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25.学校祭

 夏休みが終わり、学校が始まる。

 王女様とラインがGクラスに現れた。

 そこで、

「学校祭があるんでしょう?」

 とラインが声をかけてきた。

「らしいね。

 どんな事をするのかまでは知らないけど……」


 父さん母さんは特に何も言わなかった。


「そうですね、学校を開放して、学校内での剣術トーナメント、魔術トーナメント、ペアによる剣術魔術混合トーナメントを見てもらいます。

 これは、今後の就職にも関わりますから、皆真剣なんです」


 結果が就職に直結するなら必死にもなるだろうね。


「あと有志による模擬店ですか……。

 トーナメントは専門職が決まってからになりますから参加はできませんので参加できるのは模擬店になります。

 しかし、何も参加していないと各トーナメントの手伝いにまわされます。

 模擬店をする者はあまりいないらしく、結局はトーナメントの手伝いにまわされるそうです。」

「エリザベス王女様、よくご存じですね」

 俺が聞くと、

「お兄様から教わった事の受け売りです。

 でも王子の兄が貴族たちの世話をしたと言っていましたから、

 私もそのような事をしなければならなくなるのでしょうね」

 と、苦笑いの王女様。

「模擬店かぁ」


 懐かしいな。

 高校で何やったけなぁ……クレープだったっけ?

 女受けがいいって思ってやったけど、来たのは男連ればっかだったんだよなぁ……。

 ふむ……。


「やってみる?」


 王女が居る模擬店なんて絶対に客が来るだろうな。

 ちょっとゲスい考えか。


「私は料理などしたことは無いですが……」

 恥ずかし気な王女様。

「そこはどうにでもなると思いますよ。

 ラインさん、ちなみに子供の小遣いってどれくらい?」

 俺は聞いてみた。

「あなたも子供なんだから小遣いぐらい貰っているでしょう?」

 ちょっと膨れるライン。

「俺、十歳から冒険者ギルドに登録して稼いでるから、小遣いなんて貰ってないよ」

「えっ、でも、この学校の授業料とかは?」

 ラインは驚いている。

「自分で払いました。

 だから、同年代の子供が簡単に買える金額って言うのを知りたいんだ」

 と聞くと、

「すごっ」

 ラインはなぜか俺をじっと見ていた。


「おーい。

 だからいくら?」

「えーっと、私の小遣いが大銀貨一枚ぐらいだから、食べ物なら大銅貨一枚ならばなんとか……」


 ふむ総額五千円ぐらいか……。

 市民はもっと少ないだろうな。


「ちょっと、有力者に協力を仰いでくる」

 と言って俺が立ち上がると、

「えっ、誰にですか?」

 と王女様が聞いてきた。

「Dクラスのレオナさん」

 そう言って教室を出る俺。

 その後ろを王女様とラインがついてきた。


 んー、偉いさんを後ろに歩かせてもいいのかね?


 Dクラスの教室を覗き込むと、レオナさんが居た。

「おーい、レオナさん」

 俺は教室の外から声をかける。

 レオナさんが振り向き俺を確認すると、

「ケイン様、何か御用でしょうか?」

 と、教室の外まで出てきた。


「えっ、王女様と護衛のライン様?」


 そりゃ、驚くか……。


「Gクラスのケイン様にはあり得ない編成じゃない!」


 まあ頂点と底辺の人間だからなぁ。


「まあ、それはいいんだけど、学校祭の時に何をするつもり?」

 俺はスルーして聞いた。

「模擬店をしたいのですが、周りがあまり乗り気じゃないんです」

 ちょっと元気がないようだ。


 確かに模擬店は準備が面倒だからねぇ。

 だったら、比較的楽な手伝いにまわるだろう。


「丁度良かった。

 俺たちで模擬店をしようかと思っててね。

 どう?一緒にやらない?」

 渡りに船だったのか、

「えっ、いいんですか?」

 俺に詰め寄って聞いてくる。

 そして、

「ケイン様が出す模擬店……。まさかお菓子?」

 と言って若干涎が垂れているのはご愛敬?

「ご名答だ。プリンやケーキのような高いものではなく、簡単で安いお菓子」

 すると、レオナさんはメモを取り出し、

「売価は?」

「銅貨二枚。実際に売るなら、銅貨五枚かなぁ」

「材料は?」

「小麦粉と牛乳、そして卵とアベイユの蜜でどう?

