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2.マーロン

「おうおう、ケイン。大きくなったのう」

 魔術師マーロン。

 俺の祖父になる。

 白いあごひげ、広鍔のとんがり帽子、それに杖。

 ゆったりとしたローブを着て家へやってきた。

 ミランダ母さんの父親であるマーロン爺さん。

 母さんの師匠、伯爵であり前宮廷魔術師筆頭らしい。

「ミランダ、あの筋肉バカは?」

「お父様、ケインの前でそれは……。

 それに、ベルトが戦いに出たのを知っていてわざわざ来たのでしょう?」

「儂の可愛い娘を手籠めにした男だ、嫌いでも仕方ないだろう?

 あのまま居れば王宮で儂の跡を継いでいたのに」

「もう七年も前の話でしょ?」

「お母さん、お爺様は父さんが嫌いなの?」

 俺が聞くと、

「ケイン、お爺様は子供なの。

 未だに私がベルトのところに嫁いだのを怒っているの」

 と母さんは言った。

「お爺様は、母さんが好きなんだね」

 一応ゴマすり。

「そうだぞ、ケイン。

 お前の父さんは儂の可愛い一人娘のミランダを攫っていきおった」

 うーん子供の真似をする俺もあざといな。


「お父様!

 今この話をしても仕方ないでしょう?

 私はもうベルトの妻です。

 それに子供の前で話す事ではありません。

 そうね、お父様、ケインに魔法を教えてやってもらえないかしら」


 おっと、母さんの顔が悪い顔だ。

 爺さんは俺の魔法の腕を知らない。

 そして、

「あの頑固ジジイを懲らしめてやって」

 と、俺の耳元で母さんが呟き任務を仰せつかるのだった


「それじゃ、ケイン、庭に出ようか」

 爺さんは俺を誘い庭に出る。

「儂の家ならばこんな狭い庭ではないのだが。

 お前の父親ではこの程度が限界なのだろう」

 自分自慢を始める爺さん。

「それじゃ、指先に炎を作ってみようか。

 最初は難しいかもしれんが火が燃えることを想像すればできるだろう」

 そう言って、人差し指の先に炎を灯す。

「こう?」

 俺は簡単に炎を灯した。

「えっ?

 おう、いきなり成功か。

 さすがミランダの子、つまり儂の血じゃ」

 長いあごひげを弄りながら満足げに言う。


「それじゃ、その炎を丸く纏められるかな?」

 爺さんの炎がビー玉ぐらいにまとまる。

「これでいい?」

 俺は爺さんの炎より小さくパチンコ玉の大きさぐらいに小さくした。

「おっ、おお。

 儂もそのくらいならできるぞ」

 爺さんの炎がパチンコ玉の大きさぐらいに小さくする。


 ん?


 爺さんの額から汗が出始めた。

「じゃあお爺様、僕も頑張るね」

 俺はゴマ粒の大きさまで小さくする。

「何!

 その大きさまで圧縮が?」

 爺さんは焦っていた。

「お爺様できないの?」

 プライドをくすぐる言葉。

「なーに任せろ、やって見せる。

 儂は元宮廷魔導士筆頭」

 爺さんは額から脂汗を流しながら挑戦するが「ボッ」という音がすると黒い煙が上がり炎が消えた。

「あっ、ああ、大丈夫だ。

 ただ今日は調子が悪かったようだな」

 爺さんは調子のせいにした。

「お爺様大丈夫?

 僕こんな事もできるよ」

 両手の指に火球を出し、それぞれを舞わせてコントロールする。

 爺さんがあんぐりしていた。

「お前は天才か?」

 爺さんは俺の手を取り、

「ケイン、ちょっとお母さんの所へ行こうか」

 と俺を引っ張って母さんの元へ連れて行く。


「ミランダ!

 ミランダ!」

 ドタドタと家の中に入ると、

「どうしたのお父様」

 ニヤニヤとしている母さん。


 結果を知っているからなのだろう。


「何だこの子は。

 どんな魔法制御力を持っているんだ!」

 爺さんは唾を飛ばしながら言った。

「お父様、落ち着いて」

 そう言って、母さんは水を差し出す。

「儂が……この元宮廷魔導士筆頭の儂が、この幼子に魔法制御で負けたのだ」

 愕然とする爺さん。

「私もこの子には勝てないわよ?」

 あっけらかんと言う母さん。

「えっ……」

「とっくにケインのほうが魔法の扱いは凄い。

 魔力量も多いし、私の知ってる魔法は全部使えるわよ」

「広範囲殲滅系の魔法もか?」

 爺さんは母さんに聞いた。

「そうね、その庭でしか使っていないけども、使えるでしょうね。

 見事に庭全体に炎が上がったわ」

「さすが我が孫」

 喜ぶ爺さん。

「お父様、それは違うわよ。

 ケインは小さなころからずっと努力していた。

 這うような時から本を読み、私の教えを守り練習をしたから、今のケインがあるの。

 血だけに甘えていた訳じゃない。

 今もベルトに勝つために毎日庭で練習している。

 今のケインなら魔法を使えばベルトに勝てるでしょうね。

 でも使わずに自分の技量だけで勝とうとしている」

「這うような時からなど、あり得んじゃろう」

 爺さんは俺を見ながら呟いた。

「この子は一度死んでいる。

 神によって生かされた時に何かあったのかもしれないわね。

 でも、そんなことを聞く気は無いわ。

 私のケインはそこに居るんだから」

 母さんはにっこり笑うと、俺を抱きしめるのだった。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「メタボの・・・」以来久しぶりにこちらを覗いてみたら、あるじゃア~リマセンカ \( 'ω')/ また楽しませていただきます。
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