えば、ミリーア様とサイフォン王子が、

「もしかすると私達が来て拍車をかけたかもしれない。この秘密アイテムを使おうと思う」

と言い、ミリーア様が、

「皆さま、手を当ててください」

と真っ直ぐに言った。やってみてどうなるのか、みてみたいと言う気持ちはあるが、2まで関わっていいのだろうか?それに嫌な思いをしているのは、他のご令嬢。調べてみて気になる事。

「ミリーア様、もし可能ならこの本を修道院に置いてくる事は出来ますか?関わっているのは勿論なんですが、ご令嬢達に仕返しをさせる事も可能ですか?」

と言うとミリーア様は、

「悪いカトレア様だこと」

と言われた。


「レイリー様、一体どうなるのか?不謹慎な事を言っでもいいですか?」

「あぁ、どうぞ、たぶん俺も思ってる」

と言われて笑いあった。

「実は、みんなを共犯にした方が、標的にされないだろうと思ったのと、先が読めない方が、傍観者としては面白い。決して巻き込まれたくないけど。酷い扱いに遭われた令嬢がいるのですが」

「確かに次が決まってるよりはワクワクするな」

と私は、酷い転生者だとその夜反省した。

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