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76.ミンクの指輪

 あれ?

 ミンクがじっと俺を見ている。

「ミンク、どうかしたか?」

「私もケインが好き。

 あのような幼女が簡単にケインの婚約者になるのに、私はなぜ違う?」

 幼女ってエルザ様の事だろう。

「私を封印した者たちのように、大勢ではなく、一対一で私は負けた。

 幾つもの国を滅ぼし、多くの勇者たちを葬り去った私が、一対一で負けたのは初めてだったのだ。

 私はカイザードラゴン。強い者を慕うのだ」

 要は、私に勝った責任を取れという感じ。

 学校で負けたミラグロスっぽい。


 俺はカミラやリズ、ライン、レオナ、ミラグロスを見た。

「まっ、いいんじゃない?」

 最初に声を出したのはライン。

「そうね、可愛いし」

 レオナも続く。

「脛を折られたこともあったが、あれは私の事を知らなかったから仕方ない」

 苦笑いしながらミラグロスが言うと、

「本来王家の者である私とカイザードラゴンであるミンクちゃんは敵対してるんだろうけど、ケインが間に立つことでこんなに仲良くできています。

 まるで妹のように。

 ケインが問題ないのであれば、私たちの中に入れていただければ」

 リズが言った。

「神祖である私が言うのもなんですけど、ミンクちゃんも一緒でいいのではないでしょうか。

 親善訪問でも問題はありませんでしたし、メイドの修業である程度の礼儀作法も覚えています。

 伯爵、そして侯爵夫人としての作法も周りに居る者に学べばいいかと……」

 そして、最後にリズとラインを見ながらカミラが言う。

 カミラ的には侯爵夫人確定らしいな。

 要は、カイザードラゴンだろうが何だろうが、関係ないのだろう。

 仲がいいのだ。


「俺はミンクが好きだし、婚約してもいいと思っている。

 でもな、カミラが言った通り、彼女たちの中に入るという事は、メイド修行としてミンクが学んだことを常に実行しなきゃいけない。

 俺の妻になるなら、余計にだ。

 できるか?」

「今はできないけど、できるようになる!」

 ミンクは意思がこもった目で俺を見た。

「あと、地上の魔物としては最上位のミンクだが、彼女たちの中では一番下。

 ミンクが言った幼女であるエルザ様よりも下になってもらう」

 当然、裏の奴である。

「それでいいか?」

「うん! 私はここがいい。

 このワイワイした雰囲気がいいのだ。

 ケインが皆を優しく見ているのを知っている。

 私も見てくれていることを知っている。

 だから、位階など気にはしない」

 ミンクがニッと笑って俺を抱きしめた。


 周りはニコニコしているが、俺の体はミシミシと音がする。

「そして、私が本気で抱きしめて、壊れないのはケインだけなのだ」

「俺はオモチャじゃないんだぞ! 嬉しいからってそれは」


 俺が我慢していると、どこからか指輪を取り出す。

 金色で龍の意匠で象られている一対の指輪。

 目には魔力を感じる宝石がついていた。

「これは契約の指輪。

 私とケインが主従になったことを表す。

 当然ケインが主で私が従だぞ。

 私よりも強い者が出て、私がその者に従う時のために作っておいた。

 これを着ければ、遠くに居ても私と話ができて、私を呼び出すことができるのだ。

 ケインの薬指には指輪が無い。

 私には魔石の指輪などは要らない。

 ちょうどいい、これで皆に指輪が揃う」

 ミンクはさも自分が正しいというように頷いた。


 指輪を差し出すミンク。

 躊躇していると、

「いいのでは?」

 カミラが言い、同意するように皆が頷いた。


 俺はミンクの指輪を受け取ると、ミンクの指に赤い目の龍の指輪を入れ、ミンクは俺の指に青い目の龍の指輪を入れた。

「うっ……」

 大きな流れが俺の中を駆け巡る。

 胸を抑える俺を見て、

「うんうん、これで、魂が繋がった。

 ケインは龍のごとく戦える」

 ミンクが頷いた。


「ミンクちゃん、大丈夫なの?」

 ラインが聞くと、

「もう少ししたら、私の魔力と馴染む」

 ミンクが言うように、時間が経つにつれ、俺の体には違和感が無くなった。


「で、これでどうなる?」

 俺が聞くと、

「んー、私よりも強いのに、更に私の魔力が流れ込んだ。

 もっと強くなる」


 神祖の因子だけでなく、カイザードラゴンの魔力ね……。

 俺もバケモノじみてきた……。

 バケモノ設定になるのならばちょうどいいか……。


「あと、指輪に魔力を通して念じれば、遠くに居ても私と話ができる。

 そして、私もケインの場所がわかる。

 何かあったら、助けに行けるのだ」

 上目遣いで言うミンクだった。

 若干、ストーカー用の機能。

 俺はミンクの場所がわからないってことらしい。

 まあ、それはそれ、近くに居ることも多いだろう。


「これで、ケインは私ことカイザードラゴンを駆るドラゴンライダー。

 ケインよ、末永くよろしく」

 で、俺の寿命ってどのくらいになったのやら……


 さて、婚約だ何だと言っても、結局あまり変わらない。

 貴族組と魔物組など関係なくリビングでお茶を飲み、菓子を食いながら、ワイワイやっている。

 ミラグロスが魔物組なのは言わないでおこう。


 多分、こういう雰囲気をミンクは気に入ったのだろう。

 魔物率の高い俺の周り。

 まあ、これもまたいいか。

 魔物だろうが人間だろうが、女の子は女の子。

 可愛いのだ。

 可愛いは正義ってことで……。


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