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3.訪問者

 ある夜、子供が寝静まる時間。

 俺は気配を感じて目を覚ました。

「ちい、失敗した」

 小さな声が天井から聞こえる。

 そして、天井の板の隙間から血が落ちてきて床に跡をつけた。


 ん?


 俺は気配を殺し、影移動で天井裏に飛び上がる。

 そこには薄手の下着をを着た女。

 手には紙。


 なぜにこんなところへ?


「何してるの」

 居ないはずの俺を見つけたその女はビクリとして俺を見た。

「なぜ……」

 よく見ると太ももの辺りがざっくりと切れ、真っ赤な血が流れ出している。

 止まらない血を止めるために手で押さえていた。

「ふう『何してるの』ってのは今はいっか。

 で、怪我をしているの?」

 出血が多いのか、女は意識が飛びそうになるのを耐えているようだった。

 しかしそれもむなしく、女は意識を失う。

「怪我をしているのは見ればわかることか……」

 俺は女を抱え上げると天井裏から影移動を使い、自分の部屋に降りた。

 持っていた紙は、机の上に置いておく。

「これでよく動けたもんだ。でもオジサンが助けちゃうぞ」

 両手の指を動かしながら、脱がしていった。


 真白な肌に赤い唇が映える。

 すらっとしており、母さんよりはちょっと背が低い。

 まあ今の俺で見上げないといけないが……

 そして漆黒の髪を後ろでまとめていた。

 髪留めを外すと長髪があらわになる。

 正直美人。

 何歳ぐらいだろう。

 なぜか下着を着ていない女。

 久々におっぱいポロリを堪能してしまった。


 昭和の番組……。

 水着だらけのなんちゃら……。

 まあ、ラッキースケベと言うことで……。

 でもポロリに見とれている場合じゃないのだ。


 俺は出血を続けている太ももを魔法で治すことにする。


 切れた血管を繋ぎ出血を止めて、あとは筋繊維と表皮を復元だな。


 魔力を使うと傷が埋まるように消えていった。

 そして何もなかったかのような肌が現れる。

 

 後は、造血幹細胞……そんなんあったよな。

 それにちょっと魔力を流して活性化と……。

 イメージだけどね。


 あちゃー、布団が血まみれだ。

 ついでにこの人の服も……。

 えーっと洗濯して、乾燥。

 床も掃除しておいてと……。

 

