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3’.主(ぬし)

 私は目を覚ますと、全裸。

 更には後ろから男の子に胸を鷲掴みにされていた。

 意味がわからない。

 手の跡が尽きそうなほど。


 身を起こし男の子を見ようとすると、男の子も目を覚ました。


 しかし、私はなぜこの男の子に胸を鷲掴みにされていたのか?


 男の子は私の胸を見ると、

「おっぱいみーっけ。

 俺はオッパイ星人ではないが張りのあるオッパイがあると揉みたくなるのは男の性」

 と訳の分からない事を言って揉んだ。

 不意打ちに私は、

「あんっ」

 と言って女の声を出してしまう。


 私の顔は赤くなっていたんじゃないだろうか……。。

「なっなぜ子供が私に抱き着いている」

 と聞いてみたが、

「俺が抱き着いたから。

 勝手に俺の家の天井裏で気絶したから服脱がして、おっぱいポロリを堪能して、治療して、抱き枕にして寝たから、今こうなっている」

 ちょっとニヘラとした顔で、何かを想像しながら男の子は言った。


 無意識に胸を隠してしまう。


 しかし、

「治療?」

 と言ったな。

 私の言葉に、

「ああ、治療。

 太ももの傷が無いだろ?」

 と答えた。


 そう言えば!


 私は、毛布を取り太ももを見る。

「死に至る可能性がある出血だったはず」

 自然と言葉が出た。

 すると、

「実際気絶してたし……」

 男の子はイタズラが成功した子供のようにニヤリと笑う。

 そして、

「でさ、子供だから聞いても何もできないかもしれないけど、何かあったの?」

 と聞いてきた。

「確かに子供に言ってもわからないだろうな」

 男の子が言う言葉にうなずく私。

「でも、命を助けてもらったようだ。事情ぐらいは話す」

 そう言って名前と事情を話し始めた。

「私の名はカミラ。

 リンメル公爵の奴隷……俗に言う性奴隷。

 リンメル公爵は人型の魔物をいたぶるのが趣味らしい。

 見初められて捕まえられ、奴隷にされたんだ」

 すると、

「下種だな」

 と男の子は吐き捨てるように言った。


 えっ、なぜこんな子がそんな顔を?

 わかるのか、その歳で?


 そして優しい顔になると、

「しかし、カミラさんが魔物とはね。

 全然見えないや」

 と笑いながら言った。


 何故か私も心が軽くなって、

「ほら、ココに犬歯があるだろう?」

 犬歯を見せてしまった。


 見せる必要も無いのに……。


「吸血鬼?」

 しかし、男の子の言葉につられて、

「いいや、その上位種の神祖だ。

 日に当たっても灰になったりしない」

 と更に説明を続けた。

「そうなんだ。」

 そして、わたしは鎖骨のあたりにある紋章を指し、

「この紋章が奴隷紋」

 と消せない枷を見せる。

「この紋章がある者はその主人の言葉を聞かなければいけない。

 私は主人の言葉が聞こえるとその男の言うことを聞くしかない。

 その待遇から逃げようと奴隷契約書を奪って逃げたのだ。

 朝には気づかれるかもしれん」

 この子には何もかも言っていいような気がした。


「要は、主人の言葉が聞こえないところへ逃げようとしていた訳か」

 私の話した内容から分析する男の子。

「そうだ」

「ちなみに、その契約書の破棄ってできないの?」


 私が考えできなかったことを男の子は言いだした。

 しかし、

「クリフォードという魔法使いの契約だ。

 聞いたが、魔力が高く一度も破棄されたことが無い魔法書士として有名なのだろう?」

 と説明する。

「そうなの?

