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22’噂の彼

 今日は魔法の授業。

 ヘイネル、ソルンと一緒に、エリザベス王女を誘い魔法練習場に行くと、噂の彼。

 下級の騎士の息子なのに、エリザベス王女の友達として王妃様に認められている。

 そして、剣術授業ではエリザベス王女を倒したらしい。


 エリザベス王女がケインって子を見つけると、

「ケインさん」

 と声をかけて手を振り、

「無詠唱の練習をしているのですが、この前少しだけ炎が出ました」

 近づいて嬉しそうに報告をするの。

 ケインって子は、

「あとは、その炎が大きく安定するように練習ですね」

 とエリザベス王女を誉めるように言った。

「はい、わかりました」

 嬉しそうに言うと、エリザベス様は私たちのところに跳ねるように戻ってきた。


 何で、私たちと居る時より楽しそうなの?


 私はケインって子を睨んでいた。

 ケインって子は肩をすぼめて去っていく。

 すると、女性の魔法使いの先生がやってきた。

 チラチラとケインって子を見る先生。


 何でそんなにビクビクするの?


 先生は、

「そっそれでは、ココから五十メートル先に十個の的があります。

 好きな魔法を的に当ててください。

 的は魔法防御されていますから、思いっきり撃っても結構です。

 的の塊が三つあります。

 好きなところに並んで魔法を使うように」

 と授業内容を説明した。


 あの子は無詠唱で魔法を使える。


 私にイタズラ心がむくむくと芽生えた。

「はーい」

 私は手を上げると先生が、

「ラインさん何でしょう?」

 と聞いてくる。

「えーっと、確か、Gクラスのケイン君が無詠唱で魔法を使えると聞いています。

 十個の的にどれだけ早く当てられるか、見せてもらいたいのです」

 何故か、先生はビクリとした。

「余計なことを……」という顔をする先生。


 なぜ?


「えーっと、けっケイン君、こういう意見があるのですが、いいですか?」

 先生がケインって子に聞いた。

「いいですよ?

 とにかく早く的に当てればいいんですね」

 落ち着いた声。

「全部射抜いてよ」

 私は難易度を上げる。

「ココから生徒を退避させなくて大丈夫?」

 オドオドと先生がケインって子に聞いていた。


 なぜ?

 先生はそこまで言うの?

 この子って本当は凄いんじゃない?


「大丈夫です。

 そうですね、アイスの魔法で的を射抜いてみますか……」

「アイスの魔法で大丈夫ぅ?

 もしかして、それしか使えないとか……」

 私はますます難易度を上げた。


 アイスの魔法は水系で最弱の魔法。

 その程度じゃねぇ……。


 ケインって子は、

「じゃあ、やります」

 そう言ったあと無詠唱で十個の氷を作り打ち出される。

 それは正確に的に当たりパーンと弾けた。

「終わりですね」


 あり得ない。

 アイスであんな威力は出ない。


 すると、

「ラインさん、確認をお願いします。

 多分全部射抜けていると思いますから」

 と確認を依頼された。

 私は反応が遅れてしまい、

「はっはい……」

 と言われるまま確認に行ってしまった。


 凄い、全てが的のど真ん中。

 そして、氷は突き抜けて後ろの壁に食い込んでいる。


 

「射抜いていました。

 当たるだけでなく全部貫通です」


 信じられない……。


「ご要望通りできて安心しました。

 それで私にここまでの注文ができるラインさんならどんな感じになるのですか?」


 私はやり返されるとは思っていなかった。

「えっ、私?」

 焦ってしまう。


 んー、私から振ったイタズラ。

 並列起動なんてしたことは無いけど仕方ない!


「炎たちよわが前に集え!」

 私は手を差し出した。

 ファイアーボールが二個浮かぶ。


 あっ、できた。

 でも、ファイアーボールの大きさが……。


 大きさを合わせるために、片方に魔力を足すと片方が小さくなる。

 その振れがどんどん大きくなる。

 ダメ、制御できない!

 暴走する!


 私は目を閉じ、ファイアーボールに背を向けた。

「ボウン」

 と音がすると炎ではなく水飛沫が私にかかる。


 えっ?

 なんで?