 その辺のことも魔法でちゃっちゃと終わらせる。

 血に塗れた布団が元の姿に戻り血に濡れた床もきれいになった。

「ベッドが狭いのは勘弁な。

 俺の抱き枕にでもなってもらおう」

 そう独り言を言って俺は女に抱き付くと、そのまま寝てしまった。


 ピクリと体が動く感じで俺は目を覚ます。

 女は目を覚ましていた。

 子供に抱きつかれて全裸で寝ている意味がわからないのだろう。

 俺は目の前にあるオッパイを

「おっぱいみーっけ。

 俺はオッパイ星人ではないが張りのあるオッパイがあると揉みたくなるのは男の性」

 と俺は適当なことを言って揉んだ。

「あんっ」

 女は身もだえた。

「なっなぜ子供が私に抱き着いている」

 と聞いてくるが、

「俺が抱き着いたから。

 勝手に俺の家の天井裏で気絶したから、服脱がして、おっぱいポロリを堪能して、治療して、抱き枕にして寝たから、今こうなっている」

 と返しておいた。

「治療?」

「ああ、治療。

 太ももの傷が無いだろ?」

 思い出したのか、毛布を取り自分の太ももを見ている。

「死に至る可能性がある出血だったはず」

「実際気絶してたし……。

 でさ、子供だから聞いても何もできないかもしれないけど、何かあったの?」

 俺は聞いてみた。

「確かに子供に言ってもわからないだろうな。

 でも、命を助けてもらったようだ。事情ぐらいは話す。

 私の名はカミラ。

 リンメル公爵の奴隷……。

 リンメル公爵は人型の魔物をいたぶるのが趣味らしい。

 見初められて捕まえられ、奴隷にされたんだ」

「下種だな。

 しかし、カミラさんが魔物とはね。

 全然見えないや」

「ほら、ココに犬歯があるだろう?」

 カミラさんは二ッと歯を出して、尖った歯を指差す。

「吸血鬼?」

「いいや、その上位種の神祖だ。

 日に当たっても灰になったりしない」

「そうなんだ。」

 鎖骨のあたりにある紋章を指し、

「この紋章が奴隷紋。

 この紋章がある者はその主人の言葉を聞かなければいけない。

 私は主人の言葉が聞こえるとその男の言うことを聞くしかない。

 その待遇から逃げようと奴隷契約書を奪って逃げたのだ。

 朝には気づかれるかもしれん」

 と言った。

「要は、主人の言葉が聞こえないところへ逃げようとしていた訳か」

「そうだ」

「ちなみに、その契約書の破棄ってできないの?」

「クリフォードという魔法使いの契約だ。

 聞いたが、魔力が高く一度も破棄されたことが無い魔法書士として有名なのだろう?」

「そうなの?

 俺は知らない」

「まあいい、その魔法書士以上の魔力を使い、契約書に内包されたクリフォードの魔力を抜き出せば契約を破棄できると言われている。

 私もやってみたが無理だった」

 魔力勝負って訳か……。

「俺がやってもいい?」

「お前のような子供がどうにかできるとは思わないがな。

 だた、私の足を治したのも事実。

 やってみてくれないか。

 えーっと契約書はっと……」

 カミラさんは契約書を探しているようだ。

「あそこに置いた」

 と、俺は契約書を指差した。


「どうやる?」

「えっと、確か、契約書の端をお互いに持つんだ」

「じゃあ、契約書の端を持つぞ。あんたも持ってくれ」

 カミラさんも契約書の端を持つ。

「あとは、魔力を通すだけだったと思う。

 聞いたのでは、書類や紋章に残った魔力を追い出す感じで行なうらしい」

 他人の魔力……、ああ、契約書の周りに壁のような物がある。

 こいつを剥いでいけばいいのか。

「じゃあ、やってみるぞ」

 紋章の周りにあるクリフォードの魔力を少しづつ削り取ると穴ができた。

 継続して削り、クリフォードの魔力だけにする。

 そのクリフォードの魔力を契約書から抜き出し、魔力がなくなった瞬間「ボッ」っとフラッシュコットンのように契約書が燃え上がった。

 と同時にカミラさんのの奴隷紋が消える。

「んー、これでいいかな?」

 唖然としたカミラさんがそこに居た。

「これで奴隷契約は無くなったんだね」

「えっ、お前……」

「俺はケイン。

 別に恩を売るつもりも無いんだ。

 久々におっぱいポロリもおっぱいモミモミも堪能したし、それで報酬は十分。

 行くところがあるのなら行ってもいいよ」


 ああ、久しぶりの感覚だったなぁ……。

 ぷよぷよのモチ。


 両手で何かを揉むふりをしながら、遠い目をして思い出していると、

「私には行くところが無い……。

 魔力も尽きていて力も出ない」

 目を伏せ悩み始めるカミラさん。

「んー、仕方ないね。

 ちょっとここで待ってて」

 と言って部屋を出ると、父さんと母さんの寝室へ向かった。

 現在、父さんは戦争に行っているため母さんの一人寝である。


「母さん、起きてる?」

 俺が扉越しに声をかけると、

「どうしたの、こんな朝早くから」

 と言ってガウンを肩にかけ、母さんが起きてきた。

「魔物を飼いたいんだけどいい?」

「えっ魔物?どういうこと?」

「拾った。

 僕の部屋に来てもらえればわかる」

 そう答えると、母さんと一緒に俺の部屋に行くことになる。

 扉を開けると、俺のベッドの毛布で体を隠す全裸の女性。

 母さんは状況がわからないようだ。

「ケイン、これどういうこと?」

「屋根裏部屋で怪我していたのを助けたんだ」

 そして、カミラさんから事情を話してもらった。

「カミラさんは神祖で、ケガしていて……えーっと、クリフォードの契約をケインが破棄したのね」

 ニヤリと笑う母さん。


 ん?何で笑う?