 俺は知らない」

 男の子はあっけらかん。

「だから何?」とでも言いたげ。

 そこで、私は、

「まあいい、その魔法書士以上の魔力を使い、契約書に内包されたクリフォードの魔力を抜き出せば契約を破棄できると言われている。

 私もやってみたが無理だった」

 と私は自分の失敗を苦笑いしながら言った。


 クリフォードを上回る魔力が無ければどうしようもない。


「俺がやってもいい?」

 当たり前のように言う男の子。

 こんな子に私以上の魔力があるとは思えない。

「お前のような子供がどうにかできるとは思わないがな」

 思った事を言ってしまった。

「だた、私の足を治したのも事実。

 やってみてくれないか。

 えーっと契約書はっと……」

 そして私は契約書を探す。



「あそこに置いた」

 そう言って男の子が契約書を持ってくる。


 男の子は興味津々に、

「で、どうやる?」

 と聞いてきた。。

「えっと、確か、契約書の端をお互いに持つんだ」

「じゃあ、契約書の端を持つぞ。あんたも持ってくれ」

 私は言われるがまま契約書の端を持つと、

「あとは、魔力を通すだけだったと思う。

 聞いたのでは、書類や紋章に残った魔力を追い出す感じで行なうらしい」

 契約の破棄方法を説明するのだった。


 男の子が契約書をじっと見た。。

「じゃあ、やってみるぞ」

 そして、両手に見たことも無いほどの膨大な魔力を纏うと、次の瞬間「ボワッ」という音と共に契約書が燃え上がった。

 と同時に私の奴隷紋が消える。

「んー、これでいいかな?」

 ニッと笑う男の子。

 その男の子を唖然として見ていたと思う。

「これで奴隷契約は無くなったんだね」

「えっ、お前……」

 私は男の子に声をかけようとする。

 すると、

「俺はケイン」

 と男の子は言った。

 そして、

「別に恩を売るつもりも無いんだ。

 おっぱいポロリもおっぱいモミモミも堪能したし、それで報酬は十分。

 行くところがあるのなら行ってもいいよ」

 と魔物を自然に返すように言う。

 両手で何かを揉むふりをしながら、遠い目をしているケインに、少し恥ずかしさを感じるのだった。



 契約破棄が終わると、私は不安になったのか、

「私には行くところが無い……。

 魔力も尽きていて力も出ない」

 無意識のうちに呟いてしまった。

 すると、

「んー、仕方ないね。

 ちょっとここで待ってて」

 と言って部屋を出るケイン。


 長い放置。

 私は少し考えていた。


 私より大きな魔力。

 あの性格。

 ただ年齢だけ。

 でも、ケインは人間。

 あと十年も待てば容姿は大人。

 私と遜色なくなるはず。

 魔物である……神祖である私を女と見てくれる?


 多分この時から私はケインに惚れていたと思う。

 この時からケインは我が(ぬし)になった。



 急に扉が開き、(ぬし)と美しい夫人が現れた。

 多分主(ぬし)の母親なのだろう。

 裸の私を見て、(ぬし)の母親は状況が理解できていないらしい。

「ケイン、これどういうこと?」

「屋根裏部屋で怪我していたのを助けたんだ」

「私は神祖。

 (ぬし)はリンメル公爵の所から逃げた私の怪我を治し一緒に寝た後、朝起きてクリフォードの奴隷契約書を(ぬし)が破棄してくれた」

 と説明すると、

「カミラさんは神祖で、ケガしていて……えーっと、クリフォードの契約をケインが破棄したのね」

 ニヤリと笑う(ぬし)の母さんが居た。


 なぜクリフォードの所で笑う?

 (ぬし)が、

「そうなるね」

 というと、

「クリフォードって知ってる?

 現宮廷魔術師筆頭。

 お爺様の後釜ね。

 お爺様はあの男の事を良いように言ってるけど。

 私、あの男プライドが高くて嫌いなの。

 あの男と揉めているときに、ベルトが助けてくれてね、その結果結婚した訳。

 そのクリフォードの契約を破棄するとはよくやったわ」

 (ぬし)の母親はワシワシと(ぬし)の頭を撫で嬉しそうにしていた。


 相当嫌っているようだ。


「カミラさんと言ったわね。自分の事は自分で守れる?」

 (ぬし)の母親が聞いてきた。

「血さえあれば、何とでもなる」


 実際その通りなのだ。

 あの時ももう少し血で魔力が補給できれば……。


「血ねぇ。食事ではだめなの?」

「食事でも大丈夫だが効率が悪い。

 人の血を吸うほうが効率はいいな。

 私は冒険者をやっていて。

 賞金首で生死不問の依頼を受けてその犯罪者から血を吸うことで血を得ていた。

 ちゃんとその犯罪者は日に晒し、灰にして殺していたがな」

 と言って、血の得かたを話した。


 (ぬし)は私より魔力が多い、もしかして……。

 私は、

「ケインのお母さん。

 ちょっといいか?」

 と聞いた。

「なあに?」

 と母親は答える。

「ケインの血を吸わせてもらえないだろうか」

 おもむろに聞いてみた。

「何をバカなことを言っているの。

 自分の息子を吸血鬼にしたい親など居ません!」

 とケインの母親は怒る。


 それはそうか、でも話だけでもしないと!


「いや、話を聞いてくれ。

 吸血して吸血鬼になるのは、私の中にある吸血鬼になる因子が吸血した相手より強いからだ。

 私よりも強く魔力もあるケインならばその因子は殺され吸血鬼になることは無い……と思う」


 最後は自信が無かった。

 ある意味賭けだからだ。


「どうするの、ケイン」

 不安げにケインの母親が聞く。

 私は否定されると思っていた。

 しかし主は、

「飼うと言ったのは僕だし、吸血鬼にならないのならいいんじゃないかな?

 拾ったものは最後まで面倒見ないといけないだろうし……」

 という。


 えっ本当なのか?


