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29.ルンデルトラップ

 女性陣。

 それも在学者たちが酔い始める。


 俺はなぜか酔わなかった。

 魔力量が影響しているのだろうか?


「せっかくお父様が準備したワイン、これも飲んじゃおうよ!」

「えー、私強いお酒飲んだことありません」

「わたしもー」

 ヘラヘラと笑いながら、レオナさんがワインの栓を抜く。

「お三方、ほどほどにしておいたほうが……」

 カミラが止めに入るが、

「カミラさんも飲もうよ、

 全然進んでないじゃない」

 カミラは飲み食いはできるが血のほうがいいので乗り気ではない。

 そんなことを気にせずに、カミラのグラスに赤ワインがドボドボと入れられていった。

「ケイン君も飲んで。

 全然赤くなってないじゃない」

 ラインが俺のグラスに赤ワインを注ぐ。

 ラウンさんを捜したが、どこかへ行ってしまっていた。


 罠か……。


「一応俺男だから、酒飲んで何かあっちゃいかんでしょう?」

「私は何かあって欲しいなぁ。

 だって、告白前と後じゃなーんにも変わらないんだもん」

 ラインは俺を見て言った。

 その後、ラインの力が抜けエヘヘと笑う。


 笑い上戸。


「私は告白していないけど、片付けの時に聞こえていたんでしょ?

 何か変わってもいいじゃない!

 えっ、何か言え! コラッ!」


 レオナさんに怒られてもなぁ……。

 怒り上戸か?


「うー、カミラさんが『ケインさんが私たちの気持ちに気付いているだろう』って言っていました」

 俺がカミラを睨むと、カミラは目線をスッとそらす。

「だったら、何か行動があってもいいでしょう?

 七歳の時に私を助けてくれたのはケインさんなんでしょう?

 教えてくださいよぉ…………えーん」


 あ、泣いた。

 泣き上戸?