「そうなるね」

 俺が言うと、

「クリフォードって知ってる?

 現宮廷魔術師筆頭。

 お爺様の後釜ね。

 お爺様はあの男の事を良いように言ってるけど。

 私、あの男プライドが高くて嫌いなの。

 あの男と揉めているときに、ベルトが助けてくれてね、その結果結婚したわけ。

 そのクリフォードの契約を破棄するとはよくやったわ」

 母さんはワシワシと俺の頭を撫で嬉しそうにする。


 父さんと母さんの馴れ初めを聞くとは……。


「カミラさんと言ったわね。自分の事は自分で守れる?」

「血さえあれば、何とでもなる」

「血ねぇ。食事ではだめなの?」

「食事でも大丈夫だが効率が悪い。

 人の血を吸うほうが効率はいいな。

 私は冒険者をやっていて。

 賞金首で生死不問の依頼を受けてその犯罪者から血を吸うことで血を得ていた。

 ちゃんとその犯罪者は日に晒し、灰にして殺していたがな」

 そしてカミラは俺を見ると、

「ケインのお母さん。

 ちょっといいか?」

 と聞いた。

「なあに?」

 と母さんは答える。

「ケインの血を吸わせてもらえないだろうか」

「何をバカなことを言っているの。

 自分の息子を吸血鬼にしたい親など居ません!」

 目を剥いて母さんは怒る。


 親の判断として正しいと思う。


「いや、話を聞いてくれ。

 吸血して吸血鬼になるのは、私の中にある吸血鬼になる因子が吸血した相手より強いからだ。

 私よりも強く魔力もあるケインならばその因子は殺され吸血鬼になることは無い……と思う」

 ちょっと自信が無いのか、カミラは提案を断定で締めくくらなかった。

「どうするの、ケイン」

 不安げに母さんが言う。

「飼うと言ったのは僕だし、吸血鬼にならないのならいいんじゃないかな?

 拾ったものは最後まで面倒見ないといけないだろうし……」

 俺がそう言うと、

「普通は怖がるものよ」

 ヤレヤレと言う感じの母さんが居た。

「まあ、息子がいいと言っているならいいわ。

 ただし、吸血鬼になったら殺すから」

 顔は笑っていたが、母さんはスッゲー威圧感でカミラを見ていた。


 母さん、こんな顔もできるんだ。

 こわっ。


「じゃあ、ここで吸ってみて。

 私も見ておきたい」

 母さんがカミラを促す。

 すると、カミラさんは俺の目線まで屈みこみ、そして

「吸うぞ」

 と言って首筋に噛みついた。

 チクリと少し痛みを感じる。

 そして、チューチューと吸う音が聞こえた。。

 貧血になる感じはなく。魔力が減る感じ。

 しかしそれほど減った感じはなく吸血が終わった。


「はふぅ」と満足げに息つくカミラさん。

「何だこの血に混じる甘露で濃厚な魔力は。

 私はこんな血を吸ったことが無い」

 とカミラさんは満足げだ。

 更に、

「これを知ったら離れられない」

 と言う。

 そして、口元から流れる血を一滴残さず真っ赤な舌でで舐めとった。


 んー、エロいね。


「何もないみたいね」

 母さんが心配げに聞いてきた。

 まあ結局、俺は吸血鬼にはならなかった。

 カミラさんが付けた首への傷は自分で治療する。

「ケイン、それどうしたの?

