113.三年が経ちました。
婚約者たちとは結婚式を行い、晴れて夫婦になった。
皆に聞いた訳じゃないので何とも言えないが、まあ、夫婦仲が悪いとは思わない。
領地経営もルンデルさんや俺の部下たちにアドバイスを貰いながらなんとかやっている感じである。
そして、三年が経った……。
「いらっしゃい」
俺は玄関で女の子を出迎える。
「いらっしゃいました!」
「デカくなったな」
「そりゃ四年も経てばね……。
それなりに大きくなったつもりだけど、ケインの周りを見たら、自信無くすかな……」
周りに居る女性陣を見る。
おっと……呼び捨て。
そうしろって言われたかね?
「ここに来るの、ずっと待ってたんだから」
プッと頬を膨らませる。
「そりゃなんで?」
「誕生日の度に、お菓子が届くんだもの。
あんなお菓子、マグダル王国に無いし。
『ちゃんと勉強しておきなさい』って書いてあったら、やるしかないでしょ?」
「それ目当て?」
「当然!」
胸を張る。
確かに育ってるな……。
まあ、所詮年齢にしてはってところだがね……。
えっ……手は……それなりで……。
「ゴホン」
という咳払いと共に、視線に気付いたカミラに睨まれる。
しかし、カミラの腕には赤子が抱かれていた。
でき辛いと言われていた子供。
男の子で、フィッシャーと名付けられた。
えーっと、名付けに爺さんが口を出すよくある話。
ヴォーデ・ドラクリヤ伯爵、カミラの父親が付けたのだ。
まあ、フィッシャーと言えば艦隊の運用が得意だった人のようなので、人々の運用もできればいいかな。
ってことで、こっちとしては名前に文句を言わなかった。
他のフィッシャーもあるかもしれないけが、まあそれはそれで……。
ちなみに、オヤジさんとビクトリア様はこっちに滞在中。
メイドから取り上げて抱いている。
孫バカである。
てなわけで、エルザが我が家に来ました。
とりあえずは、うちの国の学校に留学です。
ちなみに、エルザはAクラス。
んー優秀。
剣と魔法が一流か……。
エルザの後ろについて、俺は学校を歩いた。
「ケイン。ケインの頃はどんな風だったの?」
「んー。俺は入学時にGクラスだったからなぁ……。
最低ランクだったから、相手にはされなかった。
でもなぁ……。リズとラインから好意を持たれた。
俺も嫌じゃなかったし、カミラも嫌じゃなかった。
だから、がんばったら、Aクラスになった。
そんな感じかな?
ちなみに、エルザは魔法は?」
「当然使えます。
お父様が『使いたければケインの好きなように使え』と言っていました」
「どう使えと?」
「外交? 戦争?」
「使わねえよ。
勉強する時期のエルザをわざわざ使ってどうする?」
「私が好きだから、使わないの?」
「んー、エルザに俺を好きになってもらおうとしているからかな?
まずは、俺が好きでも俺が好かれないと意味ないだろ?
だから、新しいお菓子や美味しいお菓子を贈った訳だ。
情けないことに、そういう事でしか気を引けない」
苦笑いする。
急に婚約者だと言われても、どう動いていいかわからなかった。
ただ、女の子はお菓子が好き……という勝手な想像からお菓子を贈っていただけ。
「そうだったんだ。
だったら、それは成功。
だって、見たこともないお菓子を目の前に並べられて、それが全部美味しくって。
もう、いつも、ケインの屋敷に行けるかって指折り数えてたんだもの!
でも、私を膝の上に抱いて、優しくしてくれてから、私はケインが好きだったんだからね!」
上目づかいで抱き付いてきたエルザの頭を俺は撫でるのだった。
校長の所に行くと、校長から頭を下げられる。
学校の先生にも頭を下げられる。
俺、そんな偉い人間になったつもりないんだがなぁ……。
違和感だらけである。
はぁ……。
帰りの馬車で、
「私、入学生の代表なんだって」
「おお、やるねぇ。
成績一番ってことか」
「そういう事。
頑張って、ケインの役に立つ女になるね」
エルザが言った。
んー、別にお菓子大好きなエルザでもいいんだがなぁ……。
頑張り過ぎたら、注意しよう……と思う俺だった。
私の事情により更新をしばらく止めます。
ご迷惑おかけして申し訳ありません。




