12. ちょっとだけ淫靡(いんび)な世界へようこそ
魔法はご都合主義の極致。魔法は素晴らしい。私の存在もたいがいだけど。面倒な部分は魔法で何とかしたの一言で済む。済ませよう! 面倒だから!
だから細かいことはまあいい。
国がバックアップに着いたことでの潤沢な資金。熟練の工員の確保。宮廷魔術師達による魔法。
おかげで宇宙船計画はびっくりするほど順調に進んで完成まで時間の問題。正直何の不満もない。それはまあいい。
みっこおじさんが一目ぼれしたヨル将軍は若くて美しい女性だった。意外なことに性格もよかった。たおやかな容姿に反して努力家でしっかり軍人らしい実直さがあってお姉さま! って呼びたくなる。それもまあいい。
問題は、だよ。
私、今お城の秘密の花園の奥に作られた養殖池の頑丈な養殖網に入れられている。
緊縛とか私現役アイドルだしそういうのNGなんだけど!
これってひどすぎる。
知性あるアオノリにしていいことじゃない。
最低限度のアオノリ生存権も社会権も認められていない。
私の知能の有用性は賢い人なら当然わかる。だからこそ絶対逃げられないところに隔離されている。
これは明らかなアオノリに対する自由の侵害。
王様とか限られた高位貴族しか入れない秘密の花園は乙女としてはとっても素敵でテンションあがるけどそんなところに閉じ込められて更には緊縛プレイ。
私、ヤンデレとか性癖に刺さらないんだけど。いやこういうの大好きなお嬢様達に喧嘩を売るつもりはないんだけどね。私あくまでアオノリだし、イケメンなヤンデレがそもそも居ない緊縛監禁とかまず前提からして間違ってるからね。これただの捕獲じゃんね?
ああとってもみじめ。
私は、スライムと同類の新種のモンスターだと思われて屈辱的な待遇を受けてる。
これはもう逃げ出すしかないよね。
宇宙船の完成に合わせて宇宙船を乗っ取って脱出しよっかなーって思ってる。今やみっこおじさんはヨル将軍の言いなり。ていうかヨル将軍を通してこの国の言いなり。
私が理想として作り上げたのはアオノリを加工したり販売したり配達したりするためのベース基地兼輸送機である宇宙船。みっこおじさんの希望でいろいろ主砲とか小型追跡ミサイルとか確かに思いつく限りの武装はした。
でも! 決して軍事目的には使用しないつもりだった。ちょっとアオノリを馬鹿にしたり、無銭飲食したりする人が出てきたりしたら脅しちゃおうとは思ってたけど。
この国の王は近隣諸国への侵攻や勢力拡大、軍事的に利用しようとしている。
私はそんな非人道的な目的のために宇宙船を開発したんじゃない!!
私はアオノリの普及という崇高な目的のため、愛と平和と夢かわいいもののためにしか宇宙船を使うつもりがない。
だからここからおさらばすることにした。
だけどみっこおじさんどうしようかな。
みっこおじさんは逃げたいのかな? ヨル将軍とデレデレ楽しそうだし。この異世界で初めて仲良くなって苦楽を共にしてきた大事なみっこおじさんをヨル将軍に奪われてしまったことが正直寂しいし悲しいし妬ましい。
きー!! この泥棒猫めが!
でも綺麗系の美人さんで性格もはっきりしてこんな友達欲しかったってタイプなのがなおさら悔しい。何だかんだで最近一番仲が良いかもしれない。陰謀とかミステリー小説とか大好きだし実はヨル将軍も夢かわファンシー乙女チックなのが大好きだしで正直話しててめちゃくちゃ楽しい。今は筆談でチャットみたいだけど私もみっこおじさんみたいにアオノリちゃんとしゃべりたいって言われてるし。そんなこと言われたら嫌えないじゃん?
もう関係進めちゃう? あれ? これもしかしてめくるめく百合の世界ってやつかな☆
今回は12話目にして完結済みの自作の宣伝です。
冬の夜に鵺が鳴く(何となく幻想小説風)https://ncode.syosetu.com/n3355gm/
幻の街(焼き鳥が食べたい話)https://ncode.syosetu.com/n0262gq/
農村の幼馴染がイケメン貴族になって私を迎えに来た件(ヤンデレの異世界恋愛) https://ncode.syosetu.com/n8895gk/
連載中の小説は完結までが遠いです。