2. 暇を持て余ますとろくなことがない
私は知的なアオノリ。ふわりふわりゆらんゆらん。文学的表現がよく似合う才女なアオノリ。
……なぁんてちょっと哲学的な気分に浸ってたけど。
飽 き た! まじ暇。
研究所では私トップアイドルみたいだったのに今は芸能界から干されちゃって一人放浪中よお。
さらばあの栄光の日々。
私水槽の中から出たことなかったのに。すっごい大切にされてたのに。本当に文字通りの箱入り娘だったのに!
今じゃ家なき子。この転落っぷり! いつか誰か私の自伝とかだしてくれないかな。
出来ればいつかじゃなくて今! 今すぐ。誰か良い研究者とか私を探しに来てくれないかな? いや研究者じゃなくても良いから話し相手が欲しい。
寂しい。もう誰でもいいから私を迎えに来て。
おうちに連れ帰ってくれて私のことをきれいな水槽に入れてくれて、あっ……できるだけ広い水槽がいいな。海水も真水も私どっちも好きだから循環装置つけて、えっと空気はぁ私自分で光合成できるから大丈夫だけど、あ! 日当たり重要。日当たり悪いと光合成できないじゃない? それから水槽は常にきれいに掃除してもらわないとね。私以外の藻が生えたりしたら大変だし!
うん、そうね日当たり良くて広くてきれいな循環型の最新式の水槽に入れてもらえば何も文句は言わない。
私そんな贅沢なタイプじゃないから。
……それにしても寂しいよお。今まで一人でぺちゃくちゃしゃべっていても誰も来てくれたことはなかった。
正直諦めて心が折れかかってた。
だけど今日は違った。奇跡が起こった。
「ぅえ? だれ? え?! かわいいだとお?!」
私の前にぬうっとあらわれたのは、小エビの集団。でもさすが異世界。研究所時代、羽座博士から見せられた小エビの写真よりもカラフルでファンシーでレインボーで夢かわいい。一気にテンションがあがる。
やだ嬉しい! お友達できそう!!
でも実はほんの少し心の狭いところのある私は新しいお友達(候補)に嫉妬した。
あれ? ちょっと私より衣裳デザインかわいいんじゃない?! 私青緑一色なんだけど!!!
まるでデビューしたての事務所の本命アイドルグループが本番前に落ち目の大御所の楽屋に挨拶に来た図。
新人のフレッシュさに目がやられそうだけどここは大女優たる余裕を見せつけねばなるまい! 私は気持ちふんぞり返る。
「はじめましてこんにち……」
威厳たっぷりに挨拶しようとしたんだけど、最後まで言えなかった。小エビ達から熱烈にハグされちゃった。
何なに? 私の大ファンなのかな!? かわいいとこあるじゃん! さすが私の親友達!
私、天にも舞い上がる気持ちになったんだけど。違った。
じゃき。じょくん。じゃこん。ぶつ。ぶつぶつぶつ。……嫌な音がする。
「…ちょっと何なの?! 不作法じゃっ…あっん!…いやぁっ! ちょっとやめて?! やぁぁあぁあああああん!」
私はたまらず叫び声をあげる。小エビ達は熱心なファンでもかわいい後輩のアイドルグループじゃなかった。
むしろ宿敵。
私の捕食者の群れだった。
そうだよ。小エビってアオノリ食べるじゃん?!
転生して数日。早くも私は絶体絶命のピンチを迎えていた。
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