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107.引越し

 学校を卒業したことで、俺は完全に拠点をラムル村に移した。

 王都の屋敷は、王から派遣された者の一人を当てる。

 あとメイド数人と下働きを置くことで、管理を任せることにした。

 まあ、繋がっているので、いつでも使えるんだがね。


 玄関で待つ魔物側の者たちと母さん、ディアナ。


 馬車が三台ラムル村の屋敷に現れた。

 リズ、ライン、レオナの馬車である。

 楽な服を着たリズとライン、レオナが馬車から降りてきた。

 既に、国王の方から派遣されたメイドとラインバッハ家から派遣されたメイド、そして、ルンデルさんがレオナのために派遣してきたメイドが持ってきた荷物を降ろし始める。

 それを取りまとめるのがアーネ。

 テキパキと指示を出していた。


 ミラグロスが三人を見ていた。

「おねえたん?

 増える?」

 ディアナがミラグロスを見る。

「そう、新しいお姉たん。

 強敵だ」

「多くない?」

「多いかもしれないな。

 ご主人様の場合は、魔物も居るからなぁ……」

 苦笑いのミラグロス。


「アーネ姉たんにミア姉たん?」

「そう、あと、カミラ姉たんもミンク姉たんもだ」

「ミラグロス姉たんは?」

「私は……魔物ではない」

「でお、こっち側」

「バケモノの妻になるにはどこかバケモノのようなところは必要なのかも」

 ディアナはミラグロスを見上げると、

「あたち、バケモノの妹。

 こっち側に居る」

 魔物側のミラグロスの所で、

「ヴォルフ好き、フェネク好き、ラクザル好き。

 ミラグロス、好き!」

 抱き付くディアナの頭をミラグロスが撫でていた。



「いらっしゃい」

「ようこそ」

 カミラと母さんが三人に声をかける。

「やっとですね」

「私はたまに来てたけど」

「私も……」

 ラインとレオナに裏切られ、ムーと膨れ、

「仕方ないでしょう? 

 私は王城から出辛いのですから」

 悔しそうに言うリズ。

「あの学校祭の打ち上げ以来。

 旦那様が皆さんを手元に置けるように頑張ったのです」

 カミラが優しく俺を見る。

「まあ、勢いで何とかなったようなもんだがね」

 俺は頭を掻いた。


 皆でリビングに集まる。

 今更だがリンメル公爵の離れは無駄にデカく、つまりリビングも広かった。

 ソファーに座る俺たち。

 その両脇はリズとライン、その横にミラグロス、カミラ。

 レオナにアーネ、ミンクになる。

 ミアとアネルマは来ていない。

 いつもと違う並び。


 すると、

「それでは、差配はリズに任せましょう。

 私は裏方にまわります」

 カミラが言った。

「えっ?」

 リズが驚いてカミラを見ている。

 カミラが決めていた事らしい。

「私は伯爵の娘です。

 それがリズの上に立って動くわけにはいきません。

 ラインの上にも慣れない。

 そして、私は元々裏方の人間です。

 だから、これでいいのです」

 カミラはニコリと笑う。


 ここまでが姉の仕事ってところかな?


「そうね。

 伯爵や侯爵の娘が王女の上に立つのは難しいわね。

 本妻はリズで、私たちが側室というのが正しいと思う。

 私たちの中では、そんな垣根は無くても、周りの目というのがあるから……」

 ラインが頷いていた。

「でもどうすれば……」

 不安げなリズに、

「私やライン、レオナにミラグロス、アーネにミンク、ここには居ませんが散歩ついでにアネルマやミアにもいろいろ聞けばいいのです。

 当然旦那様にもお義父様にもお義母様にも……。

 我々も手伝うことを拒んだりはしませんよ」

 カミラが言うと、

「私だって!」

 ディアナが胸を張る。

 リズはディアナを見てクスリと笑うと、

「そうですね。

 一人で考える必要はないんですね」

 皆を見て頷いていた。


 最初はカミラがついては居たが、リズが一人で差配を始める。

 まあ、実際は表の事ってことになるが……。



 屋敷の中で一番大きな部屋が当主の部屋である俺の部屋。

 ベッドも大きい。

 そんでもって何となく日が決まっているようで、俺が屋敷にいる時は、入れ替わりで添い寝に来る。

 そんな感じのルールになっている。

 ミラグロスやアネルマ、ミアについては、その場所に行って必要があったら、大体添い寝になる。

 見越しているのか、ベッドが広くなっていた。


 まあ、それはいいとして、はじめてのリズの日。

 堪能させていただきました。



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