55'わが村5
えーっと、お久しぶりです。
村人です。
ラムル村の領主であったケイン様が伯爵になったことで、領地が増えたそうです。
ルンデル商会の会頭と地図を見ながら話をしていました。
そして次の日には、女騎士を連れた領主様が何やら魔法を使っています。
すると、まっすぐな道ができました。
道を叩くとコンコンと音がするほど硬い。
スッゲー、うちの領主スッゲー。
地平線までまっすぐな道ができてる。
そのまま領主様は道に沿って進むと分岐する道を作る。
その先に行くと領主様の手が光った。
すると、木が抜け平地ができる。
抜けた木は中央に集まり、現れた土地が碁盤の目のように整理されていった。
「あとは上物だけだな」
と領主様は言う。
すっげー、うちの領主スッゲー。
あっという間に土地の開拓をした。
あれ?
この分岐は何だ?
先には岩山しかない。
何のために?
そこにも碁盤の目のような道が作られていた。
私はいろいろ考えてみたが、思い浮かばなかった。
しかし、ルンデル商会の会頭はその道の先に大きな街を作り始める。
あれ?
領主様が女の子を連れてきた。
その女の子が手をかざすと、洞窟ができる。
えっ?
何あれ?
そのうち、冒険者たちが町に来るようになった。
そこにダンジョンの入口ができたとの事。
えっ、あの女の子が作った洞窟がダンジョンの入口?
いやいや、そんなはずはない。
碁盤の目の上には宿屋や武器屋に防具屋、道具屋……あっ、娼館……。
いやいや、私には妻が居る。
友人が誘うが、私は断固として断った。
…………泣いてないからな。
妻一人を愛すると決めたんだ。
でも…………もっと誘ってくれてもいいのに……。
私の心を折ってくれてもいいのに。
はっ……妻が私をジト目で見ていた。
しかしモジモジしながら、妻が私の所に来る。
そして、
「来ないの」
との事……。
「来ない?
何が?」
私が聞くと、
「月のもの」
ん?
月のものが来ない?
それって……。
妻のお腹に耳を当てる私。
「まだわからないわよ」
はにかみながら嬉しそうに言う妻。
「いいんだ。
私とお前の間に子供ができることには違いない」
「あなた……」
私と妻は抱き合った。
私は「娼館」という言葉に惑わされたことを恥ずかしく思った。
私には妻と産まれてくる子供が居るじゃないか。
「そんな事を言っているのは今のうちだけ。
お前、ずっと硬いパンばかり食ってたら飽きるだろ?
甘かったり、柔らかいパンを食べてみたいと思わないか?
それが娼館なんだ。
男のつまみ食いを満足させる場所。
そのうちわかる」
近くに住む男が俺に言った。
その男には妻と子が三人。
私もそうなるのだろうか……。
いや、私はそうはならない。
可愛い妻と子に人生を捧げるのだ!
読んでいただきありがとうございます。