 ホルスの乳を使うホイップクリームは追加料金だね。

 卵が少し高いが、レオナさんがルンデルさんにねだれば安くなるかなと……。

 蜜は大量には要らないし」

 レオナさんは俺が言う言葉をメモしていた。


「あれ?」

 と言う顔をするレオナさん。

「ケイン様の家でも手に入るではないですか」

 と聞いてきた。

「まあ、そうなんだけどね。

 ルンデルさんにも絡んでもらおうかと……。

 で、手伝ってくれる?」

 俺が聞くと、

「はい!」

 と大きく頷きレオナさんの参加が確定した。


 蚊帳の外の王女様とライン。

「えーっと、話の流れから聞くと、ケインさんがプリンとケーキを発案したようなのですが……」

 王女様が聞いてきた。


 さすが王女様、頭いいね。


「あっ……」

 レオナさんが口を押える。


 もういっか、俺が言ったようなもんだし。


「そう、私が発案しました。

 でもこんな若造が売り出しても買ってもらえないでしょ?

 だからルンデル商会に依頼して販売をしてもらいました。

 売り上げの一部を貰っているので損はしていません」

「だから表に出てないんだ」

 ラインが言った。

「んー、別に有名になりたい訳でもないし」

「商会で最近売り出したアベイユの蜜。

 これもケイン様が発案した『養蜂』というものです」

 ありゃ余計なことを……。

「あれ、冒険者ギルドで売っている蜜と違って不純な物がなくて甘くておいしいって有名なんだよ」

 ラインさんが言う。


 冒険者ギルドの蜜は、アベイユを討伐し巣を壊したもの。

 当然、布で濾し、不純物は除去してある。

 でもアベイユの体液や巣の不純な味も混じる。そこで味の差が出ているようだ。


「継続して蜜を得られるのなら、商売になるでしょう?

 これも私の力では出来ませんよ」

 じーっと俺を見る視線が三つ。

「どうかしました?」

「年上の方に感じます」

「子供っぽくない」

「私たちと違う発想をする」

 王女様、ライン、レオナさんが言う。

「いかんかな?」

 わざと大人っぽい言い方をすると?

「私は……好ましいです」

「私はそれがいい」

「私は真似できるようになりたい。

 だって私はルンデル商会の後を継ぐんだから……」

 慣れない好意が俺に刺さる。

「まあ、とりあえず皆で模擬店するか?」

 無理やり話の方向を戻すと、

「「「はい」」」

 と返事が来た。

 こうして模擬店出店が決まった。


 レオナさんに出店申請を頼む。

「さて、試食会ぐらいはしないとな。

 ついでに詳細を詰めるか……」

「えっ?

 試食?」

 ラインが驚く。

「いや、食べておいしくないものを売れないだろ?」

「どこで?」

「うちで良いなら作るけど?」

「「「ケインさん(様)の家?」」」

 凄い食い付きだな。

「ルンデルさんにも頼みたい事があるから、できたら一緒に来てもらえるように頼んでもらえないかな?

 試食会をするなら次の休みだね」

「お父様に聞いてみます」

 レオナさんが言った。

「エリザベス王女様とラインさんは護衛の関係もあるでしょうから無理にとは言いません。

 ちゃんとご両親に相談してから参加してくださいね」

「絶対参加する」

 来る気満々のライン。

「私はお母さまに相談してみないと……」

 王女様はちょっと不安げ?


 王妃様の

「鬼神と魔女の家。

 それもあなたを簡単に倒すような息子が居る家。

 そんな所なら何が来ても大丈夫でおじゃろ?

 美味しいお菓子であれば、私も食べてみたいものだ」

 という言葉で王女様は試食会の参加許可が出た。

 それに便乗したラインは、

「私はエリザベス様の護衛です。当然ついて行きます」

 と親に言ったらしい。


 レオナさんは、

「お父様、学校祭で出店する模擬店の試食会をすることになったんだけど、行っていい?」

 とルンデルさんに言うと、

「模擬店ですか?

 どなたと?」

 と聞いてきたそうだ。

「ケイン様とエリザベス王女様と護衛のラインさんと私になります」

「ケイン様が!

 ぜひ行きなさい」

「それで、試食会の時にお父様も来て欲しいと」

「わかりました。

 私も参加します。

 私も必要とは、何のお話でしょうか?

 楽しみですね。」

 ルンデルさんは揉み手が早かったという。


 結局のところ、全員参加になる。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ルンデル氏の商人センサーに 何かしら引っ掛かった模様。 食材ラインナップから あれかなー?はありますが 待ちます。楽しみ。 違った場合の そっちかー!も言いたい笑
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