「普通は怖がるものよ」

 呆れ顔のケインの母親。


 ケインの母親が言うことが正しい。

 それでも、血を得られる。


 すると、

「まあ、息子がいいと言っているならいいわ。

 ただし、吸血鬼になったら殺すから」

 顔は笑っていたが、ケインの母親の背に殺気を感じる。

 私は背中にうすら寒いものを感じた。


 ケインの母親が

「じゃあ、ここで吸ってみて。

 私も見ておきたい」

 と私に言う。

 私は屈むと、

「吸うぞ」

 と言って首筋に噛みついた。

「!!」

 あまりに美味で濃厚な魔力に無心で(ぬし)の血を吸ってしまう。

 そして、魔力で満たされると、

「はふぅ」と自然と溜息が出て、私は吸うのをやめた。

 自然と、

「何だこの血に混じる濃厚な魔力は。

 私はこんな血を吸ったことが無い。

 こんなのを知って仕舞ったら離れられない」

 と口に出る。

 そして、私はこの血でなければ生きていけないと思った。

 思わず、口元から流れる血さえも一滴残さず舌でで舐めとってしまっていた。


「何もないみたいね」

 母さんが心配げに(ぬし)に聞いていた。

 思惑通り、(ぬし)は吸血鬼にはならなかった。


 正直ホッとする。


 主が私の付けた首への傷を治療すると、

「ケイン、それどうしたの?

 治癒魔法なんて……」

 と聞いていた。

「傷口を治すイメージを使うとできたんだ」

 と(ぬし)は答える。

「ケインはいろいろと規格外ね。

 普通、魔法使いは治癒魔法を使えないの」

 ケインの母親は言っていた。


「さて、それじゃカミラさんが住む場所ね。一階のメイド用の部屋が空いてたから、そこに住んでもらいましょう」

 とケインの母親は言う。

 しかし(ぬし)と私は離れたくなかった。

 だから、

「いや、ケインの部屋ではいけないだろうか?

 私は夜に強い。

 ケインに助けてもらった恩もある。

 主人たるケインを守るためにも一緒の部屋に居たい」

 苦し紛れの言い訳をする。

 俺を見る母さん。

「僕が主人?

 イヤイヤイヤ……、契約破棄したんだから自由でしょう?」


 (ぬし)は普通に暮らして欲しかったんだと思う。

 でも、私は惚れた。

 とにかく離れたくない。

 ただの我儘を押し通すことにする。


「自由だからこそケインの元で暮らす。神祖は恩知らずではない」

 というと、

「別に恩返しなんか要らないんだけど……」

 と主が言う。

 たぶん私は悲しい顔をしていたと思う。


 すると、(ぬし)は頭を掻き、

「あー、はいはい、わかりました。俺の部屋で寝てください」

 仕方無いというふうに私に言った。

 私は嬉しくて仕方なかった。


「あの人に似て押しに弱いわね」

 ボソリと主の母親が言ったが、私は押し勝った。



「ベッドの移動ぐらい手伝ってな」

 (ぬし)が言う。

 二人でベッドを(ぬし)の部屋に移した。

 体に似合わず軽々と持ち上げる(ぬし)


 頼もしい。


 私はケインの母親……奥様のお下がりを頂き、着ることになった。

 その後、平服と下着、そして靴を奥様と買いに行った。

 意外と服は高い。

 無一文の私。

 申し訳なく思う。


 夜になり食事と風呂を終えると、(ぬし)の部屋に入った。


 私のベッドは有るが、(ぬし)と寝たい。


 私は(ぬし)が寝る子供用のベッドに潜り込む。

 すると、

「カミラさんベッドが違う。

 今日はオッパイポロリも要らない」

 と(ぬし)が言う。

「私はケインの抱き枕なのだろう?」

 と私は苦し紛れに聞いた。。

「んー、そんなことも言ったけど、いつもじゃなくていいよ」

 断られる私。

「正直、本当は私が不安なのだ。

 ケインと一緒に寝てもいいか?」

 と言って(ぬし)の後ろから強引に抱き付くと、「ふう……」とため息をつき、。

「だったら、カミラさんのベッドに寝よう。

 俺の子供用より広い。

 俺がカミラさんのベッドに行ったほうが子供だからと許されるだろ?

 逆だとその薄い下着ではちょっと言い訳し辛いしね」

 そう言って(ぬし)は私のベッドに入った。


「優しいのだな」

 私はこの人を選んでよかったと思う。


 ベッドに入ると(ぬし)を後ろから抱きしめた。


 私の決意……、

「ケイン、あなたは私の主人だ。

 だから『カミラ』と呼び捨てにしてほしい。

 私は『(ぬし)』と呼ぶようにする」

 そう言うと、

「別に主従じゃないんだからそこまでする必要はないだろう?

(ぬし)』は無しで今まで通り呼び捨てでいいよ。

 俺もカミラと呼び捨てにするから」

「では、二人だけの時はそうする」

「好きにしてくれ。

 俺もこの部屋の外では『僕』だ、使い分けても文句は言えない。

 じゃあ寝る……おやすみ」

「おやすみ」

 私は初めて男のぬくもりを感じながら眠るのだった。


読んでいただきありがとうございます。

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