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50-2.情報の報酬

「さて、これをどっちに渡すかだよな」

 俺は、リビングの机の上に隠し扉のから見つけたバルツァー侯爵からの手紙を広げていた。

 雌型の魔物を好む貴族は多かったらしく、結構な方々の名前が並ぶ。

 貴族になって間がない俺でも知っているような者も多かった。

 王都の中に入っていたのはバルツァー侯爵の手引きらしい。

 古く忘れ去られていた王都からの出口があり、そこを使って禁制の物や隷属化した魔物を王都内に入れていたのだ。


「何を見ているんだ?」

 ミラグロスが後ろから覗き込んできた。

 双丘が俺の後頭部に当たる。

「当たっているぞ?」

「当然だ、当てているのだからな」

「言うようになったな」

「それはそうだ、カミラ殿をはじめ、強敵が多いからな」

 下からの見上げるミラグロスの顔は笑っている。


「で、広げたものは何なのだ?」

 再びミラグロスが聞いてきた。

「魔物や禁制の品なんかも扱っていた業者の顧客名簿のような物とその取引額。

 王都内に魔物を入れる方法なんかだね」

 俺はミラグロスにそれを手渡した。

「アーネやカミラを売買していた業者のようだ。

 アーネに場所を教えてもらい、業者を壊滅させた際に、隠し扉の奥にあった」

 簡単にミラグロスに説明をする。

「これは!」

 ミラグロスは手紙を見て声をあげる。

「どうしたんだ?」

 すると、

「王都騎士団と言うのは、王都内の治安維持のために動く騎士団だというのは知っているな」

 ミラグロスが言い始めた。

「そりゃ、王都を冠するんだから、王都の事について動く騎士団なんだろう」

 俺は頷く。

「バルツァー侯爵の事は我々も目をつけていたのだ。

 領地を持たない伯爵にしては金回りが良く、悪いうわさも多かったのでな。

 しかし、なかなか尻尾を出さず、結局何もできなかった。

 ケイン殿はこれをどうするつもりなのだ?」

「どうもこうも、誰に渡したらいいのかがわからない訳で……」

 正直わからない。

「それでは、我が父に渡してもいいだろうか。

 我が父は軍のこともそうだが、王都の治安も司っている」

「俺はその辺のことは詳しくない。

 ミルドラウス侯爵は法にも厳しそうだからね。

 この手紙はミラグロスに任せるよ」

 俺は言った。


「じゃあ、早速……。

 ケイン殿行くぞ!」

 ミラグロスは俺を引きずり、歩き始めた。

「えっ? 俺も行くの?」

「当然だ」

 そうらしい。

 厩の前に行くと、馬丁に指示を出し、ミラグロスの馬とライアンを引き出すミラグロス。

 俺がライアンに乗ったのを確認すると、

「ハッ」

 と声をかけ走り始めた。


 ミラグロスの顔を見た門番がすぐに扉を開ける。

 ミラグロスが様子を見に現れた騎士に、

「ミラグロスとケイン殿が来たと父上に」

 と指示を出した。


 馬を馬丁に預け、ミラグロスと共に屋敷の中へ。

 応接室のようなところに通され、俺とミラグロスは椅子に座って待つ。

 質実剛健な雰囲気で、あまり飾りのようなものは無い。

 ラインバッハ侯爵家以外の貴族の家に入ったことが無い俺はキョロキョロしてしまう


 しばらく待つと、扉が開き、ニコニコしながらミルドラウス侯爵が現れた。

「ミラグロスに手が付き、儂に孫でもできたか?

 ミラグロスとケイン殿の子供となれば、それはもう凄い騎士になりそうだな」

 いきなり方向性が違う。

「父上! そういう報告であれば良かったのですが、違うのです。

 未だ、手付かず」

「何? ミラグロスが気に入らんだと?」

「父上! 私は気に入られております。

 特に胸は……、ジロジロと見られています」

「ケイン殿は胸が好きなのか……。

 儂と同じだな」


 親子でこの会話は……。

 それに、俺の傾向を話されて、ミルドラウス侯爵と同じ方向だと同意されても……。


「違うのです。

 今日はそんな話をしに来たのではありません!」

「違うとな?

 では、どんな話を?」

「父上、まずはこの手紙をお読みください」

 ミルドラウス侯爵に手紙を差し出すミラグロス。

「ふむ……」

 手に取り、手紙の内容を読み始めた。

 読み終わった手紙が置かれるたびに、ミルドラウス侯爵顔が真剣になるのがわかる。

「これをどこで!」

「ケイン殿が手に入れました」

 ミルドラウス侯爵が俺を見たので、

「とある魔物を売買する業者の所にありました。

 カミラ絡みの業者だったので、潰した時に手に入れたものです」

 ミルドラウス侯爵はドラクリヤ伯爵の事を知っており、カミラがその娘であることを知っている。

「リンメル公爵の時に名前は出たのだが、証拠が無くて、追い込めなかったのだ。

 ふむ……、上手く使えばバルツァー侯爵も失墜させることができるだろう。

 これを儂に?」

 ミルドラウス侯爵が俺を見る。

「使い方がわかっている人が使えばいいと思います。

 私ではバルツァー侯爵を追い込む方法を思いつきません。

 ただ、バルツァー侯爵は私の婚約者に苦痛を与えた者です。

 厳重なる処罰をお願いします」

 俺は頷いた。

「任せるがいい。ハイデマン子爵に悪いようにはしないぞ」

 ミルドラウス侯爵も頷く。


 そして、ミルドラウス侯爵が顏を緩め、

「さて、儂はいつになれば、ケイン殿を婿殿と呼ぶことができるのかな?

 そして、できれば、数年後には『じいじ』と呼ばれてみたいものなのだが……」

「父上!」

 声をあげ、顏を赤くするミラグロス。

「私も近いうちにそのような報告ができるように努力します」

 俺の言葉にミルドラウス侯爵が満足げに頷くのだった。



 そんなこともあったな……と忘れかけて居た時、ミルドラウス侯爵家から手紙とともに騎士が五十人、歩兵が二百人、弓兵五十人がラムル村に現れた。

 そこには、

「バルツァー侯爵の件の礼。

 再び同じ戦場で戦働きをしたいものだ」

 と書かれてあった。

 そして、バルツァー侯爵家は取り潰しになったと聞くことになる。


 急な出世のために兵士の数が追い付いていない俺。

 そのフォローをしてくれたのだろう。

 強引さが故か収容する場所がない。

 騎士や兵士たちは暫くはテントでもいいと言っていたが、早急に建物を探すのだった。



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