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16.卵料理

 飼ってみてわかったことだが、コッコーは毎日二個から三個の卵を産む。

 エサは穀物と菜っ葉系の野菜。そして細かく砕いた骨にした。

 コッコーは外敵に襲われないので安心して暮らしているようだ。


 ボールで卵を溶き牛乳を入れる。

 ジャージーの乳から作ったバターをフライパンで溶かし、卵液を入れた。

 フライパンの柄をトントンと叩き形を作る。

 出来たものを皿に移した。


 うし! 半熟トロトロだ。

 んー、ケチャップが欲しいが、今は無理だな。


 野菜は湯がき、マヨネーズを添える。


 パンに牛乳、オムライスに付け合わせの茹で野菜、そしてマヨネーズ。

 母さんのスープ、これでどうだ!


 四人分の食事を作り、テーブルの上に置いた。


「みんなできたよー!」

 と俺が声をかけると、父さん、母さん、カミラが席に着く。

「はい、これがコッコーの卵から作った朝食。

 どうぞ召し上がれ」

 その掛け声で、皆が食べ始めた。


「この食感……ふわトロ……。塩味も程よく効いていいわね」

 母さんが頷く。

「これがコッコーの卵なのか?

 こんな繊細な味なのか?」

 父さんが驚く。

「旦那様。このマヨネーズというソースが美味しいですね」

 カミラが野菜を食べるのは珍しい。

「結局、新鮮かそうじゃないかなんだよね。

 卵って美味しいでしょ?」

 三人はコクリと頷く。

 わが家だけでも卵の認識が変わったようだ。


「あと、デザートも作ってあるから」

 俺は三人の前に蜂蜜プリンを出す。

 カラメルも蜂蜜製だ。

「えっ、これ、何?

 プルプルしてて冷たくて……」

「甘いものが好きな俺だが、こんなものは食べたことが無い。

 これがあのコッコーの卵なのか?」

 母さんんと父さんが絶賛する。

「旦那様。これは売れます」

 カミラが口を開いた。

「俺は売らないぞ?」

「いいえ、ルンデル様にレシピを売るのです。

 そして収入の一部を得る」

「しかし、俺の家なら卵は手に入るが、ルンデルさんでも材料を手に入れるのは難しい。

 まあ、今度卵料理を出すときに、プリンを出してみるよ」

「そうしてみてください」

 カミラがニコッと笑って言うのだった。


 そして、ルンデルさんに連絡を取り、ルンデルさんの家で卵料理を提供することになった。

 ルンデルさんの家の大きな台所を借りカミラと共にプレーンオムレツを作る。

 それを皿に乗せ、付け合わせの野菜とマヨネーズとともにルンデルさんに食べさせた。

「んー、この食感は新しい。

 とろふわで適度な塩味。

 コッコーの卵で、こんな料理ができるとは……」

 ナイフとフォークでオムレツを食べたルンデルさんが驚いていた。


「一応、こんなものもできると言う事で……これはデザートになります。」

 おれは、収納魔法でプリンを取り出す。

 それに合わせたように、

「お父様、ケインさんが来ているんですって?」

 と、レオナさんが現れた。

「ああ、今しがたケインさんが作った卵料理を堪能したところだ」

「美味しかった?」

「凄く美味しかったぞ?」

 ニヤリと笑うルンデルさん。

 既にオムレツは無い。

「うー残念」

 レオナさんは本当に残念そうだ。

「ああ、今デザートを出してもらったところだ」

 ルンデルさんが説明をした。

「デザート?