 治癒魔法なんて……」

 母さんが聞いてきたので、

「傷口を治すイメージを使うとできたんだ」

 と答えると、

「ケインはいろいろと規格外ね。

 普通、魔法使いは治癒魔法を使えないの。

 治癒魔法は神官の仕事」

 諦めたように母さんが言う。

「そうなんだ」

 初耳の話。


 知らんかった。

 まあ、カミラさんの太ももも半分ぐらい切れてたのも治したんだけどね。


「さて、それじゃカミラさんが住む場所ね。一階のメイド用の部屋が空いてたから、そこに住んでもらいましょう」

 と母さんが言うと、


「いや、ケインの部屋ではいけないだろうか?

 私は夜に強い。

 ケインに助けてもらった恩もある。

 主人たるケインを守るためにも一緒の部屋に居たい」

 とカミラさんは母さんに言った。

 俺を見る母さん。

「僕が主人?

 イヤイヤイヤ……、契約破棄したんだから自由でしょう?」

「自由だからこそケインの元で暮らす。

 神祖は恩知らずではない」

「別に恩返しなんか要らないんだけど……」

 俺がそう言うと、カミラさんは悲しそうな困ったような顔をして俺を見た。


 そんな顔されるとこっちも困るよ……。


 カミラさんの悲しそうな顔を見て負けてしまい、

「あー、はいはい、わかりました。俺の部屋で寝てください」

 仕方なく俺がそう言うと、カミラさんは嬉しそうな顔をする。

「あの人に似て押しに弱いわね」

 ボソリと母さんが言った。


 俺とカミラでメイド部屋のベッドを俺の部屋に移す。

 カミラさんは母さんのお下がりを着ていた。

 まあ、見た感じは完全に人だよな。

 たまに見える犬歯で神祖だとわかるぐらいか。


 その日の昼間、母さんはカミラさんを連れ、必要な物を買いに行ったようだ。


 その夜、夜が更けると体が睡眠を求めてきた。

 精神はアラフォーだが、体は五歳だからな。

 カミラさんより先に布団に入り寝始める。


 ギイと部屋の扉が開き、人が入ってきた。


 ああ、カミラさんか……。


 俺は気配を感じ薄目を開けたがそのまま寝ようとした。

 しかし、カミラさんはなぜか自分のベッドのほうには向かわず、俺のベッドに入って俺を抱きしめてくる。

「カミラさんベッドが違う。

 今日はオッパイポロリもモミモミも要らない」

 俺が言うと、

「私はケインの抱き枕なのだろう?」

 と、言った。

 否定され、苦笑いでもしているのだろうか。

「んー、そんなことも言ったけど、いつもじゃなくていいよ」

 そして、

「正直、本当は私が不安なのだ。

 このまままたあのリンメル公爵の屋敷に連れて行かれないかと怖いのだ」

「そんなことは、もう起こらないよ」

と俺は言うが、カミラさんが俺を抱きしめる力が強くなる。

そして、

「ケインと一緒に寝てもいいか?」

とカミラさんが聞いてきた。


俺は体を起こすと、

「だったら、カミラさんのベッドに寝よう。

 俺の子供用より広い。

 俺がカミラさんのベッドに行ったほうが子供だからと許されるだろ?

 逆だとその薄い下着ではちょっと言い訳し辛いしね」

 そう言って俺が先にカミラのベッドに横になる。

「優しいのだな」

 と自分のベッドに入ったカミラさんに再び後ろから抱きしめられた。


 んー、いい感触だ……。

 丁度背中に胸が当たる。


 そして、

「ケイン、あなたは私の主人だ。

 だから『カミラ』と呼び捨てにしてほしい。

 私は『(ぬし)』と呼ぶようにする」

「別に主従じゃないんだからそこまでする必要はないだろう?

(ぬし)』は無しで今まで通り呼び捨てでいいよ。

 俺もカミラと呼び捨てにするから」

「では、二人だけの時はそうする」

「好きにしてくれ。

 俺もこの部屋の外では『僕』だ、使い分けても文句は言えない。

 じゃあ寝る……おやすみ」

「おやすみ」

 そう言って二人は眠りについた。


読んでいただきありがとうございます。

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