表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/130

81.傭兵

 街中を歩くオッサン。

「ケインと言えば、ケイン・ハイデマンという男が、我がバルトロメ・メルカド伯爵を討ち取った。

 名が一緒とはな……。

 それにしても、冒険者から傭兵になろうとは珍しいな。

 我々も、手勢を増やしたいがために冒険者ギルドに依頼票を出した。

 お前のような強い者なら、冒険者としても大成しそうなものだが」

「鉄壁のバルトロメが討ち取られたというのは聞きました。

 そんな人が居なくなった伯爵家ならば、こんな俺でも目立てるかと……。

 あと、正直、依頼者の名が女性名だったから興味を持っただけです」

「ああ、現当主のアネルマ様か……。

 この俺が言うのも何だが……可愛いぞ」

 デヘヘと笑うオッサン。

「じゃあ、あなたはその可愛い当主のために頑張っているって訳ですね」

「そう、そんな感じだな。

 もうしばらくしたら、弔い合戦が始まる。

 そのための兵集め。強い者が来るのは助かる」

 すると、

「ここが我が伯爵家だ。

 えーっと、あっ、居た居た」

 オッサンはレグルという男に声をかけた。

「何っすか?」

「レグル。

 当たりだ。

 あの三人を瞬殺だ。

 ちゃんともてなすように」

「えっ、あいつらを?

 凄いじゃないッスか」

 あの三人結構強かったらしい。

「じゃあ、任せたぞ。

 俺は試験場に行ってくる」

 オッサンが去った。



「名前は?」

 レグルが聞いてきた。

「ケインです」

「お前、ケイン・ハイデマンと同じ名前かよ!

 アネルマ様には言うなよ」

 苦笑いをするレグル。

「はい」

「お前いくつ?」

「十五です」

「俺より四つも若い。

 イケメン、ムキムキ、剣が使えるなんて最強だろ?

 明るい未来が待ってるはずなのに……。

 わざわざこんな伯爵家に仕えなくても」

「何でです?」

「まあ、俺たちは元々使えている者だし、バルトロメ様に恩もある。

 だから、アネルマ様が仇討ちをするというのに付き合うのは文句はない。

 でも、向こうのケイン・ハイデマンって奴が強いのなんの。

 ガキのくせして、簡単にバルトロメ様を討ち取った。

 まあ、話に聞くと、バレンシア王国で有名な鬼神と魔女の息子だから、そのくらい強いのかもしれないがね」

「しかし、傭兵を雇う必要があるほど兵が少ないのに、なぜ仇討ちを?」

「『仇討ちをしてケイン・ハイデマンを討たなければ、メルカド伯爵家に先の敗戦の責任を取ってもらう』と言った者が居る。

 ファルケ王国のカミロ・グリエゴ公爵だ」

「責任とは?」

「バレンシア王国に勝てなかった責任を取って、カミロ・グリエゴ公爵の次男をアネルマ様の夫として、メルカド伯爵家に入れるという話。

 マリーダ様を後添いにするそうだ。

 どっちも美人だしな。

 実質、乗っ取り。

 だから、俺たちは既に、玉砕覚悟なんだ。

 何としてでも、ケイン・ハイデマンを討ち取るつもり。

 そんな伯爵家に本気で傭兵としてくる者は居ない。

 やる気がある者は居ないんだ」

 そう言うと、やる気がなさそうな男たちを指差した。

「俺が、やる気があるとは限りませんよ?

 女性の主人っていいなぁ……って思っただけですし」

「それなら大丈夫。

 俺が言うのも何だが、美人だ」

「期待しておきます」

「おう、期待しておけ!

 ただ、バルトロメ様の娘だ。

 強いぞ」

 レグルが言った。


 小汚い個室に通される。

「ここがお前の部屋だ。

 日の出起床で、朝の訓練。

 模擬戦だな。

 その後、朝食。

 食堂で取る。

 それ以降は夕方まで自由にしていい。

 剣の練習をしようが外出しようが自由だ。

 ただし、外に出る時には、俺に一声かけてくれ。

 夕方は食堂で食事。

 あとは適当に寝る。

 酒は自分で買ってきて飲むのはいい。

 ただし、ほどほどに。

 暴れるようなことが無いように。

 そんなもんかな」

 レグルが説明をする。

「それだけ?

 軍隊だから、もっと厳しいのかと……」

「そういうのはお前だけだぞ?

 傭兵なんて数合わせだ。

 負け戦なら、傭兵なんて逃げることも前提」

「はあ……」

 気の無い返事をする俺。

「まあ、お前にやる気があることがわかってよかった。

 頑張れば、正規兵……。

 いや、それじゃ逃げ辛くなるな。

 まあ、期待してるぞ」

 そう言うとレグルが部屋を出て行く。

「はあ……。

 やりづらいなぁ……」

 俺は呟くのだった。



 俺は念じる。

 ミンクを介した定時連絡。

「ミンク、帝都に入ったよ」

 と連絡をする。

「無事か?」

「ああ、無事だ」

「どこに居るのだ?」

「メルカド伯爵家に傭兵として雇われた。

 その辺をカミラに言っておいてもらえるか?」

「畏まったのだ。

 まあ、ケインなら大丈夫だと思うが、気をつけてな」

「おう、畏まった」

 こうして念話をやめ、部屋を出るのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