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69.交流戦

 騎士団と魔法師団の交流戦が始まった。

 訓練場の観客席にはリズとライン、そして我々の一団。

 その中にはアーネとヴォルフの姿は無かった。

 黒ずくめの男たちの護衛である。


 王女様が見ているせいか、騎士団も魔法師団も気合が入っており、対戦者同士のバランスを取っているのかギリギリの戦いが多く、見どころのあるものが多い。

 我が国の勝ち負けに、リズは一喜一憂していた。

 そんな中、

「いい戦いをしていますね」

 とアルフ王子が現れる。

「ええ、本当に。

 お互いに高めあえると思います」

 リズも言葉を返す。

「それにしても、エリザベス王女を暗殺しようとした輩が居たとか?」

 しらじらしいアルフ王子に、

「ええ、護衛の者が生け捕りにしましたので、真相はそのうちわかるのではないでしょうか」

 リズはニコリと笑った。

「その尋問を我々に手伝わせていただけないでしょうか?」

 アルフ王子が言う。

「尋問が得意な者が居ますので、お手を煩わせることも無いでしょう。

 この模擬戦が終わるまでには真相は判明すると思われます」

 リズが言うと、アルフ王子の眉が少し動いたような気がした。

「わかりました。

 しかし、せっかくの交流戦です。

 バレンシア王国の学校でエリザベス王女は優勝したと聞いています。

 騎士と魔法使いの交流戦をしてもらえませんか?

 エリザベス王女ともう一人と、私と私の部下でどうでしょうか?」

 リズがチラリと俺を見たので、頷いておいた。

「ええ、かまいません。

 こちらは、ケイン・ハイデマン伯爵をパートナーにさせていただきます。

 優勝時のパートナーでしたから」

「構いません。

 私も適当にパートナーを選ばせてもらいます。

 よろしいですか?」

 アルフ王子の言葉に、

「はい、かまいません。

 お互いに、いい試合をしましょう」

 リズが言うのだった。


 騎士団、魔法師団の交流戦が終わる。

 そのあと、俺とリズ、アルフ王子と二メートルを越えそうな男が居た。

「マクダル王国の将軍、ボトヴィッドですね。

 勇猛な将軍として有名です。

 なりふり構わず我々を痛めつける気のようですね」

 リズが悲しい顔をしていた。

「ちなみにアルフ王子は魔法も?」

 俺が聞くと、

「ええ、才能は有りますから、後ろから適当な魔法でも使うつもりでしょう」

 リズは頷いていた。

「さて、リズは前衛、後衛?」

「私は前衛をします。

 でないと、アルフ王子を痛めつけられませんから」

「ほう、ポトヴィッドを倒せると?」

「倒せるようにしてくれるのでしょう?」

 リズが俺を見上げた。

「はいはい、お膳立てをしましょう」


 俺とリズ、アルフ王子とポトヴィッドが相対する。

 審判役の騎士が前に進み出ると、「始め!」の声が響いた。

「うぉーーーー!」

 ポトヴィッドは雄たけびを上げ凄い勢いでリズに迫る。

 俺はポトヴィッドの足元を泥のようにした。

 足元が無くなり倒れ込むポトヴィッドの前に透明なシールドを展開すると、そのシールドにぶち当たり、ポトヴィッドは気を失う。

 リズはニコニコしながら、ポトヴィッドの頭に木剣を置いた。

「ポッ、ポトヴィッド将軍、戦死」

 審判は驚いたのか、声が裏返る。


 あまりのあっけなさにポトヴィッドに全てを任していたのか、唖然とするアルフ王子。

「次はアルフ王子ですね」

 そう言うと、リズはアルフ王子の方へ歩き始めた。

「我が魔力を使い、炎よ……」

 俺はアルフ王子の呪文詠唱中に魔力を飛ばし、その魔法を打ち消す。

「何!」

 アルフ王子が驚くのを見て、

「ちなみに私もできますよ」

 リズがニコリと笑うと、再び詠唱を始めたアルフ王子の魔法を打ち消した。

 そのまま、アルフ王子の方へ歩くリズ。

 すると、アルフ王子が剣を抜いた。

 その剣は木剣ではなく真剣。

「木剣と真剣を間違えられましたか?」

 リズは笑ったままアルフ王子に近づいた。


 リズが驚きもせずに言うのは、何とかしろってトコなんだろうなぁ……。


 木剣の周囲にシールドを張る。

 リズとアルフが剣で戦い始めた。

 しかし地力に勝るリズは追い込んでいく。

 斬り飛ばされるはずの木剣が真剣とまともにやり合うことにアルフが焦る。

 隙を見てリズは木剣でアルフ王子の剣の腹を叩き、折ってしまう。

「木剣で真剣を折ったぞ?」

 周りから驚きの声が上がった。

 リズは驚くアルフ王子に木剣を向け、

「降参しますか?」

 と煽るように言った。

「この、小娘めぇ!」

 リズに飛びつこうとしたが、リズの前面に張ったシールドに阻まれ、ガラスに顔をぶつけたような無様な顔を晒し、気絶するのだった。


「やった!」

 そう言うと、リズが俺に駆け寄り飛びつく。

「さすがケインです」

「一応、婚約の許可は出ていないんだけどねぇ」

「これは私のご褒美です」

 そいうと俺の頬にリズがキスをした。


 バレンシア王国側の騎士団と魔法師団の面々は喜び、マクダル王国の騎士団と魔法師団は唖然としている。


 そりゃそうか。

 猛将と言われたポトヴィッドが簡単に倒され、アルフ王子が無様な姿をさらす。

 士気も落ちるだろなぁ。


 ポトヴィッドとアルフ王子は城の者に抱えられて訓練場から去っていった。

「やり過ぎたかな?」

 俺が言うと、

「そうねぇ。でも、スッキリしたからいいかな?」

 若干脳筋気味のリズが言った。


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