16.アオノリは永遠に
少年の心を持っているけど、見た目通りの中年の男達の集団+一人の銀髪赤目のヴァンパイア娘はその日伝説になったらしい。私も後から聞いたんだけどね。
彼らが騎馬隊をおちょくり、はるか後方に置き去りにして、圧倒的速度で王城にたどり着いたとき。
「ヒャッハー!!」と世紀末覇者的な気分だった彼らの目に飛び込んできたのは天井のないお城が巨大な水槽と化して人々がぐるぐると渦潮にまかれ、もがき、苦しみ、今にも死にそうな地獄絵図だった。
「こいつあ派手にやったな?!」
「いやアオノリの姉御は基本的に平和主義者なはずだ。何かトラブルがあったに違いない」
予想外の事態に上空でホバリングしながら、しばし様子をうかがった彼らだった、けど。
「アオノリちゃんもこんな事態は望んでいないはず、みんなを助けましょう」
バンパイア娘の決定に従い、基本的に善良な港の中年男達は次々と救助に乗り出し、重軽傷者は出たものの一人の死者も出さずに奇跡の救出劇を成し遂げた、らしい。
でその後、各国の王族から引く手あまたになって、叙勲したり、勲爵したり、各国王族や貴族が囲い込みに走ったって聞いたけど誰一人それに乗らず、辺境の地にSFマニア達の聖地を築いたらしい。
まぁそれはどうでもいいんだけど。
私はあの時。
みんながまだぐるんぐるん私の涙のプールで遊んでいるうちに宇宙戦艦マグナスタティウムをリモートコントロールで祝賀会場のホールの真上に時空間移動させて召喚した。私の水槽とヨル将軍、みっこおじさんにターゲットを設定しゲートをオープン。ふわりと浮き上がって私達は宇宙戦艦マグちゃんの中に吸い込まれていく。あとから編集するためにドローンを何基も出していろんな角度から撮影するのも忘れなかった。
こうして私達はお城からのハリウッドばりの大脱走を無事成功させることが出来た。ドローンも回収したし、映画はゆっくりどうとでも編集できる。CG万歳。
でもねーせっかく映像撮れたしってことで私達の一大スペクタクルな映画の作成をしているんだけどこれが全然進まない! 主にみっこおじさんの無駄なこだわりのせいで。
みっこおじさんが俺はこんな間抜けじゃなくもっとかっこいいとか馬鹿なこと言いだしたり、宇宙戦艦のシーンのかっこよさへの注文が無限に出てきたり。宇宙船教の新興宗教を断ちあげちゃうレベルの真正のSFオタクを正直な私は舐めてた。
ヨル将軍はヨル将軍で私がCGで大幅に追加したセクシーシーンに真っ赤になって倒れちゃうし。ちょっと半目だったり、角度的にちょぉっとあられもないポーズをしてたり、実は放送禁止用語を叫んだりしてた場面があったりして、撮り直しか修正を断固として要求してくるし。
人の欲望って本当に際限ないよね。あるがままの美しさとか追求すればいいのに。
私のようにね。
私、最初から最後まで人型になることもなく知的なアオノリのままだし。
それでもやりたいことは何でもやってきたよ。
だからねこれからもやりたいことは何でもやっていくの。
映画を何とか作りつつ、ヨル将軍から熱愛されつつ、みっこおじさんから嫉妬で血涙流しながら悔しがられつつ、私は今あちこちパラレルワールドを巡って羽座博士を探してる。
広大な宇宙のどこかできっと会えることを信じて。
あ、もちろんちゃんと異世界で信者達にアオノリの販売もさせてる。羽座博士に会った時に胸を張れるようにね。アオノリ納品するために時々地上に戻った時とか、趣味でダンジョンをあちこちに作っていろんなアーティファクトとか仕込んだりとかもしてる。この異世界、圧倒的に娯楽足りないと思うんだよね。だから私みんなのために一肌脱いだんだ。
アオノリの増殖で日々我が身を削ってるけど。私は養殖のために作られた知的な人工生命体なアオノリだからね。けなげにも人のために尽くすことを忘れないんだ。いやそんなこともないかな? 私の色んなやりたいことをしてくついでにまあ普及させて資金集め出来たら良いな程度かもしれない。
あ、最近は帝国の王都の真下とかにもダンジョン作ってきたよ。定期的にスタンビートのイベントも出来るやつね。
あの時の王城襲撃メンバー。今じゃ救国の伝説の英雄達は新しいロボットや機械や乗り物大好きのジャンキーと化しちゃって会うたびに新しい設計図を熱烈に期待されてる。私、楽しいおしゃべりするお友達もたくさん出来て、本当に毎日充実してるね。
最初の一人ぼっちが嘘みたい。
……ときどき仕事で疲れたりとか、みっこおじさんから宇宙戦艦マグナスタティウムをマグちゃんなんて可愛い呼び方するなって怒られて悲しくなったりするとき。
私が産まれた海と川の中間に戻ってふわんふわんゆらんゆらんってオフタイムを自主的にもらう。リフレッシュ休暇って必要じゃない? ちょっとしたバカンスとか。
そんなこんなで私は楽しく過ごしてるから心配しないでね。
あっそうそう。ここまで読んでくれてありがとう。
私、みんなの幸せを願ってるね☆
これにて完結です。
もともとツイッターの物書き仲間の雑談を売り言葉に買い言葉で小説化したものなので長編にはしません。あっでももしかしたら単発でクリスマスネタとか正月とかイベント時に続編あげるかもしれません(笑)
最後に紹介とお礼です。
雑談メンバー一人目 羽座博士(羽座日出樹さん) 小説の一覧はこちら↓↓
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羽座さんがTwitterのお題を受けて作った小説がこちら↓↓
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二人目 みっこおじさん(すずきmiccoさん) 小説はこちら↓↓
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物書き仲間のトポさんがほぼ毎朝出題して仲良しメンバーでやっている140文字小説からふくらませたmiccoさんのじれじれBL小説がこちら↓↓
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私が無茶ぶりした短編を一晩でサクッと仕上げてくれた大人のせつない童話がこちら↓↓
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三人目タイトル命名者でヨル将軍 (コノハナ ヨルさん)小説はこちら↓↓
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皆様ご出演ありがとうございました。それから感想をいただいたりTwitterで読了報告をあげていただいたりしていただいた皆様、大変嬉しかったです。本当にありがとうございました。