 キョトンとしていると、

「おーい、大丈夫か?」

 と言って彼が現れた。

「複数発動なんてしたことなかったんだろ?

 慣れないことはするもんじゃないぞぉ」

 そう言って、彼が差し出したタオルを受け取った。


「おい、大丈夫か?

 すまないな、あれしか方法が思いつかなかった。

 びしょびしょになっただろ?」


 この子優しい。

 背も高いし……。

 強いし……。

「好き」

 自然と言葉が出ていた。


「へ?」

 驚く彼。

「こんな子、私の周りで見たことが無い。

 十個も複数発動するなんて何?

 落ち着いてるしやさしいし……」


 言っちゃったら勢いよ!

 言わなきゃ!


「ライン、ケインさんが困っています」

 王女様が止めに入った。

「エリザベス様も好きなんでしょう?

 こんなタイミング無いですよ、ぶっちゃけましょう」


 でないと彼の事をこんなに気にしないでしょ?

 言っちゃえ!


 すると、彼の顔が真剣になり、

「ラインさん、王女様が公衆の面前で言うことで周りの皆に影響が出るのに気付きませんか?

 言わせる者として責任は取ってくださいね」

 と言ってきた。

「えっ、そんなこと……」


 あっ……。


 彼は続ける。

「そうでしょう?

 王女様がもし私を好きで、この場所で「好き」と言えば、王、王妃、その周りの人、私や私の家族に影響が出ます。

 逆に私を好きですが「嫌い」と言った場合、王女様の心が痛むかもしれません。

 ああ、嫌いだから嫌いという可能性もありますね。

 今は断定せず学校生活を送る方がいいような気もします。

 だから仲が良い友達ではダメですかね?」

 彼が言うと、白けた空気になる。

 すると先生はタイミングよく、

「はいはい」

 と言って手を叩くと、

「このように、慣れていない魔法を使い制御から外れると暴走を起こします。

 まずは一つ一つの魔法を制御できるようにしてくださいね。

 それでは練習を始めてください」

 と言って授業を始めるのだった。


 そして、先生がケイン君の所に行って話す。

 そのあと、先生のカラ笑いが響いた。



 その日、学校が終わると急いでGクラスに行く私。


 謝らないと……。


 Gクラスに入って彼を見つけると、

「さっきはごめんなさい」

 と言ってペコリとお辞儀。

「ああ、何も無くて良かった」

 彼は言う。

「ファイアーボールの事じゃなくて、告白の事」

 私が言うと、

「それはもう少し後先考えたほうがいいかもね」

 苦笑いの彼。

 でも再び私は言う。

「でもね、私はやっぱりあなたが好きになったみたい。

 エリザベス様とGクラスに来てもいい?」

 私は彼の目を見て言った。


 ふう……と彼はため息をつくと、

「どうせ君もエリザベス王女様と一緒。

 ダメと言っても来るんだろ?」

 と言ってくる。


 私は胸を張り、

「正解!」

 と言う。

「好きにすればいい」

 と言う彼の一言。

「やた!」

 私は飛び跳ねた。

 Gクラスの生徒からジロジロ見られる私。


 あー、またやらかしたかな?


 私は、

「じゃあ、私エリザベス様のところに戻るね」

 と言ってAクラスで待つみんなのところに戻るのだった。



 馬車で王宮にエリザベス様を送るとき、

「ラインさん。

 先ほどのようなことはもう無いようにお願いします。

 ケインさんの言う通りだと思いますよ」

 エリザベス様に私はチクリと言われる。

 でも、

「エリザベス様。

 ケイン君っていいですね」

 とエリザベス様に言った。

 少し考え、

「どうしたんですか?」

 エリザベス様が不思議そうに首をかしげた。


 ちょっと気になる様子。


「ケイン君はカッコいいです。

 エリザベス様が気になるのがわかります」

 私が言うと、

「そうですね」

 エリザベス様はニコリと笑って頷くのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 正妻カミラさんの許しはあるけど エリザベス王女とラインさん 面倒くさい。 重婚許されるだろうけど 外野に序列口出されそうだから やっぱり面倒くさい。 母上?素敵(暗黒)オーラで 威圧、いえ、…
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