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23.分蜂

 特に何もない日々が続く。

 暑いのかと言うと、そう暑くもない。


 西岸海洋性気候?


 地図が発達していないためどんな感じの国なのかは知らない。

 夏休みは王都の外から来た生徒のため六十日程度の長い休みになっていた。


 学校が無いのでエリザベス王女様とラインに絡まれないから気が楽だ。

 暇な時にカミラとギルドで魔物を狩る依頼を受けるぐらい。


 ルンデルさんのところも、コッコー、ホルス共に数が増え、プリンもケーキも安定生産できるようになっていた。


 今度は焼き菓子かな……。


 そんな事を考えていると、

 一匹の働き蜂が俺の前にやってきた。

 肩に止まると

「ケイン様」

 と声をかけてくる。

「何だ?」

「あのウロでは手狭になり、分蜂の時期が近付いております。

 どこか良い場所は無いでしょうか」


 分蜂とは群れが一つから二つに分かれることを言う。

 新しい女王蜂が産まれると、母親の女王蜂が巣の蜂を半分連れ新しい場所で巣を作るのだ。


「ちなみに、俺んちの周りに花は多いか?」

「群れ一つなら問題ありませんが、二つになると難しいかと」

「分蜂までの余裕としては?」

「そうですね十日程度でしょうか?」

「ちょっと、人と相談してくる。

 何か決まれば巣に行くよ」

「畏まりました」

 そう言うと、働き蜂は俺の肩から飛んでいった。


 早速、ルンデルさんの家へ向かおうとしたら、カミラも付いてきた。

 ルンデルさんの家の門番にも顔を知られ、ルンデルさんが居る時はすんなり家に入ることができる。

「お疲れ様です」

 と俺が声をかけると、

「ああ、ケイン様、今日はご用事で?」

「ええ、相談事に来ました。

 ルンデルさんはご在宅で?」

「はい、いらっしゃいますよ。

 ラウンさんにお伝えしてきましょう」

 そう言うと門番は俺より先に中に入って行った。


 門番が居なくて大丈夫なのだろうか?


 俺とカミラも中に入ると、

 玄関にはラウンさんが待機していた。

「こんにちは、急で申し訳ありません」

「いえいえ、ケイン様なら問題ありません。

 主人は既に客間に居りますのでお連れしましょう」

 ラウンさんに付いて客間へ向かう。


 中に入るとルンデルさんが居た。

 俺たちはその向かいに座る。

「急な話とは」

 早速ルンデルさんが聞いてきた。

「ルンデルさんがアベイユを飼う気はないかと思いまして……」

「アベイユをですか?

 ケイン様の家にいるアベイユを?」

「いいえ、この度アベイユに新しい女王蜂が誕生したようで、群れが二つになります。

 わが家で飼ってもいいのですが周辺の花が少ないようで、群れとしては一つが限界のようです。

 ですから近くに森のあるラムル村でアベイユを飼わないかと提案しに来たのです」

「アベイユの蜜は高価です。

 ぜひお願いします」

 即決でルンデルさんが言った。

「私は、この位のツボ一つを一週間で満タンにしてもらう契約をしています。

 ですからその程度の量が手に入ると考えてください」

 拳ぐらいのツボだ。

「一つお聞きしても?」

 ルンデルさんは何か考えている。

「はい何でしょう?」

「なぜ、アベイユを飼おうなどと考えたのですか?」


 あっそこですか。

 養蜂の知識を持っているって言っても信じないだろうしなぁ……。


 そこで俺は、

「全滅させれば蜜は一度しか手に入りません。

 しかし、分けてもらえるならば蜜は群れがある限り手に入ります。

 そういう事を考えたのです」

 俺が言うと、ルンデルさんはウンウンと頷いていた。


 納得したのだろう。


「群れを増やせば当然手に入る蜜の量も増えます。

 蜜はなかなか手に入らないんでしたよね。

 今は夏休み。

 私は暇ですが……。

 ラムルの村の周りに花が咲けば、もっと群れが増やせそうですねぇ」

 俺は悪い顔をした。

 はっと気づくルンデルさん。

「ケイン様、カミラ様に指名依頼をしてもよろしいでしょうか?」

 ルンデルさんも悪い顔だ。

「いいですよ」

 俺は笑って言う。

「アベイユの群れを連れてきてください。

 一つとは言わす複数。

 多いほうがいいです。

 早速、今日にでも冒険者ギルドに依頼を出しておきますね」

「ルンデルさん、群れを入れる箱が要ります。

 このくらいの箱を作っておいてください」

 縦横が五十センチ、高さが一メートルほどの箱を指定した。

「畏まりました。早急に作ってラムル村に置いておきます」


 次の日には、冒険者ギルドにカミラ指名の依頼が出ていた。

 その依頼を俺たちは受ける。

 三日で巣箱が出来てラムル村に俺んちのアベイユの群れが移動した。

 そして余った夏休みの間、アベイユの群れを探す。

 俺の家に居た働き蜂が、

「この人のところに行けばカラブロを気にしなくてもよくなる」

 と説得してくれたおかげで、ラムル村には十一ほどの群れが集まった。

 計十二の群れ。

 ルンデルさんには

「周囲に時期を分けて花を植え、花を絶やさないようにするといいですね」

 と言っておいた。

 そして夏休みが終わるころには、ルンデル商会の商品に蜜が増えるのだった。



読んでいただきありがとうございます。

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