23’.蜜
学校は夏休みで、レオナは友達のところ。
ふう……暑いですね。
私は夏が嫌いです。
タオルで汗をぬぐいながら、私は荷物の確認をしていた。
すると、
「旦那様、ケイン様とカミラ様が『相談事がある』と言うことでいらっしゃっておりますが?」
執事のラウンが私の下に来る。
えっ、ケイン様が?
これはお金の匂いがします。
「客室にお通してください。
私が対応します。
冷えた飲み物を準備しておいてください。」
ラウンに言うと、
「畏まりました」
と言って離れた。
「お疲れ様です」
ケイン様とカミラ様が私の前に現れる。
「どうぞお席に」
私は着席を促した。
「急な話とは」
早速私はケイン様に聞いてみた。
「ルンデルさんがアベイユを飼う気はないかと思いまして……」
「アベイユをですか?
ケイン様の家にいるアベイユを?」
「いいえ、この度アベイユに新しい女王蜂が誕生したようです。
これは分蜂というもので、群れが二つになります。
わが家で飼ってもいいのですが周辺の花が少ないようで、群れとしては一つが限界のようです。
ですから近くに森のあるラムル村でアベイユを飼わないかと提案しに来たのです」
私は専門家ではありませんが、ケイン様はアベイユの生態に詳しすぎます。
どこからこんな知識を……。
私は少し考えると、
「アベイユの蜜は高価です。
ぜひお願いします」
と即決した。
「私は、この位のツボ一つを一週間で満タンにしてもらう契約をしています。
ですからその程度の量が手に入ると考えてください」
ケイン様は拳ぐらいのツボを差し出した。
「一つお聞きしても?」
「はい」
「なぜ、アベイユを飼おうなどと考えたのですか?」
ケイン様に聞いてみる。
「全滅させれば蜜は一度しか手に入りません。
しかし、分けてもらえるならば蜜は群れがある限り手に入ります」
ケイン様が言う。
一時ではなく定期的に蜜を得る考えか……。
確かに計画が立てやすく、ケイン様の話では増やすことも可能。
一年ごとに増えると考えれば、数があれば凄い量のアベイユの蜜を手に入れることができる……。
私は考えた。
それを見越したように、
「群れを増やせば当然手に入る蜜の量も増えます。
蜜はなかなか手に入らないんでしたよね。
今は夏休み。
私は暇ですが……。
ラムルの村の周りに花が咲けば、もっと群れが増やせそうですねぇ」
ケイン様は悪い顔をした。
あっ、今なら時間があるということですね。
「ケイン様、カミラ様に指名依頼をしてもよろしいでしょうか?」
私も悪い顔をしていたと思います。
「いいですよ」
ケイン様は言った。
私は、
「アベイユの群れを連れてきてください。
一つとは言わす複数。
多いほうがいいです。
早速、今日にでも冒険者ギルドに依頼を出しておきますね」
と欲をかいて言ってしまいました。
金がなる気に急いていたのだろう思います。
すると、ケイン様は
「ルンデルさん」
と一言。
私を落ち着けると、
「群れを入れる箱が要ります。
このくらいの箱を作っておいてください」
縦横が五十センチ、高さが一メートルほどの箱を指定した。
「畏まりました。早急に作ってラムル村に置いておきましょう」
大工に依頼して、ラムル村に箱を作るのでした。
計十二の群れをケイン様は導いて巣に住まわせてくれました。。
ケイン様が
「周囲に時期を分けて花を植え、花を絶やさないようにするといいですね」
と言ったので、早速ラムル村に指示をして近くの平原に花の種を蒔きます。
定期的に蜜が入るようになりました。
アベイユの蜜は高価です。
冒険者ギルドの蜜よりも余計な味がしないと評判になり、こぞって高位の貴族が買いに来ます。
お陰で商会の売り上げも増加。
ケイン様のお陰です。
読んでいただきありがとうございます。