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106.イロマンツ村

 てな具合で、ラインバッハ家と王家から結構な補填があり、一応侯爵らしい形にはなっている。

 卒業してから三か月ほど。

 夏も近づいた頃「いい加減名前をつけろ!」というルンデルさんの依頼もあり、新しい開拓地の村は一の村、二の村と、ダンジョンのある冒険者の街はトクンプ、平原の魔物の村はイロマンツ、砦はそのまんまイロマンツの砦という事になった。

 開拓地の村は、全部の名をつけるのが難しそうだったので、数字管理。

 ダンジョンの街と平原の魔物の村は、

「この中から……」

 と、リストの中から選んだ感じである。


 ラムル村と開拓地の村の畑では麦秋の頃になり、米より早く実りの時期になった。

 大きな鎌を持ち、麦刈りが始まっていた。

 ニコニコしながら、麦を集める人々。

 やはり、ホルスやコッコーの糞を使った肥料は効くらしく、他の領地よりも収穫量は多いらしい。

 今後、ベツロエウやマルエン等のブタのような肉になる魔物を飼うようにすれば、冒険者の街での食料の消費が増える今、商品として売れるだろう。

 ついでにそのフンを使った三圃制なんかも有りかもしれない。

 ルンデルさんと相談かな?



 ダンジョンのあるトクンプの街には冒険者が集まっている。

 そこを闊歩するミンク。

 美人さんという事でちょっかいを出す冒険者が居るらしいが、下手にちょっかいを出すと返り討ちになっているということだ。

 体を折り曲げて泡を吹く冒険者が転がっているらしい。

 街に長く居る冒険者は知っていても、新参者は知らないらしく、

「あーあ、新参者が調子に乗るから」

 と冷ややかな目で見られているという事である。

 ある意味警備兵より恐れられているという……。

 ちなみに、トクンプの街もダンジョンでショートカットが可能である。

 ラムル村からも騎士たちが巡回に出ている。



 ちなみに、平原の村イロマンツの村に行った文官は、魔物の多さに馴染めなかったらしくすぐに引き上げた。

 村のことも魔物たちに頑張ってもらっている。

 まあ、ミアがミラグロスの指導の下、字も計算もできるようになっているので頑張ってもらうかな。

 出来なきゃ俺もフォローするつもり。

 ミアには他の魔物に字を教えるように言ってあるから、そのうちミア以外の魔物も字を読んだり書いたりできるようになる者も出てくるだろう。

 そこは期待かな。


 田んぼの苗は育ち、膝ぐらいまでの高さになっている。

 後はすくすくと育って、秋には黄金色の米を実らせてくれるといいのだけど……。


 イロマンツ村の田んぼを眺めていると、

「ケイン様」

 タウロスが現れる。

「ん?」

「この村の魔物の中でつがいになり、卵を産んだり妊娠したりする者が出てきました」


 厳しい環境では次世代を作ることも難しかったのではないだろうか。


「そりゃ良かったな」

 と俺が言うと、

「どうなさるおつもりですか?」

 タウロスが聞いてきた。

「どうとは?」

「このまま、我々が増えたとして……」


 タウロスは増えることが脅威になると言いたいらしい。

 そんなの考えられません。


「増えたら増えた時に考える。

 それに、俺の寿命は長いらしい。

 神祖の因子とカイザードラゴンの魔力が混じっているからだそうな。

 生きている間は俺が何とかする。

 それまでに、魔物たちの方で人間と共存できる方法を考えて欲しい。

 こっちが理不尽なことをした場合には、反抗してもいいからね」

 俺が言うと、

「普通は反抗していいなどとは言わないんじゃ?」

 フンと鼻息荒くため息をつくタウロス。

 牛頭だから鼻息が荒いのか?


 しかし、俺が普通じゃないのは今更です。


「間違ったことをしていないのに、魔物だからどうとか言って力を使ってきたら、力で返してもいいと思うがね。

 実際、タウロスたちにはその力がある」


 だって、強いし。


「あなたが居るのにしませんよ……。

 私どもが相手になっても、あなた一人で何とかできるじゃないですか!」

 ジト目でタウロスが俺を見る。

「俺が居なくなってからの話だから、だいぶ? かなり? ずっと? 先の話だね」

「その話を我々が受け継いでいけばいいと?」

 問うタウロスに、

「そういうこと」

 俺は頷くのだった。


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