68.尋問のキーワード
ん、さてと……。
「お前らが誰の指示で俺たち……エリザベス王女様を襲ったのかを教えてほしいんだけど……」
俺は黒ずくめの男たちに聞いてみたが、当然のごとく誰も反応しない。
「まあ、襲われたという事で王の前に引き出せばいいだけだけどね」
俺がそう言うと、
「おっぱい星人」
ボソリとカミラが呟く。
この世界のだれもが言わないであろうキーワード。
カミラが深部に潜ませていた催眠術が発動する。
すると、リズを襲った男の目線が泳ぎ始めた。
「誰が指示しましたか?」
とカミラが聞くと、
「アルフ王子」
リズを襲った男が呟く。
他の男たちが、
「お前、やめろ」
「それを言っては!」
止めようとするがリズを襲った男は話すのをやめない。
そういう反応をする時点で、言っていることが正しい証明のような気がする。
「カミラ、他の奴にも同じことをしておいてくれ」
俺が言うと、
「畏まりました」
とカミラは頭を下げげる。
「そういう事でこの黒ずくめの男たちは、アルフ王子の手の者らしい。
暴露してもいいが、知らぬ存ぜぬだろうな」
リズに言うと、
「薄々は気付いていました」
少し元気がない。
「リズはこのことに気付いていないことにしてもらえるかな?
多分、これだけの襲撃者を捕まえた俺たちに、何らかの行動があると思う」
「わかりました」
「こう言ったからには、護衛はしっかりさせてもらう」
「はい、ケインを信用しています。
よろしくお願いしますね」
リズはそう言って笑った。
後にカミラが催眠術をかけ終わると、男たちを数珠つなぎにした。
そして、町に住む者たちに何事かと思われながら、黒ずくめの男たちを連れた俺たち一行は王宮に戻るのだった。
メルベイユの王宮に帰ると、
「その者たちは?」
と聞く門番たち。
「我々を襲ってきた者でね、尋問しようと思って連れてきたんだ」
と俺が言うと、
「それはそれは……」
下手に出てくる。
そして、
「私たちが牢屋に連れて行きましょう」
と男たちを繋ぐ綱を取り上げようとしてきたが、俺は避けた。
「申し訳ありませんが、私どもを襲った者です。
私どもで取り調べをしたのち、報告をさせていただきたいと思います」
リズが門番たちに言う。
そして、そのまま俺たちは王宮の中に入り、あてがわれた部屋に戻った。
ちなみに、男たちは部屋の一つを潰して転がしておいた。
スタンとスリープで動けなくしてある。
殺されても困るので、アーネを見張りにした。
ヴォルフにも頼もうと思ったが、ライラさんと積もる話もありそうだ。
すまん、アーネ一人で頼む……。
王宮での食事を終えたあと、夜は尋問をする予定ではあるが、すでにそんな気もない。
カミラのキーワードで情報が駄々洩れになるのがわかっているからだ。
時間があるからと指輪に魔石を入れようかとも思ったが、集中できなさそうなのでやめた。
大体の事情も知っているしなぁ……。
次の日の朝になり、アーネが見張っていた黒ずくめ用の部屋を開けると更に三人ほど増えていた。
アーネは褒めて欲しいのかドヤ顔で振り返って、
「私って、凄いでしょ?」
と笑うのだった。