61.護衛変更
初護衛。
早めに王宮に出勤。
すると、
「ケイン・ハイデマン伯爵ですね」
一人の兵士が現れる。
その兵士に導かれると、白い豪華な馬車の前で待機である。
するとラインがやってきた。
「おっはよー。
今日から一緒に登校だね」
「一応仕事なんだけどね」
苦笑いで俺が言うと、
「ケインが居ればなんとかなるでしょ?」
俺なら何とかするという返事。
軽いな……。
そりゃ、何とかするけど……。
そんな話をしていると、リズが現れる。
「おはようございます、エリザベス王女様。
新任のケイン・ハイデマン伯爵になります」
俺は頭を下げた。
「それでは学校に参りましょうか」
リズが言うと、扉が開き俺たちは中に入った。
するとすぐ、
「ケイン。
会いたかったぁ!」
とリズが抱き付いてきた。
「まあ、今日は何も言わないわ」
フンとは言うと、ラインは見て見ぬふり。
「アルフ・マクダルだっけ?
手を出してきたの……」
俺が言うと、
「なぜそれを?」
リズが驚いていた。
「ん?
その辺は護衛を指示された時に王から聞いた」
「手の者から私を襲ってきた者は逃げたと聞いています」
捕まえて尋問しています。
「しかし、私は来月にマクダル王国を親善で訪問する予定です。
お父様は『断れない』と言っています。
こんな事があっても、証拠は有りませんから……。
それにお兄様は後継ぎ。
何かあったとしても私の方がいいのです」
そう言うにしても不安そうなリズが居た。
血統を残すにしろ、最初に生まれてきた物が優先ってことかなぁ。
「そうだ、俺もマクダル王国に行ってみたい。
王に言って護衛に加えてもらえないかな?。
ついでにカミラやミラグロス、アーネにミンク」
「あっ私も」
ラインが手を挙げる。
「何があるのかわからないのよ!」
リズは俺やラインの事を心配しているのだろう。
「んー、どこかの誰かのお父様に無茶振りされて、ダンジョン攻略したら強くなってしまったからねぇ。
少々のことなら何とかなるかな」
実際、何とかする自信はある。
「私だって魔女の指導を受けてるんだから!」
フンとラインが胸を張る。
そう言えば、母さんを訪ねてラムル村にラインが来ると言っていたな。
それは、魔法の勉強のためだったのか……。
馬車の速度が落ち、キッと止まる。
扉が開くと、レオナが入ってきた。
「おっはよー!」
と元気なレオナ。
「おう、おはようさん」
「おはよう!」
「おはようございます」
俺たちも挨拶を返す。
「みんなで学校に行くなんてね」
ラインが言うと、馬車が走り始めた。
「そう、なんか変だけど、でもいい」
「そう……でも……」
「三人に申し訳ないって?」
俺が聞くとリズが頷く。
「でも、それは仕方ないだろう?
リズを守れないなら、護衛として居ても仕方がないと判断したんだろうな。
代わりの俺としてはリズを近くで守れる方が安心はできるが?
それに、あいつらが死ぬ確率が低くなった。
それでいいんじゃないのか?
それで、納得しておけ」
俺はそう言った。
リズが納得できるのなら……と無理やりだが、理由をつけておく。
「ええ、あなたがそういうのなら、そう考えておきます」
納得するリズが居た。
学校に付いて教室に向かう。
Aクラスの窓際一番後ろでは、俺の周りで姦しい会話が聞こえるのだった。
護衛を終え屋敷に帰ると
「「旦那様、お帰りなさいませ」」
というカミラ、アーネ、ミラグロス、ミンクの言葉。
「ああ、帰ったよ。
そう言えば、マクダル王国に行くかもしれない」
「エリザベス様と?」
カミラが聞く。
「ああ、親善訪問のような物があるらしい。
護衛に選ばれたら行かなきゃいけないし、選ばれないとしても行かないとな」
あの時フラグが立ったのかもしれない。
「私たちも?」
ミンクが聞いてきた。
「ああ、当然。
カミラ、アーネ、ミラグロス、ミンク皆も行くぞ」
ありゃ、ミラグロスが魔物枠になってる。
まあいっか……。
「ミンクは行くまでには、ちゃんと礼儀作法を学んでおかないとな」
俺がミンクに話しかけると、
「ケインと行くには礼儀作法が必要?」
不思議そうに話しかけてきた。
「ああ、高貴な方と一緒に行くからね」
俺は言った。
ミンクは高貴というのがわからないらしい。
「高貴というのはケインにとって重要?」
再び聞き返してくる。
「んー、人の世界では重要かな。
魔物の世界では強さが正義だろ?」
「うん」
「でも面倒なことに、人間ってのは領土の大きさや過去の功績の大きさで強さを分けてしまう。
俺は今伯爵。
上に王族、公爵、侯爵が居る。
今回は侯爵の娘であるラインや、王の娘であるリズと共に旅をする必要があるから、礼儀作法は必要になる」
「んー、よくわからんが面倒だのう」
わかっていないようだ。
まあ、俺の説明も下手なのだろう。
「そうだな、結構面倒だと思う」
「ならばなぜそれに従う?
ケインであれば、この王都の物を殲滅し王になろうと思えばなれるだろうに。
それこそ力で手に入れればよいのではないのか?」
ミンクは面倒くさそうに俺に言った。
「そこは、俺は人間だからね。
人のルールにのっとっている訳だ」
「礼儀作法ができるようになると、ケインは嬉しいか?」
覗き込むようにミンクが俺を見る。
「ああ、嬉しいな。
ミンクを連れて買い物に行ったり、魔法師団へ一緒に講義に行ったりできる」
「買い物……外出……」
ミンクは考えると、
「わかった……わかりました。
礼儀作法を勉強します」
と言った。
「ああ、皆と旅に行こう」
次の日から、カミラとアーネに礼儀作法を教わるミンクが居た。
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