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54.久々の登校

 久々の学校。

 一カ月近く行方不明のようにされていたようだ。

 まあ、あまり好かれていない俺は、クラスメートからジト目で見られる程度。

「やっとキター!

 心配だったよー!」

 ラインが人目構わず俺に抱き付いてくる。

「あのー、人目の事を考えないと……」

「知ってるもの、ケインが伯爵になる事」


 まだ公表されていないはずなんだが……。


 後からリズ。

 目に涙。

「お父様に聞きました。

 王都の災厄を回避するために、(いにしえ)のダンジョンに潜ったと。

『あいつ、生き運強いな。

 帰ってきやがった』

 って、お父様が……」

「まあ、王様に言われちゃ仕方ない。

 それに、伯爵にもなれた。

 リズに近づけたからいいじゃないか」

「うん。

 でも、私のために……危険なことを……」

「んー、前も言ったが、リズのためじゃないぞ?

 俺の欲だよ。

 どこまで行けるんだろうってね」

 正直、そんな気もある。

 だから、そんな言い方をしないでいい」

「うん、わかった」

 リズが涙をぬぐいながら頷いていた。


 すると、

「来年、どの魔法師団に入るか考えてるんだけど、ケインの所じゃダメ?」

 ラインが聞いてくる。

「ラインバッハにも魔法師団はあるだろう?

 それに師団長はうちの母さんだぞ?

 王都の魔法師団でも恐れられているぐらいなんだ。

 そんな団長でいいのならってことになるが?」

 ラインはブルっと震えたが、

「うちの魔法師団ってあまり強くないのよね。

 騎兵や歩兵、弓兵なんかの統率力で戦っているから、魔法はフォローでしかないの。

 だったら、魔法を鍛えられるケインの所のほうがいい。

 いくら恐ろしいお義母さんでもね」

と胸を張って言う。


 やる気があるようだ。


「母さんに話しておくよ。

 一度話してみるといい」

「わかった。

 一度会ってみるね」

 ラインが頷いていた。

 

 ちと気になる事。


「それにしても、ラインバッハ家って跡継ぎは?」

「ああ、領地に居る。

 向こうで剣と勉強を仕込まれているみたい。

 そう言えば来年入学してくるわね」

 との事。

「弟が居たのか……、少し安心」

 俺がホッとしていると、

「えっ、何で?」

 ラインが聞いてきた。

「後継ぎいないと面倒だろ?

 養子とか嫌だし、お家騒動とか……」

「ああ、そういうこと。

 大丈夫、大丈夫。

 うち弟三人居るから」


 ふむ、その辺は安心らしい。


 バタバタと足音がすると、

「ケインが来たって本当?」

 デジャブのように現れるレオナ。

「生きてたよぉ……。

 あーん、会いたかったぁ」

 泣きながら抱き付く。

 男子生徒から「死ね!」の視線が届く。

 リズの時もラインの時もだが、三人目のレオナの時が一番厳しい。


 王女、侯爵は高嶺の花でも、ルンデル商会なら……ってこと?

 最近非常に育ったのもあるようだ。

 触ってないのに育ったのは牛乳効果かね?


「ケインは伯爵になるの」

 ラインがレオナの耳元でささやく。

「伯爵様?」

 ビックリして声をあげるが、ラインが「シー」と周囲を見ながら。

「ええ、王の依頼を達成したから。

 その報酬」

 囁き声が続いた。


 王様、バレバレですやん。

 リズ経由?


「まあ、そういう事で、伯爵になります。

 土地も増えたんだけど、未開でね。

 ルンデルさんに手伝ってもらいたい。

 開墾なんかもしなきゃいけない。

 人も足りない。

 兵士も足りない。

 ないない尽くしでね。

 うちの御用商人として、相談がしたいんだ。

 いい日があったら教えて欲しい」

「私も一緒に聞いていい?」

「ああ、未来の当主さんに任せる」

「任せといて」

 レオナが胸をドンと叩いた。


 そういうわけで、領内整備をする必要が出てきた訳で……。

 いろいろ考えないとなぁ。


 学校を終え屋敷に戻ると、早速ルンデルさんとラインが馬車でやってくる。

「ルンデルさん、レオナ、いらっしゃい」

 中に入って増えたのが気になったのだろう、

 アーネとミンクを見て、

「誰?」

 と俺に聞いてきた。

「アラクネの密偵とカイザードラゴン」

 さらりと言ってみる。

「「?」」

 ルンデルさんとレオナが固まる。

 そして、

「カミラさんも居るから、百歩譲ってアラクネの密偵はいいとして……」


 アラクネはいいんだ……。


「カイザードラゴン?

 古王国の物語に出てくる奴?」

 レオナが聞いてきた。


 あっ、そこやっぱ食い付く?


「そうみたいだね。

 俺は知らないけど……」

「で、何で居るの?」

 レオナが聞く。

「この王都の下にはカイザードラゴンのダンジョンがあった訳だ。

 そのダンジョンのスタンピードが近いってことで、攻略してカイザードラゴンを倒した。

 それで友達になって、ここに居る

 ミンクって言うんだけど、今後の事にも関与するからね、居てもらっている」

「それじゃしかたないか……」

 なんか諦めた顔のレオナが居た。



 応接室に入ると、

「ルンデルさん。

 俺が伯爵になるって話は?」

「レオナから聞きました。

 子爵から伯爵までがこんなに短いとは……驚きです」

「まあ、死ぬ目は見ましたからね。

 その褒章ということでしょう。

 それで、領地が増えました」

 俺が地図を出す。

「これは、今までの五倍……いや六倍でしょうか?

 広い!」

「リンメル公爵が手を付けなかった土地らしいです。

 さて、ルンデルさん。

 ダンジョンが見つかるとしたらどうなりますか?」

「それはもう、武器の販売、宿泊、食料の販売に飲食、素材の買取、売春宿、多くの利権が絡むでしょう」

「ルンデル商会でそれを扱うことは?」

「いえ、その前にダンジョンは?」

 ルンデルさんが聞いてきた。

「ミンク、ダンジョンは?」

「ケインがいう所に入口を作るぞ!」

 ミンクが返事をした。

「ということだ。

 カイザードラゴンはダンジョンマスター。

 ダンジョンの運営を司る」

「私にダンジョンを中心とした街を作れと?」

「そういうことになるね。

 金は、今までに貯めた分と、今収納魔法の中にある金銀財宝を使ってもらっても構わない」

 そういうと、収納されている中から、一部の金貨銀貨をジャラジャラと吐き出す。

 俺は火が着くんじゃないかという揉み手を初めて見た。

 実際、

「アチチチ」

 とルンデルさんが揉み手をやめる。

「父さん、どうするの?」

「当然やる。

 やるに決まっている。

 街を作るなど、商人の夢だ。

 そしてグロエス・ルンデル、一世一代の仕事をしよう!」


 俺は感動していた。

 ルンデルさんの名前がグロエスだと初めて知ったことに……。


読んでいただきありがとうございます。

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