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46.共生の産物

 カルオミガの兵隊アリがラムル村の屋敷に現れ「俺に来て欲しい」と言ってきたらしい。

 騎士の一人が王都の屋敷に馬で知らせてきた。


 結構時間がかかったな……。

 しかし、カルオミガの作る砂糖の重さは金の重さに等しいと言われるほど高価な物。

 領内を潤すことができる。


 俺は馬を走らせラムル村に向かい、カルオミガの巣に行いく。

 俺の後ろにはカミラとミラグロス。

「ケイン殿、あのカルオミガを飼っておられるので?」

 ミラグロスが俺に聞いてきた。

「飼っているというよりは共存。

 敵対する物から守るから、代わりに砂糖を貰う流れだね」

 そんな話をしていると目の前にカルオミガの兵隊アリが現れた。

「ケインだ。

 女王アリに呼ばれてきた」

 俺が馬から降りると、兵隊アリの一匹が俺の前に出てきて、触覚で俺を触る。

 最初に居た兵隊アリのようだ。

「間違いなくケイン。

 カミラも居る。

 もう一人は誰?」

 兵隊アリが聞いた。

「俺の部下だ」

 兵隊アリはミラグロスの体を触覚で触り、

「ケインの匂いがする。

 わかったこちらへ」

 俺は兵隊アリに連れられて巣のほうへ向かった。

 少し屈めば入れる程度の洞窟が現れる。

「人間には暗い。

 少し灯りをつけるぞ」

 俺が言うと、

「わかった」

 と再び兵隊アリが言った。

 そして一番奥に向かうと、腹が大きくなった女王アリが居る。

「お久しぶりですね、ケイン。

 お陰様で、大きな群れを作ることができました」

 女王アリの周りには働きアリと兵隊アリがびっしりと囲んでいる。

 黒い甲殻が魔法の光に鈍く輝いていた。

「それは良かった」

「それで、いつかの約束を果たすことにしました。

 私どもの作った物をあなたに与えます」

 女王アリがそう言うと、お腹をパンパンに膨らませたアリが現れた。

「倉庫アリです。

 その腹の中の物を吐き出せば、自分でこの巣に戻ってきます。

 何日かに一度、その倉庫アリを指定の場所に行かせましょう」

 倉庫アリの腹はバスケットボールほどの大きさになっており、結構な量の砂糖が入っていると思われた。

「ありがとうございます。

 それでは、この倉庫アリを連れていきますね」

 俺はその倉庫アリを抱き上げると、外に戻った。

 そしてルンデル商会の支店に向かう。

 支店長に、

「これはカルオミガの倉庫アリ。

 腹の中に砂糖を溜めている。

 綺麗なツボを準備してもらえないか?」

 俺が言うと、ルンデルさんに指示されている支店長は店員に指示を出し、ツボを持ってくる。

 そして、倉庫アリを持ち上げて腹を壺の上にもってくると、

「じゃあ、ここにお前の腹の中の物を出してもらえるか?」

 と俺が言った。

 サラサラと音がし始め、その壺に砂糖が溜まり始める。

 音と共に倉庫アリの腹は小さくなっていった。

 砂糖が出なくなると、倉庫アリを置く。

 倉庫アリは俺を見上げていた。

「ああ、ありがとう。

 今後はこの場所に来てもらえるか?

 今この場所に居る店長がお前の腹の中の物を引き取ってくれる」

 俺がそう言うと、店長が頷く。

 倉庫アリは、

「ワカッタ」

 というと、カサカサと巣に戻って行くのだった。


「カルオミガは群れを見つければ、その村や町は滅ぼされると聞いていたが、本当に共存しているのだな」

 ミラグロスが言った。

「人もそうだろ?

 争って双方の被害を出すよりも、共存して協力したほうが大きなことができたりする。

 まあ、今のファルケ王国との状況ではお互いに恨みつらみがあるだろうから無理だろうけどね」

「旦那様は、戦争がお嫌いで?」

 カミラが俺に聞く。

「ああ、できればしたくないな。

 人を殺す技術は持ってるが、それは使わないに越したことが無いと思う」

「しかし、ケイン殿は鉄壁のバルトロメを?」

 ミラグロスが意外という顔をしていた。

「ああ、倒した。

 それは、俺に目的があるから。

 ミラグロスと婚約すると言ったら、君の父上は喜んで承諾するだろ?」

「ああ、間違いない。

 だから、私はケイン殿の下に送り込まれた」


 素直だね。


「カミラについても問題ない」

 スッとカミラが俺に寄り添う。

「ラインもミラグロスの父上絡みで婚約できそうだ。

 さて、エリザベス王女……つまりリズには男爵じゃ届かない。

 だから爵位を上げて女が欲しいという目的、バルトロメを殺した」

 苦笑いしながら俺は言った。

「『戦士であれ』ミルドラウス家の家訓だ。

 戦士は何かの目的のために戦う。

 ケイン殿は男、良き女のために戦うのに何の躊躇がある?

 ケイン殿は何かと戦い、カミラ殿やレオナ殿、ライン殿を得てきた。

 それで良いのではないだろうか。

 そんな強いケイン殿だからこそ、私はケイン殿に惚れ、その下に付いたのだ」

 男ならそれが当たり前と言うようにミラグロスが言う。

「そうか、ありがとな」

 ミラグロスを抱き寄せると、

「あっ、ケイン殿」

 と言って慣れていないのかミラグロスが赤くなる。

「あっ、ミラグロスってちなみにいくつ?」

 と聞くと、

「こういう時に年齢を聞くものなのか?」

 ミラグロスはちょっと怒った顔をしたが、

「十九だ。

 強い者を捜しておって、行き遅れてしまった」

と言うと笑う。

「お陰で、ケイン殿に会えたがな。

 鎧しか着たことが無いような女は嫌か?」

 そんな質問に、

「可愛い、いい女だと思うよ」

 というと、ミラグロスの顔は更に赤くなるのだった。



 約三日に一度、十リットルほど入りそうな壺一杯に砂糖が溜まる。

 販売はルンデルさんに任せてあるので、あとは金になるのを待つだけである。

 後日、王宮の砂糖として採用されたとルンデルさんから連絡があった。


 やるね、ルンデルさん。


読んでいただきありがとうございます。

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