 うわ、めんどくせぇ……。


「ぷぷっ」というカミラの笑い声が聞こえた。


「カミラさんが羨ましい」

「うんうん羨ましい」

「絶対羨ましい」

 王女様、ライン、レオナさんの順で答える。

「でも、カミラは婚約者だからなぁ……」

 そう俺が言うと、

「それ!」

「そうそれ!」

「それそれ!」

 再び王女様、ライン、レオナさんの順で答える。

「呼び捨て?」

 三人が頷く。

「エリザベス王女様の事を呼び捨てになんかしたら、俺、斬られない?」

 と聞いてみると、いつも使っている「俺」が入ってしまた。

「俺って言った」

「俺だ」

「俺いいねぇ」

「「「一人称『俺』で」」」

 三人が納得する。

「つまり、三人を呼び捨てで、一人称が俺だったらいいのか?」

 しかしボソリと、

「私たちも『ケイン』と呼び捨てで」

「それいい」

「それ採用」

 再び三人で納得。

「三人を呼び捨てで、一人称が俺。三人の呼び方は『ケイン』だったらいいのか?」

 再び三人が頷いた。

「えーっとエリザベス?」

 フルフルと首を振ると、

「違う、『リズ』!」

「ああ、リズね……」

「はい!」

「えーとライン?」

「はい!」

 こいつは脳内では呼び捨てだったからな。

「えーっとレオナ?」

「はい!」

「これでいい?」

 三人はコクリと頷いた。

「ただし」

「「「?」」」

 キョトンとする三人。

「さすがに人の居る前では呼び捨ては難しい」

「私は大丈夫、お父様は喜ぶ」

 ルンデルさん……。

「では、残る二人はだな。このメンバーで居る時だけにする。

 俺も揉めたくはない。

 よろしい?」

 リズとラインは頷いた。


「カーミーラー! お前余計なことを!」

 俺はカミラの後ろから抱き付く。


「ご主人様。私は友達にとっていい事をしたと思っている。

 だから怒られても気にしない」

 カミラは満面の笑みだった。


 この笑顔見たら怒る気にもならないや。


 トイレに行くというふりをして、会場を出る。

「ケイン様、会場は?」

 ルンデルさんがすっと現れた。

「飲んでいいとはいえ、私の歳でアルコールは良くないですね」

「でも、娘の本音を聞けたでしょう?」

「知らない間にラウンさんも居なくなっていました」

「指示しておきましたから」

「で、どう思います?」

「レオナさんはいい子だと思いますよ。

 とりあえず学校卒業まではこの五人で動きそうです。

 決めるならその後かと……」

「別に在学中に婚約でもいいんですよ?」

「そうなったらそうなった時です。

 それではトイレに行きます」

「わかりました。

 あっ、そうだ。

 私どもの家でしたら、一人称は俺でレオナを呼び捨てでも問題ありません。

 今、家の者に周知しましたから」

 そう言った後ニヤリと笑ってルンデルさんは居なくなった。


 聞いていたのか……。

 俺も安心して気配感知していなかったな。

 食えない人だ。


 そうして、バルコニーで少し涼むと、会場に戻るのだった。



 会場に戻ると、カミラが困った顔。

「これいい」

「これいいです」

「欲しい」

 と、酔っ払い三人衆がカミラの左手を持ち婚約指輪をねだっている。

「旦那様」

 助けて欲しいらしい。

「おーい、お嬢さんたち。

 俺とカミラが出会ったのは、五歳の時だ。

 婚約したのは十歳の時。

 という事は七年以上毎日一緒に生活している。

 だから、気心が知れている」

「「「ウンウン」」」

「せめて、在学中だけでも付き合わない?

 そんなに急ぐ必要はないだろう?

 もっとお互いに知ってからでもいいと思うのだが?」

「気心が知れたら何かある?」

「そりゃ、いい感じになれば何かあるかもしれない。

 もしかしたらカミラみたいに指輪を貰えるかもしれない。

 今すぐに婚約の必要はないだろうと思う」

 三人はお互いに目を合わせると

「「「わかった」」」

 と頷いた。

 がっしりと手を握り合う三人


 桃園の誓いか何かか?


 女性陣はカミラ込みで風呂に入る。

 俺は一人でワインを飲んでいた。

 ラウンさんが近寄ってくる。

「何ですか?」

「気配を消していたのによく気付きましたね」

「さっき気配感知をしていなかったせいで、痛い目を見ましたので……」

「お嬢様をお願いします。

 あなた様のことを話すとき、それはもう嬉しそうに話します」

「そんなに俺に押し付けたい?」

「それがお嬢様の幸せになるなら……。

 お嬢様はお母様をあまり知りません。

 ルンデル商会が小さかった頃は、私が店番を行い、幼いレオナ様を見て、ルンデル様ご夫婦での買い付けを行っておりました。

 その時盗賊に襲われ、奥様は亡くなられました。

 それからは私とルンデル様でレオナ様をお育てしてきたのです。

 レオナ様は私にとっても娘のようなもの。

 そんな娘が好いた人のところに嫁ぐのを見たいと思う」


 あれ?いろんな気配が集まる。

 んーあれはルンデルさん。メイドさんも数人居るな。


「お涙頂戴で外堀埋めてません?」

 ギクリとするラウンさん。

「言っておきます。

 好意を持っていない女の子のところに来たりはしません。

 仕事だけならルンデルさんと話をすれば終わりです。

 レオナとはお互いに学校内という場所で生活してみて、いい所も悪い所も両方含めて結婚してもいいなあと思ったらちゃんと婚約します。

 ラウンさんの話は本当なのでしょうが、泣き落としで婚約してもレオナが喜ぶとは思えません。

 だから、ルンデルさんも見守ってくださいね」

 俺はカツカツと扉に近づき、バンと扉を開けた。

 申し訳なさそうなルンデルさんが居る。


 親バカなのだろうが……。


「以上です」

 と、俺が言うと、サササとルンデルさんとメイドさんそしてラウンさんが消えた。


読んでいただきありがとうございます。

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