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89.裁判?

 父さんたちがカミロ・グリエゴ公爵を王城へ送り届けた頃まで前線で馬の回収や食料の回収、金の回収などの処理をすると、平原の砦にミラグロスを置き、俺は王都の屋敷に戻った。


「おかえりぃ」

「おかえり、ケイン」

「おにいたん、おかえり」

 レオナと母さん。そしてディアナが屋敷の玄関で待っていた。

 カミラが留守を頼んでいたのだ。

「ただいま帰りました。

 家に変わりは?」

 俺が聞くと、

「無いわよ!」

 レオナが言う。


「カミラさんもアーネさんもミンクちゃんもありがとう」

 深々と頭を下げる母さん。

「私たちは旦那様のお役にたててうれしいのです」

 カミラが言うと、

 アーネもミンクも頭を下げた。


 トタトタとディアナがヴォルフに近寄ると、

「おつかれたま」

 ヴォルフを見上げながら言った。

 ヴォルフがディアナを抱き上げると、キャッキャと喜ぶ。


 金狼じゃないヴォルフを知っているようだ。



 屋敷の中に入り、アーネが点てた紅茶を飲んでいると、リズとラインもやってくる。

「それで?」

 二人がカミラの両脇を抑えると、アーネとミンクがその後ろに立つ。

 レオナは母さんの横に座っていた。

 全ての視線が俺に集まる。


 ありゃ?

 雰囲気が違う。

 裁判?

 俺……勝ったよね?


 ヴォルフを探す俺だが、ヴォルフは庭でディアナを高い高いしているようで、外から「キャハハ」というディアナの笑い声が聞こえた。


 孤立無援。


「えーっと、ファルケ王国の内情を調べに行ったのよね?」

 ラインが言う。

「はい、その通りで」

 としか言いようがない。

「それが何で、メルカド伯爵家に傭兵に入って、バルトロメの娘、アネルマと仲良くなるのよ!」

「それは、ミンクからの定時連絡で聞いているだろ?

 冒険者ギルドで傭兵の募集を見て、そのまま雇われて、メルカド伯爵家に居付いた訳だ。

 ウンウン」

 俺は一人で頷く。

「アーネに手を出すのはいいですが……」

 カミラがヤレヤレと両手を上げた。

「えっ、アーネさん……」

 ラインが声をあげる。

 アーネがポッと頬を染める。

「ファルケ王国で、旦那様のフォローをしている間に……色々と……」

 呟くように言うと、

「えー、私まだなのに……」

 ラインがブーと頬を膨らませた。

 チラリと見るとリズもである。


「それにしても、アネルマに手を出すのは……」

 カミラが俺を見た。

「出してない。抱き付かれただけだ」

「アネルマとマリーダに目をつけた公爵の手の者にボロボロにされた兵士の代わりに戦ったと聞きます。

『いい所を見せたい』なんて思っていたんじゃないですか?

 考えてもみてください、どうにもならないところに現れて颯爽と助けて行くんです。

 女性ならば……傾くかと……」

「あのなあ……、悪いが、俺はカミラにいい所を見せたいぞ?

 ラインだってリズだってレオナだって……。アーネやミンクにだってそうだ。

 そうやった結果、今の俺が居るんだ。

 女性にいい所を見せたくない男性なんて少ないと思うけど」

「まあ、自重しているのなら、今の状態にはなりませんね」

 カミラが諦めたように言う。


「で、アネルマ・メルカド元伯爵はどうなるのですか?」

 リズが聞いてきた。

「聞いているんだろ?

 ファルケ王国にできた飛び地の代官だよ。

 元の領地を治めてもらう」

「女性代官とは……」

「使えるなら女性だろうが男性だろうが使うがね?

 最たる人は、ルンデルさんじゃないかな?」

「確かに……忙しそうです」

 リズが苦笑いする。



 すると、

「ケインどのぉ!」

 馬の蹄の音と共に聞いたことがある声が屋敷の中に響いた。

「ライアンではないか! 生きておったか!」

 窓から外を見ると、アネルマがライアンの鼻筋を撫でている。


「どうかしたのか!」

 扉を開けて外に声をかけた。

「『多分、あなたのことで問い質されるだろう。味方が居ないケイン殿が可哀想だ』と、お母さまが心配されてな。

『どうせ、王の前に行く必要があるだろうから、さっさと行ってきなさい』と言われてこの場に来た訳だ。

 で、どのような状況なのだ?」

 そう言って窓まで来ると、アネルマが覗き込む

「まあ、こんな感じだ」

 部屋の中を見せた。


 実際孤立無援。

 マリーダ様よくわかってらっしゃる。


 すると、

「私がケイン殿の傍に居とうなったのだ。

 我が父を討った者だとは知っている。

 ただ、私を包み、守ってくれているのを感じるのだ。

 ケイン殿を慕い、盛り上げていくから、私もこの部屋の中で皆と一緒に居てはいかんかな?」

 アネルマが庭から中に居る女性陣に言った。

「旦那様だから仕方ないですね……」

 カミラが言った一言。

 俺が理由で許される俺。

「確かにねぇ……」

「まあ、その気持ちわからなくないし」

「そうなのよねぇ……。

 ケインってその辺マメだし」

 続いてライン、リズ、レオナが頷く。

「まあ、いいのだ。

 私は皆で楽しいのがいい。

 増えても楽しいのなら文句はないぞ?」

 ミンクが纏め、

「良かったわね、中におはいりなさい」

 母さんが締めた。


 その後は、一人増えただけのガールズトーク。

 ファルケ王国での俺の事を話していた。

「旦那様が作ったカレーっていうのが美味しいんです。

 コメというのを焚いて、その上にカレーをかけて食べるとピリ辛でいろいろなスパイスの味わいでこれがもう……」

 アーネが天を見る。

「あと、コーヒーというのとチョコレートというのを旦那様が気に入っていました。

 私は、種族特性からか酔っ払ってしまって……。

 でもコーヒーは苦く、チョコレートは甘い……」

「甘い」という言葉に敏感に反応する。

「「「「「いつですか?」」」」」

 女性陣の視線が集まる。

 ちゃっかりアネルマも混じっていた。

「そうだなぁ……、もう少しゆっくりできるようになったら、ルンデル商会で試食会しようか……。

 でもチョコレートが甘いのは、砂糖を使っているからだからな」

 俺は言う。

 カミラは周りの女性陣を見て頷くと、

「畏まりました。

 楽しみにしております」

 と言うのだった。


 やっぱり、女性陣のボスはカミラっぽい。

 魔物だから?


 余計な事を考えると、カミラに睨まれてしまった。


 話を続ける女性陣を少し離れて見ていると、

「あなたも大変ね」

 母さんが優しい目で俺に言う。

 そして、母さんは人と魔物の女性陣の話を聞きながらニコニコしているのだった。



 アネルマ・メルカドと共に王に謁見すると、

「話していた通り、旧メルカド伯爵領はケイン・ハイデマン伯爵のものとし、アネルマ・メルカドを代官にして統治せよ」

 と命令が下る。

 これで、文句があるなら王へ……という事になった。

 一応保護してくれたらしい。


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