3. ピンチだって負けないもん
思えばぴっちぴちの養殖の箱入りだった私には一人きりの異世界生活は本当に寂しくてきつくてつらいものだった。
ぶっちゃけ水質は野外って言っても断然きれいだし? 天才美少女アオノリとはいえ、私植物だから水と光があれば自給自足できるし、死ぬほど退屈なことを除けば平和ではあったんだけど。
でも今!! まさに地獄!!
やだやだやだ!
いくら天才美少女アオノリ(二回目)とはいえ、私何にも戦う手段とか持ってないし!!
こんな夢かわファンシーな小エビ達に、ばりばりしゃくしゃくぺろりんこってむさぼり食べられちゃって二度目の私のアオノリ生、終わっちゃうの?!
身も心も文字通りずたぼろで私は絶望しかけた。
でもね!! アイドルたる者そう簡単に諦めたらだめなのよ。ご当地アイドルとしてのかつての実績とプライドが私を支えてくれた。
ええそうよ。私こんなことじゃ負けない。
とはいえ打つ手なし。小エビ達は私のことをそれはもう夢中で食べ続ける。ええ美味しいでしょうよ。アイドルですもの。普通は絶対的不可侵の聖域。
まさに禁断の味。
あなた達も見た目だけならアイドルだけどね! 肉食系アイドルなんてさっさと週刊誌からスクープされちゃえばいいんだわ!!
あーもう!! どうしよどうしよ?!
私は余計な事ばっかり必死で考えた。
こんな時こそ私のせっかくの知性を使うのよ? 今使わないでいつ使うのよ? 当社比とはいえ、私は世界最高の知能を持つアオノリなんだから。
絶体絶命のピンチでテンションがだいぶおかしくなっているけど私はアイドル。私はスター。
やられっぱなしのみじめなアオノリじゃない。岩肌にこびりつく卑屈な岩ノリとは違うんだから。
あっそっか! 私は起死回生の策を閃いた。
そうよ増えればいいんじゃないって☆
私、アオノリなんだから。
考えつけば簡単。
私は増えた。
ぶわわっさあああぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあああああっっとそれほど広くない川にものすごい勢いで私は増えて増えて増えて増えて増えていった。
食べたいのなら食べればいいじゃない? ただし食べきれるものならな! の博愛精神。
トップアイドルたる者ファンには優しくしないとね。ちょっとお痛をしちゃったやんちゃなファンだって私のアオノリパワーで改心させちゃうわ。
だんだん楽しくなってきて私は更にノリノリで増殖を繰り返す。
そうなの。うふふ。羽座博士ってば一応、効率的な養殖方法の確立ってことでおっちゃんから頼まれたのよね。だから私、増殖はお手の物。
私調子に乗って増えすぎちゃって、ぷちぷちぷちぷちっと小エビ達はつぶれちゃった。
だけど私そんな些末なことは気にしない。
いまや盛り上がりは最高潮。
私は碧洋の美しき歌姫。
海外の有名な野外ロックフェスに殴り込み参戦中。
だってそうじゃない? 日本を遠く離れて異世界で私頑張ってるもの。けなげよね。会場を私のテーマカラー青緑で染め上げてみんな私のと・り・こ。
物理的にもね。
私、ちっぽけな島国から飛び出ていまや異世界のディーバ。
世界を股にかけるスーパーアオノリなの。
落ち込んでいた気持ちもズタボロになった体も回復して、私はやっと前向きな気分になれた。
私この世界でも何とかやっていける。むしろてっぺん取りに行くわ! 自信とやる気が満ちてきた。
私、今まで受け身すぎたんだ。私からどんどん出て行こう。アオノリの素晴らしさ、私の天才美少女っぷりを異世界人達に布教しなくっちゃ!
せっかくなので感想をいただいたヨルさん、なごりさんの宣伝もします。
コノハナ ヨルさん ツイッターで雑談中、このタイトルで小説を書くように言い出した張本人です。今後の主要登場人物です。小説はこちら↓↓
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葦原 なごりさん びっくりするほど読書家で難しい字の本を読んでます。小説はこちら↓↓
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