 甘いものですか?」

 興味津々のレオナさん。


 確かに女の子は甘いものに目が無いのが常。


「そうなりますね。

 レオナさんも食べてみますか?」

 と俺が言うと、

「ぜひ!」

 と言って、ルンデルさんの隣に座る。

 俺は、収納魔法からプリンを取り出しレオナさんの前に置いた。


「ではどうぞ、食べてください。

 スプーンを使って食べると食べやすいと思います。」

 俺が言うと、ルンデルさんはカラメルとプリンを掬い、口に運ぶ。

「おぉ、これは美味しい。

 冷たくてプルンとして甘くて苦い。

 これほどの感覚が混在するデザートは食べたことがありませんね」

 ルンデルさんが食べたのを確認してレオナさんも食べる。

「甘味と苦みのバランスがいいわ。

 何これ、こんなデザートがあるなんて」

 レオナさんも気に入ったようだ。

「毎日食べられる?」

 というレオナさんの質問に

「今のところ材料は私の家にしかありません。

 コッコーを捕まえる時に運よくアベイユを使役することができました。

 今回のお菓子はそのお陰です。

 でないと高価な砂糖を使う必要があったでしょう」

 砂糖は高く「砂糖の重さは金の重さ」と言われているほどだ。


「ケイン様。

 これは売れる。

 材料を確保するのが難しいということは、希少なんです。

 その分欲しい人はどうやっても手に入れようとする」


 その分金額を吊り上げられる……か……。


「しかし、冒険者が探してきたようなコッコーの卵では死人が出ますよ?

 はあ……作り方は簡単で、新鮮な材料があれば問題はありませんが……」

 話が大きくなりそうだ。

「ケイン、我が家でも言ったが、レシピを売ればいいのです」

 カミラが言った。

「えっ?売っていただけるのですか?」

 ルンデルさんの揉み手が加速する。

「まだ売るとは言っていませんよ。

 そうですね、新鮮な卵と乳を手に入れる方法が確立したら、教えましょう。

 卵は生みたてを一日十個以上、乳は絞りたてが毎日桶いっぱい確保できなくてはいけません。

 あと、蜂蜜か砂糖が必要です」

「わかりました。レシピを得るためにケイン様のご要望にお応えします。

 蜂蜜と砂糖については取り扱いがありますので問題ありません。

 砂糖を使っている事にすれば……ククク……」

 おっと、ルンデルさんが悪い顔だ。


「お父様…………」

 レオナさんがルンデルさんの耳もとで何かささやいた。

「おお、それはいい!」

 ルンデルさんは手を打つ。

 そして、

「ケイン様、三日後にレオナの誕生会があるのですが、その時にこのお菓子を出してもらいたいのですがよろしいでしょうか?」

 と、俺に言った。

「個数にもよりますね」

「レオナの友達を呼ぶだけですから十個もあればいいかと……」

「それなら問題ありません。卵も足りるでしょう」

 そう言って俺は引き受けるのだった。


「ちなみに、誕生会というのはどういう流れになるのですか?」

「そうですね、集まった者が主賓の誕生日を祝う言葉を言って、食事、デザート、歓談、それで終わりでしょうか?

 たまに泊って帰る子も居ますが……」

「ではお祝いなので、別のお菓子も作ってきましょう。

 ご満足させられるかどうかはわかりませんが」

「いいのですか?」

 喜ぶルンデルさん。

「お世話になっていますからね」

 俺はそう言っておく。


 まあ、まだ世話になる事もあるだろうしな。


 ん?レオナさんの視線。

「どうかしましたか?」

 俺はレオナさんに聞いてみた。

「はしたないとは思うのですが、もう一個あのお菓子は有りますか?」

 スプーンを咥えて頬を赤く染めているレオナさん。

 本当に恥ずかしいのだろう。

「どうぞ」

 俺はレオナさんの前にプリンを置いた。

「ケイン様、すみません」

 ルンデルさんが申し訳なさそうに言う。

「まあ、余っていましたから、お気になさらず」

「それでは、私たちは失礼します」

 俺がそう言うと、

「それでは、我々もコッコーの卵とホルスの乳を手に入れるべく努力をしたいと思います」

 とルンデルさんが言った。


 さて、プリンは流行るのかね……。



 次の日、冒険者ギルドの依頼にルンデル商会の依頼として、コッコーとホルスの生け捕り依頼が出ていた。


読んでいただきありがとうございます。

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